すれ違いの結末   作:ビールは至高の飲料

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個人的に前話の戦闘前会話でのお気に入りは、桂、カミーユ、シン、甲児、グランナイツ、チームD、スザク、ロジャーだったりします。

フィアラは現在、反抗期、人間不信、被害妄想、癇癪などで、非常にめんどくさいです。
言ってることの正しさを問うなら、正しいのはZEXISで、間違ってるのフィアラの方です。



拒絶する言葉

 ようやくフィアラと話し合いの席を設ける事に成功したZEXIS。

 特に、元ZEUTHのメンバーは変わった彼女に戸惑いつつも生きているその姿を確認出来た事に安堵した。

 そんなフィアラが勧められるままに気怠そうに席へと座って言った最初の一言は────。

 

「もう出て行っていい?」

 

「まだ何にも話してないだろ!?」

 

「チッ」

 

 あんまりな第一声に赤木が驚きからツッコミを入れると聴こえるように舌打ちする。

 その悪態に、ZEUTHの面々は戸惑い気味にフィアラを見て、ZEXISはこれまで無視され続けてきた反動から苛立ちを募らせる。

 それらを察してスメラギが話し始めた。

 

「なら、どうして今回、こちらの要望を最終的に聞き入れてくれたのかしら?」

 

 スメラギの質問にフィアラは一瞬だけキラの方を見てから答える。

 

「……キラさんが生身を晒してまで話がしたいって言ったから、話くらい聞いても良いかな? と思ったけど、ここに案内されるまでに、何かどうでも良くなってきたから」

 

「こいつ……!」

 

 そのあんまりな自己中心的な理由に数名が眉間にしわを寄せた。

 

「遅れましたが、ソレスタルビーング及びZEXISの戦術予報士のスメラギ・李・ノリエガです。理由や過程はどうあれ、話し合いの席に着いてくれた事に、感謝します」

 

「フィアラ・フィレス、です。感謝はいらないから、手早く終わらせましょう。お互い、そんなに暇でもないだろうし」

 

 面倒臭い、という雰囲気を隠すことをしない様子に更なる苛立ちが募る。

 そこでキラが首を傾げた。

 

「フィレス?」

 

 フィアラ、という名前しか知らなかったキラはその事に疑問に思った。

 

「ジ・エーデル・ベルナルのところに世話になってた頃にファミリーネームも調べてもらって。今はそう名乗ってるから」

 

 そこでゼロが話に入る。

 

「何故、これまで我々の呼びかけを無視していた。此方に敵対する意志が無いことは何度も示してきたはずだ」

 

「こっちは貴方達に用なんて何も無いもの。なら、別にそっちに従う理由も無いでしょ。親しい間柄ってわけでもないし。知らない人にはついていっちゃいけませんって誰でも教わるでしょ?」

 

 椅子の背に体重を預けながら答えるフィアラ。

 そこでキラが気になっていた事を訊ねる。

 

「フィアラ、その顔の傷は?」

 

 右頬につけられた目立つ傷。

 もしかしたら、次元修復の為に行った自分達との戦いで付いてしまった傷なのではないか。

 そんな不安に駆られたが、それはまったくの的外れだった。

 

「1年程前に、エリア11に行って、その時に日本解放戦線のテロに巻き込まれて、その際に付けられただけ」

 

 日本解放戦線? と疑問に思うZEUTHにゼロが黒の騎士団が現れる前に活動していたエリア11においてのブリタニアに対する最大のレジスタンスだと軽く説明する。

 フィアラの顔の傷が自分達が負わせたものでないことに安堵する。

 

(もっとも、傷があるのは顔だけじゃないけど……)

 

 その様子を見て小さく息を吐くと、ZEUTHのメンバーが集まっている方に視線を向ける。

 

「そもそも、そっちは今更私に何の用? こっちには用件なんて1つも無いんだけど」

 

 迷惑だと言わんばかりの視線を向けてくるフィアラに、反応したのはZEUTHの面々ではなくワッ太だった。

 

「さっきからそんな態度取らなくてもいいだろ! アンタも、勝平達の仲間なんだろ!」

 

「へー、初耳」

 

