お願いマスター   作:現魅 永純

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 今話から書き方を少しだけ変えます。見辛かったらすみません。一応前話までの話は弄ってないです。今話の書き方で問題ないならば修正しますね。

 クッソ私が淫夢支援者ならば上手いこと「初投稿です」ネタを使えたのに……!



元世を想き

 

 

「くっ、ぁ……!」

「マシュ!」

 

 

 マシュと盾は弾かれる様に地を離れる。しかし黒い光が彼らを呑み込む事はなく、マシュが弾かれると同時に消失した。

 セイバーは何処か寂しげにマシュを見つめながら剣を構え、魔力を充填。オルガマリーは急いで治癒魔術を掛けるが、応急処置もいいところだ。直ぐには治らないし、失った魔力の充填は即座に行うのは無理である。カルデアも今は万全の体制ではない。

 

 ───でも、今の“防ぎ”で盤上は整った。

 

 

「令呪を以って命じる」

「その娘はもう使えないぞ?」

「───()()()()、宝具を!」

「おけ、ちゃんマス!」

「……!?」

 

 

 この場にいるもう一騎のサーヴァント。優秀と言われている三騎士の一つたるアーチャーのクラスでありながらも、弓すら持っている様子がない、自他認める弱小サーヴァント。セイバーも大した魔力を感じていなかったからこそ警戒をしていなかったが、“宝具”とまで言われてしまえば流石に警戒は高まる。

 そしてもう一つ。ランクダウンこそしたが未だに残る『直感』のスキルが、()()()使()()()()()()()()()と騒ぎ出す。

 

 

「くっ……!」

「っ、出力が溜まりきってないなら、僕でも防げるよ!」

「しまっ」

 

 

 直感は100%の感知能力じゃない。やるべき事を教えてくれるスキルでもない。だが反転する前のそのスキルは非常に優秀で、騎士王を王たらしめた能力の一つだ。だからこそ、セイバーはそのスキルを信じる。記録に残り身体に染み付いてる感覚が、ランクダウンしているそれを信じさせてしまった。

 結果、強化を重ね筋肉を膨張させた立香によって、傷こそ残してはいるが防がれてしまう。

 

 

「───『理想は守護にあり』」

(詠唱式かっ、侮るな! その時間を私にも与えるのと同義! 宝具ごと我が聖剣で薙ぎは───ら、う……?)

「『海の如き空、生命(いのち)の地、斯くたるは運命(さだめ)未来(さき)為りて』」

 

 

 魔力の流し方が可笑しい。あくまで感覚的なものではあるが、本来宝具を放つ場合は『何かに収束』し『凝縮』して放つのが基本だ。広範囲であればあるほど、その威圧は一部に集まる。最初からバラけさせて放つのは威力を最低限にまで減らす最悪手だ。

 だが、そもそも根本的から宝具の在り方が違う。現在の清少納言の魔力は『包み込む』形で発動されていた。

 

 

「『()()の繋ぎ手なり』───つまりこの世はいとエモし!」

「まさかこれは……ッ」

 

枕草子・春曙抄(エモーショナルエンジン・フルドライブ)‼」

 

「固有結界か!?」

 

 

 セイバーの魔力は、まだ溜まりきっていない。でも放つ他は無い。固有結界とは、固有結界という枠組みであるだけで厄介な能力。本来ならば存在するかも怪しい、魔法に近しい力ではあるのだが、確実に存在しているとセイバーの霊基は覚えている。

 だからこそ、固有結界を発動させる前に倒さねば、それこそ聖杯を持った騎士王でも負けてしまう可能性があり得る。故に立香が防がない事を願った超速攻。しかし、放たれた黒き光は、清少納言の魔力によって上書きされた。

 

 ───固有結界(リアリティ・マーブル)。現実世界を心の在り方で塗りつぶす、魔術の最奥。術者のただ一つの内面を映し出す心象風景の具現化……()()()()、こと清少納言に於いては別物となる。

