すれ違いの結末   作:ビールは至高の飲料

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前半の一部を少し変更。
ガイオウからゼロがギアスを持っていると聞いた事にしました。


"正しさ"の代償・後

「遅れて申し訳ありません!」

 

 特区・日本への休息の最中に現れたPM。

 黒の騎士団に送られて帰艦したラクスは私服のまま自分の席に座る。

 何故か黒の騎士団に拾われる前後の記憶が抜けていることは気になるが。

 

「いえいえ。それじゃあエターナルも発進するぞ!」

 

 戻ってきたラクスにおどけながらバルドフェルドが号令をかける。

 ラクスは戦闘の中心で戦う乳白色の機体に目を向けた。

 

「フィアラ……?」

 

 聴こえてくる歌の違和感。

 アレがフィアラの"歌"だとは思えなくて。

 ラクスは自身の不安を一時的に心の隅に置き、目の前の事への対処に専念した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蜃気楼のコックピットに機体を操作しながら周りに指示を出し、ゼロも戦線に参加していた。

 

「大人しくPMへの対処をしていれば良いものを」

 

 今回、フィアラにギアスを使ったのはゼロとしても不本意だった。

 1人に1回しか使えないギアス。

 フィアラ・フィレスに使うにしても、もっと有効的に使うべきだった。

 背に腹は変えられないとはいえ、勿体ない事をしたと毒づく。

 フィアラが逃げたあの後に、避難しようとしていた日本人を数人ギアスをかけて誘導しつつ、偶然観光していたラクス・クラインと一緒に居た数名の女達を発見し、安全にギアスをかけるために利用した。

 彼女なら無関係な赤の他人なら殺害してでも逃げかねないと判断して。

 

「さて問題は……」

 

 この戦闘の後に起こるであろう幾つかのパターンを予測し、ゼロは顔をしかめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィアラの歌が特区・日本に響く。

 その歌に苛立ちの感情を持っていた男が1人居た。

 

「なんだよあの歌は……!」

 

「バサラ?」

 

 バサラの機体が急転回して歌っているS4Uのところまで移動する。

 戦うために歌を利用する点はともかく、その声には確かな感情()が込められていた。

 例えフィアラが何かの目的の為に歌を利用していたとしても、込められた気持ちも間違いなく本物だった。

 なのに今はどうだろう。

 まるで何も無い。

 音程に合わせて声を出しているだけの、それだけの歌だった。

 以前聴いた歌とは似ても似つかない。

 

「お前の歌はそんなんじゃねぇだろ! 忘れたってんなら、俺が思い出させてやるぜっ!」

 

 バサラが感情をぶつけるように激しく歌う。

 その間に、大型のPMの口から高エネルギー反応が観測され、ビルに向かって光線が撃ち出される。

 S4Uは肩から下がエネルギーのコートで守られた状態で受け止め終えると、前面だけを解いて大型のPMを斬り捨てた。

 町を守るように動くフィアラにそれを見ていた何人かの兵士が感心したような視線を向ける。

 つい先日、次元獣から人間の姿を取り戻したエスターが通信を送った。

 

「エライ! でも無茶しすぎだよ!」

 

 敵の攻撃を真っ正面から受け止めた事にヒヤヒヤして注意するエスター。

 歌いながら戦うフィアラは答える事は無かったが、エスターは彼女を援護しようと決める。

 

 特区・日本に置かれた戦力であるブリタニア軍と黒の騎士団。

 そしてZEXISの戦力は速やかにPMを排除していった。

 

 そして────。

 

 刀身を長く伸ばした剣で最後のPMを両断するフィアラ。

 S4Uが着地した後の僅かな時間と共に消えていく敵。

 それが完全に消え去ると同時にフィアラの歌も終わった。

 

『────』

 

 同時に繋がっていた通信から重たい吐息が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼロにかけられたギアスから解放されたのはPMが完全に特区・日本から消え去った後だった。

 映し出される周囲の映像からつい今しがた何をしていたのかは覚えて無くても、自分が何をしていたのかは大体察しが付いた。

 

