すれ違いの結末 作:ビールは至高の飲料
今回はフィアラがどうしてアークエンジェルに保護されたのかを大雑把に説明する会です。
「何が死ねば良かったよ! こっちの苦労も知らないで!」
「ホント。大体、アークエンジェルが余計な事をしたせいで話が拗れた上に向こうのZEUTHと戦う羽目になったのに。それに部隊内の空気まで悪くしてくれちゃってさ」
艦内の通路で話している憤りを交えた会話がなされていた。
ZEUTHの主要メンバーの大半は15歳前後の少年少女である。
自分たちに不利益を与えた存在に負の感情を抱くのは当然であり、これまで幾度と地球の脅威と戦い、排除してきたという自負もある。
だからそれを否定、非難する言動を受ければ腹が立つのは仕方がないだろう。彼、彼女達も人間なのだから。
しかし、それで丸く済むのは陰口が誰にも聞かれなかった場合である。
会話をしていた1人が悪気なく言い放つ。
「ほんと。これ以上変なことになる前に出ていってくれないかな。PMの事があるのは解るけど、あれだってその内どうにかなるだろうし」
どれだけ思っていても言葉にしなければ伝わらない事がある様に、言葉にしてしまえば誰かに伝わってしまうのだ。
話していた彼女達からは見えない位置に3つの人影があった。
「あ、あのフィアラ。これは、その……」
「皆も本気で言ってるわけじゃ……」
人が生活していく以上、まったく部屋を出ないという事はなく、普段は引き込もっているフィアラもこの時は左右に居るアナ姫とシルヴィアの勧めでシャワーを浴びて出てきたところだった。
もしかしたらまた怒りをぶつける行動に出るかとも思ったが、フィアラはその場で留めるだけだった。
「べつに……もう、聞き慣れましたから……」
こうした会話が聞こえるのは、これが初めてではない。
最初は耳を塞いでこうした会話を流していたが段々と慣れて心が動かなくなった。
それでも苛立ちと鬱屈とした感情だけは消えることがなかったが。
結局、ここで自分の言葉は子供の癇癪でしかなく、ここに居られるのは、ジャミル達の好意と、PMの毒性に対抗できる都合良い道具だからに過ぎない。
そしてどちらの割合が多く占めているかといえば────。
そこまで考えてフィアラは考えを閉ざす。
考えれば考える程に、醜い感情に支配されるから。
せめてアナ姫など、気遣ってくれている人達にはこんな醜い気持ちを見せたくなかったから。
だから、意識的に考えることを止め続けた。
「うん、あ……」
フィアラがシミュレーターの中で目を覚ます。
「んー!」
そこには、唇を突きだして迫るジエー博士の顔があった。
「キャアッ!?」
「アウチ!」
反射的にジエー博士の顔を反射的にグー入れて遠ざける。
しかし頬を殴られた本人はどことなく嬉しそうだった。
「グッジョブ! 中々良いパンチだったにゃー! でもキス失敗でちと残念にゃね」
「寝起きに、アップで近づかないでください!」
肩で息をして文句を言うフィアラ。正直、突然ジエー博士の顔が目の前にあるのは心臓に悪い。目覚ましには強力だが。しかしジエー博士は気にした様子もなく話を変える。
「それより、ま~たシミュレーターの中で寝て。そんなんじゃ身体壊すにゃ?」
「……大丈夫です」
ジエー博士の苦言にフィアラは視線を合わせずに答える。
こうしてフィアラがシミュレーターで寝てしまうの初めてではない。
むしろ、ここ数日は与えられた自室で寝るより多いくらいだ。
それを指摘すると彼女は子供のように大丈夫です、とだけ繰り返す。
フィアラがこうなってしまったのは、初出撃の戦闘でフリーダム。そしてアークエンジェルの存在を確認してしまった事が原因だった。
混乱から逃げてしまったが、その後にアークエンジェルがZEUTHと行動を共にしていると聞いてなおのこと混乱した。
どうして、自分達を殺そうとした者達と協力しているのか?
どうして、生きているなら一言教えてくれなかったのか?
それらを考えると途端に苛立ちが押し寄せてくる。
結局のところ自分という存在は、その程度でしかなかったのか?