 室内の温度が下がるようにフィアラは視線を鋭くした。

 別に、ZEUTHの面々はフィアラを仲間と称した事は無い。

 多元戦争で最終的に敵対したのは事実だし、仲間と呼ぶには互いに精神的な距離があり過ぎた。

 ただ、ガンダムスローネとの戦いにいち早く介入したキラや、彼女に友好的なアナ姫などの存在から、ZEUTHの仲間、という先入観をワッ太に与えただけだ。

 先程の戦闘も、何かの誤解から生じた物と無意識に考えていた。

 眉間に皺を寄せて小さく息を吐くと、ZEUTHとの関係を説明し始める。

 

「どんな都合の良い関係をでっち上げられてるのかは知らないけど、一時期に事情があってZEUTHのところで居候をしてた事があるだけだよ。結局、ウマが合わずに逃げ出した。それだけ」

 

 当時の事を思い出してか、不快そうな雰囲気が深まる。

 また、ZEXISの面々はウマが合わなかった、という言葉に違和感を覚えた。

 ZEXISにしろZEUTHにしろ、人員の割合としては軍人よりも民間人の比率が多い。

 だから、余程の堅物か、人格に問題のある人物でもない限りは、そう不仲にはならなさそうだが。

 まぁ、実際にはウマが合わなかった、というよりも、あまりにも間が悪かった、と言う方が正確なのだが。

 僅かな沈黙の後に会議室に遅れて人が入ってきた。

 

「フィアラッ!!」

 

 慌てた様子で入ってきたのは、ゲイナーとサラに連れられて来たアナ姫だった。

 彼女はフィアラの姿を確認すると、じわりと目に涙が浮かんだ。

 流石に驚き、たじろいでいると、アナ姫がフィアラ抱きついてきた。

 

「よかった……っ! 本当に……フィアラァ!」

 

 そんな純粋な安堵による嗚咽にフィアラは戸惑い、バツが悪そうに頬の傷を掻く。

 アナ姫はZEUTHにいた頃にとても良くしてくれた少女だ。

 ZEUTHに居候していた時に、良い思い出など殆んど無いが、彼女が与えてくれた優しさは覚えている。

 だから、それすらも無下に突き放すのは躊躇われた。

 アナ姫が落ち着いた頃を見計らってゼロが話しかける。

 

「それで、こちらも話を進めたいのだが」

 

「……もう少し空気を読んだらどうだ?」

 

「お前は黙っていろ」

 

 無粋なゼロにC.C.が嗜めると冷たく返す。

 だが、ゼロの言う事も間違っておらず、このまま静観している訳にもいかない。話に割って入ったのはクロウだった。

 

「アイムの言っていた、あのPMって言うバケモノ。アレをこの世界に呼び込んだのが、お前さんってのは本当なのか?」

 

 以前、アイム・ライアードが言っていた事。

 フィアラがPMをこの世界に呼び込んだと。

 それはZEXISの面々が真っ先に知りたい事だった。

 もしそれが本当なら、何故そんな事をしたのかも含めて。

 質問にフィアラは、やや歯切れの悪い表情で答えた。

 

「……そういうことに、なるんじゃないかなぁ?」

 

「はっきりしなさいよ!」

 

 曖昧な答えを返すフィアラにヨーコが苛立たしい態度になった。

 少し考える素振りをするがそれは拒絶や煙に巻くと言うより、どう話すべきか悩んでいる様子だった。

 

「なんだ! 何か疚しい事でもあるのかよ!」

 

「アルト!」

 

 黙っているフィアラに、つい苛立ちから強い口調になってしまったアルトをミシェルが嗜める。

 特に反応はせずに、ZEUTHの面々に視線を向けた。

 

「貴方達がここに居るって事は、ジ・エーデル・ベルナルを倒して、次元修復は無事、行われたんだよね?」

 

「え? あ、あぁ。あの戦いの後、大特異点であるユニウスセブンでな。今は次元境界線も安定してる」

 

 次元修復の結果を簡単にカミーユが説明する。

 ジ・エーデル・ベルナルの事は、ZEUTHにとっては許しがたい敵だが、フィアラにとってはどうか分からず、以前のように感情を爆発させる可能性があるので敢えて事実だけを告げるようにした。

