すれ違いの結末   作:ビールは至高の飲料

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スパロボZ発売前のPVでストフリを前面に出しといてあんな扱いにした当時の事が今更になって憤りが甦ったので書きなぐった。


ランドもセツコも両方最初から仲間になってる設定です。


Z編 憎む側と憎まれる側
傷つけられた心


「その子が?」

 

「あぁ。破棄された研究所に残されていた子だ。何の研究をしていたのかは資料やデータの大半が消去されてたんでいまいち分からんがな」

 

 マリューの問いにバルドフェルドが答えて、椅子に座っている少女を見る。

 本来は綺麗な銀髪だったろうに。手入れのされていないその髪は汚れてボサボサ。

 まともに食事を与えられていなかったのか、身体は痩せ細っており、骨と皮しかなく、その腕は少し強く握れば折れてしまいそうだった。

 10歳くらいに見えるが、もしかしたらもう少し上かもしれない。

 

 様々な世界が混ざりあった多元世界。

 この世界で自分達が出来る事を探すためにオーブを出たアークエンジェル。

 潜伏し、今の世界の情報を集めていた際に、誰とも分からない相手から文面が送られてか来た。

 

『ある研究施設で捕らえられている少女を助けて欲しい』

 

 それだけ書かれ、座っている少女の写真と研究施設の座標だけ送られてきた。

 わざわざアークエンジェルに匿名で送られてきた情報。

 罠かもしれないと思ったが、もし本当なら放置するわけにもいかずに出向いたが、研究施設はもぬけの殻。

 特に労することなく少女の救出に成功した訳だが、腑に落ちない面が多すぎる。

 

「まぁ、考えても仕方ありませんわ。今は、その子を助けられただけでも充分でしょう?」

 

「ラクス」

 

 楽観的なラクスの言葉にカガリが呆れたように名を呼ぶ。

 少女に近づくとラクスは柔らかな笑みを浮かべた。

 

「私はラクス・クライン。貴女のお名前は?」

 

 ラクスが近づくと一瞬少女がビクリと怯えて肩が跳ねたが、その笑みと優しげな声音に上目遣いで答える。

 

「ふぃ、あら……フィアラ」

 

「そう。よろしくお願いしますね、フィアラ」

 

 こうしてフィアラと名乗る少女はアークエンジェルと行動を共にすることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィアラがアークエンジェルと共に行動するようになって一月。

 保護された当初は痩せ細っていた身体も大分肉を取り戻して来た。

 年の近い同性であるラクスやカガリが積極的に面倒を見ていることで、生来は明るかったのだろう性格を取り戻しつつある。

 

「フィアラの髪は綺麗ですわね」

 

「そうですか? ただの白髪だと思うんですけど」

 

「そんなことはないさ。青みのある銀で、積もったばかりの雪みたいだ」

 

 アークエンジェルにある天使の湯。

 そこで3人の少女が入浴しており、ラクスが楽しそうにフィアラの髪を弄っていた。

 フィアラがどうしてあんなところに捕まっていたのか。

 それはまだ話してもらっていない。

 無理に話をさせることは躊躇われ、心を開いたときに話してくれると信じている。

 だから今は心を癒すことに専念していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Poison Monster

 通称PM。

 この多元世界に現れた正体不明の怪物。

 その戦闘能力は高く、世界各地に散発的に出現しては、暴れまわる。

 しかし、もっとも厄介なのはその毒性。

 PMは確かに高い戦闘力を誇るが、決して倒せない敵ではない。しかし、倒すと有毒性のある毒を大地に、水源に、空気中に撒き散らされ、人を含めた生物を住めない土地へと変える。

 毒に汚染された土地を元通りにするには、数年単位の時間が必用と推測される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如現れたPMに、三つ巴の戦闘をしていたZEUTH、連合、アークエンジェルは、その対処をしていた。

 無差別に襲ってくる怪物を相手に、人間同士で戦闘を続けるほど彼らは愚かではない。

 

 問題は────。

 

「まだ、近くに住む人達の避難が終わってないのに!」

 

 PMが発する毒は強力である。シェルターなどに避難しても時間をかければ、防壁をすり抜けて毒を撒いてくる。

 しかし倒さなければこちらがやられる。

 そして自分達が退けば、近くにある町へと襲いかかるだろう。

 どちらにせよ、何の罪もない人々の命が散らされることになってしまう。

 この戦場に居る誰もが歯噛みしていると、アークエンジェルのブリッジにフィアラが上がって来た。

 誰もが唖然とする中で、フィアラはブリッジから見えるPMに鋭い視線を向ける。

 

