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私は思った。
尽く分体を葬り去り、思惑を砕け散らせたあの男を殺さねばならぬ、と。
別段、人間一人などどうとでもなる。
だが、あの男は別だ。
人間ではあるが、魔術師ではない。
しかし、「私を挫く」という一点において魔術師以上の実力がある。
男本人はただ生きるためだけなのだろうが、ああまで挫かれると、あまりにも面白くない。
で、あるならば面白くない種は発芽する前に摘まねばならない。
ただの我儘だった。
“私”の中で私は幼いほうだった。
それ故にこんな我儘を言い出した。
さて、実行してしまおうと重い腰を上げたとき。
私はあることを思いついた。
「ひとつ、実験と行こうじゃないか」
その実験が打ち砕かれなければ、今度こそコチラの完勝だ。
何度か試行錯誤すれば、すぐにルートが開拓できるだろう。
そうすれば、今までの敗戦は流されあの男を手玉にとれた功績だけが残る。
その上、あの男を狂わせられればなお良し。
神にとってメリットとアドバンテージしかない実験だった。
「そうだ、人間の世界にあるゲームを使おう」
なおのこと、面白くなるはずだ。
私は嗤う。
「あの男の死は、我が主への贄に」
そうして、舞台は整えられた。
私の作り上げた箱庭に、ヒトが幾人か堕とされていく。
はてさて、‘‘私’’が畏れた男はどんな結末を迎えるのかーーーーーーーーー。
こうして、改まるのは好きじゃあないが仕方ない。
名乗っておこう。
俺の名前は“榊龍吾”だ。
警察本庁特務……まぁ変な部署に押し込められた警部だと思ってくれ。
今の俺は、仕事を終えて帰路に着くところで……。
つく……ところで……。
……。
…………。
………………。
俺が目を覚ました場所はベットの上だった。
家に着くなり寝落ちしたのか、と肩を竦めて起き上がる。
が、そんな平凡な考えはすぐに打ち砕かれた。
「……は、ここどこだよ」
真っ青な天井、壁紙、黒くてらてらと光を反射する床。
俺には、全く身に覚えのない場所だった。
まるでホテルの一室のようなこの部屋には、どうやらシャワールームやドライヤーといった、
日用品も完備してあるらしい。
これでは本当にホテルだ。
「……また何かに巻き込まれたのか。とりあえず、出るとするか……」
俺は、部屋を後にした。
廊下も、目が痛くなるようなブルーハワイの壁で。
あろうことか照明で青く染め上げられているようだ。
そんな場所に場違いともいえる絢爛なネームプレートが目に入った。
“合歓樹”と書かれたプレートがドアに張り付けられていた。
俺はその名前を見て、酷く慄いた。
その名前は、同じ部署の部下の名で―――――端的にいえばオカマなんだが―――――
俺は呼び鈴など気にも留めず急いでドアを叩いた。