ギィ、と引きずるような音を立てて扉はひらいた。
中を見てみると、広い体育館の様で天上はとても高かった。
「うっわあ、広いですね!6チームぐらいバスケできそう」
「しないだろ……」
再び視線を下に戻すと、幾人かの人とボールが転がっていた。
バスケットボール、バレーボール、サッカーボール……。
「いや、サッカーは可笑しいだろ……」
「あぁっ!?」
酷い悲鳴が、近くに響いた。
「警部、警部ゥッ!いらっしゃったんですね!」
「うっわ、ひっどい顔」
この泣きはらした顔を見せてくるのは、《袖合縁人》。
ビビりで血も死体もダメなクセに、一課の警察官だ。
どうせなら、交安に行かせるべきだったろうにといつも思う。
階級は巡査。一応は、《合歓樹》の部下にあたる。
「よ゛がっ゛だ!ぼぐだげじゃな゛がっ゛だ!」
「泣くな袖合。服が汚れるぞ」
「ううっ……、僕、知り合いがいないんじゃないかと……」
いないほうが良かったのでは……とは口が裂けても言えないな。
「それで、袖合。貴方どうしてここに?」
「そ、それがわかんないんです、僕、前は警部と交代でしたから……」
「交代……?」
「あ、あれ、警部が送ってきたんじゃないですか!ほ、ほら、これ!」
そういって、袖合は携帯を突き付けてきた。
「……は?」
そこには――――――
俺のアドレスから送られたメールがあった。
『特務室の駐在交代を頼む。』とだけ書かれている。
「知らないぞ、こんなメール……!俺は最後に鍵を掛けて部屋をでたんだぞ!」
「えぇっ、そんなぁ!」
どうして、こんなメールが……?
考えても答えは出るはずもなく、俺は別の人間に声を掛けた。
「あぁ、榊さん。お久しぶりです。件の誘拐事件以来ですかね?」
「どうも、灰堂路さん。あの時はお世話になりました」
「あなたも大変ですね、次から次へと……困ったことがあれば協力するのでなんでも言ってください」
そういって柔和な笑みを浮かべるのは、精神科医《灰堂路桐生》さん。
俺も何度かお世話になった精神科の先生で、個人で医院を営んでいる。
サラサラとした金髪と、明るい白い肌、其れに似合わぬ黒縁の眼鏡が特徴的だ。
「すいません、またお世話になります」
「お、これが現役の警部さんか!かぁっこいいなぁ!」
話していると唐突に褐色の、とても人のよさそうな青年が混ざってきた。
「こら努!初めてあった人にそんな口を利くんじゃない!」
「悪い悪い兄さん。でもほんとカッコイイな!」
「そりゃあ、榊さんは真面目でストイックな人だからね。当然だよ」
「あの、この青年は……?」
おずおずと灰堂路さんに聞くと、
「彼は僕の弟の―――――」
「《宝島努》っていうんだ。よろしくな!榊警部!」
そう、《宝島努》さんは朗らかに言った。
彼曰く、名字が違うのは諸事情があるかららしい。
職業はバックパッカー、つまり世界を旅する旅人だ。
色んな国で生活するのを夢に各地を旅している。日本は3年前以来なのだとか。
「ね、榊さん!拳銃もってるの?」
「いや、今は携帯していませんが……彼女は」
気が付くと、近くに女子高生らしき年頃の女の子がいた。
今時珍しくもなったセーラータイプの制服を着ている。
「彼女は弟の教え子で、今は大学受験前の高校生なんです」
「《南阿夢見》っていいます!よろしくお願いしまぁす!」
《南阿夢見》、現在17の女子高生……らしい。
宝島努が過去に家庭教師をした生徒で、今も彼と仲が良く、家にも遊びに行っているらしい。
兄の桐生とも仲が良く、実家よりも居る時間が今では長いのだとか。
「えーっと、これで全員か……?」
「見たいですね。1、2、3……15人?」
「お前を入れて16人だな」
「あっそっか」
こんな間抜けな間違いをしているが、合歓樹は警察官である。間違いのない様にいうが。
「ど、どうしてこんなに人が……?知らない人ばっかり……」
「え、そうかなー、結構知り合いばかりな気がするけど」
関係性は様々で、顔を知らない同士も多い。
ただ、なんとなく、感じたことがあった。
(……俺とほとんどの奴が知り合いか、その身内ばかりだ)
まるで、意図的な選出である、と云わんばかりのメンバーの様に思えた。
「……ぱい、せんぱい」
「ッ、な、なんだ」
「何ボーっとしてるんですか、黒幕見つけてさっさと」
そう、合歓が息巻いた時だった。
「もしかして、黒幕って僕の事~?」
ひょっこり、とぬいぐるみが現れた。
白と黒、ちぐはぐに縫われたクマ。黒い部分には赤い鋭利な目が、白い部分には真ん丸の黒目が縫い付けられていた。
まるで、混沌を表したかのような、表現したかのようだった。
「だ、誰ですか!貴方!」
「僕?僕はモノクマ!この九頭竜学園の学園長なのだー!」
「……は?学園?園長?」
「だめだめ、学園長、ね!園長だと幼稚園になっちゃうじゃん!ちゃんと覚えてよね!」
この人形は何を言っているのだろうか。意味が分からない。
「えー、ゴホン。茶々入れについつい反応しちゃったけど!これから君たちにやってもらう事を発表するよー!」
モノクマは意に介したかなどを無視して話を押し進めた。
「えぇ、これから君たちには―――――――――
―――――――――コロシアイをしてもらいます!」