すれ違いの結末   作:ビールは至高の飲料

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姉妹の再会

「フルドリライズ!! ぶち抜けぇええええっ!!」

 

 グレンラガンが全身からドリルを発射して周囲のPMを排除する。

 別のところではガンレオンが大型スパナをブン回してPMを蹴散らす。

 

「ダーリン! 次来るよ!!」

 

「チィッ!! 数が多いぜっ!」

 

 ランドはぼやきながらも休みなく大型の敵を倒していく。

 シンのデスティニーが突っ込み、エスターが援護回っている。

 小型のPMはランスロットが蹴散らしていた。

 

「俺の歌を聴けぇっ!!」

 

 バサラもいつも通り、襲いかかってくるPM相手に歌い続ける。

 そんな中でフィアラは────。

 

「……」

 

 向かってくるPMをひたすら斬り捨てていた。

 無言で戦闘しているエスターが通信を入れる。

 

「ちょっと! さっきから戦ってないで、アタシ達を地球に戻してよ!」

 

「……人の邪魔はするくせに、都合良くこっちを頼らないでくれるかな」

 

「フィアラ?」

 

 呆れるように返答するフィアラにメールが首をかしげる。

 

「せっかくゼロだけこっちに送って手打ちにしようと思ったのに邪魔をして。お陰で制御に失敗するし……ハァ……」

 

 溜め息を吐くフィアラにシンが声を荒らげる。

 

「そんな事を言ってる場合か!」

 

「煩いなぁ。玄関の開け閉めじゃないんだから、そんな簡単に世界の移動なんて出来る訳無いでしょ。こっち側に来たら元の世界に戻るのにちょっと時間がかかる、のっ!!」

 

 後ろから突進してきたPMを突き刺して黙らせる。

 

「でもま、私が今帰れようが後で帰れようが関係無いでしょう? 私は1人で勝手に帰る。そっちも勝手に帰れば?」

 

「おいっ!?」

 

 フィアラの心無い発言にランドが反応する。

 

「大丈夫大丈夫。きっと何かいつもみたいによく分からない理不尽な奇跡が起きて結局助かりますって」

 

 面倒臭さと投げやりな態度でそう言うフィアラ。

 本当に自分だけで帰るつもりなのか、少しずつランド達から距離を取る。

 元々ここでの戦闘はフィアラの方が豊富なのだ。逃げる方法なんぞ幾らでもある。

 そこでグレンラガンに乗るヴィラルが舌打ちする。

 

「しかしなんだここは? まるでこの世界自体がこのバケモノで造られているかのようだが……」

 

「正解。ここはPMが自分達の身体で造った1個の惑星と考えて良い。色んな世界から食い物にした魂魄を使って少しずつ大きさや兵の数を増やしてる。だから気を付けなよ。前に言ったように耐性を作った私はともかく、貴方達はここに長居すると、ここの毒素で魂を奪われてここの一部にされるよ」

 

「お前っ!!」

 

 他人事のようにせせら笑いフィアラにシモンが不快感を露にする。

 そんな中でランスロットの様子がおかしかった。

 

「スザク?」

 

「……!?」

 

 スザクの愛機。ランスロット・アルビオンのエナジーが心許ない。

 今すぐエナジーが尽きる訳ではないが、長期戦になれば間違いなく1番早く動かなくなる。

 仲間の足手まといになるかもしれないという焦りが生まれる。

 

「くっ、しまっ!?」

 

 焦りが生んだ一瞬の隙に脚部を掴まれる。

 そのまま地面に叩き付けられた。

 

「ぐあっ!?」

 

「スザクッ!?」

 

 衝撃に呻くスザクにシンが援護に向かう。

 しかしここはあらゆる全てがPMというバケモノに因って構成された世界。

 地面に落ちたランスロットは機体を拘束され、所々に眼球のある複数の触手から攻撃を受ける。

 シンとエスターがランスロットを攻撃する触手を斬るが、1本斬っても3本生えてくる始末。

 スザクはコックピットの中で自分の死を感じていた。

 

(死ぬ────このままじゃ。僕は……俺は……!)

 

 死が迫った時に感じるアレに意識が呑まれる。

 アレに呑まれると気が付けば毎回周囲に破壊が撒き散らされていた。

 自分はまったく覚えていないのに、後から見る映像でまるで鬼神のような戦果だけが残る。

 でも今は駄目だ。

 あんな戦い方をすれば周囲も巻き込んでしまう。

 あの苛烈さとそれを制御する冷静さが必要なのだ。

 これまで世話になった人達の顔が浮かぶ。

 アッシュフォード学園の生徒会やブリタニア・ユニオンで関わった人達。

 それにZEXIS。

 

(ナナリー……ユフィ……ルルーシュッ!!)

