お願いマスター   作:現魅 永純

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 全力でネタに走るという新鮮さに私の中のモチベーションが爆上がりしました。
 ちなみに藤丸くん、替えの服が無いために、特異点Fが終わるまでは上半身裸です。


異に散りゆく先行きは

 

 

 

『いやいやいや、ちょっと突っ込みどころがありまくるよ!? というかこの(ツッコミ)役は所長が担当するべき箇所でしょう!? なんで悟った様に澄んだ瞳で当然の様に佇んでいるんですかっ!』

 

「なにを言ってるの? 藤丸ならこの程度当たり前でしょう?」

 

「はい! 私も私を押し潰していた瓦礫を退けて守る為に膨張した筋肉で覆われた時はビックリしましたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、先輩ならば当然です!」

 

『膨張じゃないよね、進化してるよね明らかに! 最早別生命体だよアレ! というかマシュ、まず魔術師でない一介の人間がドラゴン相手に勝つ事に違和感を! ……いや、人間……? 人間なのかな……?』

 

「あはは、酷いなロマニさん。僕は正真正銘、タダの人間ですよ」

 

『君が()()()人間なら、僕はきっとミジンコだな』

 

 

 ───いや、実際のところ、()()()()()()()という点に関しては理解可能だ。立香は経歴的に魔術師ではないが、マスター適性は高く、魔術を決して使えないわけじゃない。サーヴァントやエネミーには神秘を含む攻撃がなければ通用しないが、魔術には神秘が含まれている。

 理論上、魔術さえ発動させていればダメージは与えられるのだ。

 しかしここで問題点が一つ。立香はどうやって魔術を発動させたのか。確かに魔術適性があるとは言え、それと使えるか否かは別問題。なんせ立香は、カルデアに来るまで魔術の“ま”の字さえ知らなかったのだから。ともすれば、魔術回路を開いていないのは一目瞭然。

 

 どれだけ優れた血筋でも、魔術回路を開く際には激痛を伴う。それは魔術師であれば誰もが知っていること。ともすれば、やはりおかしい。藤丸 立香という少年が医務室に運ばれたという事も、軽く蹲るという行動すら起きなかった事も。

 魔術回路が開いていないならば納得できる。しかしシャドウサーヴァント相手に殴り勝ったという事実を目の当たりにした以上、開いている以外の事実はあり得ない。

 

 

『……藤丸くん、これは至って真面目な質問なんだけど』

 

「? 今までは真面目じゃなかったんですか?」

 

『いやそういう訳じゃないけどね。何というか、全魔術師の沽券に関わる問題とだけ……』

 

「ああ、そういう……。ロマニ、この子に魔術関連の事を聞こうとしても無駄よ? だって藤丸、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『……!?』

 

 

 ロマンは驚愕する。

 そうだ。確かに自分の魔術の事を詳しく知らず、勘違いしたまま発動する魔術師は偶に存在する。無意識に使う例も無くはない。

 しかし、基本的に初回を除けば、全ての魔術師は意識して魔術回路を開き、魔術を発動せねばならない。無意識に、なんてのは、発動させるのが当たり前と言われるレベルまで使い込んで初めて完成するもの。その境地に、理解を示さないまま到達している。驚かない筈がない。

 

 というのも勿論一つなのだが。

 

 

『所長……いつの間にそんなに察しが良くなったんですか!? なんか余裕ある感じが納得いかないと言うか、最早別人……はっ、さては別人!?』

 

「グーで殴られるのとパーでビンタされるのとガンドで撃ち抜かれるの、どれがお好みかしら?」

 

『全てに対する拒否権を行使させていただきます。いえ、すみません。今のは全面的に僕が悪かったです』

 

「そう、二徹で働くに留めておいてあげるわ」

 

『ぐぉおお……中々にキツい条件だ。……それはそれとして、大丈夫かい? さっきから清少納言が喋ってない様だけど』

 

 