「何をしているの!? 早くここから出なさい!」

 

 艦長であるマリューがブリッジの外へと出るように促すがフィアラは首を横に振って宣言する。

 

「あの毒は、私がどうにかします」

 

「え? 何を……」

 

 言って、と続く前にフィアラに変化が起きる。

 彼女の身体から光る金色の紋様が浮かび上がったのだ。

 

「願いを我が中に。私の歌は、世界を侵す」

 

 フィアラの口から歌が紡がれる。

 それにしても呼応してフィアラの紋様が背中から翼のように広がり、アークエンジェルを中心に戦場に囲うように陣を作る。

 そこでアークエンジェルめがけて飛来してきたPMをキラのフリーダムが撃ち落とした。

 

「え?」

 

 それは誰の呟きだったのか。

 PMは、倒せば塵になり、毒素を撒き散らすが、今は塵になるだけで毒の反応がなかった。

 歌は続く。

 アークエンジェルのブリッジで歌っているその歌は、戦場に広がっている紋様からも響かせている。

 戦場に少女の歌が響く。

 撒き散らされる毒の心配がなくなり、その後の戦闘はこれまでに無いほどスムーズに終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ……」

 

 戦闘後に倒れてしまったフィアラは、1時間ほどして医務室で目を覚ました。

 アークエンジェルは既に戦域を離れており、潜水している。

 のそりと起き上がると、そこにはキラとラクスがいた。

 

「戦いは……?」

 

「終わったよ。君のおかげで、被害が抑えられた。ありがとう」

 

 キラが礼を言い、ラクスがフィアラの手を握る。

 

「とても、素敵な歌でしたわ。あの歌に込められた想いを、確かに私は感じました」

 

 2人に褒められて、フィアラは顔を赤くして逸らす。

 しかし、すぐに憂いを帯びた表情に変わる。

 

「PM……あれは……」

 

「何か知ってますの?」

 

 ラクスの問いにフィアラは首を横に振る。

 

「わからない……わからないけど……たぶん、あれは……」

 

 自分の体を抱き締めてフィアラは誰かにではなく、自分で確認するように呟く。

 

「私の……同類です……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この少し後に、ラクスは宇宙へと上がり、2つに分かれたZEUTH片方と接触し、共に行動することになる。

 

「なぁ、お前があの歌巫女なのか」

 

「はい?」

 

 行動を共にする事になったZEUTHのガンダムのパイロットの1人である、ガロードがフィアラに話しかけてきた。

 いや、ガロードだけではなく、主に十代半ば頃の少年少女を中心に話しかけていた。

 しかし、フィアラからすれば気になる単語がある。

 

「あの……歌巫女って……何です?」

 

「知らない? 今UNでちょっとした話題になってるんだよ。PMの毒を浄化する歌う巫女って」

 

 レントンの言葉にフィアラが首を傾げた。

 

「巫女?」

 

 フィアラの能力は発動条件が歌であり、展開される紋様からも歌声が響く。

 それは当然、戦場にいた者達にも聴こえており、それがUNで話題になっていた。

 しかし、フィアラからすれば巫女という単語に違和感しかない。

 

「それだけ貴女の歌が素晴らしいと皆がお認めになったということでしょう」

 

 アナ姫がそう言うも、実感が湧かず、はぁ、と気のない返事を返す。

 

 そもそも、あの研究施設からこれまで、アークエンジェルの面々としか過ごしていないフィアラにとってこの大所帯自体慣れないのだ。

 そこでエウレカが提案する。

 

「もし良かったら月光号に来ない? モーリス達にも貴女の歌を聴かせてあげたいの」

 

「え、と……」

 

 視線を近くにいたカガリへと移す。

 彼女は苦笑する。

 

「お前が行きたいなら、行ってくればいいさ。私達にお伺いを立てることじゃないぞ」

 

「なら、少しだけ……」

 

「よっしゃ! 歌巫女の独占ライブだぜ!」

 

 頭を下げ、エウレカに手を引かれて月光号へと移動する。

 

 それにゲッターロボのパイロットである竜馬が話しかける。

 

「いいのかい?」

 

「あの子、アークエンジェル以外の世界を知りませんから。だから、今回、あの子達が話しかけて来てくれて、良い機会だとも思ってます」

 

 そして見ている世界を広げなければならないのは自分達も、なのだろう。

 しかしこの、何気ない選択がフィアラにとって大きな分岐になることを、誰も知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2つに分かれたZEUTH。