 

 最も身近な者達が頭に過ると、溺れ落ちた海水から海面へと抜け出すように意識が鮮明になる。

 

「俺は……生きるっ!!」

 

 極限を超えた精神力。

 それが今、彼にかけられた生きろというギアスを凌駕した。

 両手に握られたMVSと脚部のスラッシュハーケンを駆使してPMの拘束から抜け出す。

 自由になったランスロットはエナジーウイングから放たれる刃でPMを斬り刻んで行く。

 

「無事か! スザク!」

 

「大丈夫。でもこのままじゃ……!」

 

 いずれはエナジーが尽きる事に変わりない。

 永遠に戦闘を続けられる訳ではないのだ。

 フィアラはやはり言葉通りシン達を助ける気は無いのか、少しずつ離れていく。

 そんな中でバサラがフィアラに通信を繋いできた。

 

「おい! ボサッとしてんじゃねぇ! お前も歌えっ!」

 

「はぁ? あぁ。PMの毒をなんとかして欲しいなら他を当たって────」

 

「そんなことはどうでもいいんだよ! コイツらがお前の歌を聴きたがってんだ! だからお前も歌えっ!」

 

「意味がわからない……」

 

 そもそもPMに今更そんな人間らしい思考や感情が残っているとは思えない。

 それでもバサラは歌えとせっついてくる。

 それに根負けしてフィアラは口を開いた。

 

「私の歌は、世界を侵す……」

 

 本当にただPMに歌を届ける為の力の使用。

 フィアラの歌がPMの世界に響き渡る。

 今までは戦うことに必死で必要も無かったから、此方の世界で歌うことは無かった。

 だからこそ今、フィアラの歌に惹かれて()()を呼び寄せる事が出来た。

 その異変に気付いたのはエスターが最初だった。

 

「人?」

 

 ブラスタEsがその人物の姿を映して思わず動きが止まる。

 望遠を調整してハッキリと見ようとした。

 するとその姿を視認して何度も瞬きをする。

 

「フィアラ……?」

 

 見た女性はフィアラ・フィレスとそっくりだった。

 見た目の年齢は二十代前半くらいで銀の髪が地につく程に長い裸の女性。

 もしもフィアラが成長したのなら、きっとあそこに居る女性と似た容姿に成長しただろうと思える。

 エスターが動きを止めた事で、皆がその女性に気付く。

 そしてフィアラが小さく呟いた。

 

「姉、さん……」

 

「えっ!?」

 

 フィアラの呟きにメールが驚きから声を出す。

 

「どういうことだ!」

 

 事情を知らないシモンがフィアラに問い質すが、その声が届いてないようにフィアラは動揺している。

 

「あり得ないあり得ない。なんでぇ……っ!?」

 

「どうした、フィアラ!?」

 

 ランドの呼びかけにも応えずただただあり得ないと繰り返しながら状況を整理する。

 姉に肉体が残っているなどあり得ない。

 姉が脳と脊髄だけにされてガラスケースに収められた姿をフィアラは確かに見ていた。

 だから姉があの姿で居る事はあり得ないのだ。

 考えられるとするなら────。

 

「っ! そうか……姉さんの脳から情報を取得して、肉体を再構成させたのか……!」

 

 忌々しげにフィアラが呟く。

 アレは偽物だ。

 姉の姿をしたPMでしかない。

 アクセルを踏んで姉の姿を真似たPMの下へ加速する。

 

「フィアラッ!?」

 

 いきなり加速したS4UにエスターのブラスタEsが続く。

 機体の中でフィアラは唇を噛んだ。

 

「どいつもこいつも……」

 

 姉の姿をしたPMに向けて手にしている剣を構える。

 

「私達を玩んでぇっ!!」

 

 そのまま刀身を振り下ろした。

 しかしその1撃は見えない力場(フィールド)によって防がれる。

 

「つっ! このぉっ!!」

 

 フィアラは強引に斬り裂こうとするが、S4Uが弾き飛ばされる。

 姿勢制御を行い、体勢を直すとギリッと奥歯を噛む。

 デスティニーで追い付いたシンが制止する。

 

「落ち着けよ! そんな調子じゃあ、本当に墜とされるぞ!!」

 

「うるさいっ! 邪魔だからとっとと失せろよっ!!」

 

「なぁっ!? お前……!」

 

 あまりにもあんまりな態度に怒鳴り返しそうになるが、フィアラの姉の姿をしたPMに変化が生じる。

 背を思いっきり反ると、身体がボコボコと歪に炭酸の泡のように広がり、図体が瞬く間に大きくなっていく。

 普通の人間サイズだったそれは、ドンドン膨らみ、軽く100mは越える巨体に変化する。

 

「姉さん……!」

 

 姉の存在をここまで利用された怒りから沸騰した頭から視界が赤くなったような錯覚を覚える。

 巨体化したその口から歌が紡がれる。

 

『ラララーラ、ラララー』

 

(この感じ……ヤバいっ!?)

