すれ違いの結末   作:ビールは至高の飲料

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雑談

 エルガン代表が捕らえられていると思われる宙域に到着するのに丸2日を有する。

 移動中に無駄に物資の消耗を避ける為に少し時間がかかっても出来る限り安全な進路を進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナ姫はマクロスクォーターの医務室で眠っていた。

 原因は疲労による熱である。

 戦艦の中であっちこっち戦闘を繰り広げてきたのだ。

 本人が戦う訳ではないとはいえ、心身共に見えない疲労が蓄積していったのだろう。

 ベッドの上で熱であやふやな意識の中で誰かが額に手を乗せてきた。

 目を開けるとバツの悪そうな表情のフィアラがいた。

 

「起こしちゃった?」

 

「ふぃ……あ、ら……?」

 

「うん。熱出して倒れたって聞いたから、お見舞いにね。手ぶらなのは勘弁して」

 

 ついさっき聞いて、流石に何かを用意する時間をなかった。

 

「ど……して……」

 

「辛いのなら喋らなくていい。エルガン代表の救出に、協力する事になったから」

 

 フィアラ自身、これまでエルガン代表に世話になっている。彼の救出に参加するのは当然だった。

 出来れば、場所だけ教えて貰って自分だけで突入したかったのだが。

 

「おはな、し……」

 

「えぇ。作戦が終わって、アナ姫の体調が良くなったら話をしましょう」

 

 そう言って、フィアラの冷たい手がアナ姫の額を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機体の中でシステムを見ているフィアラにキラが話しかける。

 

「君、いつもここにいるね」

 

「キラさん、と……えっと……」

 

 キラの隣にいる青年。一緒に居るのは見たことあるし、何度か声もかけられた……気がする。

 ZEUTHにしろZEXISにしろ、あまり話さない相手は覚えてないのだ。そもそも自己紹介とかする訳でもないし。

 これまで名乗ってなかったのを思い出したのか、小さく笑って名乗る。

 

「アスラン・ザラだ。君とこうして話すのは初めてだな」

 

 何度か意見を口にした事はあっても、面と向かって話すのは初めてだった。

 アスラン・ザラ。その名前に聞き覚えがあり、数秒思い出す為に記憶を辿る。

 思い出してポンッと手を叩く。

 

「あ。カガリさん、ほっぽってザフトに行った人だ」

 

 嫌味とかではなく、アークエンジェルに居た頃に聞いていたアスラン・ザラという人物について思っていた印象がポロリと口に出たのだ。

 フィアラの言葉にアスランは顔を引きつらせると、キラが苦笑いを浮かべて肩に手を置く。

 

「言われちゃったね、アスラン」

 

「うるさい」

 

 キラの手を振り払い、拗ねたようにそっぽ向いた。

 何か悪い事を言ったのかも知れないと謝罪する。

 

「あ〜。すみません。貴方の名前が出るたびにカガリさんが寂しそうな顔をしていたので。自分の力不足のせいでアスランはザフトに戻ってしまったって」

 

 辛そうに呟いていたのを思い出したと言う。

 それにアスランは眉間のしわを深くしたが、キラが話を変える。

 

「システムチェック?」

 

「いえ。これ見てください」

 

 コクピットの画面を指差すフィアラ。

 

「この機体に乗ってからいくつかのシステムにプロテクトがかかってて。暇な時に解除を試みてるんですけど、中々に……」

 

 ジエー博士が新造したTypeZ。

 未だに乗りこなせない部分はあるが、前のS4U(機体)と同じ感覚で操縦出来るようになりつつある。

 それはそれとして封じられているシステムがある以上、把握しておきたい。

 

「それでプロテクトの解除に失敗すると……」

 

 フィアラが手を止めるとビーッという警告音が鳴る。

 モニター画面にジエー博士のどアップが映し出されるか

 

『アヒャヒャヒャヒャッ!! アヒャヒャヒャヒャッ!!』

 

「と、こんな感じの映像が20種類程、ランダムで流れるんですよ」

 

 額に青筋を浮かせながら笑顔で話すフィアラ。

 しかし、そういう事なら力になれるかもしれない。

 

「手伝おうか?」

 

 キラの申し出にフィアラは首を横に振る。

 

「いえ。私が自分でどうにかしないと。あの人の事です。私以外が解除したら、どんなペナルティを用意してるか分かりませんし、解除条件自体が他にある可能性の方が高いでしょう。これはあくまでも暇潰しです。システムが使えないからって困ってないですし」

