ソードアート・オンライン【Bad End】   作:Taiga#7

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キリトのシステムをも超える意志がヒースクリフの想定内だったら……というお話。
個人的に書いてみたかったので書くことにしました。

※序盤はいくつか原作の文章を引用します。つまり、序盤とそれからの読みやすさが段違いです。ご了承ください。


生き残ってしまった

全天燃えるような夕焼けだった。

気づくと、俺は不思議な場所に居た。

足元は分厚い水晶の板だ。透明な床の下には赤く染まった雲の連なりがゆっくり流れている。ふりあおげば、どこまでも続くような夕焼け空。鮮やかな朱色から血のような赤、深い紫に至るグラデーションを見せて無限の空が果てしなく続いている。かすかに風の音がする。

赤金色に輝く雲の群以外何もない空に浮かぶ水晶の円盤、その端に俺は立っていた。

……ここはどこだろう。確かに俺の体は無数の破片となって砕け散り、消滅したはずなのに。まだSAOの中にいるのか……それとも本当に死後の世界に来てしまったのか?

自分の体に視線を落としてみる。レザーコートや長手袋といった装備は死んだ時のままだ。

だが、その全てが僅かに透き通っている。装備だけではない。露出している自分の体さえ、色ガラスのような半透明の素材へと変化し、夕焼けの光を受けて赤く輝いている。

 

俺が立っている小さな水晶板から遠く離れた空の一点に_____それが浮かんでいた。

アインクラッドだ。

鋼鉄の浮遊城は……崩壊しつつあった。

俺が見守る間にもどんどんと崩れ落ちていく。

無数の破片を撒き散らしながら、どんどんとフロアが落ちていく。

俺とアスナが暮らしていたであろうログハウスもちらりと見て取れた。

「なかなかに絶景だな」

不意に傍らから声がした。いつの間にかそこに一人の男が立っていた。

茅場晶彦だった。

《神聖剣ヒースクリフ》の姿ではなく、SAO開発者としての本来の姿。研究者らしい白いシャツを羽織っている。

彼もまた、俺と同じように透き通っている。

「あれは……どうなっているんだ?」

「比喩的表現……と言うべきかな」

茅場の声も静かだった。

「現在、アーガス地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去を行っている。既に残った全プレイヤー、六一四七人のログアウトが完了している」

ならば、クラインやエギルと言った俺が知りあい、この長い二年間を生き抜いた人々は皆、無事に向こうに戻れたのだ。

俺は一度目を強くつぶり、滲みかけたものを振り払って訊ねた。

「死んだ連中……そしてアスナはどうなった?一度死んだ俺がここにいるんだから今までに死んだプレイヤーも元の世界に戻せるんじゃないのか?」

「……そうか。君なら今なぜこうして生きているのか、推測できるのではないかとも思ったが、やはりそうとはいかないか」

やや呆れ顔をする茅場を見ながら、俺は次の言葉を待った。

「このゲームにおいてあらゆる蘇生手段は通用しない……私はあの日そう言ったね。だが……私の知らない間にカーディナルシステムが自動生成したアイテムがあったのだよ。クリスマスイベント、《背教者ニコラス》のみがドロップするあのアイテムさ」

俺は記憶を蘇らせていた。あのときは自暴自棄になっており、特にボス戦の様子も、何をしたのかもほとんど覚えていない。

ただ……俺はニコラスがドロップした蘇生アイテムを間違いなくクラインに渡した。そしてその後、サチからの……。

いやまさか……クラインが。

「まあ、君ならここまで言えば容易に想像ができるだろう。君は生きたんだ。アスナ君を差し置いて、ね……」

なんで……なんでクラインは俺を蘇らせた?

俺は第一層でクラインを見捨てて、一人進んでしまったというのに。アスナのほうが、これからの社会に貢献していける人間のはずなのに。

たかがゲーマーの俺が生き残ってしまった。

家族に冷たくし、ただゲームにのめり込んだ俺が……。

「じゃあ……アスナは……」

俺は聞きたくもない質問を言葉にした。ここで永遠に時を止めてしまいたい。この先を聞きたくない……。

「既に脳は破壊されている。まさかあの麻痺状態で君を庇うとは思ってもみなかったが……まあ、それも想定内だ」

「おい……嘘だろ? なら俺の脳も焼いてくれたっていいじゃないか……。俺だけ生き残ったって……なんの意味もないんだから……」

「残念ながらそれはできない。予期しなかった正当な蘇生が行われてしまったのだ。このゲームは一部を除いてフェアでなくてはならない。例え、私の知らないアイテムの効果だったとしても」

もう、言葉にならなかった。

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