すれ違いの結末   作:ビールは至高の飲料

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"正しさ"の代償・前

「あーもう! ムリムリきっついなっ!!」

 

 フィアラはPMの世界から元の世界に戻った後に大きく息を吐いて愚痴を吐き出す。

 以前のように機体を大破させる事は無いが、敵の猛攻に目的のモノを探している余裕が無い。

 

「時間の流れが違うから、こっちに戻ってくる度に時刻を直さなきゃいけないし……てか、ここ何処?」

 

 地図で現在地を確認する。

 

「エリア11……あぁ、特区・日本ってところか……」

 

 昔テロに巻き込まれて顔に傷を負った関係から嫌そうな顔をするフィアラ。

 

「ま、いいや……特区になってからは行った事なかったし」

 

 ブリタニア・ユニオンの支配地域で唯一ナンバーズ呼びが無くなった富士山周辺の土地。

 

「色々と買わなきゃだし、1回くらい見ておくのもありか……」

 

 フィアラは機体から出る準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ZEXISは今、補給やこれまでの激戦の休息を兼ねて特区・日本に訪れていた。

 乗組員が特区・日本の町に出掛けている間に、ゼロはユーフェミアと面会していた。

 

「上手く行っているようだな」

 

「えぇ。ルルーシュには迷惑ばかりかけてるけど……」

 

 特区・日本の運営は当初のルルーシュの予想以上に上手く回っていた。

 勿論問題が無い訳ではない。

 ブリタニアの人間はナンバーズと同じ感覚で日本人に危害を加える事件は起きるし。

 日本人という名を取り戻した日本人がこれまでの報復にブリタニアの人間を傷付ける事もある。

 また、ブリタニア軍と黒の騎士団も、特区・日本に置いては必要にならない限りは互いに不干渉な部分があり、連携が取れているとは言えない。

 また、特区・日本が認められたからこそそれ以外の地域のイレブンに対する風当たりが強くなっている事実も無視できない。

 それらの問題をユーフェミアはZEXISとして活動しているルルーシュに連絡を取って意見を求めていた。

 黒の騎士団のトップとしてでなく、中立的な立場から出来る限り意見を出してくれるルルーシュに随分とユーフェミアは助けられた。

 綱渡りな面はあるが、お陰で特区・日本はどうにか回っている。

 今後の事をある程度話終えると、ルルーシュはゼロの仮面を被る。

 

「もう行ってしまうの?」

 

「あぁ。直にここを見ておきたいし、あまり長々と話をしていると、部屋の外にいるスザクが良い顔をしないからな」

 

 ゼロとユーフェミアが対話をする時にこの部屋には誰も入れない取り決めになっている。

 互いの信頼の証をアピールする意味と、うっかりユーフェミアがルルーシュと呼んでしまうリスクがあるからだ。

 

「せめて、スザクにはその仮面を外して話してみたら?」

 

「機会がくればそうするつもりだ」

 

 いつものやり取りを終えてゼロは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やっぱり日本人の食に対する拘りは半端ない)

 

 定食屋でトンカツ定食を食べながら頬を緩めていた。

 特区・日本が成立してまだ日が浅いにも関わらず、この定食屋で食べているトンカツはもう1つの日本とも遜色の無い物だった。以前は胃に入れば何でも良いと手軽な物ばかり食べていたフィアラだが、ラクスと再会してからは時間に余裕がある場合は店で食べるようになった。

 

(キャベツもシャキシャキしてて美味しい……何日ぶりのまともな食事だっけ?)

 

 キャベツを味噌汁で胃に流し、最後の1切を食べ終えた。

 代金を払って店を出ると、端末にバイブ振動をする。

 嫌な予感がしてポケットから取り出すと、空には赤い血で描かれたような魔法陣が出現する。

 

「特区・日本ももう終わりかー……」

 

 他人事のように呟くフィアラ。

 もしかしたら毒の範囲が一部で済むかもしれないが、ここは行政に近いし、PMの被害地域となれば人の流出は避けられないだろう。

 前のようにフィアラが介入すれば良いだけの話だが。

 

(他は無視して、ここだけ助けるのは虫が良すぎるからね)

 

 そんな自己弁護をして愛機の所へ戻ろうとすると、誰かに腕を掴まれた。

 振り向くと、そこには黒髪の、かなり整った顔立ちの男が立っていた。

 

(いや、誰?)

 

 力ずくで掴んでいる手を放させようとすると、男が口を開いた。

 

「君は、特区・日本(ここ)を見捨てるつもりか?」

 

「はぁ?」

 

 突然の問いかけに不快感を顔に出すフィアラ。

 相手は睨み付けて話を続ける。

 

「……俺は、ZEXISだ」

 

 相手の言葉にあぁ、と納得する。

 それならフィアラの事も知っていて不思議でない。

 ZEXISもここに来ているのか、とも思った。

 

「それなら御自分達でどうにかすれば宜しいのでは? それが仕事でしょう?」

 

 掴んでいる手を外させて逃げようとするが、男はしつこく迫ってくる。

 

「分かっているのか! このままでは、大勢の犠牲を出すことになるんだぞ!」

 

「それこそ私に何か関係が? 奇跡やご都合展開はZEXIS(貴方達)の得意技でしょう? 特にあのゼロとかいう人はそれを売りにしてるんだから。そちらを頼ってみれば?」

 

 小馬鹿にするような挑発的な口調のフィアラに男は更に眉間を寄せた。

 しかしそれはすぐに侮蔑のような無表情に変わる。

 空からは常人が受け付けない見た目の怪物が地上に現れている。

 