 話を整理するように小さく頷いた後、フィアラは話を始めた。

 

「あの戦いの後に行った次元修復。大特異点の近くにいた影響もあって、私はあの世界から弾かれた」

 

 おそらく理由は、フィアラがあの世界に居る事に嫌気が差していたのが原因だろう。口には出さないが。

 

「その際に、PMが本来居る次元から、此方の世界を観測したと思われる。私が此方に来た際に出来た次元の穴。そこを伝ってアイツらこの世界に現れ、自分達の世界から直接この世界への繋いだ、と考えている」

 

「……では、君の意思でPMをこの世界に呼び込んだ訳ではないと?」

 

「私にそんな事が出来るとでも? まぁ、個人的にアレには用が有るから、こっちに来て2年間、世界中を回って色々と準備してたけど」

 

「2年!?」

 

「多元世界の不条理だな」

 

 道理で体が成長している訳だと思う。

 

(もっとも、理由はそれだけじゃないだろうけど……)

 

 心の中でフィアラは付け足す。

 

「準備?」

 

「もしもアレがこの世界に来た場合を想定して、世界中を回りながら転移するために必要なマーキングと、アレがこの世界に何処に現れた時に分かるように発信器みたいな物を仕込んでた」

 

 転移してきたときに、何故か位置がズレてたりした時があったのはその為かと納得する。

 そこで玉城が怒った顔で発言する。

 

「でも結局よー! こいつがこっちに来たから、あのバケモノが現れたんだろ?」

 

「玉城!」

 

 玉城の言葉に扇が止めに入る。

 しかし、ゼロが意外な言葉を発した。

 

「だが、ある意味では彼女だけ此方に来てくれたのは私達にとって幸運だったとも言える」

 

「なんでだよ!」

 

「考えても見ろよ。この子がこっちに来た事でPMがこっちに来たのなら、ZEUTHがこっちに来てから奴らが現れたら、どうなると思う?」

 

「フィアラ・フィレスがこれまで行って来たという準備をこれからしなければならない。いや、そもそも彼女が此方に来なかった可能性も有る」

 

「そうなったら、あのPMの毒でこの世界の現状はもっと悲惨な事になっていたわね。インペリウムの事も含めて」

 

 ロックオンとティエリアが情報を補足し、くららが締め括る。

 それに玉城が唸るように押し黙った。

 フィアラに対する疑念が多少緩和したところでジェフリーが提案する。

 

「フィアラ君。今、この世界は混迷を極めている。今回のように、君を襲う者が現れないとも言い切れない。我々と行動すれば、少なくとも全力で君を守るつもりだ。どうだろう? 我々、ZEXISに力を貸してくれないか?」

 

 それは、誠実な頼みだった。

 この星を、そこに住む人を想い、守りたいという純粋な願い。

 しかし、フィアラの答えは否だった。

 

「あり得ない。断る」

 

 ただ、鬱陶しそうに返しただけだった。

 僅かな沈黙の後に、スメラギが質問する。

 

「理由を伺っても?」

 

「私、団体行動はしたくないし、別に今のまま独りでも困ってないから。何より、PM以外の敵となんて関わるつもりもない」

 

 あくまでも目的はPMで、他は知ったことじゃないと言うフィアラ。

 

「……色々と言いたい事はあるが、そのPMの対処も、大分難儀しているようだが?」

 

 最近PMの出現頻度が上がり、前は1週間から10日に1回くらいだったのが、今では2日3日、もしくは連日出現することもある。

 その上、個体の戦闘力も上がって来ており、苦戦する場面も増えてきた。

 ZEXISだけでなく、何処の組織も彼女を失ってPMに対処出来なくなるのを恐れている。

 

「PM以外と戦うつもりがないと言うならそれでも良い。だが、このままでは遠からず、限界も来るだろう。君が力を貸してくれれば、こちらも取れる手段が増えるし、君自身の生存率も────」

 

「関係ない」

 

 ゼロの言葉を遮り、フィアラ意固地に拒絶する。

 

「私は誰も信用できない。だから誰とも行動出来ない。ついでに言うなら、PMの対処に遅れ始めている? だから何? 結果的に駆除出来てるんだから、私にはそれで充分」

 

