お願いマスター   作:現魅 永純

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 FGOは詰みゲー(確信)
 この作品でのこの特異点最大のガバは何だと思う?

 兄貴をネタだけでは済ませなかった事さ……。


ヒトの歴、チリとなる

 

 

 

「くっ……」

 

「そんな……先輩が、押されてる……?」

 

 

 ───腹筋……ではなく、アーチャーの登場から約5分。その間に立香が攻撃を与えた回数は0。それに対し、アーチャーは既に数十発もの剣を喰らわせている。

 今までシャドウサーヴァントを相手に瞬殺してきた立香の押されている光景だ。当然今までを見てきた彼女たちは驚愕を隠せない。……何故かロマンは「だよね、普通はそうなんだよね!」と若干歓喜気味だが。

 

 オルガマリーは投擲、遠距離系の魔術で援護に回っているが、アーチャーは意に返さず当たり前であるかのように回避し続けている。

 苦しい様子で息を吐くカルデアの面子に、アーチャーは一つ嘲笑を零して剣を前に突き出した。

 

 

「一つ、教授してやろう」

 

「……」

 

「シャドウサーヴァントに知性はないが、理性と染み付いた感覚はある。だがステータスの変更による感覚変化に、身体がついていかない。だからこそシャドウサーヴァントは、本来のサーヴァントに酷く劣っている」

 

「……知性なく存在する理性が、感情を素直に出してるんだね」

 

「そう。貴様の筋肉とマッスルフォームには驚くものばかりだ。そしてその一瞬でしとめられる攻撃力の高さにも称賛するとも。しかし、通常サーヴァントに対してはそれほど通じる手段でもない。特に私のような小狡い手段を考えるサーヴァントにはね」

 

 

 目の前にいるアーチャーは、間違いなくシャドウサーヴァントだ。ロマンの観測で魔力が汚染されているのは確定している。しかし汚染度はそれほど高くなく、知性も理性も持ち合わせている。

 他のサーヴァントとは違うそれに、まるで試練でも与えられてるかのような感覚に立香は陥った。

 

 

「貴様はそれほど足は速くなかろう? それならば私のスキルでも防ぎ切れる。……ふ、それほど消耗した後であれば、高火力の宝具一発で充分か」

 

 

 そして紡ぐ。先程も幾度となく繰り返された詠唱。低く響く、そして何かに干渉している気配を感じるその威圧感。

 現れた白銀の鋭い槍の様な剣。矢の形へと変化したそれは、ロマンを驚かせるには充分だった。

 

 

『今度は赤原猟犬(フルティング)……! ベオウルフの宝具だ! このサーヴァントは一体何なんだ!?』

 

「チャージ10秒……さて、どうする? この宝具は、40秒のチャージではかの騎士王すら防ぎ切れない代物。突っ立っているだけでは貴様らの全滅が確定するだけだ」

 

「どっ、どうすんのちゃんマス! あれマジでヤバイ感覚ビンビンたってるよ!」

 

「……藤丸、考えでもあるの?」

 

「すみません、無いです。今闇雲に追いかけても、彼は回避し続けるでしょう。僕に彼を止める術はない」

 

「そんな……」

 

「チャージ20秒───」

 

「だからマシュさん、貴方に頼みたい」

 

「え……?」

 

 

 自分たちだけじゃない。救えるかもしれないこれからの未来の死すら迎えるかもしれない、カウントダウン。もう既に半分を切った。深刻な顔で言い切った立香に唖然としたマシュへ、立香は真剣な表情で視線を合わせる。

 

 

「僕達を、守って下さい」

 

「───」

 

「貴方だからこそ頼める。それは貴方の力が、きっとそういうものだから」

 

 

 立香には、生まれ持った才能があり、それを磨く為の努力を怠った事はない。だから誰に何が出来るか、何処まで出来るかという勘が非常に鋭くなっている。

 マシュ・キリエライトという人間が、デミ・サーヴァントになったというのは、一目見た瞬間に確信を抱いていた。肉体の在り方がアンバランスなのだ。あらゆる筋肉を見てきた立香だからこそ理解できる。

 でも、アンバランスだからこそ、何に特化した筋肉なのかがよく分かる。

 

 