「……そうか。残念だよ。こんなことで使いたくはなかったが」

 

 左目に手で覆う。

 

「フィアラ・フィレス。今すぐに────」

 

 何かを言おうとした男に向けてフィアラは赤い筒をポイッと投げた。

 それは護身用の発煙筒で、すぐに煙が噴出される。

 相手が驚いている隙に逃げ出す。

 

「待て!?」

 

「待てと言われて待つ馬鹿はいない」

 

 ここに愛機を呼び寄せるか迷ったが、ここでは狭すぎる。

 機体を呼べば、周囲で逃げている誰かが死にかねない。

 あの瞬間、嫌な予感がして咄嗟に発煙筒を投げたが、最後に何かしようとしていたのは間違いない。

 走りながらフィアラが持つ情報と照らし合わせようとする。

 

(異星人の超能力? それとも────)

 

 この世界にやって来た時に世話になったエルガン・ローディック。彼から教えられた情報の中にギアスと呼ばれる力もあった。

 そして破界の王からゼロがそのギアスを持っている事も、破界事変後に聞き及んでいる。

 

(それに、何か口調というか、雰囲気が一瞬ゼロに被ったんだよね)

 

 何にせよここから早く逃げた方が良いだろう。

 とにかくある程度の広さがあり、人の居ない場所へと移動していると、この状況で逃げもせずに、道を遮るように突っ立っている男性が3名。

 邪魔だな、と思いつつ間を通ろうとするが、フィアラに気付いた3人は頑なにその場所を通そうとしなかった。

 

「邪魔だって! 貴方達も早く避難を!?」

 

 そう叫ぶが、相手はこの状況で反応すらしない。

 

(様子がおかしい?)

 

 化物が町に現れたのに、動揺した様子もなく、そこで通せんぼしている。明らかに変だった。

 フィアラは足向きを変える。

 

「ギアスは、人の精神に干渉する能力とは聞いたけど……」

 

 どちらにせよ早々にここから立ち去った方が良さそうだ。

 人の波から外れつつ広い場所を探す。

 

「くそ、ここにも……!?」

 

 道を塞いでいる誰かにまた遭遇し、道を変える。

 誘導されているのは気付いていたが、悩むより動いていた。

 そうして走っていると立ち止まった一瞬に横合いから誰かがフィアラの腕を掴んできた。

 考えるより先に銃を抜いて掴んできた相手に向けた。

 

「あ……」

 

 しかし、その動きは相手を確認して止まった。

 

「ラクスさん……!?」

 

 目の前にいたのは無表情で自分の腕を掴んでいる。

 注意をそちらに向けられると、後ろから誰かがフィアラの頭を掴み、地面に押し倒した。

 

「くっ!?」

 

 頭から手が外れると倒された状態でフィアラの腕を後ろに回されて体を押さえつけられる。

 振り向くと、そこには以前ZEUTHで見かけた事のある赤い髪を左右に結った少女だった。

 他にも人が近づく気配がし、視界を動かすと、ZEXISもしくはZEUTHで見た事のある者達だった。

 最後に先程の黒髪の男が左目を閉じた状態で現れる。

 

「予想以上に分かりやすいルートを通ったな。お陰で人の配置が楽だったよ。そしてラクス・クラインには手荒なことが出来ない事も」

 

「お前……ラクスさん達に何をした……!」

 

 睨み付けて問いかけるフィアラに相手は独り言を呟く。

 

「特区・日本を、あんなバケモノどもの犠牲にさせる訳にはいかない。だから────」

 

「私の質問に答えろっ!!」

 

 フィアラの睨みなど意に介さない様子で男は此方に視線を合わせる。

 

「私の────むぐっ!?」

 

 "歌"でこの場にいる全員の意識を眠らせようとしたが、その前にラクスの手がフィアラの口を塞いだ。

 

 男の左目が開く。

 

「フィアラ・フィレス。この特区・日本をPMから全力で守護しろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 枢木スザクは今の状況に歯噛みしていた。

 新しい機体であるランスロット・アルビオンを操り、突如現れたバケモノを屠っている。

 少し前に任務でこの地に派遣されたブリタニア・ユニオン最強の騎士であるラウンズが2人。

 そして休息に訪れていたZEXISも敵の討伐に協力してくれている。

 倒すだけなら問題はない。

 しかし、PMが撒き散らす毒だけはこの場にいる誰もがどうにも出来ない事だった。

 

(どうしようもないのか?)

 

 まだ形だけではあるが、少しずつ望む形になってきた特区・日本。

 それをこの程度の理不尽で台無しになってしまうのか? 

 思わず握っている操縦桿や踏んでいるペダルに力が籠

 入るが、そうして倒せば倒す程に毒が早く広がるというから質が悪い。

 何か方法は、と考えるが良い案などは浮かばず、こういう時に悪知恵の働く親友の姿が思い浮かんだ。

 

「それでも、僕はっ!!」

 

 襲いかかってきた敵を斬り捨てる。

 そこで通信が送られてきた。

 

『おい! 上を見ろ!?』

 

 言われるままに上を向くと、そこにはスザクが知る機体とは細部が異なるが、見覚えのある乳白色の機体が佇んでいた。

 

「あれは……」

 

 スザクが驚いていると、乳白色の機体から金色の紋様が描かれるように町に広がり、そして。

 

 少女の歌が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も戦闘前会話を用意してますが、前回に増して多い!
1日1人のペースで進行中。
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