 それが今、敵対し、互いに銃を向けあっていた。

 アークエンジェルも当然それに参加する。

 しかし、キラの乗るフリーダムを執拗に追い詰めようとするインパルスと、アークエンジェルを討とうとするミネルバ。

 それを、月光号の中で見ていたフィアラは徐々に追い詰められていくフリーダムとアークエンジェルに危機感を覚える。

 

「や、めて……」

 

 そしてついに、インパルスの対艦刀がフリーダムの腹部を貫き、ミネルバの陽電子砲がアークエンジェルを撃つ。

 

「やめてっ!?」

 

 その懇願の声は近くにいたモーリス、メーテル、リンクスとアナ姫以外に届くことはなく、フリーダムとアークエンジェルが沈んでいく。

 

「あ、あ、あ、あ、あぁっ! ああぁあああぁあああっ!?」

 

 喉を裂くような絶叫が月光号に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやくもう1つZEUTHを振り切って落ち着いた休憩を取れるようになるが、余裕のなかった彼らはアークエンジェルの捜索は行われないこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……」

 

「……」

 

 アナ姫の声にフィアラは反応すらしない。

 フィアラの眼には隈があり、ここ数日ほとんど寝てないのが明白だった。

 アークエンジェルと別れて数日。フィアラは誰が見ても憔悴していた。

 食事もほとんど手を付けていない。

 

「だ、大丈夫だよ! その内、ひょっこり顔を出すって!」

 

 メールがそう励ますが、その言葉にも僅かに視線を動かすだけだった。

 

「なんで……」

 

「え?」

 

「なんで、私だけ助かってるの……?」

 

「フィアラ……」

 

「助けてもらっておいて、私だけノウノウと……こんなの、ない……私、まだ何も返せてないのに……どうして……」

 

 無表情のまま、フィアラの瞳からは涙が溢れ落ちていた。

 それを見た面々は、間違ったのかもしれないと思う。

 あの時、フリーダムとアークエンジェルを孤立させるべきではなかったと。

 いや。あの時に無理を推してでも探しに行けばと。

 例え一緒に行動した期間が短くとも、共に戦った仲間がMIAになり、残された少女が泣いているのを見てなんとも思わないほど彼らは非情ではなかった。

 

 

 

 

 それから少し間を置き、2つのZEUTHは再び道を交わる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 表情こそあれ以来暗いモノとなってしまったが、フィアラは幸いにも食事などは最低限摂ってくれるようになった。

 一応、PMが出現したときはその力で毒性を無力化してくれる。

 だが、もう1つのZEUTHと合流して、前にも増して周りとの交流を拒絶し、ほとんど引きこもりのような状態になっている。

 それでも、無気力状態から次第に目が覚めていき体を動かしたい欲求が生まれる。

 

「う、ん……」

 

 それに従って立ち上がり、部屋から出る。

 しかし、録に艦内の道を覚えてなかったフィアラはどこに行けば良いのか。そもそも、どこに行きたいのかすら自分で分かっていなかった。

 

「……もどろ」

 

 トボトボと来た道を戻ろうとすると、道角で人にぶつかる。

 相手は少しよろめく程度で済んだが、華奢なフィアラはそのまま尻もちをつく。

 

「あ、ごめんなさい。大丈夫?」

 

 黒髪の女性が手を差し出すがフィアラはその手を借りずに自分で立つ。

 見たことがない相手だった事からもしかしたらもう1つのZEUTHの人なのかもしれないと思い、そう考えると沸々と負の感情が沸き上がってくる。

 それを悟られまいと頭だけ下げて立ち去ろうとする。

 しかし、相手が手を掴んできた。

 

「?」

 

「もしかしてサロンに行こうとしたの? ならこっちよ」

 

「いえ、ただ歩いてただけで……もう部屋に戻りますから」

 

 手を放させようとするが相手はフィアラの顔を真剣な表情で見た後に、気づかう笑みを見せる。

 

「どこか、迷子のように見えたから。行きたいところがあるなら────」

 

「行きたい、ところ……」

 

 その言葉だけが妙に頭に残る。

 うん、と頷く相手にフィアラは特に考えもせずに呟いた。

 

「アーク、エンジェル……」

 

「え……?」

 

「アークエンジェル、帰りたい……」

 

 気が付けば、体を震わせて泣きそうな表情になっていた。

 あの研究施設から助け出してくれた人達。

 自分を救ってくれたのは、ZEUTH(ここの者達)ではないのだ。

 あそこに居て、自分が何か出来るわけではなかったけど。それでも、帰りたいと思ってしまうのはわがままだろうか。

 