 

 口ずさむ音程。

 彼女が歌を口ずさむ度に()()紋様が吐き出されていた。

 以前フィアラが軌道エレベーターに現れた時にやったのと同じ。

 ZONEを暴走させた時と同等の作用をもたらす禁じ手。

 紋様の帯が襲撃してくる。

 

「わっ!?」

 

「しまったっ!?」

 

 避けるのが遅れたブラスタEsのライフルとグレンラガンのウイングの一部分が消滅する。

 そんな中で突っ込んで行く機体が1機。

 

「俺の歌を聴けえぇっ!!」

 

 聴こえてくる歌と競うようにバサラが歌う。

 すると軌道エレベーターの時と同じように赤い紋様は無力化されていった。

 しかし別のPMも此方への攻撃を再開し始めている。

 どういう理屈でバサラが赤い紋様を抑えられるのかは分からないが、このまだと確実に全員が無駄死にする。

 

「姉さんごめん……」

 

 動きを止めていると、上から中型のPMが降ってきたが、ガンレオンが装備したカッターで切り捨てる。

 

「ボケッとしてんじゃねぇ! 死ぬぞ!」

 

「……撤退する」

 

「あん?」

 

「向こうの世界に戻る! 残りたくなかったら、私の近くに来なさい!」

 

 それだけ言うと、周囲が何か言ってくる前に歌う。

 

「私の歌は、世界を繋ぐ……!」

 

 金の紋様がS4Uを中心に広がり、その帯が他の機体に巻き付くように包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面が一変する。

 PM(敵機)だらけの世界から岩肌だらけの場所へと転移した。

 

「ここは?」

 

「どうやら暗黒大陸らしいな。カミナシティから少し離れた場所のようだが……」

 

 シモンの疑問にヴィラルが答える。

 

「全員無事か?」

 

「何とか。あ~流石にダメかと思ったぁ」

 

「こっちも無事だ。スザクは?」

 

「何とかね。でも、ランスロットのエナジーはほぼ使いきっちゃったよ……」

 

 それぞれ無事を確認し合う中、フィアラだけは応答が無かった。

 

「フィアラ! ちょっと返事しなよ!」

 

 通信を切っているのか、此方の呼びかけが通じない。

 心配になりS4Uのコックピットハッチを外部から解放する。

 ハッチが開き、中に覗き混むと蹴りが飛んできた。

 

「おっとっ!?」

 

 1番前に居たランドの胸板を蹴る形になったが、体格の違いからフィアラの蹴りは受け止められ、機体から落ちるのは避けられた。

 

「なにやってんだお前?」

 

「別に。ストレス発散にモニター画面を蹴ってたらハッチが開いただけですが?」

 

 不貞腐れた子供そのものの態度を返すフィアラ。

 コックピットから出ると軽く伸びをして溜め息を吐く。

 そんなフィアラにシンが問い質す。

 

「お前。今回どういうつもりだったんだよ」

 

 いきなりゼロに襲いかかり、PMの世界に跳ばされた。

 幾らなんでも今回の行動はハチャメチャ過ぎる。

 しかしシンの質問に対してフィアラの返答は最悪だった。

 

「うるさい。時獄に堕ちろ」

 

「地獄って……」

 

 フィアラの返答にスザクが戸惑う。

 そこでシモンとヴィラルが会話に入ってきた。

 

「ロシウと連絡が取れた。迎えに来てくれるそうだ。話をするならカミナシティに着いてからにしよう」

 

「貴様はどうするつもりだ?」

 

 ヴィラルからすれば突然襲ってきた警戒すべき相手。

 フィアラは少し考えてから答える。

 

「……先ずはZEXISに行く」

 

「ホントッ!?」

 

 ビックリするメールにフィアラが頷いた。

 

「今度こそ、ゼロを殺すんだよ」

 

 フィアラの宣言に全員が固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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