「はぁ!?」

 

 突然のぶっ飛んだ発言に驚きの表情をする。

 

「勘違いしてるようだから訂正するけど。私の行動で助けられる人が居るなら良いかなって思うけど、例え町の人達が全滅してたなら、それは仕方ないかな、とも思ってる。だって私は別に命を助けてる訳じゃないし、正義の味方でも何でもないから」

 

「君。その発言はちょっと無責任じゃないか?」

 

 タケルの言葉に意味が分からないとばかりに鼻で笑った。

 

「無責任? そもそも、責任なんてこっちは背負った覚えはありませんが? 責任云々の話をするなら、今までPMを対処してた活動報酬くらい払って欲しいんだけど。こっちは何も貰ってないのに、責任だけ押し付けないでくれる?」

 

「言ってることは共感できるが……」

 

 フィアラの腕をクイッ、クイッと動かしての主張にクロウが困ったように頬を掻く。

 そこでカミナがフィアラに問い質す。

 

「なら、お前は何だってアイツらと戦ってるてんだ! えぇ!!」

 

「アニキ!」

 

 それは誰もが気になっていたこと。

 彼女が頑なにPMと対峙する理由。

 ZEUTHも知らない事情。

 

「私はアイツらが居る、本来の次元に行きたいの。今はその為の準備段階。PMへの対処も含めて」

 

 場が驚きに支配される。

 PMへの場当たり的な対処だけではなく、敵の居る次元に行けると言う。例え時間がかかるとしても、その利点大きい。

 PMの驚異を、根本から絶てる可能性があるのだから。

 

「だったら尚更、独りじゃダメだ。俺達にも協力させて欲しい」

 

 甲児が真っ直ぐとフィアラを見て説得する。

 彼女がどうしてそんな事が出来るのかは知らないが、あんなバケモノのいる巣窟に単独で挑むなんて危険すぎる。

 それでも、フィアラの答えは否だった。

 

「関係ないって言ったでしょ。私は私の為に戦って行動してる。それに他人を絡ませるつもりはないから。そもそも、私はZEUTHの大半と確執がある。そんな連中と一緒に行動なんて出来ない」

 

 ZEUTHの集まりを指差して主張するフィアラ。

 一瞬その事に険しい顔になるが、シンがどうにか前に出て話そうとした。

 

「確かに、あの時俺達はキラさん達の居たアークエンジェルと敵対していた。けど、もうその事は────」

 

「あれだけ罵詈雑言を言っていたくせに、手を取り合ったって言うのも信じがたいけど。初対面で私の顔を叩いて倒した事は後回しなんだ。へー」

 

「つ────いや、それはっ!?」

 

 フィアラの言葉にZEXISのメンバーが、信じられないと言うような眼でシンを見る。

 シンが何かを言う前に畳み掛けるように続ける。

 

「それと、謝罪はいらない。私に許す意志が無いから意味ないし。そもそも、今更そんなモノは聞きたくない」

 

 続いてZEUTHの全体を見るように首を動かす。

 

「それに、私が居候してた時に、散々陰口を言ってたでしょ? 私みたいな部隊の空気を悪くする奴はさっさと居なくなって欲しいって。望み通り消えてくれてさぞや嬉しかったでしょう?」

 

 嫌味たっぷりの笑みを浮かべて言うフィアラ。

 陰口を言っていた人物達は顔を逸らし、一緒に聞いていたアナ姫等はあ、と思い出して声を漏らした。

 

「そう言えばその時に、PMも自分達ならいずれ対処する手段が見つかるとか言ってたし、良かったねぇ! これで私が死んでも、ZEUTHの人達がきっと何とかしてくれるでしょ?」

 

 態とらしくテンションを上げて言うフィアラにZEUTHが押し黙る。

 

「そういう訳だから、私が死んだら、ZEUTH(彼ら)を頼れば良いよ。私、もう別に必要ないでしょ?」

 

 ZEXISに告げるとロジャーが言葉を発する。

 

「私達の中でそのような発言がした者が居たことは謝罪しよう。だが、情けない話、私達の世界でも、PMに対する打開策は未だ見つからないのが現状だ」

 

