すれ違いの結末 作:ビールは至高の飲料
旅は道連れ
『無様ねぇ。自分が助けてた相手に取り押さえられるなんて』
女の悪意に満ちた笑い声にフィアラは眉間に皺を寄せた。
破界の王を抱えるインペリウムが世界で暴れ始めた頃。
いつものようにPMの対処をしていると、突然謎の部隊に襲われた。
いつもならすぐに逃げるところなのだが、その部隊はあろうことか町の住民を人質に取り、機体から降りるように脅迫してきた。
どうするか迷っていると、相手は機体の大砲を町中で容赦なく発砲。
住民の何人かが殺され、仕方なしに降りる羽目になった。
頭と思わしき女に脅されて町の住民に押さえ付けられて差し出されていた。
「バケモノから助けた奴らに裏切られてる気分はどう? 歌姫ちゃん。マリリンだったら、そんな恩知らず、すぐに見限って敵ごと皆殺しにしちゃう~!」
演技染みた態度でクスクスと嘲笑う女。
フィアラはそれに反応せずにマリリンと名乗る女を睨む。
「反抗的ね。まだ時間もあるし、これは少しばかり教育が必要かしら?」
そうして手がフィアラに伸ばされる。
そして。
そして────。
「ヤな夢見た……」
S4Uのコックピット内で目が覚めたフィアラは先程見た夢に不機嫌になって眉間に皺を寄せる。
欠伸を1回した後に、警告音がコックピットに鳴る。
「PMの出現。場所は────近い」
機体を起動させながら急いで向かう準備をする。
ここ最近というか、破界事変の少し後に、アロウズと呼ばれる部隊が本格始動してから軍はPMの対処をこっちに丸投げ状態だった。
「その上、戦闘が終わったら偉そうにやってくるし。でも、もう少しで」
フィアラの目的を果たすための準備がもう少しで整いつつある。
それでもまだやることはあるが、PMの世界に行けるまで、そう時間はかからないだろう。
「行こう……S4U」
フィアラはゆっくりとペダルを踏み込んだ。
つい先日次元獣バスターとしてデビューしたエスター・エルハスは初仕事を終え、その途中で一緒に行動することになったコロニーのガンダムのパイロット2人と一緒に行動し、世界を見て回っていた。
「今はアロウズを始めとする、一部の連邦軍を何とかしないと、コロニーだっていつ奴等に言い掛かりに遭うか分かったもんじゃないぜ」
「インペリウムの脅威が去った今……いえ、去ったからこそアロウズの暴走は止まる事を知りません。この流れをどうにかしないと」
デュオとカトルがあーだこーだと話し合っている中で、輸送機の操縦をしているエスターはうーん、と首を捻る。
「でも、そのアロウズをやっつけるにしても、全然戦力が足りないんでしょ? どうするの?」
エスターの質問にデュオが頭を掻く。
「真っ先に手を貸してくれそうなのが黒の騎士団、と言いたいが……」
「特区・日本に本部を置いている黒の騎士団は、ブリタニア・ユニオンとの折衝で大変みたいですからね。今の時点での接触はマズイでしょうね」
特区・日本。エリア11に於いて唯一日本人を名乗ることが許された特例区。
しかし、数年間支配下に置いていたブリタニア人との軋轢や、何らかの理由で特区・日本で暮らせないイレヴンの感情。
それらを回すのにユーフェミアの大分苦労しているようだ。
「そんな中で俺らみたいなのを中に招き入れれば、それこそ特区・日本から黒の騎士団を追い出す口実を与えちまう。尤も、ゼロの事だ。情報は集めているだろうし、何らかの行動は起こすだろうがな」
このまま時はアロウズなどの暴走を許せば、黒の騎士団を抱えた特区・日本も何らかの制裁対象にならないとも限らない。
そうなる前にゼロは動くと確信しているが、此方からは接触出来ない。
そんな話をしていると、エスターが前に見える空間に描き込まれる金の紋様が見た。
「なに、あれ?」
それを見たことのあるガンダムのパイロット2人は、声を出した。
「PM!? あの町に現れてんのか!」
「ぴーえむって……えーと。毒型次元獣のこと?」
「えぇ。あの紋様が見えるということは、彼女が既に到着して対処してるようですが……」
世間では毒型次元獣と言う名称が一般的であり、唯一の専門家である人物が既に到着して対処してる筈だとカトルが説明する。
少し考えた後にエスターは輸送機を紋様の方角へと変える。
「おい!?」
「要は、町がバケモノに襲われてるんだろ! ほっとけないよ!」
「そうですね。僕も同意見です。あちらは良い顔しないかもしれませんが」
「ま、それもそうだな。でもいいのか? 正式な依頼じゃないから、報酬は貰えないかも知れないぜ?」
「あたしはクロウみたいなケチじゃない!」
茶化してくるデュオにエスターはしかめっ面で反論した。
それなりに大きな町でフィアラは自機と同程度の大きさを誇るPMの首を狩り、胴体部をビームマシンガンで蜂の巣にした。
(相変わらず、軍の出動は無し。仕事しないな)
ここ最近、PMの対処をしている間、軍の機体が現れたことはたまにしかやってこない。
(前にやって来た時は一方的に名乗ってきた人がいたっけ。名前は確か……ソーダサワー? そんな名前の……)
まだ避難していない町の住民を確認しながら、そちらに被害が出ないようにするが、フィアラ1人では限界があり、位置が離れた町の人間が襲われ、喰われようとしている。
(ちっ!? 軍の連中、せめて避難誘導くらいっ!)
町の警察が一般市民の避難誘導を行っているが、巨大で見た目的にも嫌悪感を引き出す怪物を目の当たりにして、パニックを起こす警察官も少なくない。
近くで襲われてる市民を助けようとするが────。
(間に合わない……!)