 別人なのでは? と、そう疑われたオルガマリーは心外だと非難する様にグー・パー・指銃を順番に披露する。いや、実際問題、マシュからしても今のオルガマリーの態度はロマニの意見に賛成気味だ。こう言ってはなんだが、オルガマリーは少々ヒステリック染みた部分が少々あり……常に余裕が無かった。

 普段からプレッシャーに耐えている。それこそ幼少期の頃からだ。寧ろそうならない方こそが変だと呼べてしまう過去。

 だからこそ、今軽口を叩けるレベルまで余裕を持ち、尚且つ周りのことにすら一瞬で気付いてしまう察しの良さに、驚愕せざるを得ない。

 

 しかし、それは良い結果だ。決して悪くなんかない。だからこそロマンは命じられた罰よりも、ほんの少しの嬉しさが勝り、口元を緩める。

 そんな自分に気付いたのだろう。ロマンは顔をムニムニと揉みつつ、先程から一切喋らずただただ後を着いてくる清少納言に話題転換した。

 

 

「清少納言さん?」

 

「どうぇっ!? な、なに? どしたのちゃんマス!?」

 

「いや、ボーッとしてどうしたのかなって」

 

「あ、うーん……どうしてあたしちゃんは呼ばれたんだろ、って思って」

 

 

 まあ、先程衝撃的な映像を見たのだ。生身の人間が汚染されてるとはいえサーヴァントを吹っ飛ばすなど、サーヴァントこそがビックリする事象。清少納言は特別強力なサーヴァントとは決して言えないが、それでも現代の人類相手なら普通に勝てる程度のスペックは持っている。

 これで驚かないのなら、それは立香の筋肉を見て逆にワクワクする様な戦闘狂くらいなものだろう。

 

 それとは別に、清少納言は自分が呼ばれた理由を問う。

 

 

「……そうだね、マシュさんと似て非なる存在ってどんな子なんだろうって」

 

「うん。……うん? え、それだけ?」

 

「あ、いや。勿論他にもあるよ? 戦力になるなら所長を護衛して欲しかったし、対抗手段は多くあった方がいい。そうでなくても、今存在するのはカルデアの人々だけではないって確信があるだけで、ずいぶん気が楽になるからね」

 

「いやいや! もうちょっと他にあるでしょ!? 私って一応サーヴァントなんだけど!」

 

「……?」

 

「マジなの卍なの!? 無理やり戦いの場に引き摺り出すとか───その、自分でいうのもなんだけど、死人な訳だし!」

 

 

 本気で他の理由なんて無いと、そう汗を散らして困惑しながら考えている立香に、清少納言は『何故自分で自分を追い詰めてるのだろうか』と思いながらも喋り続ける。

 それほどまでに理解不能だ。何せ清少納言の言ってる事は正しいし、魔術師ならば当然その手段を取る。合理的な手段なのだ。だから立香の言葉に困惑してしまう。

 

 

「死人なんだから死ね、なんてのは言えないよ」

 

「え?」

 

「意志がある。思考が存在する。願いがある。『生きる』って、命の有無だけを指すモノじゃないと思うんだ。だから君の名は後世に届き、この場に立っている。清少納言という存在は、()()()()()()()()()

 

 

 何処にしまっていたのか、立香は枕草子を取り出しながら喋り続ける。いやホントに何処にしまってたのだろう。今の立香の服はボロボロで、上半身は裸だ。下半身は超伸縮性アンダーパンツは履いているが、隠し持てる場所はない。

 二人以外の全員が共通して思ったが、突っ込んではいけない事だと理解してその場の話を優先させる。

 

 

「僕は生きている君の意思を尊重したい。それ以外を選ばせてしまっては、君の意思を殺してしまうから」

 

「ちゃんマスぅ……♡」

 

 