そう考えれば考えるほど気が沈み、シミュレーターに齧りついて考えないようにして逃避する。
そこでシエー博士が更に話題を変える。
「フィアラちゃんに耳寄りな情報にゃん! ZEUTH、今こっちに向かって来てるよ」
「へ?」
呆けた表情のフィアラにジエー博士が続ける。
「マジマジ! 今までカイメラが隠してた真実を公開するために、UNの中継ステーションを押さえる気にゃ。もちろん、アークエンジェルも一緒に!」
「……」
アークエンジェルの名前を聞いてフィアラの肩が僅かに跳ねた。
「で? フィアラちゃんはどうするにゃ?」
「?」
「ここを出て、ZEUTH──―アークエンジェルと合流したいのなら止めにゃいよ? ワシ。フィアラちゃん用に調整したS4Uもプレゼントするにゃ。もっとも、フィアラちゃんを拾ってくれたあの人とも敵同士って事になるけど」
どうする? と何を考えているのか分からない顔で問うジエー博士。
その質問で出したフィアラの答えは────。
「それじゃあ、そこでアークエンジェルに協力していた
「うん。UNに頼らずに集めてた情報を纏めれば、それなりに信憑性は得られると思う」
UNを操作しながら答えるシンの質問にキラ。
かつてUN内で表示されていたZEUTHの改竄された情報。
彼らの行動からそれらの情報に疑問を持ったキラ達は、UNによる情報収集を早々に止めて、独自の情報網を広げた。
その事を聞いてシンが不満そうに言う。
「それならそれで、あの時言ってくれれば良かったじゃないですか」
あの時、とは、ZEUTH同士の戦闘が起こってしまった時の事。
話して誤解を解いてくれればあの戦闘を止められたかもしれないのに、と思ったのだが。
だが、さすがにその件についてはキラにも言い分がある。
「だってシン。君、こっちの話を聞いてくれるような態度じゃなかったじゃないか」
「う!?」
ステラを殺されたと思った復讐心から襲いかかったシン。あの時、キラ達が何を言おうと聞く耳持たなかっただろう。
殺されたと思っていたステラが生きていた事を思えば、余計にばつが悪い。
そんなシンの様子にキラは怒ってる訳じゃないよ、と苦笑した。
キラからすれば、生きていれば良いと言う話ではなく、あの怒りは正当な物だと思っている。
話題をUNに戻す。
「アスランからフィアラが
誰でも書き込めるフリースペース。
そこには好き勝手心無い事が書かれていた。
ZEUTHから離れた土地とは全然別の場所で見ただの。死亡しただの。
挙げ句の果てにどこぞで身体を売っているだの面白半分で書いただろう情報も数多く交錯していた。
「こんな感じだからね。遠回りでも、自分達で情報を集めるしかなかったんだ」
キラの言葉に今更ながらUNに頼りすぎていた自分達の迂闊さを険しい顔になる。
多くの情報が集まると言えば聞こえは良いが、改めてUNの曖昧な情報に顔をしかめた。
自分達が互いのZEUTHを疑った時、ちょっとした画像と記事で踊らされていた事が今更ながら恥ずかしい。
そこで集まっていた壇闘志也が呟く。
「俺達も行き当たりばったりなところがあったからなぁ……」
情報が向こうから勝手にやって来ることが多くて自分達から情報を集める努力を怠っていた。
UNに載っている情報の真偽をまともに確かめようともせずに決めつけてしまった。
偽ラクスの件や本物のラクスが暗殺されかかった件もキラ達が話さなければ最後まで知ることもなかっただろう。
彼らがザフトに暗殺されかかったのならこちらと協力できなかったのも頷ける話だった。
オーブのこともあったのでどちらにしろ難しかったろうが。
それでもこうして話をして、仲間として一緒に戦えば、望む平和の形は同じなのだと信じられる。
「悪かったな」
「え?」
「今までの事だよ。そっちは謝ってばかりで俺達から謝った事なかったろ?」
「いや、でもそれは……」
キラ達の介入で被害が出て、戦場が混乱したのは事実だ。だから、謝られる理由は無いように思える。