 清少納言が放った宝具は間違いなく固有結界だ。しかし固有結界内部の風景は、個々によって変わりゆく。清少納言が感じたもの、清少納言が与えられるもの。そして何より、対象者に於ける『懐かしさ』を思わせる風景を強制的に見せる。

 相手を閉じ込め、相手の攻撃を無に帰し、相手の戦意を削ぐ。幻想的に美しく、そして残酷な宝具である。

 

 緑が広がる大地。見上げる空は海の様な青空。温かな風が吹く中で、選定の剣が目の前に立つ。一度目を閉じ開けば、円卓の場。目を開けば必ず居た筈の幾多もの騎士は居ない、空っぽな場所。再度目を閉じ、そして開く。天からの光が湖を差し、幻想的な光景を───

 

 

「ふざけるなっ!」

 

 

 その上から塗りつぶす様に放たれる、黒い光。木を呑み込み地を抉り、光を斬り裂く反転された光。

 それが晴れる頃には、()()()()()()視界に広がっていた。確実に抉り取っていた筈のモノが、一瞬で再生して。

 

 

「ふざけるなっ、ふざけるな!」

 

 

 何度呑み込もうと、何度破壊しようと、必ずその幻想は蘇る。それこそ星を破壊し得る『対界宝具』や『対星宝具』クラスの威力がなければ何度でも再生するだろう。

 セイバーは怒り狂う。

 

 

「朽ち果てぬ理想などない! 追い求めていたモノに絶望する事など何度体験すると思っている!? 諦めなければ叶うとでも言うつもりか!?」

 

 

 何度も、何度も。溜めなど作らず、その魔力を何度でも振るい続ける。

 

 

「それを悟ったから私はこの姿となった! 無情な王として生涯を終えた! なのに……」

 

 

 破壊しては再生し、破壊しては再生し───やがてセイバーは、塞ぎ込む様に縮こまる。

 

 

「その無情たる王故に、理想を貫けたとでも言うつもりか……っ!」

 

 

 セイバー、騎士王アーサー(アルトリア)・ペンドラゴンの反転していない状態が持つエクスカリバーは、その強力さ故に円卓による封印がなされていた。その封印が全て解けたならば、対星宝具にまで届くほどの力を放つことが出来る。

 つまりアーサーは、常に星を破壊出来るだけの───この固有結界を破れるだけの力を秘めた宝具を持っていたと言っていい。しかし反転されたセイバーは、せいぜい対城宝具のレベルまでが限界である。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()、理想を叶えられなかったとでも言うかの様に。()()()()()()()()()()()()()()()()()、理想を叶えられたのかもしれないと言うかの様に。諦めたからこそ堕ちたその姿で理想を貫けと言う様に、この固有結界は美しい(残酷な)幻想を突き付ける。

 

 

「ん〜、ぶっちゃけそこまで考えてないんよね。あたしちゃんは見てみたい光景を、思ったインショーを綴っただけだし」

 

 

 だがそんな考えは一切ないと、縮こまるセイバーの前に清少納言が現れる。

 

 

「ちゃんマスが諦めない顔は素敵……じゃなくて! ちゃんマスやなすびちゃん、ちゃんマリーなんかさ、みんな目の前の事に必死になってる。守りたいモノを守ってる。そりゃ王サマも守りたいモノはあったんだろうけどさ」

 

 

 セイバーが顔を上げれば、清少納言はとびっきりの笑顔でピースサインを見せながら、言い放った。

 

 

「義務感とかそういうの全部無視して、自分の感情に従ってみても良かったんじゃない?」

「……はっ、感情だと? 不老の身を授かり、龍の因子を持ち、冷酷無比に徹したこの私に感情任せに動けと!? そんな事で救われる民が何処にいる!」

「少なくとも、王サマは救われるんじゃない? あっ、王サマに想われた人もか」

「は……?」

「あたしちゃんとか王サマも、みんな“人”なんだよ。当たり前の感情があって、当たり前の想いがあって。それで『生まれもったのだから、その力を使え〜』なんてさ、すっごいバカらしい。結局は本人の意思を無視する為の体の良い言い訳じゃない? まるで力ある人を機械と認識してるみたい」