 

 解除出来たら良いなーというだけだ。

 フィアラはコクピットのシートから立ち上がる。

 

「それより、なにか用事ですか?」

 

「うん。そろそろご飯だから一緒にどうかなって。色々と聞きたい事もあるしね」

 

 それで態々呼びに来てくれたらしい。

 しかし、フィアラは難色を示す。

 

「食事時間の空気を悪くする必要あります?」

 

 フィアラが一切態度を緩和させないのが原因だが、食堂でZEXISのメンバーと食事すれば少なからず場の空気が悪くなるだろう。

 

「……少しは歩み寄る気はないのか?」

 

「なんでですか?」

 

 理由が分からないと言わんばかりに首をかしげるフィアラ。

 フィアラからすれば、嫌いだから嫌いとハッキリ態度で示した方がお互いの為だと思っている。

 嫌いなら近付かなければ良いのだから。

 

「そう言わずにね? ラクスも料理作って待ってるし」

 

 ラクスの名前を出すと、フィアラは頭を掻く。

 基本ZEXISのメンバーに塩対応のフィアラだが、自分が好意を抱く相手には甘い。

 ラクスを除くとZEUTHに居た時に世話になったアナ姫やランドとメールの修理屋夫婦。

 と、他数名にだけは友好的に接している。

 その落差に周囲からすれば心臓に悪いくらいあからさまなのだが。

 

「……分かりました。行きましょうか」

 

 どうなっても知りませんよ? というニュアンスを含ませて同行するフィアラ。

 格納庫から食堂に移動すると、元ZEUTHのメンバーが多く、それとこの世界の者達も居る。

 戦艦を複数所有しているZEXISは基本自艦のあるソレスタルビーイングやS.M.S、それに黒の騎士団などを除いて、パイロットは機体のサイズや艦載数さえクリアすれば基本、どの戦艦で過ごすかは自由である。

 自室などの問題があるので、変更はまた別だが。

 だから、エターナルにはZEUTHの世界のモビルスーツパイロットが多く乗艦している。

 食堂に着いてもフィアラは出来るだけ目立たないように気配を小さくして移動する。

 まぁ、それでも多少は目立つが。

 実際に、フィアラの姿を見てあからさまに緊張を表す者もいる。

 その空気を鬱陶しいと思いつつ、フィアラ自身が態度を改める気がないのが終わってるなーと自分で思う。

 フィアラが態度を軟化させるだけで彼女気遣ってくれる人達の精神的負担が大分軽くなるのは理解しているのに、それでもやる気がないのだから。

 

「キラ」

 

 おそらくはフィアラ対する配慮だろう、隅っこの方で待っていたラクスとディアナ。ビーターサービスの2人。

 

「よぉ、邪魔するぜ」

 

「どうも」

 

 既に料理は並べられており、席に座って食事を始める。

 先ず口を開いたのはディアナだった。

 

「貴女とこうして食事するのも久しぶりですね」

 

「そう、ですね。こっちの時間の流れだと3ヶ月ぶりくらいでしょうか?」

 

 こちらの世界と時間の流れが違うPMの世界を行ったり来たりするせいで、フィアラの時間感覚ではもっと長いような気がする。

 そこでキラが話に入る。

 

「色々なところで会ってたって聞きましたけど。食事以外にもたくさんのことがあったって。ね、ラクス」

 

「そうですわね。戦闘後の町で復興や救助のボランティアに参加しましたわ。炊き出しを手伝ったり。怪我をした人の簡単な手当てをしたり」

 

 貴重な経験でしたと語るラクス。

 

「ラクス様は歌で市民の皆さんの不安を和らげてくださいましたね。その時はフィアラも一緒に」

 

 ディアナの言葉に聞いていた周囲も含めて驚きの声が上がる。

 フィアラが歌うのは自分に必要な時だけだと思っていたからだ。

 そしてその印象は間違ってない。

 その歌が好評を博して、現地の人達が即席で作ったちょっとしたライブをやった事もある。

 

「そうなんだ。聴いてみたかったな」

 

 思えば、フィアラの歌を聴けるのは戦場で偶然会った時に限られていた。

 いつか、平和な時に2人の歌を聴いてみたいと思うのだが。

 話題を逸らすように視線を斜め上にしてフィアラは口を開く。

 

「他にもモビルスーツやそこらにあった機体で瓦礫をどかす作業を手伝ったりしましたよ」

 