「これから最後の戦いに挑もうってんだ! わだかまりは少しでも無くしておかないとな! これから戦うのは、今まで世界の真実をねじ曲げてきたカイメラの奴等なんだからよ!」
快活に笑う闘志也にキラケンこと吉良謙作も乗る。
「そうだのう。それに、フィアラって子がZEUTHを出ていっちまった事についてもだ。すまんかった」
風見博士の暴走でフィアラが傷付き、姿を消した。
それは確実にこちらの落ち度だ。
「こんなことを言えた立場じゃないかもしれんが、元気な姿で見つかるといいな」
生きていてほしい。
そして今度こそちゃんと向き合って話したい。
最後に桂木桂がキラの肩に手を置いて締める。
「そっちも、出来る限り言葉にしてくれると助かるけどな。抱え込み過ぎなんだよ、お前さんは」
「ええ、そうですね。必ず」
他にも何人か謝罪し、キラは笑みを浮かべてその謝罪を受け入れた。
中継ステーションでのカイメラとの最後の戦いや、その1人であったツィーネの投降。
そして世界の聖母と言われた、エーデル・ベルナル准将との決戦。
それらを乗り越え、この世界の為に消えようとしているエウレカを救い、次元修復を行う為にZEUTHは宇宙へと上がる。
そこで待ち受けていたのは。
「グッバイ、エーデル様! 君のお仕置きは最高だったよ!」
高笑いと共にエーデル准将を屠る、彼女が乗っていたレムレースの完成型。カオス・レムレース。
それに乗る黒のカリスマを名乗っていた怪人、ジ・エーデル・ベルナル。
この多元世界を混乱させた元凶としてZEUTHの前に現れる。
ただ自身の快楽の為だけに世界を混乱させ、人の生き死にを嘲笑うジ・エーデルの存在を受け入れられる筈もなく、この世界を自分の遊び場と笑う男が許せなくて戦うのだと。
レントンがニルヴァーシュでエウレカを取り戻すとジ・エーデルはあらら、と残念そうな顔をする。
しかしすぐに笑みを浮かべてふざけた口調を取り戻した。
「流石に完成したてのカオス・レムレースでこの数を抑えるのは難しいね。それにしても、僕1人に大人数で襲いかかるなんて酷くない? それが正義の味方の戦い方なの?」
焦った様子はなく、からかうような口調のジ・エーデル。
「うるせぇ! だったらお前も仲間でも何でも呼べばいいだろうが! 今更お前に手を貸す奴が居ればだけどな!!」
苛立たしげにガロードが怒鳴る。
それはジ・エーデルに手を貸す仲間が居ないことを確信しての言葉だったが、彼はふーん、と笑みを深めた。
「あ、そ。なら、遠慮なく僕もパートナーに力を借りようかな」
指を鳴らすと、この戦闘区域に機体が1機増える。
いつぞやの時に現れてインパルスに襲いかかってきた乳白色の機体がステルスを解除して人型で現れた。
それを見てシンが怒り混じりに言う。
「アイツ、ジ・エーデルの仲間だったのか!」
ルナマリアを襲った相手としてシンは闘志を昂らせた。
しかし、次にジ・エーデルが発した言葉にその闘志は一気に下がる。
「さあ! 聴かせておくれ! 僕の為の讃美歌を!!」
「あれは、まさか!?」
ジ・エーデルの合図に合わせて乳白色の機体から見覚えのある紋様が広がり、この戦闘区域を包む。
宇宙空間であるにも関わらず聴こえてくる歌声。
歌っている歌は違うが、その歌声には聴き覚えがある。
「フィアラッ!?」
ラクスが席から身を乗り出してその歌声の主の名を言い当てた。
その驚きはZEUTH全員にまで伝播していた。
「な、なんでフィアラがここに居るの!?」
メールも慌てた様子を見せる。
「それは勿論、僕が保護していたからだよ。もっとも、居たのは僕しか知らない基地の最下層だけどね」
「お前があの子を操ってるのかよ!!」
紅エイジが怒鳴るとジ・エーデルは心外そうに口を尖らせた。
「失礼だね。そんなことしたらフィアラのステキな力が使えなくなるかもしれないじゃないか」
「あの子の力だと?」
