きっと疲れてるんだ…このロザミアが更新速度が落ちるなんてそれしか考えられない!
ゴウッ、と勢いよく振るわれた拳を各自散開して避ける。
なるほどな、確かに強い一撃だ。
くらったらくたばるかもしれねぇってくらいには強い…だが!
巨大化したとはいっても成人男性の1.5~2倍程度!
俺は地面を蹴ってマリウスの懐に入り込む。
「ヌッ!?貴様!!」
「テメェがもう一撃振るうよりも先に、俺が拳を五発叩き込むほうが早いぜッ!!!」
『Boost!!』
ぶちかます!
土手っ腹に五発しっかりと拳を叩き込む。
マリウスはその衝撃でよろめいて動きが鈍る。
その隙を突くように頼光と木場、呂布が己の獲物を持って斬りかかる。
「さあ、怪異殺しだ」
「聖魔剣で、その歪みを断つ!」
「殺す」
「はあぁ!!」
呂布と頼光の振るった一撃が両腕を切り落とし、木場の聖魔剣とゼノヴィアのデュランダルが上から斜めに交差するように体を切り裂いた。
「ガッ………愚かな、その、程度…でっ!?」
体がみるみる内に再生していくマリウスは動こうとしてピタリと体が止まる。
この止まりかたは…ギャー助だ。
「動くんじゃあない。ヴァレリーをいいように使ったお前を、一片の慈悲もなく殺してやる」
「ギャスパー…よね?」
「ギャスパー…まあ、間違ってない。俺はバロールの意思を宿したギャスパー…とでも思えばいいんじゃねぇの」
「て、適当ね……バロール…そう、そういうこと。初めからそういう運命だったということね」
「部長、止まってる今がチャンスです!」
「そうね…皆、一斉攻撃よ!再生の隙も与えない!」
「MPBL、ロック解除!」
全員が全力でマリウスに攻撃を仕掛ける。
死ぬどころか消し飛んでもおかしくない威力だった。
けれど…
「ォ、ォォォオオオ…!」
「野郎、まだ耐えるのか!?」
「吸血鬼の元の再生力が強化されてるんだわ。
不死身に等しい程に…!」
「それなら、どうやって!?」
ネプギアの焦りはもっともだ。
マリウスはこれだけ叩き込んでも再生して、元通りになっていく。
こっちが消耗するだけにしか思えない。
焼き鳥野郎よりも不死身じゃねえか!
ギャー助が前に出る。
「なら、それを闇に覆えばいいんだな?」
「厨二かな?」
「黙ってろ」
「はい」
ギャー助から黒い靄のようなもの…ギャー助曰く、闇らしい。
その闇を再生を続けるマリウスへと向ける。
「あまり使いたくないんだが、この屑相手なら問題はない」
「ォォ…ギッ!?グアァァァァ!!?」
闇がマリウスを包むと、より苦痛の表情を浮かべ絶叫が響き渡る。
よく見ると…再生してねぇ!
どういうことだ!?
「俺の闇はそれこそ生きた呪いみたいなもの。
その概念を闇で喰らえば後は生きた血肉一匹だ。
さあ…どう殺してやろうか!」
獰猛…いや、憎悪を感じる姿に俺は既視感を抱く。
言い直そう、こいつは俺に似てる。
姉ちゃんを傷つけられた時の俺に、酷く似てる。
だからか分からねぇけど…
俺はギャー助の翳す手を掴んだ。
不機嫌そうな顔を向けられる。
「何のつもりだ?」
「…殺すのは、やめようぜ」
「一誠さん…」
「テメェもリゼヴィムを殺そうとしてた癖にか」
「ああ、虫がいいかもだけど…エルメンヒルデの件もあんだろ?
だから、殺すのはやめようぜ。死ぬってのは逃げだ」
「…」
姉ちゃんの言葉だ。
死は逃走、そう言った姉ちゃんは真剣そのものだった。
俺からしたら、クズが一人死のうが俺達には影響なんてないのに姉ちゃんはそのクズすら守ろうとしている。
…なら、俺はこのクズを殺しちゃいけねぇ。
俺達は姉ちゃんを助けるために来たんだ。
その姉ちゃんが掲げている事を折ってしまうのは違う気がした。
ギャー助は、舌打ちをして闇を解放する。
倒れたマリウスから聖杯が転がる。
それを手に取ったギャー助はマリウスを引っ掴んだ。
「ぐぁ…」
「ヴァレリーはどこだ」
「…ば、かな、何故…城の吸血鬼は…何をしているのだ…」
「は?最初からいなかったぜ」
「…ユーグリッド…!」
…そうか、アイツが始末したのか。
最初ッから聖杯を手にいれる気だった訳だ。
でも、それならどうして聖杯を盗まなかったんだ?
