すれ違いの結末 作:ビールは至高の飲料
黒の騎士団総帥であるゼロは斑鳩の艦長席でインサラウムというこの世界の新たな敵が設置したレンズの建造物が何なのか思案していた。
ユーフェミアと共に特区・日本を盛り立てていく一方で母艦の斑鳩やKMFの空中戦装備の開発を進めてきた。
これらを可能にしたのは特区・日本を発案したとはいえ、ブリタニア側が日本人からの信用が殆ど無いこと。
破界事変で、世界中の敵だったインペリウムと破界の王が討ち倒されたとはいえ、世界が未だ混迷の渦にあったことを理由に黒の騎士団の存在を捩じ込んだ。
もしもこれを拒否するならインペリウムを倒したのが誰なのかを世間に公表すると脅した上で。
しかしロボットマフィアや外宇宙からの敵。Dr.ヘル等の活動が活発化し、アロウズの暴挙が目立ってきた事により、黒の騎士団をZEXISとして活動させる名目が立った。
特区・日本は扇等に任せて斑鳩の運用に必要なスタッフとカレンと藤堂にその部下である四聖剣を連れて日本を出た。
後にマクロス・クォーターと合流し、世界の陰で戦っていたソレスタル・ビーイング等ともアロウズの虐殺現場で遭遇したこともあり、再び手を取り合う形となった。
(出来れば、スザクも此方に来てくれれば心強かったのが……)
ユーフェミアの専任騎士であるスザクは今回の集結に同行していない。
だが考えてみれば、エリア11にもあらゆる脅威が振り掛ける可能性が在るため、彼の妹や仲間達の安全の為にも残ってくれた方が安心かもしれないと思い直す。
(これでZEXISの治安維持という名目でブリタニアの戦力を削ぎつつ皇帝シャルルに近づく機会も出来るだろう。そして母さんの死の真相を────)
そこまで思案したところで目の前の問題に意識を戻した。
すると、突然ZEXISとインサラウムの中間地点の斜め横の位置に見知った機体が出現する。金のラインが入った乳白色の機体。
「S4U! フィアラ・フィレスかっ!?」
PM以外の対処には現れなかった彼女が何故この場に現れたのか。
この場にPMが現れるのかと思ったが、基本的にフィアラの対処は後手だ。
ゼロだけでなく、ZEXISの誰もが首を傾げた。
ステルス機能を解除して映された映像を見る。
巨大なレンズの建造物。
(あれ、放って置いたら取り返しのつかない事になる類いの物だ)
そして、展開されている次元を渡って現れた侵略者の軍。
正確にはそれに与している部隊を見た。
「なんでアイツらが……」
うんざりした様子で息を吐く。
付けられた傷痕から痛みが甦ったような気がした。
そこでZEXISから通信が入る。
『フィアラ君。何故君がここに?』
ジェフリー・ワイルダーの質問にフィアラは建造物から視線を外さずに答えた。
「……別に。アレは、私にとっても都合の悪そうな物だから調べにね。セツコ・オハラさんだっけ? "悲しみの乙女"のスフィアを覚醒させている貴女なら、アレの危険性を感じ取れるのでは?」
破界事変の時には居なかった元ZEUTHのメンバーであるセツコに問いかける。
『セツコさん?』
『……フィアラちゃんの言う通りよ。上手く言葉に出来ないけれど、アレを放置していたら、きっと取り返しのつかない事になる』
スフィアを通して感じる危機感に鋭い視線を向ける。
同じくスフィアを持つクロウは首をかしげた。
『俺は、特に何も感じないんだが』
あの建造物がヤバいとは思うが、それはスフィアとは関係なく、彼の経験則から来る物だ。
「"揺れる天秤"はまだ因子が足りない。セカンドステージに入っている彼女と、ようやくスフィアの力を引き出し始めた貴方じゃあ、感覚の鋭敏さが違う」
セカンドステージとサラッと新たな情報を出すフィアラにクロウがどういう事か訊こうとするが、その前に割って入る者が現れた。
『久しぶりね、白猫ちゃん。元気そうで何よりだわ』
『マリリン!』
フィアラよりも先にクロウが反応するが、マリリンはそれを一蹴する。
『フラフラちゃんは黙ってなさい。私はあの白猫ちゃんに用があるの』
無視してやろうかとも思ったが、乗ってやる事にする。
ZEUTH以上に会いたくない連中には違いないが、下手に無視して無茶苦茶な行動を取られても、だ。
「元気そうで、なんて言うような関係でもないのに気安く話しかけないでくれるかな?」
あしらうように返すフィアラにマリリンがクスクスと笑う。
相変わらず悪意しか感じない笑顔だなと心の中で苛立ちを募らせる。
『あら冷たい。でもこっちには白猫ちゃんに返さなきゃならない借りがたくさんあるのよ。何と言っても、貴女、うちの隊員を3人も殺されたんだから。しっかりとそのお礼をしないとねぇ』
ねっとりとしたマリリンの言葉にZEXISのメンバーは目を白黒させた。
「どうぞお気になさらずに。鬱陶しい、汚らわしい、気色悪いの三拍子揃った害虫駆除に、お礼を貰うなんてとてもとても」