 その中にはZEXISが戦った戦場もあったが黙っている。

 フィアラ自身、よほど操作方法が違う機体でもない限りは、一般的なMSやKMFの操縦は出来たりする。

 

「現地を見て、必要だと思った物資や支援を報告し、ディアナ様に手配して貰っていました」

 

「そのおかげでこちらもスムーズに戦闘後の支援が行えたのです。もちろん、すべてが上手くいった訳ではありませんが」

 

 人間同士の諍いや別世界や外宇宙からの侵略。

 世界中で広がる戦火に、どうしても戦場となってしまった町の後などの事までは気が回らなくなってしまう。

 それを、ラクス達がフォローしてくれていた事に嬉しさを感じていた。

 

「まぁ、他にも色々と。面倒にも巻き込まれましたけど」

 

「例えば?」

 

 メールの質問にフィアラは思い返すように僅かな間だけ目を閉じる。

 

「食事の約束で待ち合わせた町で偶然テロに巻き込まれて、ラクスさんが人質に取られて────」

 

「ちょっと待って」

 

 キラが話に待ったをかける。

 

「ラクス。僕そんなこと聞いてない」

 

 大切な人が知らぬ間にテロに巻き込まれて人質にされていたなど、キラはまったく知らなかった。

 

 少し眼を細めて問いかける。

 ラクスもバツが悪そうに困った笑みを浮かべた。

 

「その……すぐにフィアラとサンドマンさんに助けていただきましたし。テロの方々もすぐに軍に鎮圧されましたのよ?」

 

 アロウズではない軍にすぐに取り押さえられ、このご時世、その事件は新聞に片隅に載る程度の騒ぎでしかない。

 これは、フィアラからもっと聞いた方が良いな、とキラは思った。

 

「他にはなにか危ない目に遭ったりしたの?」

 

「治安の悪い町で窃盗をやってた子供とぶつかったタイミングで警察に見られて、仲間だと思われてあれやこれやと牢屋に入れられたり。後でディアナさんが手を回してくれて助かったけど」

 

「えぇ。あの町も今は正常化が図られ、賄賂などを受け取っていた警官も大分減った筈です」

 

「それはそれは」

 

 自分で話しているのにあまり興味も無さそうにスープを飲むフィアラ。

 食事やその他の用事で会う事はあったが、こうしたトラブルにも何度か遭遇した。

 話題を逸らすようにラクスが話す。

 

「一度お産も手伝いました。アレは本当に大変でした」

 

 その小さな町では戦闘で病院が被害に遭い、医者の手が足りない状況だった。

 そこで偶然仲良くなったとある家族が妊婦を抱えていて、成り行きで出産を手伝う流れになった。

 赤ん坊を取り上げるのに成功した時は涙ぐんでしまう程にラクスにとっては良い経験だったと思う。

 

「あぁ、それと恋人と一緒に殺された女の幽霊を成仏させたり? まぁ、成仏させたというか、勝手に納得して勝手に逝っただけだけど」

 

「ちょっと待て!? なんだそれは!?」

 

 いきなりオカルトな話に突入して、アスランが席を立つ。

 

 一緒に居たラクスやディアナも難しい顔をする。

 

「本当に、なんだったのでしょうか?」

 

「そうですね。電波は届かない。廃村の外には出られないで、3日ほど足留めしました」

 

「それで最後はなんかラクスさんに取り憑いたら勝手に成仏したんですけどね。とんだとばっちりでしたよ」

 

 最後にフィアラが吐き捨てる。

 ホラー映画だかゲームだかをリアル体験するとは思わなかった。

 ちなみにその時一緒に居たサンドマンが大活躍したのは余談である。

 

「ごちそうさま。作業に戻ります」

 

 食事を終えて自分の分のトレイを片付け始める。

 話をするのは構わないが、周囲のチクチクとした視線が鬱陶しいのだ。

 ラクスがまだ引き留めようとするが、キラが止めた。

 

「フィアラのことはあまり強引にしてもさ。ね?」

 

「はい……」

 

 フィアラのZEXISの溝は深く、下手に関わりを強めようとすると反発される可能性が高い。

 はっきり言って同じ艦に居るとはいえ、この短い期間でその溝が埋まるとは思えない。

 

「それよりさ。もう少し話を聞かせてくれないかな。ラクス達がこの世界に来てからのことを」

 

 逃さないよ、という笑みを浮かべるキラにラクスは誤魔化すの諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するぜ」

 