「ヴァレリーは何処だ!」
「ぐっ、そこの、奥だ」
「…」
ギャー助は用済みとばかりにマリウスを放り投げる。
聖杯を手放したことで再生力が戻ったのか治りが遅い。
念入りに骨が折られてやがる…ギャー助の奴、バロールだったか?それになってるのか。
「ギャー助、お前…」
「…お前らは俺の仲間だ、ヴァレリーも恩人だ。
だから牙を向けることはない。それに、俺はギャスパーだ」
「…ああ、分かったぜ。ギャー助はギャー助だよな」
「…」
バロールだろうが何だろうが、ここにいるのはギャー助だ。
なら、拒絶なんてしねぇ。
俺達は仲間だからな。
それに満足してくれたのか、ギャー助は目を閉じ、再び開けると周りをキョロキョロと確認する。
「あれ、あれ?」
「ヴァレリーって子はこっちだってさ」
「え?…あ、ヴァレリー!」
「…一誠さん、ヴァレリーさんは…もう…」
ネプギアがやってきて、落ち込んだ様子でそう言ってくる。
聖杯をギャー助が持ってるというのもあるだろうが…
俺は、まだ信じねぇぞ。
「…どうだろうな」
「え?」
「この目で見るまでは、分からないってことさ!」
俺もギャー助についていく。
皆もマリウスを拘束してからついてくる。
ギャー助が開けたのか、その扉は開いていた。
奥からはすすり泣くような声が聞こえる。
俺はそのまま中へと入る。
そこには…
「うぅ、ヴァレリー…!」
「…」
端整な顔立ちをした美女が、静かに横たえていた。
…駄目だったのか。
俺は拳を血が出る程握り締める。
元々、分かってはいた。
神器は魂と結び付いているものだ、それがなくなれば死んじまう。
俺は、俺達は助けてやれなかった!
・
・
・
綺麗な女性が横たわっている。
私は、それを見て絶望した。
だって、助けると散々言ったのに…こんな形で会うことになるなんて。
私たちは助けられなかったんです。
ギャスパー君も泣いて…胸が締め付けられる気持ち。
リアスさんたちもその光景に黙ってしまっている。
─ネプギアさん
(…はい)
─一度、彼女に触れてみてくれませんか?
(え?)
─お願いします
(わ、分かりました)
何か気になるいーすんさんに従って、ヴァレリーさんに近付く。
ギャスパー君に一言断っておこう。
「ギャスパー君」
「うぅ…ぐす、なん、ですか?」
「少し触れますね」
「え?」
ヴァレリーさんの額に手を当てる。
…あれ?
冷たくなりきってない。
普通、死体は体温が無くなっている筈。
だとしたら…
─…辛うじて生きてます
「えっ?」
「ネプギアさん?」
「…生きてます」
「何!?本当か!?」
「は、はい。いーすんさんが言いますから、まず間違いないと思います」
─少し診た程度ですが、意識不明で死にかけ…の方が正しいですね
いーすんさんの言葉をそのまま皆さんに伝えると希望を持った表情に変わる。
よかった…まだ間に合うかもしれない!
ギャスパー君も嬉しいようで、涙を拭って立ち上がる。
「早く、連れ帰りましょう!」
「はい!」
「マリウスはどうする?」
「エルメンヒルデさんに渡すか…同じように連れて帰るか、ですね」
「…エルメンヒルデはしばらくはここに留まるだろう。処遇だけ決めてもらって俺達で預かるのが確実と判断する」
「そうね…」
話し合いが終わったのかリアスさんと頼光さんは先にマリウスの元へ戻っていった。
木場さんもそれについていく形でこの部屋を去る。
「よし、これで姉ちゃんも助かるし、ヴァレリーも希望が見えたな!」
「良しとするか、それとも悔やむかは後でだな」
「ん、考えるより行動あるのみ」
「あらあら、皆こう言ってますし急ぎましょう?」
そうして、私達はエルメンヒルデさんに報告すべく捕縛したマリウスを連れて戻ることにした。
ヴァレリーさんは、呂布さんが背負っている。
驚く程軽いそうで、生活風景が見えるようで悲しくなった。
・
・
・
「…マリウス・ツェペシュ、当主にならなかったと聞いた時は何故と思ったけど…」
「エルメンヒルデ、か……グ、クク、無様、だな。
聖杯によって強くなった吸血鬼どもにズタボロになった貴様らは…」
冷たい眼差しでマリウスをエルメンヒルデさんが見下ろしている。
戻った私達にエルメンヒルデさんは事態の収束を察したのか安堵の表情でこちらにやってきたと思ったら、マリウスを見た直後に全てを察したのか今の状況になっている。
一応、一通りの説明をした後に確認を取ることにした。
「エルメンヒルデさん達カーミラ派の皆さんが被害者の今、私達が裁くことはできません。その…どうしますか?」
「……」
「殺すか?私を…研究者として、私は為すべき事をしたまでだ」
「その下劣な口を閉ざしなさい、マリウス。
貴方はツェペシュ家の誇りすら失い、吸血鬼としても堕ちる所まで堕ちた。
いいでしょう、エルメンヒルデ・カルンスタインが罪人である貴方の罪を決めましょう」
一瞬、ヴァレリーさんを気の毒そうに見た後に一人のトップとしての顔になったエルメンヒルデさんがマリウスの処遇を述べる。
「貴方は、我が同胞の命を奪い、自らの派閥すら利用した愚者。
死よりも貴方には生き地獄が相応しい。聖杯の知識をこの者達に教えなさい」
「…貴様、聖杯の情報を他者に教えろと言うのか!