「だから? 世界の危機だから、過去の暴言を水に流せとでも? それとも今は我慢してくれ? どっちもゴメンだけど。私、根に持つタイプなので。ほらそれに、過程や道理を無視して、自分達に都合の良い奇跡を引き当てるのは、得意でしょ? それでどうにかしたら?」

 

 小馬鹿にするような視線で笑みでZEUTHを突き放すフィアラ。

 

「大体、私の能力を解明しようと、人体実験のモルモットにしようとしたくせに、信用が得られると思ってるのが甘いんだよ!」

 

 吐き捨てるように言うと、刹那が訝しむ様子で呟く。

 

「人体実験?」

 

 ZEXISの面々も流石に事情が分からずに困惑する。

 彼らがそんな事をフィアラにしようとした事が信じられず、だが、その様子から出任せを言っている感じでもない。

 このままでは話が進まないので、風見博士の弟子だったジュリイが説明する。

 

「……その子がZEUTHに居た頃、俺達のゴッドシグマを開発した風見博士は、彼女の能力に着目し、人体実験にかけようとしたことがある。その子自身が激しく抵抗した結果、未遂で終わったが」

 

「なんだよそれ!?」

 

「フィアラがZEUTHを逃げ出したのは、その少し後で……」

 

 アナ姫が当時の事を思い出して辛そうに目を瞑る。

 

「……それで、その風見って奴は?」

 

「あの人は、結局最終的に俺達とも袂を別って、地球を侵略していた異星人の連合に就き、俺達とも敵対して、倒したよ」

 

 闘志也が苦い表情で説明し終えると、カミナが首を傾げた。

 

「なら、その風見って野郎が悪いんじゃねぇか」

 

 フィアラに酷いことをしようとしたのが風見博士なら、そいつが死んだ時点でこの話は終わりではないだろうか? 

 そう他の者も思ったが、フィアラは冗談じゃない、と吐き捨てる。

 

「どうせ同じ事が起こっても、貴方達は何もしてくれないでしょ? それが信用出来ないって言ってるの」

 

「どういう事だよ!」

 

 アポロの戸惑いにフィアラは続ける。

 

「私を襲ったあの人を貴方達はどうした? 何もしなかったでしょ?」

 

「何もしなかった?」

 

「そう。厳重注意で、私から遠ざけただけで、大した処分もしなかった! あぁ、別に貴方達は間違ってない! 優秀な科学者を、それも大切な身内を、悪意を吐き散らしてたガキの為に人体実験の未遂なんかで一々罰してなんかいられないものね! でも、私はお前達の仲間でも身内でもないから、そんな場所に恐くて居られないんだよ!」

 

 実際に彼は懲りもせずに敵という理由で異星人や、堕天翅の子供を人体実験にかける暴挙を行った。

 それでも彼の優秀さや、以前の人格を信じたZEUTHは処分らしい処分を下さずに裏切りを許して遅すぎる罰を与えた。

 

「ZEUTHではどうだったかは知らないが、ZEXISでもしもそのような非道な行いをする者が現れれば、然るべき処分を下すつもりだ」

 

「その然るべき処分がどういう物かは知らないけど、さっきも言った通り、私は誰も信用できないの。そういうリスクを背負うのは止めたから」

 

 締め括るよう手を叩く。

 どうにかしようとシンがキラに小声で話す。

 

(キラさん! さっきから黙ってないで、何か言って下さいよ! アイツを説得出来る可能性が高いのはキラさん何ですから!)