『遠慮しなくて良いのよ? 前みたいに可愛らしい悲鳴を上げさせてあげる』
「出来ると思う? 業腹だけど、ここに居るのは私だけじゃない上に。人質も居ないこの状況で? 見た目どおりの年齢じゃないとは思ってたけど、痴呆でも始まる年齢だった?」
嫌味ったらしい口調で言うフィアラにマリリンの笑みに青筋が立つ。
『……面白い事を言うわね。まぁ、女を棄ててる上に年中独り寂しく活動してるボッチ気取りの構ってちゃんには身嗜みを整える習慣も無いのでしょうね。あーかわいそ』
映像通信を送っていないので誰にも見られてないが、フィアラは目を細める。
「少なくとも、そんな連中を侍らせるくらいなら独りの方が幾分かマシだと自負してるけど? というか、姫とか言われて恥ずかしくないの? 年齢考えたら?」
『……忘れてたわ。思えば貴女、猫なんて可愛らしい生き物じゃなかったわね。貴女の歌を醜い豚としてぶーぶー鳴かせてあげる』
「それはそれは。あはははは」
「うふふふふ」
『落ち着いてよフィアラ!』
『マリリン殿、勝手な行動は……』
嫌な予感がしてエスターとインサラウムのトップであるユーサーが止めに入った。
しかし────。
『あーはっはっはっ!! ────お前はここで死ねよっ!!』
『……………………』
フィアラとマリリンが同時に宣言し、ZEXISもインサラウムもそっちのけで戦闘を開始する。
インサラウムの部隊を無視してフィアラはファイアバグを相手にしていた。
改良を加えているとはいえ、高速戦闘を得意とするS4Uを突然現れた建造物のお陰でほぼ更地に近い地形になったこともあり、速度で引っ掻き回して1機ずつ仕止めているのだが。
(直前で
今回は相手を殺そうとコックピットを狙っている筈なのに、何だかんだで経験による勘か、ギリギリで外されて脱出する。
その生き汚なさに舌打ちする。
既にこの戦場はZEXIS対インサラウムで始まっている。
当然ファイアバグの部隊にも突っ込んでくる者もいる。
『マリリン!』
『あームカつく! 今はフラフラちゃんの相手をする気分じゃないのよ!』
『知るか! 戦場で会った以上、お前らは俺が潰す!』
クロウの乗るブラスタとマリリンのアクシオのブレードが激突する。
抑えている間に背後に回ったフィアラが後ろから斬ろうと迫る。
「終わりだ猫婆!」
『誰が猫婆よ!』
マリリンの後ろに迫るビームの刃。
それが貫く瞬間。
『姫ぇええええぇえっ!!』
ファイアバグの隊員がS4Uにタックルをしてきた。
「つっ、この!?」
バランスを崩す前に空へと上昇し、追撃を回避する。
別の機体がブラスタを牽制する
『ご無事ですか、姫!』
『あんもう! 機体の性能違い過ぎ! ズルい!』
ファイアバグは連係でマリリンを守り、クロウから舌打ちが聞こえた。
ZEXISの方もインサラウムと戦闘を行っているが、破界の王ガイオウに敗れた残存の軍とは思えない士気と練度で向かってくる。
また、人造次元獣の存在やユーサーも戦場に出た事で更に士気を高めるが、しばらくしてインサラウム側の主だった面子やファイアバグも撤退。
残された人造次元獣と兵士達を倒して戦闘を終了させた。
沈黙している建造物。インサラウムがZONEと呼んでいたそれの調査を始めようとするが、突然ZONEが起動し、周りを全て砂に変えていく。
それに危機感を覚えた指揮官達は即座にZONEの破壊を命じるも、位相のズレている為にダメージが通らない。
この場を一時的にでもやり過ごす方法は────。
『セツコさん!』
『このZONEが周囲の次元力を吸い上げるのなら、私のスフィアからエネルギーを与え続ける事で被害を抑えられます!』
破壊が不可能な以上、ZEXISが取れる手段はそれだけだった。
『待てセツコちゃん! スフィアなら俺にもある! ここは俺が────』
『ありがとう、でも……』
今のクロウではまだ無理なのだ。
ZONEへと近づくバルゴラ・グローリー。
しかしそれを遮る機体があった。
『フィアラ、ちゃん……?』
「邪魔。何で私がここに居ると思ってる」
S4Uのライフルを構える。
「次元力の全てを支配する為に、我らの祖はあらゆる世界に自分の分身を送り込んだ。大半は死亡したけど、その血はまだここに残っている────紛い物なのは同じだけど、どちらが完成品として上か教えてやる」
フィアラはいつもと同じ言葉を言う。
「私の歌は、世界を侵す!」
それは、あの輸送機でエスター達に聴かせた歌。
S4Uから出た紋様はいつもと違って地形に広がらず、ライフルの銃口に翼のような画が空間に描かれる。
銃口からビームが放たれる。
ZEXISの攻撃を一切受け付けなかったZONEのレンズに攻撃を通す。
歌と共に引き金を引き、ZONEが完全に沈黙するまで攻撃を続けた。
ZONEが停止した事を確認して、フィアラは歌を止めて息を吐いた。
ZONE初戦ではファイアバグ戦闘には出てこなかったけど都合上出しました。