 S4Uの中で作業していると、何故か黒の騎士団の人間が来ていた。

 誰かに話しかけたようだが、間違ってもフィアラではないだろうと作業をそのまま続ける。

 プロテクトを外すのに失敗し、腹の立つ動画がまた流れた。

 

「おい! 聞こえてんだろ!」

 

「チッ……なにか?」

 

 そんな神経を逆撫でする映像を見た直後に話しかけられた事もあって、フィアラは苛立った態度を隠す気もなく黒の騎士団を見る。

 フィアラの視線に一瞬たじろいだ玉城だが、笑みを浮かべて要件を言う。

 

「おう。お前にちょいと話があってな」

 

「私にはない。どうぞお引き取りください」

 

 どうせ碌な話じゃないんだろうな、とシッシッとジェスチャーして即会話を打ち切った。

 だが相手はしつこく食い下がってくる。

 

「おい待てよ! そんな邪険にすることねーだろ!」

 

「むしろ、邪険にされない理由があるとでも?」

 

 ゼロを追い出すきっかけになったフィアラを黒の騎士団が良い感情を抱いているとは思えない。

 だから黒の騎士団は基本エターナルへの乗艦は控えるように言われてる筈だ。トラブルに発展する可能性が高いからだ。

 この辺りが面倒が起きたら対処する、という部隊の気質を表している。

 

「まぁ待てって! ゼロは悪い奴じゃないんだよ!」

 

「ハァ?」

 

 開幕からイラッとする

 そこから始まるゼロの武勇伝。

 エリア11での活動に始まり、ZEXISでの活躍。

 破界事変後に特区・日本で日本人が酷い扱いを受けないようにゼロがどれだけ頑張っていたか、など。

 彼の話だけを聞けば、確かにゼロは救世主と言えるかもしれない。

 

「だから、ゼロはすごく善い奴なんだよ! そりゃあ、ちょっとやり過ぎちまう時はあるけど」

 

「善い人は根本的に他人を洗脳したりしないんですよ」

 

 玉城なりに、フィアラとゼロの問題を解決しようとしてるのだろう。

 その心意気だけは買ってもいいが、ゼロの活躍とか内面とかフィアラにはまったく関係ないのだ。

 

「それとも、ゼロは皆の為に頑張ってるんだから、他人様をいくらでも洗脳して使い捨てても良いとでも?」

 

「そうは言わねぇよ! でも……ならどうすりゃ良かったんだよ!!」

 

 PMの厄介さは戦闘能力ではなくその毒性である。

 それを除去出来るのが現状フィアラのみ。

 

「それを考えるのは私じゃない。そっちの仕事でしょ」

 

 以前PMの対処をしていたのはあくまでもフィアラの都合。それで報酬を受け取っていた訳でなし。辞めたからといって責められる謂れはない。

 理不尽かもしれないが、出来ないのが悪いのだ。

 仮にフィアラに手伝わせるにしても、洗脳など受け入れられると思っている方がおかしい。

 

「自分達に出来ないからって面倒をこっちに押しつけるのはやめて。迷惑極まりない」

 

「なんだと────」

 

「そこまでだ」

 

 互いにヒートアップしてきたのをクロウが止めに入った。

 

「クロウ」

 

「玉城。ゼロの心象を少しでも良くしたいって気持ちは分かるが、それじゃあ逆効果だぜ」

 

「だけどよー!」

 

「とにかく、これ以上はやめとけ。騒ぎが大きくなるだけだからな」

 

 クロウの忠告に玉城はクソッとその場を離れる。

 

「悪いな。あいつも悪気がある訳じゃねぇんだ。勘弁してやってくれ」

 

「空気が読めないだけでしょう。それにゼロの存在に甘い蜜を1番吸ってたのが黒の騎士団だし。刺されたり撃たれたりしないだけでもマシだと思わなきゃ」

 

 特区・日本で黒の騎士団が排斥されてないのはゼロの手腕が大きい。

 彼らからすれば、フィアラは排除対象でもおかしくない。

 尤も、この状況でフィアラに害すれば、最初に疑われるのは黒の騎士団だろうが。

 

「貴方は、私にPMに対処しろって言わないんですか?」

 

 フィアラの質問にクロウは苦笑する。

 

「そうしてくれるんなら助かるが、無理やりやらせるのは俺の主義じゃねぇさ。それに、あの力もノーコストって訳じゃねぇんじゃねぇか?」

 