アムロが疑問を口にすると、ジ・エーデルはそうさ! と応える。
「まさか、あの子の力がPMの毒を無力化なんてちゃちな物だと本気で思っていたのかい? はい、不正解! 彼女の本当の能力は、オリジン・ロー。次元力からエネルギーを取り出し、事象を操作する事だよ。今まではただ、PMの毒を無力化するように事象を操作してただけさ! そういう意味では彼女は生体スフィアとも言えるね」
「生体スフィアですって!?」
まるで知識をひけらかす子供のような口調で続ける。
「彼女の一族は個体差はあるけど昔から次元力と繋がる体質を持って生まれてきてね。その魔法染みた力を求められてあらゆる人間に利用され続けてきた。最後に辿り着いたのがあの研究所だよ。残されたフィアラの母親と姉2人共々、その能力の解明の為に人体実験に晒された訳さ。もっとも、奴らの程度の低い実験じゃあ大したことも解らずに、母親は体をバラバラにされ。2人の姉は薬付けにされて保管されてたみたいだけど」
知らなかったあまりのフィアラの過去に誰もが口を挟めずにいる。
「そして、フィアラの番になった時に彼女は自分の身を守る為に力を使って、あの研究所に居た人間を全員あそこから消したんだ」
「消した?」
「そ。個別に転移させてね。海の底や山の頂上。宇宙空間。果ては、別の多元世界に跳ばされたのも居るみたいだね。フィアラはもっとも強い力を持ってたみたいだし。それくらいはねぇ? ま、あの子は細かなところは覚えてないみたいだけど」
「覚えてない?」
「家族がモルモットにされて殺されて、幼いあの子の心が耐えられなかったんだよ。酷いことをされたって断片的には覚えてても、大事な部分は本能的に思い出すことを拒否してる。そうじゃなかったら心の傷が深すぎて、廃人になってたろうね。風見博士に襲われた時は断片的に甦ったみたいだけど」
風見博士の名前が出て彼の弟子だったジュリィ野口が反応する。
「じゃあ、博士が彼女を襲ったのは……!」
「そう。彼だけはフィアラの本当の価値を見抜いていた。だから調べようとしたんだよ」
そこでシンがあることに思い至って話に入る。
「じゃあ前に現れたときに、ルナを襲ったのは……!」
「あぁ。キラ君の仇を討とうとして君と間違えたんだよ。だって機体を乗り換えてるなんて知らなかったろうし。結局、アークエンジェルが無事なのに混乱して帰って来ちゃったけど。あの時は残念だったねぇ。君達がまた、キラ君やアークエンジェルを倒してそれを見せればより僕好みにフィアラの心が堕ちてくれたろうにねぇ」
「あなたはっ!」
ジ・エーデルの言葉にキラが怒りを露にする。
そこでセツコが質問する。
「なら、貴方は彼女に何をさせているのですか?」
次元力からエネルギーを取り出し事象を操る。それならこの場にいる全員をどこかに跳ばすこともできるかもしれない。
「別に。フィアラにはこの戦いのリングを作ってもらってるだけだよ。大特異点への道は僕達を倒さないと辿り着けないって訳」
大特異点の存在を隠しているカオス・レムレースと空間を歪ませて戦闘区域から出られないようにしているフィアラ。
この2人を倒さないと次元修復が出来ない。
ラクスがフィアラに呼び掛ける。
「フィアラ! 話をさせてください! フィアラ!」
「無駄だよ。あの機体。S4Uはこのカオス・レムレース以外の通信回線は受け付けないように設定してるから。僕のパートナーなんだから、君達との会話なんて必要ないでしょ?」
「S4U?」
「そう。正式名称は
以前、ジエー博士に機体を触らせた時のデータ。それがあの機体に活かされていると言う。
それに神勝平が悪態を吐く。
「そいつを連れ去っただけじゃなく、セツコ姉ちゃん達の機体まで利用しやがって!」