ふざけ、ガッ!?」
「ふざけているのは貴方ではなくて、マリウス。
貴方に拒否権などない、もう一度言うわ…生き地獄が貴方の処遇よ。これから、どう扱われていくか決めることもできず、ただ利用される苦しみを味わうといいわ」
反抗するように口を開いたマリウスの顔を容赦なくその足で踏み抜いたエルメンヒルデさんはこれでも慈悲なのだとばかりに見下ろす。
私達はそれを黙ってみていた。
正直、ありがたいけど…よかったのかな。
ふぅ、と一息ついたエルメンヒルデさんはこっちを見て微笑む。
「わざわざこの愚者を捕らえたのには訳があるのでしょう?
これから世話になる身としては弁えているつもりよ。
…本当はもっと惨たらしく殺してやりたいけど、それでは貴方達も困るでしょう」
「ありがとう、エルメンヒルデ」
「…私はしばらくここにいます。今回の一件でカーミラ派は心身ともに傷を負った…私はそれに寄り添う義務がある」
「ええ、また来るわ。その時、貴方達のこれからを決めましょう」
「新しい何かを見つけるのに丁度いい機会よ、存分に利用させてもらう。その時はよろしく頼むわ」
エルメンヒルデさんはリアスさんと握手をした後、一礼をしてからカーミラ派の吸血鬼の元へと戻っていった。
…マリウスは何も言わない。
受け入れたのか、それとも諦めたのか。
私は分からないけど、これで一応の決着がついたのは確かだった。
お姉ちゃんを助けるための聖杯もここにある。
ヴァレリーさんはまだ生きている。
何とか、繋ぎ止めないと。
その為にも帰ろう。
「…さ、帰りましょうか。
ネプテューヌが待ってるし、色々と気になることも多いもの」
「全く、予想以上にあっさりだったな」
「ゲオルグさん、こんなに人がいるんだからあっさりじゃないと大変ですよ」
「…そうか?いや、そうか…」
「先生、大丈夫?」
「…どうだろうか、大丈夫だとは思うが」
最近色々とありすぎて感覚が麻痺したのかゲオルグさんはやつれたような顔で、心配が募る。
パンドラさんからは裾を引っ張られて心配され、自分でも大丈夫か分かってないようで余計に。
大丈夫かなぁ…最近、酷使されてるし。
苦笑するリアスさんが手を叩いた後に早く帰るわよ、と言うと皆返事をする。
リゼヴィムの事は気になるけど…取りあえずお姉ちゃんとヴァレリーさんが優先だよね!
急ぐように私達は駒王の魔法陣がある場所まで戻るべく歩を進める。
・
・
・
「うーん、うーん…」
「まだ唸ってるのか」
「だって心配だもん!」
「気持ちは分かるが、それはそれとしてお前は病人なんだから大人しくしてくれ」
「はーい…」
うんうんと唸っている私、誰が呼んだかネプテューヌだよ!
読者の皆へのいつもの自己紹介遅れすぎだよ?
でも、心配だなぁ…ネプギア達、気負ってないかなぁ。
ヴァーリからは注意されてまたベッドに寝直す。
うーん…気だるいけど、まだ喋ってる方が楽なんだけどなぁ。
曹操達はあの後も警護をしてくれてるみたいで、申し訳ないし。
「ヴァーリは、大丈夫?」
「ん?」
「私、こんなだし…守ってあげられないから。
それに、皆こんな事態で疲れてるみたいだから」
「…お前はまたそうやって」
呆れの混じった溜め息をついた後、頭を撫でられる。
鍛えてるからか手は少しだけ硬いけど心地がいい。
嫌じゃないから拒絶もしない。
というか、こういう時で不謹慎かもだけどもうちょっと仕掛けてきてもいいと思うんだよね、自分。
「お前は気にしなくていい。
むしろ、喜ぶべきなんだ」
「なんで?」
「ここにいる者達は皆お前が手を繋いだからこそここにいる。
ここにいるからこそ、お前の助けになっている。
俺だってそうだ」
「…もう」
そういう言葉を欲していた自分が要求しているようで少し嫌になると同時によくやったと褒めたくなる。
何だか、自分でもしおらしいかなとは思うけどシェアを感じられない自分なんてこんなものだと思う。
あの時、別の選択をしていたら…きっと全部から逃げていたと思うから。
皆の言葉は自分が一歩進むために強い力になってくれたんだ。
帰ってきたら、しっかりとお礼を言いたいな。
「ネプテューヌ」
「オーフィス、どうしたの?」
「ネプテューヌは、強くなりたい?」
「うん」
「どうして?」
「…皆と手を取り合う為には、言葉だけで繋がるのは難しいって気づいたから、かな。
相手が強くて、私が弱かったらゲームオーバーでしょ?
