すれ違いの結末 作:ビールは至高の飲料
フィアラ・フィレスが室内を出ていった後に呆れた様子で息を吐いたのは飛鷹葵だった。
「相も変わらずね。癇癪を起こされないだけマシなのかしら?」
「あの人、以前からあんな感じなんですか?」
正太郎の質問に答えたのは頭を掻いたデュオだった。
「前に会った時はもうちょっと友好的だったんだがなぁ」
以前少しの間一緒に行動した時は刺のある言動はあったが、態度は大分軟化していた。
余程ZEUTHと一緒に居るのが嫌なのか。
「彼女は以前言ってました。重要なのは体の傷ではなく、痛みを与えられた事実だと」
沈痛な面持ちで発言するカトルに甲児が思い出すように口を開く。
「ヘソを曲げてる子に何を言っても無駄か。前に竜馬さんが言ってた通りだな」
今ここには居ない、ゲッターチームのリーダーである流竜馬が以前言ったように、説得も謝罪も届かない。
ただ受け流されるだけ。
気落ちしているシンの肩にカミーユが気遣う様子で手を置く。
「大丈夫か、シン?」
「あ、あぁ……。大丈夫だ。ちょっと、思ったのとは違う反応だったからどう返せばいいのか分からなかったけど」
シンとしては前のように怒鳴ってくるような反応は予想していたが、あんな無視するに近い態度は想定してなかった。
小さくても何かしらの変化を期待していただけに今回は肩透かしを食らった気分だ。
アルトが舌打ちする。
「ったく! あいつ、ホントいつまで独りで意地張ってるつもりだよ」
「なんなら、力づくで拘束した方がいいんじゃないか?」
この場でフィアラとの関係の薄い二代目ロックオンが冗談交じりに発言するがそれを否定したのは刹那だった。
「そんな事をしても彼女はこちらに協力しない」
「その通りだ。フィアラ・フィレスは自由な立場だからこそ自発的に自分の力を使っているが、誰かに強要された瞬間にその者を敵と見なして一切手を貸さないだろう。その結果、大勢の犠牲が出たとしても」
刹那の意見に同意するゼロ。
そしてクロウも続く。
「まだ何か色々と知ってそうだが、今回の話で得る物が無かった訳じゃない。無理に問い質して怒らせるより、適度な距離で接するしかないって訳だ」
「……得る物ってスフィアの事か?」
「あぁ。ブラスタのスフィアに関してもちょいと謎が解けたしな。参考にさせてもらうさ」
「”意思”だったか。でもちょっと抽象的過ぎないか?」
デュオの質問にクロウは何とかするさ、と笑って見せる。
(これまでのアイムの野郎の挑発から大体の想像はつくが、俺にそれだけの資格があるか)
真面目に考えていると、エスターがフィアラ以外にこの場を離れた者に気付く。
「セツコさん?」
「待って、フィアラちゃん」
肩を掴んできたセツコの手を払うようにして外させて面倒そうに息を吐く。
「なに? 私も暇じゃないんだけど?」
「……どうしてそこまで。シン君の謝罪が何が気に入らなかった」
まるで教師が生徒に問いかけるような質問。
フィアラはセツコに視線を合わせずに答える。
「別に。ただ自分が嫌な思いをした時はその人の命を奪おうとするくせに、自分は謝罪1つで許されようとするのは腹が立っただけだけど? 流石正義の味方。世界の為に活動してる自分達は特別な訳だ」
眉を寄せて静かだが苛立たしげに話す。
「きっと……キラさん達が
その苛立たしげな表情こそが、彼女が本当に怒りを覚えている手掛かりのように思えた。
しかしすぐに話題を変えてくる。
「私もPMが本拠地にしている世界に行くのに忙しいから。これ以上そっちに構ってらんない」
「それだってここの皆にお願いすれば、力になってくれる筈だわ」
PMの本拠地。きっとそこはとても危険な場所の筈だ。
フィアラ独りで行って無事に帰って来れる保証のない。
「だから教えて。フィアラちゃんが何を願っているのかを。きっと私達は力になれるから」
本気なのだろう。
セツコは真剣にフィアラの望みに対して力になろうとしている。
だけど────。
「あなた達が、私の願いを叶えた事なんて一度もない」
「え……?」
瞬きをするセツコにフィアラは冷たく引き離す。
「キラさんやアークエンジェルが撃墜されたと思った時に私はあの人達を捜して欲しいとお願いしたけど、うやむやにして逃げられた。その上で、PMに対処するために私の力を要求してくる」
仕方のない理由があった。しかしフィアラがそれを納得しているかは別問題。
