くま クマ 熊 ビクトール   作:真なる熊の紋章

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フィナの妹であるシュリちゃんが登場します。が、原作書籍・漫画勢の方々は彼女の性格や言動に違和感があると思います。
これは作者がシュリちゃんの性格を掴みきれておらず、暫定的に作者が動かしやすい性格を付与しているからです。
二次創作ではあまり褒められた処置でないことは認識してますが、ご理解ください。アニメ版で人物像が固まったら修正しますので。
あと、母親であるティルミナさんにも違和感があると思いますが、彼女はがっつりネコかぶってるだけでweb版通りです。




4 風来熊の【突撃! 隣の晩ごはん】

 

 フィナの提案の後、宿で二日分の宿泊費(素泊まり)である銀貨一枚を支払い、エレナという宿屋の娘と自己紹介を交わしたビクトールはフィナの家の影で一人、物思いにふけっていた。

 ちなみにフィナは家族に事情の説明、並びに薬草を母に飲ませる役割があるために先に中に入っている。

 腰が抜けていたのも家に辿り着けたことで完全に安心したのか、既に回復している。精神的なものは案外あっさりと治るものだ。

 

 そのため、手持ち無沙汰になったビクトールは現状やこれからのことなどをぽやーっと考え込んでいたのだ。通りから見えないところに座って。

 

「――じー」

 

「…………」

 

「じーー」

 

「……んあ?」

 

 ふと視線を感じたビクトールがその方向を向いてみると、そこにいたのはフィナを一回り小さくしたような幼女。

 年の頃は七歳前後――知りあいだとリリィという名の鉱山都市(ティント市)市長の娘、もしくはピリカという名の戦争で全てを失った子どもと同じくらいか。

 

「よぉ、嬢ちゃんはフィナのいもうt「ほんとにくまさんがいたー!」――うぉっと!」

 

 ビクトールの誰何の声を無邪気に無視し、胸に飛び込んできた幼女を慌てて受けとめる。

 フィナから事前に聞いていた通りの元気っ娘のようだ。ますます某市長の娘を彼に連想させる。口はあちらほど豪快ではないようだが。

 

「くまさん言うな。俺さまの名前はビクt「くまさんくまさん、わたし、シュリだよー!」――おう、もう好きに呼べ!」

 

 漢、ビクトール。最早、諦めの境地である。

 

 さて、何故この()だけ家から出てきたのか。

 ビクトールに支えられながら、キラキラおめめで彼のヒゲをわさわさしている幼女から聞きださなければならない。

 

「それで、シュリはなんでこっちきたんだ? 姉ちゃんはどうした?」

 

「おねーちゃん、おかーさんにおくすりのませて。あぶないことしたからおこられてるの。でも、ぎゅーってされてるの」

 

「……そうかい」

 

 幼子(おさなご)特有の拙い説明から想像できる光景に自然と表情が綻ぶビクトール。彼女達の状況はお世辞にも良いとは言えないが、家族間の愛情だけはどこに出しても恥ずかしくないものなのだろう。

 なんとなしにシュリの頭を撫でてやると嬉しそうに頭を押し付けてくる。彼女の姉と出会った時と同じ行動に、「くくっ」と笑いがこみあげる。

 

「やーん♪ わしゃわしゃいたいのー。――あ、それでね? おかーさんがくまさんをおまねき? してあげてって」

 

「ああ、なるほどな。よし、んじゃま、お招きされるとしようかね」

 

「いらっしゃいませー!」

 

 何が嬉しいのか満面の笑顔に迎え入れられ、小さくも温かい家の中にお邪魔する。

 実は一般家庭というものに、とある事件以降はほとんど縁の無かったビクトールが珍しそうにしていると寝室に通された。

 どうやら、寝台の上からほとんど動けないほどに母親は弱っているようだ――()()()()()()()()である、見た目だけなら"いかにも"なビクトールを寝室に招かなければいけないほどに。

 

「邪魔するぜ、っと」

 