だから、強くなった、その人を止められるようになるんだ」
「見捨てないのは、なぜ?」
「だって、仲良くなれるかもしれないでしょ?」
「…難しい」
考え込んだオーフィスに苦笑い。
まだ情緒が不安定だもんね、難しい事を言ったのかな。
でも、オーフィスって自分よりも歳上でしょ?
うーん…グレートレッドは本当に鬱陶しくて追い出したのかな…
いつか、話せるといいな
「ネプテューヌは、辛くない?」
「辛くないって言ったら嘘になっちゃうから言うけど…すーっごい辛い!大変!もう勘弁してってなるよ!たまに変な因縁吹っ掛けられるし、私のこと狙う人も出るし!
大体私だって年がら年中グータラしてたいよ!乙女の時間を使わせるなんて~って怒りたくなるよね!」
自分ってよく巻き込まれるよね。
シャルバ曰く特異点とかなんとか。何それ空の物語?
グランブルーネプテューヌ?
とても素晴らしい日になるよって?まあなってるよ!
ガーッと不平不満を言う自分にオーフィスは不思議そうにする。
「辛いのに、頑張る?」
「辛いから頑張るんだよ、オーフィス!
大変だけど、皆がいてくれるから頑張れるし、皆のために頑張ろうって思えるんだよ!」
「…ヴァーリも?」
「程々にが付くがな」
「…何となく、分かった」
「オーフィス の 理解力 が あがった!」
「ドヤッ」
無表情でのドヤッいただきました~!
そうやってオーフィスの質問に答えているとおっちゃんがドタバタと入ってくる。
パラケも一緒だ。
「おぉいネプ子ってオーフィスもいやがる!?」
「アザゼル、お久」
「お、おぉ…お久し振りだな。
ってそれはいいんだっ!ネプ子!ネプギア達が聖杯を手に入れたって報告が来たぞ」
「ヴァレリー・ツェペシュも意識不明ですが、連れてくるそうです」
「え、何かあったの?」
「ああ…」
おっちゃんとパラケから聞いた内容を要約すると…
リゼヴィムの仲間のユーグリッドがやってきて一誠とバトル。
無事に勝って城に突入して、マリウスって吸血鬼が聖杯を抜き取って自己強化した姿をギャー君が本気を出して倒して、ヴァレリーちゃんも何でか生きてるから連れてくる…と。
うん、何か短くも濃い時間を過ごしたんだね。
「えっと、聖杯って神器なのに抜いていいの?」
「良いわけあるか。だが、俺の憶測が正しいのなら…」
おっちゃんが語ろうとした時、また扉をノックする音が。
わぁ、お客さん多いね、今日。
取りあえずどうぞーと言うと、曹操がやってきた。
「全速力で戻ってきたぞ、彼ら」
「え、えぇ…落ち着いてほしいんだけど。
じゃあ、私も下に降りないとね!ヴァーリ、抱っこ」
「変な甘え方をするな…やはり軽いな」
「重い方がいいのー?」
「いや、どちらでも」
何それと思いながらもヴァーリに車椅子に乗せられる。
階段降りるのにおっちゃん特製車椅子は足すら改造されてるせいで降りるのも楽々なんだね。
その無駄な技術は何なんだろう?
うーん…ヴァレリーちゃん、大丈夫かなぁ…
あーちゃんの時とは違って神器を抜き取られてかなり時間が経ってるっぽいし。
でも、意識不明なだけだから…大丈夫、な筈。
ここの皆なら、きっと助けてくれる。
ねぷ子さんもちゃんと治さないとね!
聖杯を獲得した一行が戻り、遂にネプテューヌの呪い解除が可能となる。
しかし、ヴァレリー・ツェペシュの容態は聖杯を戻しても戻らず…
消沈するネプテューヌ達の元に、ある二人が訪れる。
次回、『明日を投げ出さない』
私ともう一人…両方が助からないといけないのが物語の『大変さ』だ