すれ違いの結末   作:ビールは至高の飲料

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責任の所在

「シモンさん! ご無事で!」

 

「心配かけたな、ロシウ。助かったよ」

 

 陸上戦艦で迎えに来てくれたロシウをシモンは労う。

 暗黒大陸が解放されてしばらくは意見の違いから緊張感のあった2人の関係はこの戦争の中で昔のように戻っていた。

 いや、問題を乗り越えた事でより絆が強くなったのかもしれない。

 

「俺達が消えてどれくらい経っている?」

 

「凡そ5日程です」

 

「5日か……」

 

 向こうの世界と此方の世界では時間の流れが違うとは聞いていたが、思ったよりもズレがなくて助かったと思うべきか。

 

「ZEXISも明日の昼には此方に着くそうです。皆さん、安心なされてましたよ」

 

「そうか……」

 

 ロシウの言葉にシモンは皆に心配かけたことを申し訳なく思う。

 だけど、仲間が無事であることに安心してもいた。

 

「それじゃあロシウ、少しの間だけどよろしく頼む!」

 

「任せてください、シモンさん」

 

 まるでがむしゃらに前だけ見ていた頃のように固い握手をする2人。

 そこでシモンが少し離れた位置にいるフィアラに話しかけた。

 

「それで良いよな! フィアラ!」

 

 訊くと彼女はトコトコと歩いてくる。

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 頭を下げたフィアラにシモンは目を丸くした。

 

「どうしました?」

 

「いや、ちゃんとお礼が言えるんだなってビックリした」

 

 これまで、ずっと喧嘩腰だった為に、ここで礼を言われるとは思わなかった。

 それもフィアラ側からすれば────。

 

「今までお礼を言われるような事をしてたつもりだったんですか?」

 

 この一言に尽きるだけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カミナ・シティまで1時間程の移動。

 フィアラは自分の機体の傍で休んでいた。

 今日は色々とありすぎて、流石に疲れているのだ。

 力を抜いて水を飲んでいるとメールとエスターが近付いてくる。

 

「フィアラ……」

 

「なにか?」

 

 疲労からなのか、それともPMの世界での出来事が原因か、話しかけられるのが煩わしげに返す。

 エスターも苛立った声で話す。

 

「なにか? じゃないだろ! いきなり襲いかかってきて!」

 

「私はゼロを殺そうとしただけで、邪魔してきたのはそっちなんですけどね」

 

 プリプリと怒るエスターにフィアラは息を吐いた。

 

「ねぇ、どうして? どうしてゼロを殺そうだなんて思ったの?」

 

 メールがなるべく刺激しないように質問する。

 過ごした時間は少ないが、フィアラが理由もなくそんな事をするのが信じられなかった。

 

「……撃っていいのは撃たれる覚悟のおる奴だけ。ゼロの口癖が本人に返ってくる時がきた。それだけですよ」

 

 フィアラは空になったボトルを置く。

 自分を操っていいように使ったことを許す気はない。

 それに────。

 

(ゼロが生きている以上、同じ事が何度でも起こる)

 

 顔を合わせる度に操られる危険性が有る者など生かしておく理由がない。

 ゼロのギアスは対象1人に対して1回しか効かないのだが、それをフィアラが知る由もない。

 

「アイツは死んだ方がいい」

 

 吐き捨てるフィアラ。

 そんなフィアラの様子にエスターは苛立った様子で声を荒らげた。

 

「だーかーらー! なんでそんな考えになるんだよ! いきなり特区・日本に現れてPMを倒してくれたと思ったら攻撃してきて!」

 

 エスターからすれば訳の分からない事の連続だった。

 それで煙に巻くような言い回しをされれば怒りたくもなる

 

「……私が、何の利もない特区・日本を態々助けるような善人に見えるの?」

 

 ハッと鼻で笑うフィアラ。

 

「でも実際に────」

 

「ゼロに嵌められただけだよ。貴女達も、ゼロがこれまで起こしてきた奇跡に何の疑問も思わなかった?」

 

 そう言われても、メールもエスターもZEXISに参加したのはこの戦争からで、ゼロの事をよく知らない。

 他の仲間が信頼してるから自分も信じることにした、という感じだ。

 