冷静な部分がそう判断していると、1番前で住民に襲いかかろうとしていたPMの体が撃ち抜かれた。
『あ、当たった! 良かった~!』
『危ねぇな! 照準が狂ってたら町の人間に当たってたぜ!』
『ですが、そのお陰で助けられましたね!』
現れたのはガンダム2機と、黄色いブラスタ。
(あれは……)
『次元獣バスター! エスター・エルハス! 助太刀するよ!』
「…………」
宣言するエスターに、フィアラは応えず、戦闘を続けている。
『ちょっと! 無視しないでよ!!』
『いや、歌ってて返せねぇんじゃねぇか?』
『え? そうなの?』
地上は
空中は
「うわっ!? やっぱり、次元獣より気持ち悪い!!」
次元獣と同じようにシミュレーターで戦闘したことはあったが、見た目の異質さに若干身が強張る。
小型のPMが段幕を抜けて襲いかかろうとした時、上から撃ち抜かれて倒される。
「アイツ……」
自分を、助けてくれたのだろうか?
その考えを見透かすようにブラスタEsの前に一瞬止まりるとすぐにブラスタEsの周りにいる敵を蹴散らしていく。
その姿に動きが止まっていると、地上で戦っているデュオから叱咤された。
『おい! 戦えないなら下がれ! 邪魔だ!』
デュオからの言葉にエスターはハッとなった。
そうだ。自分は守られる為でも足を引っ張る為にここにいる訳じゃないだから。
「足りない物は、気合いでカバーだ!」
勇ましくエスターはペダルを踏み込んだ。
現れたPMは4機によって、速やかに始末され、町への被害も最小で済んだ。
歌が終わり、紋様も消えると、やって来る軍のMS。
『こちら、治安維持独立部隊アロウズ! テロリスト共め! 今すぐ武装解除し、投降せよ!』
『あいつら! 今更出て来て何言ってやがる!』
PMとの戦闘には参加せずに終わってからノコノコとやってきたアロウズにデュオは苛立ち混じりに吐き捨てた。
「……最近は、大体あんな感じだよ。戦闘はしないくせにこっちに従えって。アレで給料貰えるとか羨ましい限りだよね」
皮肉げに嗤いコックピット内で引き金をトントンと指で叩くフィアラ。
(……撃ってしまおうか?)
いい加減仕事をしないくせに上から目線の軍には堪忍袋の緒が切れそうだった。
ここで憂さ晴らしに叩くのは簡単だが、それを理由に本当のテロリストにでも仕立てあげられたら嫌なので、舌打ちして堪える。
相手にせずに逃げようとすると、ブラスタEsがS4Uを掴んで引っ張ってきた。
『お前もこっち来い!』
「へ?」
引っ張られて無理矢理同伴させられた。
大急ぎで町から離れ、輸送機を隠して停めてある場所まで移動すると、フィアラが通信を寄越した。
「どういうつもり?」
『え? だって、あのままじゃあ、アロウズに捕まっちゃうだろ?』
「いや、転移で逃げられるのは知ってるだろうに……」
『そうなの?』
本当に知らなかったのだろう。キョトンとした表情をするエスターに、ガンダムのパイロット2人の笑いを噛み殺す声が聞こえる。
フィアラも気勢が削がれて息を吐いた。
「まぁ、いいか。助かったよ。あの規模の町を私1人でどうにかするのはキツかったし……って何その
目が点になるような表情のデュオとカトルにフィアラが眉をつり上げた。
『いやぁ。お前さん、
デュオの言葉にフィアラは不機嫌そうに首を動かすが、唯一ZEXISと対話したのがアレだったので、そう思われても仕方がないと思い返す。
「別に……貴方たちの事は好きでも嫌いでもないからね。最低限のお礼くらい言うよ。たまには……」
最近は再会したラクスやディアナなどと食事をすることもあるが、基本独りなのだ。
コミュニケーションが圧倒的に足りてない。
自分の対人関係の狭さを今更ながらに実感し、フィアラは遠い目をしていると、エスターが斜め上の発言をしてくる。
『それより、早く輸送機に乗りなよ。発進できないじゃん』
「はい?」
『一緒に戦ったのも何かの縁だし。もう少し話もしたいしさ』
清々しいまでに悪意の無い陽気な声で、エスターが言う。
付き合ってらんないと去ろうとすると目的地を話始めた。
『あたしら、これから仕事でランカ・リーのコンサートをやる町に行くんだ。良かったら、一緒に行かない?』
まるで友人を買い物に誘うような気安い提案に、転移しようとする指の動きが止まる。
その場所は奇しくもこれから向かう筈の目的地だったからだ。
それだけなら無視するのだが、カトルも続く。
『いいですね。簡単な食事も用意するので、どうでしょう?』
携帯食料も切らしており、買いに行くのめんどうだな、と思っていた。
ついでに言うと、その町にはまだ転移用のマーキングが近くにも設置していない。
『なぁ、いいだろ? あ、コイツらが何か変なことをしてくるんじゃないか心配してるんなら、安心して。そんな事したら空から突き落とすから!』
『物騒だな、おい!』
そんなエスターの誘いが何となくカガリを思い起こす。
少し考えてから、幾つかの条件を出して搭乗することにした。
(こうなったのも、待ち合わせ場所を指定したラクスさんが悪い……)
そんな八つ当たりを内心で愚痴った。
1:再世篇で没になった展開。
ウイング0で暴走したカトルにフィアラがトロワの代わりに殺されかけて記憶喪失。
2:OZに所属するシンとカミーユの乗るOZの機体を達磨にする。