 あ、今度こそ完全に堕ちた、と。オルガマリーとロマンは理解した。マシュは純粋に「なるほど、生きるとは命を指すだけでない……」と感激を受けたように言葉を繰り返す。

 それぞれがそれぞれの感性に揺れる中、ロマンは一つ気付いたようにはっとする。確かに藤丸が並外れた力を持っているのは理解した。しかし汚染されてるとは言え、シャドウサーヴァントという存在への脅威は本来拭えるモノではない。

 マシュやオルガマリーが怯えを見せないのは、既に体験した事だからでは? と。最早確信にも似た推測を立て、それを前提にオルガマリーに問い掛けた。

 

 

『所長、倒したシャドウサーヴァントは何体ですか?』

 

「……そうね。ロマニ、これは前提として言わせてもらうわ。この特異点は、本来あった聖杯戦争を塗り替えた結果の異界。つまり、サーヴァントは全てで七機。もちろんイレギュラーがあれば別だけど」

 

『はい。つまり七騎引く倒した数が、残りの数となる』

 

「私達が遭遇したのは『アサシン』『ライダー』『バーサーカー』『ランサー』『キャスター』よ。推測通りなら、残りのサーヴァントはセイバーとアーチャーの二騎」

 

『……うん。なるほど。所長、貴方が先ほどの光景を見ても平然としていた気持ちがわかりました』

 

「でしょ? あれはもう、ああいう生物だって捉えないとダメよ」

 

 

 きゃははーと。物凄く楽しそうに立香の腕に捕まってぶら下がる清少納言と、興味深そうに立香の筋肉を触るマシュを見て、二人は溜め息を吐く。だって遠近感がおかしい。先程までは背の高いお兄さんくらいのレベルだったのに、今やマシュと清少納言二人とも覆えそうなほど筋肉が膨張しているのだ。

 この光景に呆れるなという方が無理である。

 

 ───と、そんな呆れに現を抜かせるのも、この一時(ひととき)だけ。

 

 

「おっと、私の腹筋が通るぞ」

 

 

 ───整備が万全ではないとは言え、カルデアの魔力感知を潜り抜けて登場した目の前の腹筋…ではなく、サーヴァントに、立香はずっと見せていた笑顔をやめて即座に清少納言とマシュの前に立ち、振るわれる剣を横からかち割る。

 腹筋……じゃなくて、サーヴァントが持っていた武器の方翼は崩れるが、直ぐに魔力が迸り、先程と全く変わらない剣がその手に納められた。

 

 

「ふっ……気分は最悪だが、これは素晴らしいな。聖杯をこの様に使うのは、少し贅沢だが」

 

「アーチャー……」

 

「おはよう。いや、こんにちは、か? 少し話を聞いていたが、実に愉快だったと言わせて貰おう。まさかキャスターを倒すとはね」

 

「キャスターを?」

 

「いや実に愉快だとも。別に汚染されていた訳ではあるまいに、諸君らに倒されるとはね」

 

「汚染されてたわよ? だっていきなり藤丸に襲いかかってきてたし……あれ? でも貴方や他のみたいな黒いモヤは無かったような」

 

「クク……なるほど、あの大馬鹿者め。そこのキン肉マンでも見て闘争本能が働いたか。いずれにせよ、次に会った時は全力で煽ってやろう。「キャスターが死んだ! この人でなし!」とな」

 

 

 圧倒的なまでの自業自得である。

 最初から交渉を仕掛けておけば、立香に殴り倒される事もなかったのだ。アーチャーとキャスターの関係性は知らないが、普通に自業自得なので庇う必要はない。

 

 

「さあ構えろ、人類最後のマスター。貴様の実力を見極めさせて貰うぞ」

 

「───……」

 

 

 

 

 

 

 

「いや誰か登場時の台詞に突っ込めよ」

 

 

 





 連載する以上、FGOを見直さなければ……見直さなければ……。
 地獄かな?

 いや、登場するキャラとなんとなくの流れを覚えれば、あとはぐだおさんが何とかしてくれるな。よし。
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