「あ……」

 

 記憶を掘り返して覚えているのはラクス達に取り押さえられた所。

 そこから意識がプツリと途切れている。

 操縦桿から手を離して体を小さくして抱き締めた。

 

『フィアラ。助けに来てくれたんだね』

 

「ハァ……ハ……ッ!!」

 

 良い様に使われたことに不快感と嫌悪感で息が苦しい。

 体を曲げると膝に温かい水滴が落ちた。

 

『ありがとう、君のおかげで特区・日本を守る事ができたよ!』

 

 この世界に来て、何度も身体を傷つけられた。

 しかし肉体への痛みは無くとも、心に爪を立てられた事への不快感と嫌悪感に依る苦痛は、その比ではなかった。

 

『良かったー。アレから連絡も取れないから心配してたんだよ』

 

 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい! 

 

 感謝の言葉も心配してくれる声も全て不快なノイズに聴こえた。

 

「カッ……ハ……ハァ……ッ!?」

 

『おい! どうしたんだよ! どっか具合が悪いのか?』

 

 踏みにじられた。

 精神を。

 感情を。

 尊厳を。

 自由を。

 意志を犯された。

 今はガイオウと名乗る次元将の言葉が甦る。

 

『あのゼロって奴には気を付けろ。アイツがどんなギアスを持ってるかは知らねぇが、術に嵌まったら、ロクな目に遭わないのは間違いねぇからな』

 

 ゼロとギアス。

 その単語からモニターをぐるりと見渡した。

 視界に入る小型の黒い人型。

 その近くを飛んでいるピンクの戦艦にも。

 エターナルを見てフィアラは奥歯を噛んだ。

 

『フィアラ?』

 

 ふざけるなふざけるなふざけんな! 

 フィアラ・フィレスを利用するためにラクスやその他の人を操る。

 きっと、大人しくフィアラをこの戦場に介入させるなら効率的なのかもしれない。

 それで特区・日本の土地や人が守られたなら、結果的にそれは正しいことなのだろう。

 大勢の人が守られたのだから。

 それを理解した上で激しい怒りが抑えられなかった。

 

 ────何様のつもりだ、お前はっ!? 

 

 自分の中で何かがキレた感触がして、フィアラは操縦桿を握り直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後のPMを倒してから地上で停止していたS4Uが再び動き出した。

 握っていた剣を空中に向けると、刀身がゼロの機体である蜃気楼まで急速に伸びる。

 絶対守護領域によるバリアでガードするゼロ。

 

「なにするのよ!?」

 

 カレンが慌てて刀身を破壊しようと動くが、その前に元の長さへと縮んだ。

 

「────殺してやるっ!!」

 

 この場にその言葉の意味を呑み込めたのは何人いただろう。

 

「ぶっ殺してやる……っ!!」

 

 心の底から吐き出された憎悪と共にフィアラはゼロの居る位置へと急加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然乱心し出したフィアラにZEXISは困惑していた。

 今まで、多元戦争の終盤や破界事変での戦闘の理由は納得は出来ずとも多少理解しているつもりだ。

 しかし今は何故フィアラがここまで激怒し、ゼロに襲いかかるのかまったく理解できないのだから。

 それでも、司令官の1人であるゼロを殺らせる訳にはいかず、止めに入る。

 

「ちぃ! 邪魔をするなっ!」

 

『お前、何やってるのか分かってるのか!?』

 

「うるさい! 私の心を踏みにじったあのクズは、今日ここで殺してやる!」

 

『はぁ?』

 

 ゼロに対して激怒しているフィアラを止めようと動くZEXIS。

 その事を問う前にゼロが通信を行き渡らせた。

 

『フィアラ・フィレスを止めろ! 彼女は錯乱している!』

 

『身に覚えは無いんだろうな!』

 

『ない! しかしこのままでは特区・日本に被害が出る。誤解を解く為にもフィアラ・フィレスを拘束するべきだ!』

 

