すれ違いの結末 作:ビールは至高の飲料
勝利条件
S4U以外のすべての敵を撃墜後、S4UのHPを3000以下にする。
敗北条件
味方戦艦の撃墜
Sフリーダムの撃墜
S4Uの撃墜
SRポイント取得条件
4ターン以内に勝利条件を満たす
「そんな……っ!?」
多元戦争時、エターナルを助けるためにカガリから借りたストライクルージュで宇宙まで上がり、新たなフリーダムで敵を退けたキラはラクスにフィアラが一時的にZEUTHに預けられて後々に去ってしまった事を説明した。
ショックを受けているラクスは責めるような視線をキラ向けた。
「あの子はまだ何も知りません。人を信じることの大切さも。その痛みと喜びも」
手を組み、祈るようなポーズを取るラクス。
「フィアラがもし、私達にとって必要のない存在だと思ってしまえば、この先に誰かを信じる事が出来るのでしょうか?」
ラクスは基本的に自分で考えて答えを出すことを良しとする。
勿論ラクス自身に譲れない物が有って戦う事はあるが、誰かの言葉に同調するだけで自分で考える事を放棄する事に彼女は否定的だ。その終着が、前大戦だと知っているから。
しかし、その上で彼女は人類の善性を信じている。
だが、フィアラは、自分で何かを決めるよりも先に知らなければならないことや学ばなければならないことがたくさんある。
それを教える役目は自分達だったとキラを責めていた。
「独りぼっちになってしまったあの子は誰かを信じる事が出来るのでしょうか?」
キラは、自分の機体のシステムチェックをしていたところで、艦内放送が聞こえた。
『トリニティがプリタニア・ユニオンでPMと戦闘している所属不明機────S4Uと襲っているとの情報が入りました』
その放送にキラが近くにいたアレルヤに問う。
「あの、トリニティって?」
「……僕達ソレスタルビーングの別動隊だよ。この状況で各地に武力介入を行っている。僕達も向こうも互いに仲間だなんて思ってないけどね」
苦い表情をしながらアレルヤは簡単にトリニティについて説明する。
異星の敵やインペリウム等の敵が多く存在するこの世界で武力介入で各国の戦力を削るのは自殺行為である。
だからアレルヤ達も外敵との戦いに活動を変えたのだ。
「……」
少し考えてからキラはコックピットに入って機体を立ち上げる。
「すみません! 先に出撃します!」
『え! ちょっと!』
「急いでますので!」
ハッチが開き、カタパルトからフリーダムで一足先に出撃した。
目的地を地図で確認しながら逸る気持ちを抑えて機体を駆る。
フィアラが何故独りでPMと戦っているのか。
あの戦いからどうしていたのか。
聞きたいことや話したいことがたくさんあった。
キラはフリーダムを更に加速させた。
突然割り込んできたフリーダムにフィアラは歌うのを止めて呆然としてしまった。
『フィアラ!』
通信から聞こえてくる懐かしい声にハッとなる。
フィアラが歌い、戦場に広がっていた紋様を少しずつ消え始めていた。
歌を再開し、PMの毒を無力化する陣を補填する。
すると、スローネが再び襲いかかってきた。
『もう何なのよ! 仕事の邪魔してくれちゃって!』
『ZEXISに協力している他世界のMSか』
『何でもいいぜ! 邪魔するってんなら蹂躙するだけだ! 行けよファング!』
スカートから吐き出された誘導兵器。
フリーダムは住民を巻き込まない為に上空へと逃げた後に両手のライフルで撃ち落とす。
『なっ!?』
あっさりと誘導兵器を撃ち落とされ、驚いている隙にフィアラの駆るS4Uが接近すると、残っていた武装である左腕をビームガンごと斬り落とした。
『ミハ兄!?』
女の子がパイロットと思われるガンダムがフィアラを攻撃しようとするが、フリーダムが蹴りを入れて体勢を崩させる。
それが立て直す前にフィアラがビームガンを保持する右腕を撃ち落とす。
スローネの3機を着々と無力化していくのに成功していると、別の方角からビームが飛んできた。
それは、ガンダムデュナメスのGNスナイパーライフルだった。
『お前さんも無茶するな! パイロットスーツも着ないで!』
『すみません! でも急いでて!』
到着したZEXISの母艦から次々とロボット達が発進してくる。
『PMの駆除を最優先に! トリニティはソレスタルビーングが対処します』
スメラギが指示を出し、ゼロか追加する。
『戦闘の後、S4Uは絶対に逃がすな! 何としても捕らえろ!』
眼下の破壊された町を見てゼロはそう決断する。
PMによって殺された住民。破壊された建造物。
一部トリニティが行ったモノもあるだろうが、これ以上の無視を許すことは出来ないと判断していた。
幸い、ZEUTHもアレとの対話を望んでいる。問題は転移による逃走のみだ。
それを聞いていたフィアラは操縦桿を握りしめた。
トリニティはZEXISが到着した際に自分達の不利を悟って撤退していき、S4UとZEXISとブリタニア・ユニオンの兵が駆除していった。