「はい、いらっしゃいませ。まぁ、フィナの言う通り随分と……その、野性味のある方なのですね」

 

「はっはっは、そのせいで娘さんには怖い思いをさせちまったがな。……もう一人にはなんか気に入られたようだが」

 

「くまさん、くまさんっぽくてすきー♪」

 

「あらあら、それでは改めまして。私の名前はティルミナといいます。娘のフィナを助けていただき、本当にありがとうございました」

 

 そう言い、頭を下げるティルミナ。その間にサッと観察を済ませるビクトール。

 年齢は二十代後半。娘二人の整った顔立ちから予想してはいたが、母親も相当な美人だ。それも、今の痩せ細った状態でも十人中、六人か七人は美人だと評するほどには。

 とはいえ、そのことでビクトールの対応やらが変わるわけでもなし。

 

「なぁに、ゲンツってヤツにも言ったがフィナが諦めなかったからこそ掴めた結果だ。説教がもう済んでるのなら、そのことは後で褒めてやってくれ」

 

「あら、ゲンツをご存じなんですね。ふふ、分かりました。眠る前にでも甘やかしてあげますね」

 

「シュリもー!」

 

「…………(ああ、こいつぁ……近いな)」

 

 にこやかに会話をしている母娘を眺めながら、今までの経験から得てしまった"死"を感じ取る勘のようなもので、ティルミナの残された時間を察してしまう。

 表面上は薬草が効いてきたのか徐々に顔色が良くなっていっているが……死の匂いが一切遠ざからない。

 ビクトールも態度には出していないが、残される二人を思うと心中穏やかではいられなかった。この場にいたのが青い腐れ縁の方であったなら、道具袋の中に眠っているアレ(・・)が日の目を見たかもしれないのに、と思わざるを得ない。

 

「おっと、そういや肉を持ってきてるんだったぜ。フィナは? 台所か?」

 

「こっちですよー。ビクトールおじさーん」

 

「おーう。そんじゃ、またあとでな」

 

「シュリもおてつだいー!」

 

 調理中だったフィナと合流し、道具袋の中からウルフの肉をこれでもか(・・・・・)と取り出すビクトール。

 その様子を見たフィナが、頬をヒクつかせながら恐る恐る問う。

 

「もしかして……これ全部食べる気ですか?」

 

「……え?」

 

「……え?」

 

 ビクトールとしては出した量を一人で食べても食べきれる量を出したつもりだった。もちろん独り占めする気なぞないし、ウルフ肉自体に懐疑的なので本人はこれでもかなり抑えていたり。

 フィナも今の間と一文字ずつの会話で全てを察したのか、少しだけ頭が痛そうな仕草をしたものの、すぐに"ふんすっ"と気合を入れ直す。

 

「いいでしょう。久しぶりのお肉ですし、張り切っちゃいますよ!」

 

「おっにく! おっにくー♪」

 

「はっはっはっは、俺さまは切るのと焼くのは得意だ。ま、それしかできんとも言うが、じゃんじゃん仕事をふってくれていいぜ」

 

 こんな風にわいわいと楽しげな様子を一人聞いていたティルミナは笑顔を浮かべてはいたが、その笑顔はとても満面とは言えないものであった。

 

 

 

 

 

「かーっ! うめぇ!! フィナとシュリは料理の天才だな! ハイ・ヨーとの料理勝負にも勝てるぜ、こりゃあ!」

 

「お、大げさですよ、おじさん。そのハイ・ヨーさんって人に失礼ですよ」

 

「おかーさん、くまさんにほめられたー」

 

「うふふ、よかったわねぇ、二人とも」

 

 フィナとシュリの力を借りてティルミナも席についた食卓にて、凄まじい勢いで料理をかっ込んでいくビクトール。

 食材は肉以外ほぼ最底辺、調味料も最低限という料理をべた褒めされて困っていたフィナも、その言葉がウソではないことを悟るとどことなく嬉し気に。ビクトールの味覚《なんでもウマイ》は伊達ではないのだ。