「ゼロには、他者を操る力がある」

 

「はぁ?」

 

 いきなり超能力物のフィクションのような話に2人が目を丸くする。

 

「ギアスと呼ばれる精神干渉の能力。ゼロが今まで起こしてきた奇跡がそれを用いたモノ。それで操られて特区・日本を助ける事になっただけ。私の意思じゃない」

 

 コックピットから次の水を出しながら説明するフィアラ。

 すると、それまで周囲で見守っていた男性陣が話に入ってくる。

 

「それは、本当かい?」

 

 険しい表情で質問するスザクにフィアラは新しいボトルに入った水を1口飲んでから答えた。

 

「別に信じてくれなくても結構だよ。証拠もないし。でも確信はある。私はゼロに操られてあの戦闘に介入した」

 

 フィアラの言葉に思うところがあるのかスザクは考える素振りを見せる。

 ランドは信じられない様子だ。

 

「精神操作ねぇ……本当にそんな事ができんのか?」

 

「私みたいな存在を知ってて何を今更。まぁ、信じようが信じまいが、私が殺る事は変わりませんが」

 

 ゼロを殺すと言っているフィアラを動向させているのは、今回の件の真実を明白にする為だ。

 勿論フィアラに行動を共にしてほしいという欲はあるが。

 

「だったら。あの時にちゃんと言葉にすれば良かったじゃないか。態々攻撃してくる事なんてなかっただろう」

 

「うっさい黙れ」

 

 シンの言葉に一変して塩対応を見せる。

 沈黙が流れてからシンが声を荒らげた。

 

「ってなんで俺の時だけそんな態度なんだ!!」

 

「嫌いだからだけど? 自分が好かれてるとでも?」

 

 何を今更と言わんばかりに冷めた視線を送るフィアラにシンは苛立ちを募らせる。

 それにフィアラはあーはいはいと答える。

 

「即攻撃したのはZEXISに訴えても無駄だからだよ。だってZEUTHにしろZEXISにしろ、身内を処罰する事なんて無いでしょう。そこら辺はまったく期待してない」

 

 2本目のボトルを飲みながら返答する。

 エスターを指差す。

 

「カトル、だっけ? 前に貴女と一緒に行動してたガンダムのパイロット。あの人がコロニー1個ぶっ壊したって聞いたんだけど?」

 

 世間話をするような気軽さでここに居ない者の罪を問う。

 

「あぁ、勘違いしないで。私は別に彼を責めるつもりは毛頭ない。でも何故ZEXIS(貴方達)は彼の罪を許したのかって話」

 

「何故って……」

 

 フィアラはその件で加害者でも被害者でもない。だが客観的に見て、何の罰も無いのは違うと思う。

 その問いにエスターが反発する。

 

「だってそれはっ!」

 

 カトルの家族やゼロシステムの事。

 それらが重なった結果であり、カトルだけが悪い訳ではない。

 そう説明する前にフィアラが続ける。

 

「だって、じゃない。原因なんてどうでもいい。どんな理由があれ、コロニーと住民の命より優遇される事なのかって話」

 

「それは……」

 

 言われて口を閉ざすエスター。

 

「今回のゼロの件にしても同じだよ。風見とか言う科学者然り。アニューとか言う女の件然り。結局、うやむやに終わるんだから。どうせゼロがZEXISにギアスの事を自分からバラしたとしても、特区・日本を守る為だったんだから仕方ない、で済ませるに決まってる。だったら、自分の報復は自分で殺らないと」

 

「それでゼロを殺しても、今度はお前の命が狙われる側になるんだぞ!」

 

 シンが険しい表情で諭そうとする。

 ギアスの存在がそう簡単に信じられるとは思えないし、ゼロを殺せば黒の騎士団が黙ってないだろう。

 撃っては撃たれ、そしてまた撃たれる。その連鎖に何故気付かないのか。

 しかしシンの言葉にフィアラは視線を冷たくする。

 

「……貴方にあるの? 誰かを撃って、殺してやると憎まれた事が」

 

「それは……」

 