PMは全て倒し、歌が止み、町に広がっていた陣も消えていく。
すると、いつものように転移で消えようとするS4U。
しかし消え去る前に幾つかの方向から攻撃が飛んできた。
転移を止めて回避行動と防御フィールドを展開する。
だが、軌道からそれが牽制による攻撃だと分かった。
『やはりな。あの機体は転移を用いる時、必ず静止状態を維持していた。システム上の仕様か。エネルギーの問題か。何にせよ止まっていなければ転移することは出来ない』
仮面の男ゼロは自身の推測を証明する。
これまではどうにか対話しようと攻撃は控えていた。
しかしそれではいつまで経っても逃げられてばかりだと判断したZEXISは不本意だが荒っぽい手段を取ることにしたのだ。
幾つかの機体に銃口を向けられながらZEXISから音声通信が届く。
『こちらZEXISのジェフリー・ワイルダーだ。こちらに戦闘の意思はない。繰り返す。我々に戦闘の意思はない。応答を願う』
フィアラは相手の声を聞き流しながら町周辺のマップを見ていた。
『この世界に現れたZEUTHも君との話し合いを望んでいる。どうか応じてほしい』
ZEUTH、という単語にコンソール操作していた手の動きが僅かに止まったが、ちょうど良い場所を見つけてマップを閉じる。
『聞こえてるなら返事しろ! もう俺たちが敵対する理由はないんだ!』
『ねぇ! せめて話をさせてよ!』
『フィアラ!』
ZEUTHで世話になった者や嫌な思いをさせられた者からも音声が届く。
「今さら図々しいことを……」
飛行形態に変形して町から離れる。
当然のように追ってくるZEXIS。
人の住んでない土地まで移動すると、人型形態に戻り、照準を密集しているZEXISに合わせる。
「ここら辺でいいか。さぁ、それじゃやろうか。正義の味方!」
1射するとビームサーベルを抜いて1番前を移動していたバルキリーに斬りかかる。
「なんで攻撃するかなんて馬鹿なことを訊くなよ? 威嚇とはいえ、先に撃ってきたのはそっちなんだからな!」
こっちは関わる気なんて無いのに、と舌打ちして別に狙ってくる敵から回避行動を取る。
フィアラが本気で撃っていることを確信して信じられないように音声が届く。
『おい! たった1人で
「私は、もう独りだよ。これからもずっと……」
S4UとZEXISの戦闘はどちらも目的が達成されないまま続いていた。
ZEXISから逃走したいフィアラは数に邪魔されて逃げ切る事が出来ず、ZEXIS側も撃墜出来ないという制約上、機動力に優れるS4Uを中々無力化出来ないでいた。
だが、どちらが不利かと言われれば。
「はぁ……はぁ……はぁ……っ!?」
コックピットで大粒の汗を流しながらZEXISの攻撃を回避することに専念する。
機体のエネルギーはフィアラ自身で賄えても、本人の体力はそうはいかない。
スローネやPMとの戦闘もあり、集中力が乱れ始めていた。
次第に機動の精細さを欠いていくS4UにZEXISはまるで集団暴行でも加えている気分になってくる。
『いい加減にしろ! これ以上無駄な戦いを続ける気かよ!』
『私達は貴女の敵じゃない!』
『もうそちらに勝ち目はない! 大人しくこちらの指示に従うんだ! 君の身の安全は────』
言葉の途中で高威力のビームライフルを撃つ。
少しだけ呼吸を整えながらシールドブレイドを構える。
「無駄な戦い? 敵じゃない? それを決めるのは私だよ。どうせお前達も……」
────
近くにいた機体にライフルの照準を合わせて引き金を引くと、飛び込んできたフリーダムがビームシールドを展開して防ぐとS4Uの両肩を掴んだ。
『キラッ!?』
ライフルはフリーダムのコックピットに狙いが付いている。フィアラが引き金を引くだけで
『何をしているキラ・ヤマト!? 殺されるぞ!』
ゼロの忠告に無視してキラはそのままフリーダムのコックピットから生身の姿を晒す。
誰もが何をやっているのかと思ったが、キラはこうでもしないと力づくで捕らえたとしても、フィアラが心を開くとは思えなかった。
こちらが本当に戦闘する意志が無いことを示す。先ずはそこから始めないと。
そしてこの状態なら、フィアラは撃たないと信じなければ。
インカムでS4Uに通信を送る。
「聞いて、フィアラ。僕達は君と話がしたいんだ。皆心配してる。僕やラクス。それに、フィアラがZEUTHで話していた子達も。だから話をしたいんだ、君と」
その言葉に何を思ったのか。フリーダムに向けられていた銃口は数秒カタカタと揺れていたが、腕を下ろした。
そして────。
『あっ!?』
S4Uのハッチが開き、中からパイロットが姿を現す。
キラ達が知る姿よりも成長して、髪も男の子のように短くなっていた。
頬に付いている傷はどうしたのか。
沸き出る疑問よりも、ただ生きていてくれたことを確認できて安堵する。
フィアラは手摺に掴まり、銀の髪が風に揺れながらキラに金の瞳を向けていた。