白ひげの性格考えたらこうなるだろ!って話 作:はないちもんめ
グランドラインの新世界のどこか
「何ぃ?ニューゲートの野郎が?」
部下からの報告にカイドウは眉を潜めながら問い返す。
明らかに不愉快な気分であることが目に見えて分かるので、報告した部下も慌てふためく。
「は、はい。ワノ国の方角に向かっていると。で、ですがあくまでも方角というだけです。本当にこちらに向かっているのかは未確定でして」
「馬鹿野郎。物事ってのは最悪を想定して考えろ。おでんは元とは言え、ニューゲートの船の隊長だった男だ。ニューゲートの野郎が会いにきたっておかしかねぇ」
むしろ自然だとカイドウは言う。確かに、ワノ国は鎖国しているので情報が他国に漏れることなどあり得ない。だが、ニューゲートが仲間に会いにきただけだとしたらそんなことはまるで関係ない。ただ、会いたくなったから来ただけだろう。
「ど、どうしましょう?白ひげを敵に回すのはいくらなんでも…」
弱腰の部下の態度に何時ものカイドウなら、馬鹿野郎と棍棒を振るう所だが確かに今は状況が悪い。
もう少しでワノ国を自らの縄張りにできる手前まで来ている。ここまでの時間をかけたこの作戦を無駄にすることは流石にしたくなかった。
「…おでんの処刑を早める。俺たちがワノ国に戻ったらすぐやるぞ。それと、近隣の配下の連中にニューゲートの縄張りを攻撃させろ」
「りょ、了解です。し、しかし、早めるよりも今すぐ処刑してしまった方が良いのでは?」
「それができればそうしてる。だが、万が一にでも逃げられたらどうする?俺しかおでんは止められねぇだろうが」
カイドウだって、できれば今すぐ処刑したい。しかし、自身がワノ国にいない以上、おでんを処刑するのは難しい。万が一にでも、逃げられたらそれこそ本末転倒だ。
「な、なるほど。了解です!で、では、今すぐ連絡とワノ国に戻るよう伝えます!」
「遅かったらぶっ飛ばすと伝えろ。タラタラやってる時間はねぇぞ!」
「たく、ワノ国にさっさと向かいたいってのにうじゃうじゃと馬鹿が湧き出しやがって…ロジャーのせいで馬鹿な海賊が増えたよい。とんだとばっちりだ」
ため息を吐くマルコのそばで座りながら新聞を読んでいた白ひげは返答のつもりか、ひとり言かボソッと呟いた。
「…それだけじゃねぇぞ」
「親父?どういう意味だ?」
「確かにアホは増えた。だが、最近の俺たちの縄張りへの侵略の多さは少し異常だ。しかも、増えたのはごく最近だ。もっと言えば、俺たちがワノ国へ向かい始めたら急に…だ。グラララ、どういうことか分かるかマルコ」
「…俺たちをワノ国に行かせたくねぇ野郎がいるってことかよい?」
「ああ、間違いねぇ。誰かとまでは特定できねぇが、おおよその検討はついてる」
「…カイドウか」
「グラララ、恐らくな。とは言え、あの鬼野郎の命令で俺の縄張りを襲ったって奴等が何人かいたらしいから間違いねぇだろう」
「しかし、そうなると目的が分からなくなるよい。何でわざわざカイドウはこんな真似を?」
「一つしかあるめぇよ。あの鬼野郎はワノ国を狙ってるのさ」
「独立国であのおでんが率いるワノ国を?幾らカイドウとはいえ分が思いんじゃ?」
「ああ、分かってる。海賊同士の喧嘩とは訳が違う。とは言え、あの野郎が並の海賊じゃねぇのも確かだ。国を落としたって聞いても驚きはしねぇよ」
バサっと音を立てて新聞を畳む白ひげを見てマルコは得心がいった。何故か、最初は自らが行こうとしていたのに途中から隊長たちを派遣してまでスピードを落とさずにワノ国を目指し始めた理由を。早くから、この可能性に気がついていた白ひげは戦力を割いてまでもスピードに拘った。幾ら万全の態勢で向かっても、事が終わっていたのでは意味がない。
「…親父…おでんのやつ、死んじゃいねぇよな?」