 途中から自前の中級ワインを取り出したことでフィナの視線が氷点下に下がるが、くすくす笑うティルミナがお酌をしたことで何も言えなくなる。

 そんなブーたれた表情にもビクトールの冒険譚(誇張アリ)にも笑いが起こり――――気がつけば全員が笑顔の食卓に。

 

 しかし、ティルミナ以外の三人の前の料理が底をついても半分も減らない母の前の料理に、娘達の表情が曇ってゆく。

 

「お母さん、やっぱり食欲わかない……?」

 

「……ごめんなさいね。もうお腹いっぱいだわ」

 

(…………ふぅむ)

 

 彼女の身体は固形物、それも一般的な味覚ではあまり美味しいものではない食事はなかなか喉を通らないのだろう。

 さて、どうしたものか――

 

「……ティルミナ。おまえさん、甘いものは好きかい?」

 

「甘いものですか? そうですね、好きな方だと思います」

 

「そうかい。そんじゃ――――こいつを試してみてくれ。プリンってデザートだ」

 

 そう言い、彼の道具袋の中から取り出したのは《アイスクリームのレシピ》に《玉子》と《さとう》を使用することでできる料理、《プリン》であった。

 

「……甘い匂い。これはビクトールさんの故郷のデザートですか?」

 

「そうとも言えるし、違うとも言えるな。こいつはさっき話題に出たハイ・ヨーって仲間に作らせたモンだ」

 

 実はビクトール(とフリック)の道具袋の中には、旅立つ前にハイ・ヨーに無理言って作ってもらった大量の料理が時間停止状態で眠っている。

 これらは戦争中は毎日のように食べていた仲間の味が恋しくなった時にちまちまと食べるためのもので、吞兵衛の男二人旅という都合上、特にデザート関連がほぼ手つかずで残っていたのだ。

 そして、これはいい機会とばかりに試そうとしているのである。

 

「ぷるんぷるん……これなら入るかも。いただいても?」

 

「もちろんだ。食えるんなら是非とも食ってやってくれ」

 

「では、いただきます。――――っ!? お、美味しい!」

 

「よかった……お母さん。ありがとうございます、おじさん」

 

 夢中で手と口を動かしている母を見て、少しだけ表情を和らげるフィナ。

 ちなみに妹の方は――

 

「――じゅるり」

 

「あ、こ、こらシュリ! それはお母さんのなんだから我慢しなさい!」

 

「ま、そうなるわな。ほれ、二人にはこのクリームパイをやるから喉を通りやすいのは母ちゃんにあげな」

 

 ビクトールが《ミートパイのレシピ》に《牛肉》と《さとう》で作られる《クリームパイ》を一つ取り出すと、目を輝かせながら四等分――二食分。料理勝負でクリームパイを選択すれば分かるが、かなり大きい――に切り分け始めるシュリ。

 当然こちらも大好評で、今宵の食事会はこれでお開きとなったのであった。

 

 

 

 ちなみにプリンを食べ終わったティルミナが、とある《グッドステータス》を見事に引き当てたせいでちょっとした騒ぎが起こったのだが、今回は割愛させていただく。

 

 

 

「――おじさん。今日は本当にありがとうございました」

 

「なあに、いろいろ世話になったのは俺も同じだ。困った時はお互い様ってやつだわな」

 

 家の玄関を出たところで別れの挨拶を交わしているビクトールとフィナ。

 辺りはすっかり暗くなり、一部の店の周辺を除いて街は静寂に包まれている。

 ティルミナは食休みのために早々に寝台の上に戻り、シュリは眠気を堪えながら食器を洗っている。そのため、見送りはフィナだけだ。

 

 挨拶も済んだことで宿への道を戻ろうとしたビクトールに、フィナが躊躇いがちに声をかける。

 

「お、おじさん。あの、もしおじさんさえ良ければなんですが、夕食は(うち)で食べませんか?」

 

「んお? そりゃ願ってもないことなんだがいいのか? 正直、女だけの家庭に男が連日顔を出すのはあんまり褒められたことじゃないんだぜ?」

 