「それに、私がZEXISをPMのいる世界に連れて行ったとしても、また余裕が失くなれば私の目的を切り捨てるでしょ」
地球のため、世界のため、人類のため、そこに生きる人々の幸福のため。
素晴らしいことである。
だからこそ、ZEXISが優先する事とフィアラの目的は噛み合わない。
「何度でも言うけど、私はあなた達に何も期待しないから。そっちも私に今更都合の良い期待を押し付けないで」
セツコが何かを言う前にフィアラは自分の機体へと足を進めていった。
それから程無くして暗黒大陸を覆っていた次元の断層によって隔離されていたフィールドは解かれる。
封鎖された中は10年という時間のズレをもたらした事で急激に発展したカミナシティ。
開かれた新たな地には様々な勢力が目を付けていた。
フィアラはステルスで隠れたS4Uのコックピット内でチョコを食べながら、カミナシティに現れたアロウズの声明を聴いていた。
「相も変わらずテロリストもビックリな要求と交渉術」
要するに地球の1国家として自分達の傘下に加われ、という一方的な要求をMSの銃をチラつかせながら交渉している。
カミナシティ側の交渉役もどうにか穏便に済ませようと話し合いに持ち込もうとしているが、アロウズ側はこれだけの都市を見てもこの地に住む者達を未開拓の野蛮人としている節がある。
その様子を呆れながら眺めているが、どちらにも加担する気はなく、静観している。
すると2機のウォーカーマシン。少し遅れてこの街の象徴であるグレンラガンが現れた
アロウズとの戦闘の最中に現れるインベーダー。
そして部隊を2つに分けて行動していたZEXISが新たな戦力を加えて到着した。
そして────。
「きた……!」
PMが出現する反応を確認してフィアラは目を細めた。
「この世界に来て約3年……長かったのか短かったのか……」
準備は整っている。
世界中に埋め込んだ自身の力を合わせれば、目的の地に跳ぶ事が出来る。
後は一方通行に繋がっている2つの世界。その出入り口を逆転させるだけだから。
「さぁ……私の家族を取り戻しに行こうか」
既にアロウズは撤退していたが、インベーダーとPMという2種類のバケモノを相手に奮闘していた。
「だーもう! 2つ揃うと余計に気持ち悪い!」
インベーダーを倒しながらエスターがぼやく。
クロウもPMの足留めをしながらエスターに心配交じりに軽口を叩く。
「恐いんなら下がってても良いんだぜ、エスター!」
「冗談! 恐いけど、下がらない! ここで逃げたら、街の人達に被害が出て、自分が許せなくなるからね!」
それだけ啖呵が切れるなら大丈夫かと後輩の成長を喜ぶ。
クロウも戦闘に集中しているとPMと戦う時にいつも聴こえる歌声が響いた。
見ると、頭上には乳白色の機体が姿を現していた。
「よし! ここからPMも畳み掛けろ!」
金の紋様が広がるとゼロの指示により今まで足留めだけに留めていたPMへの反撃が行われる。
S4Uはインベーダーの相手をせずにPMのみに武装を向ける。
今回のPMの出現規模はそう多くはない。
問題は街への被害だ。
小型の敵はKMFやATが駆逐し、大型のタイプはスーパーロボットが撃破する。
インベーダーもPMもその数を減らし、大型PMが最後に残った。
「ギガァ! ドリルゥ! ブレイクゥウウウッ!!」
グレンラガンのドリルが大型のPMを貫き、カミナシティに現れた脅威を殲滅した。
最後の1体が消える瞬間に、S4Uのコックピット内に座るフィアラは上空へと移動して呟いた。
「私の歌は、世界を繋ぐ……」
カミナシティに流れていた歌が変わると、その現象は世界中で起きた。
今までPMが出現する度に現れていた金の紋様。それが世界を覆うように空へと描き込まれていく。
同時にS4Uの周辺にも変化が表れた。
「S4Uを中心に、次元振動を起こされています!」
「何をするつもりだ!? フィアラ・フィレス!!」
ゼロがこの異常事態にフィアラへの呼び掛けを行うが、やはり答えない。
攻撃してでも止めさせるべきか迷っていると、フィアラの機体が少しずつその存在が薄くなるように透明になっていく。
そして、歌を終えると同時に世界中を覆っていた金の紋様は消え去りると同時に次元振動と共にS4Uもこの場から消えていた。
フィアラが何をしたのかは解らないが、これまでの地球のどこかへ去っていったのではなく、自分達の手の届かない場所へ行ったのだとこの場に居る誰もが理解してしまった。
2話くらい主人公不在になります。