「……」

 

 フィアラの様子から何かを察したのか、相手が手を引く。

 

「とにかく、皆のところへ行きましょう。独りで考えてたら、悪いことばかり考えてしまうから」

 

 そこで、あ、と思い出したようにフィアラに向く。

 

「私、セツコ・オハラって言います。貴女は?」

 

「フィアラ……」

 

「フィアラちゃんね。行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 引かれるままに案内されたのは部隊内の憩いの場であるサロン室だった。

 そのドアを開けようとした時に、中の会話が聞こえてきた。

 

「大体、フリーダムは、戦場に勝手に現れてメチャクチャにしてただけじゃないか!!」

 

 その言葉にドアを少し開いた状態で止まる。

 中の会話からアークエンジェルやフリーダムのせいでどれだけの被害を被ったかを怒り混じりに話しており。

 一時でもアークエンジェルと共に行動していた面々は、フォローしているが、向こう側の鬱憤が強く、どう宥めるか考えている様子だ。

 

 それらの戦闘の全部は知らないまでも、フィアラも一部は見ていた。確かに彼らからすれば迷惑行為だったのだろう。

 しかし、それを耳にしてこちらが全て悪かったと納得出来るほど聞き分けは良くない。

 フィアラの前にいたセツコも戸惑っていると中にいたランドが2人に気付く。

 この時点でフィアラの思考の大半はもうどうにでもなれという自棄っぱちだった。

 なんだろうか? 後の事なんてどうでも良い。ただ、コイツらの言い分を絶対に認めない、という衝動だけだった。

 

 フィアラの事を誰もが大人しい性格の少女と見ていた。

 しかし、それは間違いである。

 本来の彼女はとても気性の激しい人物だ。

 ただ、長い研究施設での生活でそれらの面が抑えられていただけ。

 今の会話で完全に導火線に火が点いた状態だった。

 

 セツコの脇を抜けて歪な笑みを浮かべて自己紹介する。

 

「どうも。いま話題に上がっていたアークエンジェルのクルーです」

 

 フィアラの言葉にサロンにいた面々。特にザフトに協力していた者達は瞬きして驚く。

 

「どうしたんですか? 言いたいことがあるなら言ったらどうです? せっかく忌み嫌うアークエンジェルのクルーが目の前に居るんですから」

 

 クスクスと異様な笑みを浮かべる10そこそこの少女。

 だがしかし、その瞳に込められた強い敵意にZEUTHのメンバーは何も言えないでいた。

 

 そして先程から特にアークエンジェルを批難していた赤い軍服の少年に近づく。

 

 その声はチラムの街で暴れていた巨大MSのパイロットを説得していた者の声だった。

 そして、フリーダム(キラ)を討った者の声でもある。

 フィアラはその少年。シン・アスカに近づいて彼にだけ聞こえるように小声で話しかけた。

 すると、驚いた顔を一瞬。すぐに怒りの形相になり、フィアラの頬を張って、床に倒した。

 

「あ」

 

「おい、シン! なにやってる!?」

 

 近くにいたカミーユ・ビダンが止めに入るが衝動的な攻撃だったために本人もバツが悪そうに手のひらを見つめる。

 

「フィアラちゃん、大丈夫!」

 

 ここまで案内したセツコが様子を手を差し出したが、その手をパシン、と、払う。

 

「触るな、穢らわしい……!」

 

 吐き捨てるフィアラには先程までの心を許しかけた様子など微塵もなく、憎しみだけが瞳に宿っており。その豹変ぶりにセツコはたじろいだ。

 

 フィアラも、事情の全てを知っている訳ではない。

 間違っているのは此方なのかもしれない。

 だけどそんなことは────。

 

「知ったことか……っ!」

 

 小柄な体からは想像できない強い負の感情が込められた声にその場にいる全員が動くことを躊躇った。

 導火線は無くなり、後は爆発するだけ。

 唇を噛みきり、ギリッと歯が鳴る。

 

「誰が頼んだ誰が望んだ! 誰があんなことしてほしいっていったぁ!!」

 

 記憶から甦る。

 アークエンジェルとフリーダムが撃墜された時の絶望が。

 こいつらだ。

 私の居場所を消し去ったのは! 

 肺に溜めた酸素の全て怨嗟の言葉を乗せた。

 

「誰が認めるか誰が許すか! お前達が! お前達が死ねば良かったんだぁああああああぁああぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この後、オーブ戦前にZEUTHを出ていって色々あって第二次Zの世界に転移する感じ。
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