「アホンダラ。アイツがそんな簡単に死ぬ玉か。それに死んでたら、妨害する意味もねぇ。この妨害自体が生きてる証さ」
「まあ、そうだよな。アイツがそんな簡単に死ぬ訳ないよい」
マルコは安心したようだが、白ひげはマルコに言っていないことがある。確かに、白ひげが言っているようにおでんに加勢されないように白ひげを妨害している可能性も高いが、それと同じくらい既におでんを殺しているが国内が安定していないから白ひげを妨害している可能性も高いということを。それを言った所で船の進行スピードが速くなるわけではないということを分かっているからだ。
まあ、そんなことを言いながら、ロジャーのせいで行けなかったのであんな奴の言うことを聞くんじゃなかったと心中で散々文句を言いまくってはいるのだが。
間に合わなかったら、ロジャーの野郎をどうしてくれようか。死んでるから殴れねぇしなぁと考えていた白ひげにマルコがふと思いついたことを聞いた。
「親父。そう言えば聞きたかったんだが、さっきからイゾウの奴いねぇんだ。どこに行ったか知らないかよい?」
「ああ。アイツなら縛って船室に放り込んでる。折角だ、マルコ。飯でも運んでやれ」
「は!?何があったんだよい!?」
「居なかったから知らねぇだろうが、オメェと同じ結論に昨日至ったんだ。その結果、気が動転して泳いでワノ国にまで行こうとしたからぶん殴って気絶させた。その後にアホなことしねぇように閉じ込めてる」
「アイツ、アホかよい!?」
「グラララ、一国の幹部の座を捨ててまで海賊やってんだ。アホに決まってる」
まあ、俺はそんなアホは好きだがなと言って笑っている白ひげを見て苦笑した後にマルコは部屋を出て行った。言われた通り、イゾウに飯でも届けに行くのだろう。
一人になった白ひげはこの後の流れを考えた。
どうするか。最速で向かうつもりではいるが、このままでは間に合うか微妙だ。縄張りにいる家族を見捨てれば間に合うかもしれないが、家族を救うために家族を捨てたのでは本末転倒だ。その選択肢はあり得ない。
とは言え、間に合わないのであれば全てが無意味になる。一番の問題は圧倒的に情報量に差があることだ。あちらはこっちの船の進行速度まで掴んでいるのであろうが、こちらは今おでんが生きているのかどうかすら分からない。この情報量の差は戦いにおいて致命的だ。
とは言えどうするか…如何に白ひげとは言えど簡単に答えが出る問題ではなかった。
「親父。戻ったぜ」
「ジョズか。首尾はどうだった?」
「勝つには勝ったが、雑魚じゃなかった。生半可な奴が救援に向かったらコッチがやられる」
「そうか…」
他の縄張りに侵略してきた敵を討伐に向かったジョズの報告を聞いて、尚更白ひげの顔つきは厳しくなる。ジョズの言う通りであれば、縄張りを守るのにも気は抜けない。
「情けねぇ兄だぜ…弟一人救うことも満足にできねぇとはよ」
「親父?何の話だ?」
「何でもねぇさ」
「頼りにならねぇかもしれねぇけど、いざって時には頼ってくれよ?親父の頼みなら俺達は幾らでも体を張るぜ!」
頼りになる息子の言葉に、こんな時とは言え白ひげは薄らと笑顔を浮かべる。
そして、同時に気が付いた。この圧倒的な情報量の差を逆手に取る方法を。だが、それをすれば今度はワノ国での戦いに勝つことが出来るかどうか危うくなってしまう。勝てるのか?と一瞬考えたが、そう考えた自分を嘲笑った。俺は俺を誰だと思っている?
「俺ぁ、白ひげだ」
それは最強の称号。自分が負けることの意味を白ひげは良く知っている。負けることなど許されない。そして何よりも
家族のためならば、負ける気など毛頭ない。
「ジョズ!今船にいる隊長を全員集めろ!そして、電電虫を持ってこい!仕掛けるぞぉぉぉぉぉ!!」
多分、続けます!