デジモンリリカルアドベンチャー   作:のぞむ

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デジタルワールドに足を踏み入れた賢
彼に試練が与えられる


デジモンリリカルアドベンチャー始まります


今、冒険と魔法のゲートが開く


賢の試練

過去の出来事を眠りながら辿っていた賢は

うなされており、賢の父と母は

そんな賢を心配していた

 

 

賢の母「うなされているわ…

    悪い夢でも見ているのかしら…

    ねぇパパ」

 

賢の父「ん?」

 

賢の母「治ちゃんが亡くなって

    ずいぶん経って、ちょうど

    賢ちゃんが治ちゃんの

    亡くなった時と同じような

    背格好になってきた時

    賢ちゃん、急にお勉強が出来るように

    なったわよね?」

 

賢の父「ああ…」

 

賢の母「あの時、治ちゃんが戻って来たような

    気がして喜んでしまったけど…

    それが賢ちゃんにとって

    どういう意味か、もっと

    考えなくちゃいけなかったと

    思わない?」

 

賢の父「…賢には賢にしかない

    いいところがたくさんあったのにな…

    天才の両親とかとりざたされて

    いい気になっちまったんだよ

    俺達…」

 

賢の母「賢ちゃんだけじゃないの…」

 

賢の父「えっ?」

 

賢の母「治ちゃん…本当にお勉強

    好きだったのかしら…

    そりゃあ、嫌いじゃなかったかも

    しれないけど…本当は

    もっと遊びたかったんじゃないかなって

    最近思うのよ…」

 

賢の父「…いつの間にか

    そうさせないように

    してしまっていたかも

    しれないな…」

 

賢の母「私達、親失格ね…」

 

賢の父「そうだな…」

 

 

賢の両親は

ベッドで眠っている賢を見る

 

 

賢の母「賢ちゃん…早く目を覚まして」

 

賢の父「賢、俺に謝るチャンスをくれよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眠っている賢は夢の中で過去の光景を見ていた

幼い賢はベランダでシャボン玉を膨らませていた

 

そして、石鹸水を作り、ストローの先を切ったのは

兄、治だった

 

 

治『賢、膨らまして』

 

賢『わかった!』

 

 

賢はシャボン玉をたくさん膨らます

賢と治は笑顔でシャボン玉を見る

 

 

賢『お兄ちゃんもやって!』

 

 

賢は石鹸水が入ったコップとストローを

治に差し出す

 

 

治『ああ…でも僕は下手なんだ』

 

賢『お兄ちゃんにできないことなんてあるの?』

 

治『あるさ。シャボン玉を膨らますのは

  賢が一番!

  優しくそっと息を吹くからね

  僕はダメだ、すぐ破裂しちゃう』

 

 

治はストローを咥え

シャボン玉を吹こうとする

 

 

 

 

ぱぁん!

 

 

賢『お兄ちゃん…?

  お兄ちゃん戻ってきて!』

 

 

シャボン玉が割れた瞬間

治の姿は消えてしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賢「う……」

 

 

ようやく賢は目を覚まし、ベッドから起き上がる

 

 

賢の父「賢!」

 

賢の母「目を覚ました!?」

 

 

賢の両親は賢に駆け寄る

 

 

賢「…誰?」

 

「「!?」」

 

賢「誰…?」

 

 

賢が発した言葉に2人は動揺する

 

 

賢の母「私達がわからないの!?」

 

賢の父「記憶がないのか…?」

 

賢(違う、記憶なんて失ってない

  僕が言いたいのは

  あなた達は僕にとって

  どういう意味のある人間なのかって事だ…)

 

賢の母「私達がわからないなんて…」

 

賢(あんた達だって僕の事わかってない…

  あんた達は誰?そして僕は誰?

  誰…誰なの?)

 

賢の母「いいの!無理しないでね

    賢ちゃん、あなたが無事で

    いてくれるだけでいいのよ」

 

賢の父「賢、俺達知らず知らずのうちに

    治の影をお前に

    押し付けていたのかもしれない…

    悪かったな…お前はお前なのに…

    お前のいいところたくさんあるのに

    気づいてやれなくて…」

 

賢の母「許してね…そして

    早く元気になってね…」

 

賢(あの人達はなにを言ってるのか…

  わからない…言葉の意味がわからない…)

 

賢の父「治はもういないんだ…

    そうだろ?」

 

賢(そうだ…治兄さんはもういない…)

 

賢の母「死んでしまったの…

    治ちゃんはもういないのよ…

    だから、賢ちゃんは賢ちゃんのまま

    そのままでいて!」

 

 

賢の母は涙を流しながらそう言う

賢の目にもいつの間にか涙が浮かんでいた

 

 

賢(あの人泣いている…どうして?

  悲しいのは僕なのに…涙?

  僕の目にも涙が…どうしてだろう…

  なぜ僕は涙を流すんだろう?