「……私は望んでこの道を歩んだ」

「頼って欲しかった仲間の声を無視して歩む事が、本当に望んだ道だった?」

「ならば私は、どんな道を選べば良かった!」

「さあ?」

 

 

 怒りと共に湧き上がる虚無感。そう言われたとて、“信じる”だけで開かれる道ならばそうしただろう。しかし宮廷魔術師の眼があればそれを見抜いていた筈だし、セイバーだってそれに従った。でも無かったのがこの絶望の結果である。

 過去を振り返り、叫ぶセイバーに、清少納言はすっとぼけた様な顔で首を傾げる。

 

 

「どんなモノ選択したって、きっと後悔はある。それが人だから。……つーかさ、こんな堅っ苦しい話やめない? どうせもう過ぎた事なんだしさー、「後悔がある」でいいじゃん! それを受け入れようが受け入れまいが当人の勝手だよ! あたしちゃんはもう考えるのがメンドイ!」

「おい」

「にっひひ〜、可能性なんて幾らでもあるんだもんねー! 王サマの知りたい答えなんか、我儘に生きた王サマが教えてくれるんじゃない? 知らんけど!」

「……ふっ」

「あっ、笑った? 笑ったよね!? うっそ美形だと思ってたけど予想以上に可愛い! いやまああたしちゃんには及びませんけど! ……うん、及ばないかな? でもファンデとか無しであの美白肌はおかしくない?」

「先程まで攻撃されていたというのに、呑気な事だな」

「だって昨日の敵は今日のホモ! じゃなかった、友って言うっしょ? 王サマの攻撃する気配なんてもうしないし、一緒に語り合おうぜい!」

「何を語り合うと?」

「…………チェケラ〜!」

「能無しか、貴様。……ふっ、確かに戦う気力は……もう無くなってしまったな」

「イェーイ、あたしちゃんの勝ち! なんで負けたか明日までに考えといて?」

「ぶん殴ってやろうか」

「ボーリョクハンターイ!」

 

 

 ダブルピースで満面の笑みを浮かべ煽りまくる清少納言に、セイバーは苛立ちながらもスッキリとした表情で空を見上げる。直接的な攻撃を喰らった訳でもないのに、霊基にダメージが入った様に体は動かない。大の字で寝そべるセイバーの隣で、全くの警戒心も無く、本当に友達と横並びになる様に、清少納言は寝そべった。

 

 

「……もし同じ時をもう一度過ごせるとなった時、今度は円卓の皆と友人の様に振る舞いたいと言ったら……貴様は笑うか?」

「全力で笑う」

「はは、ぶっ殺す。……貴様はどうだ? もしもう一度同じ生を送れるとして、貴様はどんな道を選ぶ」

「あたしちゃんはー、そうだね」

 

 

 世界が光に包まれる。幻想的なモノではない。世界の終わりを告げるが如く、結界は崩れゆく。

 そんな中で問われた「同じ生の行く末」。さてどんな奇天烈な答えを言うかと考えていれば、清少納言は聖母にも似た優しい笑みを浮かべながら胸元に手を置き、答えた。

 

 

「何度でも、同じ生を歩んでたよ。私は定子様が、大好きだから───」

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

「なるほど、つまり固有結界とは……」

「そう。魔術師が目指すべき境地で、使い手がいるなら誰もが求める対象よ。サーヴァントだもの、使い手が居ても不思議ではないと思っていたけれど……まさかあの娘が使い手とは想わなかったわ」

『……! 魔力反応だ。藤丸君、気を付けて。固有結界は必殺の技じゃない。必ずしもセイバーが倒されているとは』

「いえ、ドクター。アレは……」

 

 

 聖杯のリンクがセイバーと繋がってる以上、固有結界の外側にいる立香達はやることが無い。清少納言への祈りと、知識不足な立香への説明を行なっていると、やがてこの場の一部が光り輝き、魔力反応を示す。