 まあ、間違いなく三日と経たないうちにご近所の奥様方の井戸端会議のトップニュースとなることだろう。

 

「いえ、むしろおじさんのようなくまっぽ……強そうな男性がお顔を出してくれた方が好都合です。……一人、ショックを受ける人がいるかもですが。打算的で申し訳ないのですが、デザートの件も含めてお願いできませんか?」

 

「なるほどなぁ。理由は納得したが――」

 

「?」

 

 疑問符を浮かべるフィナの前でしゃがんだビクトールが、彼女の柔らかほっぺを軽くむにっとつねる。

 

「い、いひゃいでふ」

 

「俺さまが熊っぽいのは今日までだからなぁ? 明日には《デュナン(イチ)の伊達男》と呼ばれたビクトールさまになっちまうんだから、くまくま言えるのは今日までだぞぅ」

 

 無論、自称(・・)――いや、自傷か?――である。一応、念のため。

 

「ご、ごみぇんにゃはい……」

 

 僅かに赤くなった頬を庇いながらしょぼーんとするフィナ。

 そんな彼女の頭を豪快に笑いながらガッシガッシと撫でてやる。

 

「うわわゎ、や、やーめーてーくーだーさーいー」

 

「がーはっはっはっはっは! そんじゃまた明日(・・・・)な、フィナ。あったかくして寝ろよ」

 

「っ! は、はい! ビクトールおじさんも、また明日!」

 

 ブンブンと音がしそうなほどに手を振っているフィナをチラリと見、フッと息を吐くビクトール。

 彼もひらひらと手を振り返し、宿へと続く道を上機嫌に歩いてゆくのだった。

 

 

 

 宿へと戻ったビクトールは早速とばかりに風呂に入り、この世界特有の魔石文化に度肝を抜かされることとなった。

 だが、そこはやたらと器がデカい熊男。便利なら細かいことは気にせず、髪を整えヒゲを剃り、少しずつ文明人へと回帰してゆく。

 しばらく格闘すると、風呂場備え付けの鏡に映っていたのは《デュナン統一戦争》当時の彼の姿。《風来坊》という二つ名で、吟遊詩人や楽団に英雄と唄われる偉大なる漢の雄姿(ゆうし)

 

「お~? こりゃまたカッコよさが増しちゃったかぁ? はっはっはっは」

 

 そして、いつも通りに言動で台無しにしたところで浴槽につかり、《ほかほか》状態になったあたりで風呂を出た。

 彼個人としてはテツという名の風呂職人の影響もあり、顔が真っ赤になるくらいの長風呂を好むのだが、宿屋の娘のエレナから長風呂禁止令が出ているため致し方なし。

 

 そして、誰にも会わずに殺風景な部屋に入ったビクトールは即座に寝台にダイブ。

 ほかほか状態の恩恵により身体の内側から癒されていくのを感じながら、眠りにつく。すると、ほんの十数秒後にはイビキの音が部屋のBGMとなっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 翌朝、掛け布団を豪快に蹴り飛ばしたままイビキをかいているビクトールの顔に、柔らかな日差しが舞い降りる。

 しかし、彼が起き出す様子はない。旅の間は"青の同行者"により蹴り飛ばされるか、"剣の同行者"により柄で殴られるかしないと起きなかった男だ。日が差した程度では影響はない。

 

「――おじさん、フィナです。起きてますか? ビクトールおじさん?」

 

 コンコンコンというノックの音と共に、遠慮がちなフィナの声がビクトールの耳に届く――前にイビキによりかき消されてしまう。

 

 フィナはビクトールに用があり、宿の前で待っていたところをエレナが見つけていた。

 そして、フィナに強烈な見覚えがあったエレナが、()()()()()()()()()()を見て目的を察し、彼の部屋を教えたのだ。

 客でもない自分が宿の中に足を踏み入れることを躊躇ったものの、エレナの許可とあまり時間が無いということも考慮して、部屋の前まで恐る恐るやってきていたのだ。

 