 過去に戦争に巻き込まれ、家族を失い、ZEUTHでステラをフリーダムに討たれた時も、シンは常に相手を憎む側だった。

 ZEUTHやZEXISの一員として憎悪が向けられた事は有っても、シン個人が憎まれた事はない。

 

「だったらそんな仮定を軽々しく口にするな。不愉快だ」

 

 フィアラが吐き捨てる。

 

「そもそも憎しみの連鎖云々なら、私が殺されたところで復讐しようなんて奇特な人間は1人も居ないよ。私が殺されて、それで終わりだ」

 

 周囲とそういう付き合いをしてきた。

 今更、フィアラが殺されたところで復讐を選ぶ者はいない。

 それにシンが異を唱えた。

 

「キラさんやラクス様が……」

 

「あの人達が? ないない! もしそうなら、態々戦場で敵をなるべく殺さないように立ち回ったり、ZEUTHと和解する事なんて無かったよ」

 

 フィアラが殺されたら、きっと悲しんでくれるだろう。

 だけど復讐しようと行動する事は絶対にない。

 もしもフィアラを殺した誰かを殺害したとしても、その理由はフィアラの復讐ではない。

 

「やられたらやり返し。やり返したらやり返される。その繰り返しを嫌って銃を手にしているのなら。私が殺された程度で復讐なんてしない」

 

「程度って……」

 

 フィアラの自己評価の低さに戸惑う。

 

「それよりも明日、ZEXISと合流したら気を付けないと。全員、ゼロの操り人形にされてる可能性がある」

 

 今回の件でゼロの正体が明るみになれば、ZEXISを完全に自分の支配下に置く可能性がある。

 その時は────。

 

「ゼロはそんな事しないさ」

 

 格納庫にやって来たのはつい先程までブリッジでロシウと話していたシモンとヴィラルだ。

 

「ゼロはアイツなりの覚悟を持って戦ってる。もしも誰かを操る力が有ったとしても、それを仲間に使うような奴じゃない。仮に使ったとしても、その責任は必ず取る男だ」

 

「矛盾してるよ。その責任と覚悟から逃れる為にあんな格好をして正体を隠してるんだろうに。第一それなら……」

 

 どうしてラクスにまでギアスを使ったのか。

 そう言おうとしたがやめた。

 

「それに他人事みたいに言うけど、今までゼロの奇跡の不自然さを見て見ぬふりを続けてた貴方達にだって責任があると思うんだけど?」

 

 今までゼロのヒーローごっこにどれだけの人が操られて消費されていったのか。

 別段それに心を痛める訳ではないが、あまりにも身内に甘過ぎると思う。

 

「そうだな。だから今回の件も含めて色々とハッキリさせたい。ゼロのこれまでを。だからそれまで待ってくれないか?」

 

「話にならないね」

 

 フィアラはゼロの理由になんて興味がない。そんなもの、ただの時間稼ぎにしか感じない。

 

「どんな理由があれ、私はゼロを許す気はない。もしやめさせたいなら、弱味で握って脅迫でもしたら? もしくは……」

 

 フィアラは指でピストルの形を作り、こまかみに当てて弾く動作をする。

 

「こうして私を止めるんだね。仲間を守る為に」

 

 挑発するように嗤うフィアラ。

 だがシモンはその挑発には乗らない。

 

「そんな事はさせないさ。それより、お前に訊きたい事がある。あの世界で最後に見た、フィアラに似た女はなんだ?」

 

 フィアラに似た巨大なPM、と言って良いのかは分からない。

 しかしこれまでのPMとは明らかに異質だった。

 

「それこそ、貴方達には関係ない。答える義理は、ないよ……」

 

 一瞬だけ辛そうな表情をしてそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カミナシティに到着すると、シモンの恋人であるニアが出迎えてくれた。

 

「シモン! おかえりなさい」

 

「ニア、ただいま」

 

 端から見れば仲睦まじい恋人同士の再会。

 しかしニアを見てフィアラは1人冷や汗を流してギョッと目を大きく開いた。

 

 

 

 

 

 

 




ZEXIS合流まで書きたい事を全部書こうとしたらもう1話かかりそうなので分けます。
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