 力強く断言するゼロ。

 流石に疑わしく思ったが、ゼロの口を割らせるよりも先にフィアラを止める方が先決だった。

 何人かが止まるようにフィアラを説得するが聞く耳持たずで突撃してくる。

 しかし如何に新型に乗り換えたと言っても相手は地球圏で最高戦力であるZEXIS。

 上手く切り込めずに一旦後方へと退く。

 

「そう……貴方達はそいつを守るのか。結局は自分達の仲間なら何をしても良いって訳だ……なら、もういい」

 

 吐き捨てるフィアラにZEXISは説明を求める。

 

『フィアラ・フィレスさん、説明を! 何を怒ってるの!!』

 

 しかし本人は取り合わない。

 

「今からZEXIS(お前達)は、私の敵だ……!」

 

 左手にライフルを持ち、右手に実体化させた剣を持って立ち向かってくる。

 

『なっ!? こいつコックピットをっ!?』

 

「当たり前だ! もうどうなっても知るかっ!!」

 

 感情のままに暴れてZEXISに襲いかかるフィアラ。

 地上からの発砲に鬱陶しくなると、刀身を伸ばして斜めにビルを斬り上げると、地上部隊の機体へ向けて蹴り落とす。

 

『無茶苦茶だアイツッ!?』

 

 巻き込まれそうになったデュオが驚きから叫んだ。

 本気で殺すつもりで武器を振るうフィアラ。

 それでも多勢に無勢な状況にジリジリとゼロから距離を離される。

 

「クソッ。なら!」

 

 突然S4Uが大きく後退する。

 

『逃げるのか?』

 

 そんな疑問とも期待とも取れる言葉。

 しかしそれは違っていた。

 

「私の歌は、世界を繋ぐ……」

 

 歌と同時に翳した右の掌からエネルギーの紋様と共にエネルギーの球体が生み出される。

 それは新型のS4Uで初めて出撃した際に次元獣を一掃した攻撃だった。

 

『あの馬鹿、本気かよ! あんなものをここで撃ったら……』

 

 特区・日本は甚大な損害が出るだろう。

 それを察した何人かが飛び出す。

 

『うおぉおおぉおおっ!!』

 

 先ず飛び出したのが新型のランスロットを駆るスザクだった。

 彼はフィアラの攻撃による危険性を察知し、以前ゼロのギアスによって命じられた"生きろ"という制約が働いた。

 しかしこの場にいる主のユーフェミアや特区・日本の存在が彼にギアスの誓約をほんの少しだけ上回らせた。

 生きる為に逃亡するのではなく、フィアラ・フィレスを殺害する事で自分を含めて周りを生存させる為に斬り込んで行ったのだ。

 

『やめろぉおおおおっ!!』

 

 他にも何人かフィアラの愚行を止めようと動く。

 

「っ!?」

 

 掌にエネルギーを集めながらライフルで応戦しつつ敵の攻撃を避ける。

 自分の意志で次元エネルギーを制御しつつ、戦闘を行うのはまだ難しかった。

 ましてや頭に血が上った状態ならなおのこと。

 

(マズイ! 次元力の制御を失敗し(ミスっ)て────)

 

 敵機の攻撃を避けていると、限界以上に水道の水を流し込んだ水風船が破裂するように掌の球体が広がって行く。

 

 眩い光が広がったのは一瞬。

 

 特区日本の1部分が削り取られたかのように消滅しており、S4Uの近くに近接していた幾つかの機体も消えていた。

 

『なんてこと……』

 

 あまりの惨状に誰かがそう呟く。

 その間にも、管制が状況を報告してくる。

 

『S4Uの反応ありません! 同時にランスロット、グレンラガン、ファイヤーバルキリー、デスティニー、ブラスタEs、ガンレオンの反応も消失!』

 

 上がる報告に誰もが信じられず、動くのに時間を有した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




完結っ!!

 
















嘘です。まだ続きます。
戦闘中の会話については次に投稿する予定の戦闘前会話で。
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