 さて、呼びかけに返事はなく、それどころか扉の隙間から聞こえてくる音でビクトールの状態を察したフィナ。

 困ったような表情でとりあえずドアノブに手をかけてみて――

 

「あれ? 開いてる……もう、おじさんったら不用心だなぁ」

 

 呆れたようにため息をつき、「おじゃまします……」と呟いてから入室する。

 そして、暖かな日差しの中で悠々と高イビキをかいているカッコいい(・・・・・)男性に目を見開く。

 あまりの変化に戸惑いながら近づき、その顔を覗き見る。

 伸ばし放題だった髪はまだボサボサ気味だが、十分見られる程度には整えられている。ヒゲも寝ている間に若干伸びてしまっているが、野性味は大分薄れていた。

 そうして露わになっていたのは武骨ながらも頼りになりそうな、二枚目とは程遠いながらも整った――――男らしい、素敵なおじさま(・・・・)の顔であった。

 

 しばしの間彼の顔を呆然と眺めていたフィナ。突然ハッとしたようにドアまで戻り、この部屋で合っているのかを確認してしまう。

 いや、目の前で惰眠を貪っている男がビクトールだというのは分かるのだが、つい確認してしまったのだ。それほどまでの衝撃だったのであろう。

 

 確認も終わり、残る選択肢はビクトールを起こすか否か。

 目的を達成するだけならば彼を起こさずとも可能だ。届けに来た物を置き、エレナに言づてを頼んでおけば良いだろう。

 しかし、目の前のおじさまは夕食時に、「明日は朝イチで動き出す」と言っていたハズ。なので、フィナは間に合わなかったかも、とすら考えていたのだが……

 

 そこまで思考したフィナは"くすっ"と笑い――

 

「おじさn……おじさま! 起きてください、ビクトールおじさま!」

 

 ――ゆさゆさ――ユサユサユサ――がっくんがっくん――ドスドスボッスン!

 

 数分の格闘の末、フィナが肩で息をしだした頃にようやくイビキが止まり、熊の腹の上に座る彼女と目が合った。

 

「――んお? ふああぁぁ……ん? フィナじゃねぇか、おはようさん」

 

(あ、この人やっぱりビクトールさんだ。残念なような……なんだか安心したような?)

 

 ボリボリと頭とお尻を掻きながら起き上がり、乙女の前だというのに大あくびを隠そうともしない熊になんとも言えない視線を送るフィナ。口を開けば残念とはこういうことを言うのだろうか、と思案する。

 

「はい。おはようございます、ビクトールおじさm……おじさん」

 

「おう? なんか今、意味深な言い直しがなかったか?」

 

「はて? いったいなんのことでしょうかねぇ?」

 

 そうとぼけ、くすくすと笑うフィナを不思議そうに見やるビクトール。

 ま、機嫌が良さそうでなによりと思い直して気になったことを聞いておくことに。

 

「母ちゃんの調子はどうだ? あとなんでここにいるんだ?」

 

「はい。おかげさまでお母さんの調子は良いみたいです。わたしがここにいるのはですね――――これを渡したかったからです」

 

 そう言い、小さな机の上に置いておいた素朴なデザインの弁当箱を差し出すフィナ。素泊まりクマさんに素敵なお届け物である。

 その弁当を見た瞬間、ビクトールの目がキランと光り――

 

「おおお、マジか! こいつぁ、ありがt『 グギュルルルルル 』――……ありがてぇ」

 

「ぷっ、あはっ! あはははははは! もうっ、もうダメ、おなかいた、い……!」

 

「お、おう。わざわざありがとうなぁ、フィナ。早速食っていいか?」

 

「ふふっ、はい、どうぞ。(うち)の朝食のついでに作ってきただけなのでお気になさらず。お水もらってきますね」

 

 腹筋にダメージを受けたフィナが思い出し笑いを堪えながら下へと降りてゆく。

 その様子を上機嫌に見送ったビクトールが弁当に躍りかかるまで、秒とかからなかったことをここに記しておく。

 

 

 

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