 

(うん。そう言ってくれるのは嬉しいけど、シンももうちょっと頑張ろうか)

 

 記憶からあまりに変わりすぎているフィアラに面食らっていたキラは、それでも話そうと動く。

 

「久しぶり、で良いのかな? フィアラにとっては2年ぶりみたいだし」

 

「……えぇ、まぁ」

 

 先程の攻撃的な態度は鳴りを潜め、自分の腕を強く握りながらもキラから視線を逸らす。

 その反応に、周りが、ん? という反応をした。

 

「アスランから、フィアラがZEUTHを離れたって聞いて、ずっと捜してたんだ。あの戦いが終わった後も、カガリやラクスも」

 

「……」

 

「あの時、フィアラの気持ちを考えずに、僕達は自分の都合を押し付けた。連絡の1つも入れずに不安にさせて、本当にごめん」

 

「なんで……」

 

「え?」

 

 首を小さく横に振る。

 それは怯えるような。

 怒るような。

 哀しむような。

 堪えるような。

 複数の感情が混ざりあった表情。

 しかし、その表情もすぐに治まり、僅かな俯きの後に消えた。

 

「別に……あそこに居ても大して役に立ってた訳じゃないし。居ても居なくても問題無かったから放置してたんでしょ? だったら、もうこのまま放って置いてほしいんだけど?」

 

 拒絶する声は変わらない。

 ZEUTHがアークエンジェルを責めていた時にあれだけ激昂した筈なのに。

 何が彼女をそこまで変えたのか。

 

「それとも、思ったより使える道具だって判ったから、優しい言葉をかけてくれるのかな?」

 

 笑顔なのにその声と眼は少しも笑っていない。

 流石に今の発言は聞き捨てならず、アスランが割って入る。

 

「君は、キラやアークエンジェルの人達がそんな理由で接してくるように思えるのか?」

 

「さぁ? 私、キラさん達の事は何も知らないし、知ろうともしなかったから。今更、信じるに足る物があるのかな……」

 

 肩を竦めるフィアラ。

 ここまでの会話で元ZEUTHとZEXISは大分戸惑っていた。

 元ZEUTHのメンバーはフィアラのあまりの変わりように、彼女が平行世界の別人なのではないかと思いたい気分だった。

 ZEXISは、今までの戦闘で聴いたフィアラの歌やPMと戦うS4Uの姿から、こういう人物なのかもしれないという想像は悪い意味で叩き折られていた。

 ただ、一方的に拒絶だけを突きつけるフィアラに誰もが苛立ちを募らせている中で、キラがどうにか話そうと心がける。

 

「フィアラ。僕達は、君とやり直したいだけなんだ。だから、もう一度僕達に仲直りをする機会が欲しいんだ」

 

 それはキラからすれば他意のない言葉だった。

 傷つけた事を謝りたい。仲直りがしたい。

 もう一度、フィアラを会いたがっている人に会わせたい。

 それは、純粋な善意だった。

 しかし、それを素直に受け取るには、フィアラの精神は荒みすぎていた。

 歯を鳴らし、表情がみるみると怒りの表す。

 その顔は、かつてZEUTHに死ねば良かったと叫んだ時と同じで。

 

「うそつき……」

 

「え?」

 

「どうせ……どうせ私を利用したいだけのくせに……っ!」

 

 その声は、先程までの煙に巻くモノとは違い、はっきりと怒りを宿していた。

 

「えぇ! そうですよ!! 私なんてどうせ、この能力以外何の価値もない! さぞ滑稽だったでしょうねっ!! あの研究所で家族を失って、助けてくれた貴方達の役に立とうと能力を使う私の姿は!!」

 

 一度堰を切った怒りは収まらず、その言葉が自分の株を下げると知っていても止めることができない。

 

「あの機体をジ・エーデルに貰ったときも、キラさんやアークエンジェルの人達の仇を討つんだって訓練用のシミュレーターに齧りついてたんですよ! そんな必要まったく無かったのに! おっかしいでしょう!!」

 

 その姿にアナ姫も思わず後ずさる程だった。

 聞くのに堪えかねたシンがフィアラの言葉を止めようとする。

 

「おい! ちょっと落ち着け────」

 

「触るな!」

 

 即座にシンの手を払い除けて、彼を、というより、ZEUTHを指差した。

 

「お前達も! いつもいつも自分が誰かを許してやる立場に立ってると思うな! 私、は────」

 

 そこで、ぐらりとフィアラの体が揺れて、椅子の手摺に捕まって倒れるのを防ぐが、怒りで赤くなっていた顔はすぐに青褪めていき、腕から力を失くして、床に倒れ込んだ。

 

「フィ、アラ……? フィアラッ!?」

 

 逸早くフィアラに触れたアナ姫の声が室内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

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