 魔力反応がある以上、倒した訳ではないだろう。だからこその警戒への催促。しかしそれに被せてマシュは声を出す。その視線の先にいるのは、大の字となって倒れているセイバーと、立香を見てピースサインを送る清少納言の姿だった。

 

 その場の三人は顔を見合わせ、走り気味に二人へと近付いていく。

 

 

「……全く、無様な姿だな。座に携わる王が寝っ転がり、ただの兵に見下ろされようとは」

「いえ、そんな……」

「藤丸 立香。人類最後のマスターよ、貴様に問おう。既に滅びが確定されてるにも等しいこの世を、何故救おうと足掻く?」

 

 

 ───世界を滅ぼせるだけの力となれば、例え元凶の見当が付かなくとも、それだけ強大な敵だというのは馬鹿でも分かる。それを理解して立ち向かうというのは、それが出来るのが自分だけという義務感からか。

 それでは自分と……。そう思い、先程の幻想とは違う真っ赤に染められた空を見上げていると、立香は迷う素振りもなく答えた。

 

 

「折角出来た後輩や友人と、もっと過ごしたいから。……じゃ、ダメですかね?」

「……なるほど、人理を救う気は更々ないと」

「いや、まあ……僕も人間ですし、寿命いっぱい筋肉を鍛えたいです。その為に必要なのが世界存続なら、世界も救わなきゃなー……って」

「いや其処まで筋肉に拘るか、もうちょい生に拘れよ。……うん? でも筋トレするには生きなきゃいかんし、結果的にはそうなるのか……?」

「っはは、何たるエゴイストか。貴様の方が余程王に相応しい。……そうさな、一つ忠告を入れておこう」

 

 

 爽やかイケメンスマイルはほんの少し困り顔になりながらも答えを出す。何処までも筋肉に拘る立香に清少納言は思わず突っ込むが、結果的には普通の人が出す答えを言ってるのかと混乱。

 セイバーは思わず笑みを溢し、一息吐いて言葉を紡いだ。

 

 

「藤丸 立香。貴様の今の状況は……まあ違いは当然あるが、私の生前と似ている。よく覚えておけ。義務感を以って及んだ結果が、アーサー・ペンドラゴンという生だ。義務感で世界を救おうとしたその時、貴様は私と同じ場に堕ちるだろうよ」

「……そう、かもしれませんね」

「ふっ、ここで『違う』と言わないのが貴様の美徳だな。分かっているならば皆まで言うまい。……そして次に一つ、頼んでおこうか」

「頼み?」

 

 

 セイバーはマシュの盾に視線を移すと、やがて地に手を着けて体を支え、無理矢理に身体を起き上がらせようとする。立香が背中に手を当てて支えると、セイバーは右手の甲を立香の心臓部分に当てた。

 

 

ホントに凄まじい筋肉だな……んっん。……人理を修復した後でもいい。いずれこの私を呼び、貴様の結末を見せろ。感情を基に我儘な生を送った貴様の、旅の果てをな」

「……貴方を呼べたのなら、百人力です」

「ふ、だろうな。そこの物書きよりは、ずいぶん役に立つだろうよ」

「おい流れであたしちゃんをディスるな。王サマを倒したのあたしちゃんなんですけど!」

 

 

 クックックと喉を鳴らす様に笑うセイバーと、いつの間にかパリピモードな混合髪色と服装に戻っている清少納言。普段の笑みで立香が見守っていると、やがてセイバーの左腕が消滅を始める。

 

 

「む……もう退却か。マシュ・キリエライト……と言ったか?」

「は、はい! 王よ! ……?」

()()()()を、貴様に託すぞ。唯一無二の盾で守り抜いて見せよ」

「勿論です……!」

 

 

 何処か()()()()()()()()()()()()()()()()()()に、マシュは疑問符を浮かべるが、託されたモノは議論の余地も無い当然な事。心臓部分に拳を置き、片膝を着き、頭を垂れて誓いを交わす。

 

 ───聖杯の付近から、コツコツと足音が鳴り響いた。

 

 

 

「全く、忌々しいガキどもだ」

 





 一体ナ/ニ・ライノールなんだ……!?
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