 生身で次元力を操るなんて力がタダだとは思えない。

 特に軌道エレベーターに現れた時の消耗具合を見るに、何かしらの代償が有るのだとクロウは思っていた。

 スフィア自体もデメリットがあるから尚の事。

 

「まぁ、そうですね。知りたいんですか?」

 

「教えてくれるのかい?」

 

 冗談交じりに返すクロウにフィアラは、良いですよ、返した。

 その返しが一瞬聞き間違いかと思った。

 フィアラは天井に視線を向けて答える。

 

「私の……この力の代償は────」

 

 フィアラの回答にクロウは顔を青くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰も居ないエターナルの休憩室でドリンクを購入して飲む。

 ドリンクが半分減ったところで容器を指でトントンと叩きながら歌を口ずさむ。

 1人になると無意識にそうしてしまう癖のような物だ。

 

「フィアラちゃん」

 

 後ろから話しかけられて振り向くと、そこにはセツコ・オハラが立っていた。

 一瞬眼を細めてセツコを見たが、すぐにドリンクのストローから口を離す。

 

「なにか?」

 

「うん。少し、お話ししない?」

 

「……どうぞ」

 

 ありがとう、とセツコもドリンクを購入する。

 

「ZE────」

 

「無理ですね」

 

 それだけで話題を理解し、フィアラは切って捨てる。

 ZEXISとこれ以上距離を縮めるつもりはなかった。

 エルガン代表の事がなければこうして一緒に行動する事もなかっただろう。

 セツコが困った様子で続ける。

 

「どうしても?」

 

「特区・日本で私の代わりにゼロを撃ち殺してくれたら印象も少しは良くなったかもしれませんね」

 

 フィアラはゼロを確実に始末するつもりだが、手を下すのは自分でなくても構わないと思っている。

 それこそ、捜索に出ていた黒の騎士団やコロニーのエージェント達が片付けてくれたなら万々歳だったくらいだ。

 何処に逃げたのやらと思って飲み干したドリンクの容器を捨てた。

 すると、休憩室にソレスタルビーイングのメンバーであるミレイナ・ヴァスティがやって来た。

 

「あ! フィレスさん!」

 

「はい?」

 

 こっちもフィアラに用があるらしいが、まったく心当たりがない。

 

「ひとつ、質問があるですが、よろしいですか?」

 

「……答えられる範囲なら?」

 

 質問が予想出来ずに取り敢えずそう返す。

 

「もしかしてフィレスさんは、シン・アスカさんの事好きなのですか?」

 

 その質問にフィアラの表情が一瞬で無になった。

 

「なんでそう思った?」

 

「好きな人ほど冷たく当たってしまう、的なです」

 

「クヒ……」

 

 眼をランランと輝かせるミレイナにフィアラは口を歪ませる。

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!! ……ハァ……」

 

 これまで見たことのない哄笑をすると、盛大に溜息を吐き、ミレイナの左右に結わえた巻き髪を掴む。

 

「殺すぞ、お前……」

 

「ご、ごめんなさいです……」

 

 普段、相手をあなた、と呼ぶフィアラがお前と呼ぶくらいの怒り。あと、無表情なのに視線だけで殺意が余すことなく伝わってくる。

 

「ま、まぁ……その、シン君は良い子よ」

 

 フォローしつつ、ミレイナの髪を引っこ抜きそうなフィアラを宥める。

 

「貴女はアサキム・ドーウィンと恋人なんですか? って訊かれたら我慢できますか?」

 

「……………………とにかく放してあげて。ね?」

 

 視線を泳がせて止めに入るセツコ。

 

「チッ!! 次言ったら、コンクリートに詰めて棄てるぞ」

 

「うぅ……ごめんなさいです……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで宇宙にあるイノベイター達の拠点である要塞に辿り着く。

 敵側は既にモビルスーツを展開していた。

 フィアラもコクピットの中で待機している。

 キラから通信が入る。

 

『フィアラ。理解(わか)ってると思うけど……』

 

「えぇ。そちらが私に危害を加えない限り、私もそちらに合わせますよ。ここまで来て足の引っ張り合いはゴメンですからね!」

 

『うん。ありがとう。頑張ろうね』

 

 フリーダムが先に発進し、S4Uもカタパルトに移動する。

 エルガン・ローディック。

 フィアラがこの世界で初めて接触した人間。

 彼のおかげでフィアラはこの世界で自由に行動出来た。

 ギブ・アンド・テイクな面もあったが、その恩は忘れていない。

 だから────。

 

「フィアラ・フィレス。S4U、発進します!」

 

 

 

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