「おいおい。保護したって言ってくれよ。ちゃんと衣食住は保証してたし、望めば大抵の物は与えられたよ。あの機体とかさ。本人が望めば全部が終わった後にエーデル准将の後釜に座らせても良い。その代わりに僕の研究にちょっと付き合ってもらうだけ。もちろん、死ぬような実験をするつもりはないよ。なんせ彼女は、この世に残った、たった1人の貴重なサンプルだからね。どうだい? ちゃんとwin-winな関係だろ? 大体、フィアラは元々、僕のところに来る予定だったんだから。ねぇ、ツィーネ」
「……」
「姐さん?」
ランドに問いかけられてツィーネはそれに答える。
「……私はあの人に、あの少女を連れてくるように命令されていた。正確には、生き残っていた彼女の一族を、だが」
「なのに君ったら、ボロボロのフィアラに同情して偶々近くに隠れてたアークエンジェルに保護させちゃうんだもん。ま、前大戦から色々と甘い行動を取ってた彼らなら手厚く扱ってくれると思ったんだろうけど」
「私が研究所に着いた時には既にあの子しかいなかった。だからこの先、他の者に利用されないようデータを消して、資料も破棄し、お前達に保護するように通信を送ったんだ。あの人の下に連れていくよりは良いと思って」
「あの時は正直焦ったよ。でも結果的には良かったかな。アークエンジェルで傷付いた心を癒しZEUTHが程々に追い詰めてくれたおかげで、僕に心を開くのもあっという間だったよ」
その言葉にメールが噛みつくように叫ぶ。
「フィアラがアンタなんかに心を許したっていうの!?」
「当然じゃない? アークエンジェルやキラ君がやられちゃった時のショックや、ZEUTHで厄介者扱いされてた話を聞いてあげたり、フィアラに都合良くその感情を肯定してあげるだけで良かったよ。どんなにすごい力を持ってても、そこはやっぱり子供だよね! 倫理道徳。善悪なんて曖昧な物じゃなくて、自分に優しいモノに飛び付くものだよ!」
哄笑するジ・エーデル。
その笑い声に全員が歯噛みした。
結局、これは誰もがフィアラをぞんざいに扱った結果だった。
大した価値を見いだせず、近寄ってこないフィアラを一部を除いて接触すらしなかった。
キラ達も、生きている事を教える事もしなかった。
誰もがジ・エーデルにフィアラが渡るように動き、その結果が今だ。
「で、どうするの? 言っておくけどあの機体、今は自動操縦で、君達のこれまでの戦闘データを入れて対処して動ける。生半可な事じゃとまらないし、そんなことをすると殺られちゃうよ?」
ふざけた口調で話すジ・エーデル。
最初に動いたのはキラだった。
「キラ!?」
「あの機体を戦闘不能にして、アークエンジェルかエターナルに降ろす。大丈夫。殺さないように戦うのは得意なんだ。知ってるでしょ?」
全てが上手くいった訳ではないが、それでもそういう戦い方をしてきた。
例え恨まれても、生きているなら明日には分かりあい、手を取り合えるかもしれない。
そんな綺麗事を夢見て、戦ってきた。
だから今度も変わらずにそうするだけ。
「それに、フィアラに謝らないといけない。あの子の気持ちを軽んじて、何の連絡も入れなかったことを。そして叱ってあげないと。何も考えずにジ・エーデルに手を貸したことを!」
おそらくはきっとフィアラは考える事を放棄してジ・エーデルに従っている。話して、それでは駄目だと叱り、教えなければいけない。
キラの宣言にジ・エーデルは面白そうに唇を舐める。
「ならやって見せなよ! でも簡単には渡さないよ! 何せ彼女は僕の大事なパートナーだからね!」
こうして、第二幕が上がった。
コックピットの中でフィアラはそろそろ外の状況を知りたいと思った。
さっきから機体が激しく動いている。そんなに激しい戦闘をしているならモニターを消されている今の状態が恐かった。
戦闘を見ないように言われていたが、別に外を見るくらい良いだろう。
パネルを操作して、モニターの映像が回ってきた。
「あ……」
映ったのは、対艦刀を構えたデスティニーがカオス・レムレースに襲いかかっている場面だった。
「あ、あ……あ、ああっ!?」
その映像に、フリーダムが撃墜された時の記憶と重なる。
「や、め……やめてぇ!?」