「でも、力と精神力はイコールじゃない。だから強制は出来ません。万全の精神でなければ、筋肉は万能になり得ない。……安心して下さい。貴方が嫌と言うのであれば、僕はこの腕一本を犠牲にしてでも、あの矢を止めますから」

 

 

 力強く、今まで無意識に発動していた魔術をほんの少し意識的に発動し、魔術回路を腕に浮かばせる。感覚の逆算。幾度となく無意識に使い続けた『強化』の魔術は、『硬化』の効力を以って発動される。

 確かに彼の筋肉に魔術のブーストを掛ければ、腕一本を犠牲に受け止める事が出来るかもしれない。しかしそれは、マシュ・キリエライトという()()()()()()()()()()()()()───そして彼女に与えられたクラスの意地が、決して許さない。

 

 いや、それ以上に。

 今まで守られてきた事実。支えるべき相手に守られてきた、事実。

 悔しくて、それでも尊敬して、でもやっぱり悔しくて。追いつけないんじゃないかと悲しくて、彼の役に立てるような後輩になれるのかと卑屈になって。

 そんな自分を、彼は優しく宥めて、そして()()()()()()。ずっと自分よりも前に居たはずの先輩が、頼ってくれた。

 

 それに答えずして、何が後輩か。何がサーヴァントか。何が、盾騎(シールダー)か。

 故に立ち上がる。この状況ですら一個人の精神状態を心配してくれる、心優しい先輩(マスター)の為に。

 

 

「いえ、やります!」

 

「───うん、任せるよ! さあ盾を前に突き出して! 盾は両手で支えて、片足は一歩下げる! 腕だけじゃなくて、全身で盾を支えるイメージ!」

 

 

 ずっと見てきた。カルデアでのトレーニングルームでも、率直に言ってウザい程に繰り返されて、見続けてきた完璧なポーズ。

 だから自分にもきっと出来る。見本なんて幾らでも見てきたのだ。これで出来なければ、後輩の名が廃る。

 

 

「……40秒

 

 

 その()に魔力が集う。邪悪で強力な魔力は、対象を睨み続ける。それは永遠の猟剣。対象を喰らうまで幾度となく追いかける。

 弓に番われたそれは、一息の間に放たれた。

 空間を切り裂き、時空を超えたと錯覚させる音速。着弾までほんのコンマ数秒。その一瞬で世界の運命が崩れ去る。

 だが、一瞬など。英雄の覚醒には充分すぎる時間。

 

 ある英雄は、人が本来乗り越えられない12の試練を乗り越えた。ある英雄は、幾度も神殺しを為した。ある英雄は、何千キロと離れた場所へ一寸違わず矢を届かせた。

 そんな偉大なる英雄が存在する。ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

赤原猟犬(フルティング)───ッ!」

 

 

「はいッッ!」

「サイドっ、チェストォオオ!」

 

 

 

 爆発音。魔力の爆発。40秒もチャージされた威力に、無限追尾。技量だけでは決して防ぎきれない、アーチャーのとっておきの一つ。

 大きな煙に囲まれたその場を見て、アーチャーは一言。

 

 

「……やったな」

 

「うん、やったね!」

 

「ッ!?」

 

 

 背後からの響く声。間違いなく「僕達の勝ち」という意味を持たせた上で放たれたその言葉に、アーチャーは咄嗟に振り返る。

 目の前には立香。その筋肉は先ほどまでよりもほんの微かに縮小されてる様に見え、下半身が膨張していて、その脚には魔術回路が浮かび上がっている。しかも表面上に濃く浮かび上がってるだけでなく、その内側からさえも薄らと。

 走るという行為に於いて最も重要なハムストリングスに強化を掛け、その上で身体的能力を全面的に支援する脚全体。そしてそれを支える骨に強化を掛けたのだ。

 

 元々陸上選手並みの速さを持っていたその脚は、魔術によって強化されることで何倍もの能力を獲得する。その速さは、瞬間移動と錯覚してしまう程。

 

 

「アーチャー、君の敗因は一つ」

 

 

 脚全体に浮かんでいた魔術回路は腰へと移り、また手から肩にかけての腕全体にも浮かび上がる。アーチャーは回避行動を咄嗟に取るが、上から降ってきたマシュの盾によって移動を遮られる。

