妖精さんが見えるだけなのに   作:語部創太

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 20,000UAありがとうございます!(素振り)
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 投稿予約してる朝10時の段階では19.890なので、お先にお礼の言葉をば。
 いつも読んでくださってありがとうございます!(゚∀゚)すっっっっごく嬉しい!!


14.一方その頃大本営では

「――そうかい。無事にそちらへ着いたかい」

『はい。おかげで作戦立案に集中できそうです』

「それは何より。キミには頑張ってもらわないといけないからねぇ」

 

 大本営、執務室。その部屋の主である老人は、受話器を左耳に当てて穏やかな笑みを浮かべている。

 

「ここ数日、単発的に日本近海で発見されていた深海棲艦の数が、パッタリと途切れた」

『ええ。奴らの目的が”偵察”であったのなら、これは非常に不味い状況にあると言わざるを得ません』

 

 《大規模侵攻》。3年前の東京大空襲から端を発した人類最大の悪夢が、いま再び始まろうとしているのかもしれない。

 

「前回は、ちょうど4ヶ月前か」

『ここ1年間の敵の戦力量は、「大規模」というにはあまりにも少なすぎました』

 

 つまり、今回のために力を蓄えていたのではないか。姫級も鬼級も、それ以前と比較して明らかにその数を減らしていた。楽観的な憶測を立てるメディアや軍の一部では、深海棲艦が疲弊している、あるいは絶滅寸前であると考えていたが。

 

「問題は、警戒網をどうやって潜り抜けて日本近海まで侵入できたのか、ということだね」

『申し訳ありません。横須賀を預かる身でありながら未だに原因解明には至っておらず……』

「いいんだ。そのために”彼”を派遣したわけだからね」

『はい。必ずやご期待に沿える成果を上げて見せましょう』

「ああ、頼んだよ。【救国の英雄】くん」

 

 受話器を置く。机の上に積まれた書類の量は、先週までのそれよりも確実に倍以上の高さとなっていた。

 

「……そうだ【大淀】くん。妻が言っていたんだが、大手町の方に新しい喫茶店が出来たらしくてね」

「閣下。現実逃避はそこまでにしていただかないと、仕事が進みません」

 

 隣で控えている秘書艦を口説こうとするも冷たく振られてしまった老人は、仕方なく書類を1枚手に取りながら、今日何度目かも分からないため息をつく。

 

「こんなことなら横須賀にやるんじゃなかったよ」

「だから私は反対したじゃないですか! 春日先輩がいなくなった総務部は大騒ぎですよ!」

「3人も増員したのに?」

「他所の官庁から引っ張ってきただけじゃないですか! 春日先輩の作ったマニュアルがなかったら書類作成すら手間取る人たちですよ!?」

 

 官庁と軍では書類の形式も微妙に異なる。海軍に媚を売るため各官庁から派遣されてきたエリートたちは苦戦を強いられているようだ。とはいえ、慣れてしまえば作業スピードは段違いに早くなるだろうが。

 

 『無駄を省く。』

 老人が元帥が着任した時に掲げたスローガンを誰よりも忠実に遂行したのは春日蒼汰だった。細かい理由付けや遠目の言い回しを徹底的に省き、短く的確な書類作成を実現・マニュアル化まで達成した春日蒼汰の功績は、大本営の文官で知らない者はいない偉大なものとなっている。

 ただ、そのマニュアル通りに制作したとしても春日蒼汰の作る書類と同様のクオリティで仕上げることはできない。旧式の方法で10ページほどの量だったモノが、春日マニュアルに従えば5ページまで短縮できる。しかし春日自身が制作したものはわずか2ページ。両面印刷すれば1枚で事足りてしまうほどまで短縮しているのだ。

 

 深海棲艦との戦いでは情報も作戦立案も鎮守府運営も、海軍のあらゆる業務を最適化・効率化しなくてはならない。そのため徹底的に『無駄』を排除してきた効率厨の元帥をもってしても、春日蒼汰の事務処理能力には度肝を抜かれる。中学校卒業から大本営で働き始め、わずか3年でここまで能力を磨き成果を残した人材を手放したくなかった気持ちは元帥も同じなのだ。

 

「まあ、いずれは軍人になってもらおうと考えていたところだったしちょうど良かったよ」

「え? 軍人じゃなかったんですか?」

「ああ、彼は先月まで雇員だったからね」

「雇員だったんですか!? 官吏ですらないじゃないですか!」

「1年目は嘱託として勤務していたんだよ」

「うそぉ!?」

 

 尊敬する先輩が正規職員ですらなかったという衝撃の過去に唖然としている大淀を見て、元帥は苦笑を浮かべる。あの時、自分が拾っていなければあの才能あふれる若者はどこかで野垂れ死にしていたかもしれない。そう考えるとゾッとする。

 

「で、でも今は軍人なんですよね? 私たち艦娘を付き従える立場になったわけですし――」

「ああ、それなんだけどねぇ」

 

 元帥である自分と准将である横須賀鎮守府【提督】が推薦したとはいえ、士官学校を卒業していない者を軍人とするのには相当な猛反発があった。雇員を判任官として登用する前例はあったが、武官として登用した事例はほとんどない。元帥がその権力を悪用して自分に都合の良い者だけ待遇を厚くしているのでは、と非難する声もあった。特に敵対派閥からの反発は凄まじく、会議室で行われた攻防の結果として「横須賀鎮守府に出入りする身分・立場を保証することに限定する」という名目でなんとか春日蒼汰の軍人――判任官としての登用が叶ったのだ。つまるところ――

 

「彼、二等兵曹なんだよね」

「士官ですらないし、下士官の中でも1番下じゃないですかああああああああああ!!!」

 

 大淀の絶叫を聞きながら見た時計はもうすぐ正午を指そうとしている。ここから40km以上離れた横須賀では、自分の机に置かれている十倍以上の書類の山に埋もれている少年がいるのだ。孫と同い年の少年がどうしているのか、少しの間、老人は思いをはせることにしたのだった。

 

 ……決して、書類仕事から現実逃避したかったからではないのだ。

 




 海軍内の役職名は、
防衛省防衛研究所の「旧日本軍における文官等の任用について」(PDFファイル)
Man On a Missionさまの【海軍階級】大日本帝国海軍の階級【1942年11月1日以後】
を参考にしています。googleで検索すれば出てくると思います。

 調べたり見たりするのが面倒くさいって方に向けて簡単な説明を。
「嘱託」→アルバイト
「雇員」→非正規雇用
「判任官」→正社員
 みたいな感じだと思います。(少なくともこの作品内ではそう)

 ただ今作では武官と文官の境目が曖昧だったり、史実とは多くの齟齬があります。(ボク専門家じゃないし……)
 まあつまり何が言いたいかって言うとですね。


※ こ の 小 説 は フ ィ ク シ ョ ン で す

 許してくださいなんでも島風(;゚Д゚)
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