  少なくとも僕とこの人達は

  治兄さんを失った悲しみを

  分かち合えるかもしれない…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賢が目を覚まし、しばらくしたある日

 

 

 

賢は自分の机に置いてあるD-3と

優しさの紋章を見つける

そして賢の脳裏には自分を必死に止めていた

ワームモンの姿が浮かんでいた

 

 

賢「ワームモン……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン!

 

 

賢の母「賢ちゃん、お茶でもどう?

    賢ちゃん!!」

 

 

賢の母が部屋に入るとそこに賢の姿はなく

パソコンが起動しているだけだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、バニングス家の方では

アリサとファルコモンが少し疲れた表情で

自室に入る

今、選ばれし子ども達はデジタルワールド復興の

ボランティアをしているのだ

ちなみに伊織とティアナはミッドチルダに

行っており、参加できていない

 

 

 

アリサ「今日もお疲れ、ファルコモン」

 

ファルコモン「うん。アリサもお疲れ」

 

アリサ「さて!それじゃあ少し

    ゆっくり…」

 

ファルコモン「アリサ?」

 

 

アリサは机にあるパソコンの方に目を向ける

 

 

アリサ「…ファルコモン

    少しだけ、デジタルワールドに

    行ってきてもいい?」

 

ファルコモン「え?まだ復興作業をするの?」

 

アリサ「違う…だけど

    行かなきゃいけない気がして…」

 

ファルコモン「…わかった

       僕も行くよ」

 

アリサ「ありがとファルコモン」

 

 

アリサはパソコンにゲートを開き

デジタルワールドに降り立った

 

 

 

そしてしばらく歩いていると

賢を見つける

 

 

アリサ「あれって…一乗寺?」

 

ファルコモン「何してるのかな?」

 

アリサ「…ちょっとあんた!

    なにやってんの!」

 

 

アリサとファルコモンは賢に駆け寄る

 

 

賢「君は……」

 

 

賢はアリサの方を見る

しかしすぐに前を向き、歩き始める

 

 

アリサ「ちょっと!どこに行ってるの!?」

 

 

アリサは賢に近づき問いかけるが

賢はなにも返さない

 

 

しばらく歩き続けると

大きなつみきがたくさん置かれ

地面にはたくさんの卵があった

 

 

賢「ここは…」

 

アリサ「卵がいっぱい…」

 

「ここははじまりの街

 死んでしまったデジモンが

 デジタマになって再生するところ」

 

 

幼年期デジモンが

はじまりの街の事を教える

 

 

賢「再生?ワームモンも?」

 

「すべてのデジモンが

 デジタマになって再生する」

 

 

デジモンの言葉を聞き、賢は駆け出す

 

 

賢「…わからない

  どれがワームモンなのか…

  僕が誰なのかわからないように

  どれがワームモンのデジタマなのかわからない!」

 

「お前!デジモンカイザーだな!」

 

 

ワームモンのデジタマを探している賢に

幼年期デジモンが言い放つ

 

 

「ワームモンのデジタマになにをする気だ!」

 

 

デジモンは賢に体当たりをする

 

 

賢「うっ!…デジモンカイザー

  そうだ、僕はデジモンカイザーだ…

  酷いことをした人間なんだ

  ワームモンを死なせたのも僕だ!

  なのに僕はワームモンのデジタマを見つけて

  なにをしようって言うんだ!」

 

アリサ「一乗寺…」

 

「デジタマが見つかれば

 ワームモンが戻ってくる

 ワームモンを死なせた自分から解放される

 誰かを死なせた思いから解放される

 そうだろ?」

 

「お前はずるい奴だ!

 そんなずるい奴に

 ワームモンが再生などするものか!」

 

賢「ワームモンは…戻ってこない?

  そうだ…治兄さんだって戻ってこなかった…

  それは認めたくない現実…

  治兄さんは死んだ…ワームモンも死んだ…

  僕が死なせた…一番憎んでいたはずの兄さん

  一番とるに足らない存在だと思っていた

  ワームモン…とるに足らないのは僕だ…!」

 

 

賢は膝をつき項垂れる

 

 

賢「とるに足らない僕…ちっぽけな僕

  でもそんな僕は今

  ワームモンの死を悼んでいる…

  もし僕が死んだら、ワームモンだったら

  悲しんでくれる…ワームモンだけは

  悲しんでくれる…それなのに僕は…

  そんなワームモンを失ってしまった!

  僕自身の破壊的な行動のために!」

 

 

そう言ってるうちに賢の目からは涙が流れていた

 

 

「お前のしたことは本当に

 取り返しのつかない事だ!

 一度してしまったことは

 二度と取り戻すことが

 出来ない!」

 

「過去をなかったことになんて

 できない!すべては自分のものだ

 良いことも悪い事もすべて自分なのだ!」

 

賢「…すべての事を自分の中に認めて

  生きていく…僕がデジモンカイザーだったことも

  兄さんが死んだことも!

  ワームモンを死なせた事も!