 幾ら無数の修羅場を乗り越えてきたサーヴァントでも、絶体絶命の時には焦燥が現れる。英雄ならば確かに乗り越えるかもしれない。でも、完成してしまった英霊(サーヴァント)に、もう乗り越えるなどという概念は存在しない。

 

 あるのは、運命(Fate)的な必然のみ。

 

 

脅威を僕としか認識してなかった事さ(死亡フラグを建てたからだ)!」

 

「なんでさっ!!?」

 

 

 ───いや、そもそも単なる魔術師ですらない人間単身がサーヴァントの脅威になる事が有り得ない訳で、寧ろアーチャーはその脅威を脅威と認識した。それは褒めるべきだろう。

 しかし、かの騎士王すら防ぎきれなかった宝具をデミ・サーヴァントが受け止めるなどという想定などできまい。それだけアーチャーはセイバーの実力を知っている。信じている。その信頼を超えたからこそ、立香は攻撃を与えられたのだ。確かに、見通しが甘かったかもしれない。

 

 地平線を(なぞ)る様に綺麗な横っ飛びを見せながら吹っ飛ぶアーチャーは、未だに上がり続ける煙の中に突入し、その中で煌めく幻想の欠片をその目に焼き付けた。

 自分が憧れたかの騎士王の、夢見た理想郷を築き上げる、一つの欠片(ピース)。幻想の城。

 

 アーチャーは目を見開き、閉じ、そして微笑みながら地面へと突き刺さる。

 顔の半分は地に埋められながら、ピンと張った足が消滅を始めるが、特に気にした様子もなくアーチャーは言葉を紡いだ。

 

 

「ふ……なるほど。確かに彼女は、何も自分だけでその円卓を築いた訳ではない……か」

 

「いや弓の腹筋さん、頭ダイジョブ? 突き刺さってんだよ? そのまま喋ってんの、二つの意味でダイジョブ?」

 

「……! これは新しいマッスルポーズ、『アースタンド・アップライト』!」

 

『普通に突き刺さってるだけだよ、藤丸君……』

 

 

 かなり心にクるモノをその目に映したアーチャーはポツリと感激を溢すが、格好が格好ゆえにあっさりとは見逃せない。清少納言は至極真っ当なツッコミを披露し、立香は何事も筋肉へと繋げ、ロマンはそれに突っ込む。

 いやもうホントに面白い突き刺さり方だから無視する事が出来ないのは分かるが、彼の意図を汲み取るべきだ。其処は流石のマシュ。まだ純粋な心を持つ彼女はアーチャーへと近付き、蹲み込んで彼へと問い掛ける。

 

 

「アーチャーさん……先程の剣には、貴方の意志が込められてる様に感じました。これを乗り越えられたのなら、と」

 

「……いやはや、何のことかな? 私は私の役目を果たすまでだ。実際、アレを防いだのは予想外だったモノでな。……しかし君の()()()()私の剣を防いだのは、ある種の運命と言うべきか……」

 

 

 どれだけ憧れようとも、どれだけ傍に居続けていたとしても、自らの望みを憎む形であれ叶えてしまった以上、自分は憧れの存在の下には立てない。その下に立つ者に、拒まれた。

 皮肉げに口元を歪めたアーチャーは、腰まで消滅が達しているのを確信し、マシュではなくカルデアへと告げる。

 

 

「いいか。この特異点は、仮にも聖杯戦争の地だ。その聖杯に呼び出されたサーヴァントが競い、勝者を決め、その万能機を掴み取る為の戦い。当然最後に残った者が勝者となり、その聖杯を手に取る事が出来る。そして」

 

 

 その消滅が首へと届いた時、強大な魔力反応が浮かび上がる。漆黒ではあるものの、堕ちたものの、その意は決して揺るがない聖剣の輝き。

 天に届く、その刃は───立香達が集う、その場を飲み込もうと放たれる。

 

 

「この場に残る聖杯戦争のサーヴァントは、()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 





 これは負けたな(確信)
 失踪するしかねぇ……。ダイジョブだぁ、きっと抑止力がなんとかしてくれるべ(他力本願)
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