フィアラは反射的に
「なっ!?」
デスティニーを駆り、カオス・レムレースに迫っていたシンは、突然間に入ってきた機体を貫く事が止められなかった。
抑えていた筈のキラや、他数名の機体を振り切り、形振り構わずに直進してきたS4U。
その胸部にデスティニーのアロンダイトが吸い込まれるようにして突き刺さっていく。
対してS4Uも、デスティニーの頭部にビームサーベルで貫いていた。
それは奇しくも、かつてインパルスでフリーダムを討った時に似た構図だった。
貫いた胸部が爆発し、アロンダイトを破壊してデスティニーから離れる。
「フィアラッ!?」
とっさにシンがS4Uを掴もうとするが、間にカオス・レムレースの杖が割ってはいる。
すると、S4Uの姿がその場から消える。
「駄目だよ。フィアラは僕の大事なパートナーなんだから。勝手に触れないでくれよ」
「テメエッ!? フィアラを何処へやった!」
「君達の手の届かない場所さ。これが終わったらちゃんと回収するよ。彼女は僕の大事な人だからね!」
「貴方という人はっ!!」
2人のスフィア・リアクターがカオス・レムレースに襲いかかった。
この戦闘でZEUTHはジ・エーデル・ベルナルを討ち、大特異点となったユニウスセブンに到達し、人々の意思を集めて次元修復を決行する。
しかし、ギリギリまで捜索したS4Uに乗るフィアラは結局発見されず、次元修復後にもその姿は確認出来ていない。
「いったぁ……」
目を覚ましたフィアラは、顔をしかめてパネルを操作した。
S4Uのコックピットは胸部ではなく、女性の子宮に当たる部位に造られている。
これは制作者の趣味で、機械の子宮に美少女を閉じ込めるとか最高にゃね! ということらしい。
その為、爆発の衝撃で意識は飛んだが、パイロットスーツを着ていた事もあり、大事にならずに済んだ。
それより、自分が宇宙空間に漂っているのは理解できるが、ここが何処なのかまったく解らない。
機体にある宇宙図のデータから割り出そうとするが、見えるコロニーの位置などが全然違い、当てにならない。
「なんで……!?」
だんだん焦りから苛立って来ると、地球を見る。
そこで、陸の形に違和感を覚えた。
おかしい。絶対におかしい。
「なんで……日本が、2つ?」
訳が解らずに、しばらくフィアラはそのまま宇宙を流れていた。
第二次スーパーロボット大戦Z 破界篇・予告
「あれは……ガンダム?」
突如現れたソレスタル・ビーイングとコロニーか、送られたガンダム。それを皮切りに世界は動き出す。
「まさかまさかと思ってたけど。本当にこっちの世界にPMが現れるなんて。2年間のシミュレーターでの訓練。どれだけ通用するかな。さあてと、お前達が利用している姉さん達の遺体。私に返してもらう!」
少女は独り戦う。大事なモノを取り戻す為に。
インペリウムと破界の王ガイオウ。
それらの出現に呼応するように次々と別世界より現れるZEUTH。
彼らはかつて救えなかった少女がこの世界に居ることを知る。
「……まさか逃げるからって袋叩きにしてくるとは思いませんでしたよ。大体今更何の用です? こっちは全然用事が無いんですけど?」
ZZEUTHとZEXISの前に曝され少女は、どのような選択をして混迷する世界を生き抜くのか。
第二次スーパーロボット大戦Z破界篇。
その内公開するかもしれない。
第二次書くんならタイトルとダグを一新する。
フィアラが転移したのは第二次の世界。本編が始まる2年程前です。
基本単独行動。PMを対処するとき以外はS4Uで世界中を気ままにぶらぶらしてる。
S4U
正式名称はSong for you
元々有った多くの試作機の中から本人が選んだ物をジエー博士がフィアラ用に改造した機体。
本来は戦闘用ではなく、フィアラが取り寄せている次元力を計測・観測・観察するための機体であり、戦闘力はおまけ。
エネルギー源がフィアラが引き出す次元力な為、彼女以外は動かせない。