  大丈夫…きっと出来る

  だってワームモン、君がいてくれたという

  思い出だけで僕はきっと強くなれる…」

 

 

賢は涙をこぼしながら呟く

すると脳裏に消し去っていた記憶が

よみがえった

 

 

賢「そうだ…ワームモン

  君はずっと僕と一緒だった!

  あの時、治兄さんのデジヴァイスで

  僕は君とデジタルワールドを冒険した…

  忘れていた記憶…いや

  自分で消し去っていた記憶…

  でもどうして?どうして僕は

  それを忘れなければならなかったんだろう?」

 

 

 

 

-----------------

 

 

 

賢『ワームモン!ワームモン!』

 

ワームモン『大丈夫…これくらいなんともないよ…』

 

賢『ワームモン…!』

 

ワームモン『僕、賢ちゃんのパートナーデジモンで

      本当によかった…だって

      賢ちゃん優しいんだもん』

 

賢『優しい…』

 

ワームモン『でも、優しいだけじゃダメ…

      もっと強くなって

      そうじゃないと自分の優しさに

      押し潰されちゃうよ

      賢ちゃん、今持ってるデジヴァイスは

      賢ちゃんの物だよ。誰の物でもない

      賢ちゃん自身の物

      賢ちゃんの心が賢ちゃんの物であるのと

      同じように忘れちゃダメ

      そして…』

 

賢『そして?』

 

ワームモン『逃げちゃダメ』

 

 

-----------------

 

 

 

賢「…僕がなにも持ってないなんて嘘

  そう思っていた方が楽だった…

  兄さんを恨んでいた方が楽だった…

  治兄さん、ごめんなさい…

  ワームモン、ごめんね…!

  取り返しのつかないすべての事を

  僕は僕の中に認めて生きていく…!」

 

 

 

 

ピカァアアアア!!

 

 

賢は自分の犯した罪と向き合いながら

生きると決意した

それに反応するように賢の優しさの紋章が

光輝く

 

 

賢「これは…」

 

「それは君の紋章」

 

賢「僕の紋章…」

 

ファルコモン「アリサ!あれ!」

 

アリサ「デジタマが…光ってる?」

 

 

アリサとファルコモンは

光るデジタマを見つけ、驚く

 

 

-賢ちゃん!早く僕を見つけて!

 早く早く!-

 

 

賢はデジタマを見つけ、近づく

 

 

賢「このデジタマは…

  どうしてこんなに光ってるの?」

 

 

賢はデジタマに触れる

するとデジタマは光を放ち

デジタマからワームモンの幼年期

リーフモンが産まれた

 

 

賢「ワーム…モン?」

 

リーフモン「…賢ちゃん

      僕の卵探してくれた?」

 

賢「…うんっ!

  探したよ…うんと探した…っ!」

 

リーフモン「よかった!賢ちゃんなら

      きっと探してくれると思った!」

 

賢「ワームモン…」

 

リーフモン「何?賢ちゃん」

 

賢「…産まれてきてくれて

  ありがとう…!」

 

リーフモン「…うんっ!」

 

 

賢はリーフモンを抱き締める

 

 

アリサ「…よかったわね…っ!」

 

 

そこへアリサが駆け寄ってくる

アリサの目には涙が浮かんでいた

 

 

賢「…ありがとう」

 

アリサ「え?」

 

賢「あの時、君が僕を励まして…

  怒ってくれて…少しだけど

  兄さんと話せたよ」

 

アリサ「…覚えてたのね

    あたしはあんたが

    あの時の男の子だって気づいたの

    最近なのに…」

 

 

アリサがそう言うと賢は手を差し出してくる

 

 

賢「…あの時は名前を言えなかったけど

  僕、一乗寺賢です」

 

アリサ「…アリサ、アリサ・バニングスよ」

 

 

アリサは賢の手を取る

 

 

アリサ「あんたがしたことは

    決して許される事じゃないわ

    だからこそ、しっかり罪と向き合いなさい!

    頑張りなさいよ…賢」

 

賢「うん…アリサさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賢の母「今度こそ!帰ってこないかもしれない!」

 

賢の父「バカなことを言うな!

    必ず帰ってくるさ!」

 

 

賢の母が泣いているところに

賢がリビングに来た

 

 

賢の母「賢ちゃん!!」

 

賢の父「どこに行ってたんだ!?」

 

賢の母「またいなくなっちゃったのかと!」

 

賢「…ママ」

 

賢の父「…今なんて?」

 

賢の母「なんて言ったの?

    ママって…ママって言ったの!」

 

賢「ママ…僕を産んでくれてありがとう…っ

  パパ…心配かけてごめんね…」

 

 

賢の言葉に母は泣きながら抱きつき

父は賢の頭を撫でる

 

リーフモンは陰から賢達を見ていた

 

 

賢(治兄さん…今僕は初めて言えるよ…

  すべての事に、ありがとうって…)

 

 

 

この日、賢とその家族は

ようやく本当の家族になれた…

 

 




賢はワームモンと再会し
そして家族との和解をはたしました…


次回もお楽しみに!
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