妖精さんが見えるだけなのに   作:語部創太

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15.食堂(主人公視点)

『クマー! クマー!』

 

 あら、もう12時か。

 走らせていたペンを置いて壁にかかった時計を確認する。ヒトフタマルマル、昼食の時間だ。

 

『クマー! クマー!』

 

 頭の上でアラームのように鳴いているクマ子さんを指でつまむ。

 

『クマ?』

 

 可愛らしく首を傾げても騙されんぞ。毎日毎日ボクの頭上で叫びよってからに。お腹減ったのは分かるけど、耳が痛いんだよ。もうやめてね?

 

『ちょっとなにいってるか分からない』

 

 おい語尾はどうした。

 

 

 

 拝啓、他界あそばせたお父さまお母さま。横須賀鎮守府に異動してから2日が経ちました。

 今日は4月3日。第二会議室から溢れんばかりだった書類も順調に減っていき、今では当初の半分程度にまで落ち着いています。

 仕事は非常に好調、ここ2日間は定時退勤を達成しています。「残業するべからず」と言ったのはお父さんでしたね。当時中学生だったボクに「働いたら負け」とか言い出した時は正気を疑いましたが。

 さて転勤初日から心配していた人間関係ですが、

 

(あの人って……)

(今日も来てるね……)

 

 遠目に見られてコソコソと陰口を叩かれるくらいには良好です。

 いやあ、肩身が狭いね。食堂に来たら、さっきまで楽しそうだった食事風景が途端にザワザワヒソヒソと雰囲気悪くなるんだもん。

 だけど、どうか信じてほしいマイペアレンツ。ボクは何も悪いことをしていない。

 

 そう、ボクは悪くない。

 

『球磨川がいるクマ』

 

 ボクは禊(みそぎ)じゃない。

 

 

 

 いや本当に、なんでこんな避けられてるのってくらい誰からも話しかけられない。一方で、距離を置いてチラチラ見たりヒソヒソ話したりっていうのはされる。緊急事態宣言中でもそんなに距離置かなくたっていいじゃんってくらい遠巻きにされる。

 

『おさかなクマー!』

 

 勝手に食券機のボタン押さないでくれる? 2日連続で焼き魚定食だから、今日こそはハンバーグ定食をだね、

 

『取り押さえるクマー!』

『『『ワー!!』』』

 

 おいちょっとやめろ小人族! どこから出てきたお前ら群がるな顔に張り付くなドサクサに紛れてポケットの中のチョコレート持ってくな――

 

『おさかなゲットクマー!』

 

 ああああああああああ!!! また魚だあああああああああ!!!!

 

 

 

 ここ3日間、まともに言葉を交わした相手といえば【提督】と大淀さんくらい。【提督】とは作成した書類の確認をしてもらうため執務室を訪ねた時に一言か二言交わすくらい。大淀さんとは大本営に郵送する際に必要な諸々の手続きをお願いする時に挨拶するくらい。そもそも大淀さんは仕事中の雑談に興じる不真面目な人柄じゃないし、【提督】の傍には必ず誰かしら艦娘がいてボクを睨みつけてくるから、あまり雑談しようって雰囲気にならない。

 

『私たちがいるじゃないですか』

『もっと頼れー』

『もっとお菓子よこせー』

『もっとおさかな食わせるクマー』

 

 わざわざアーンして食べさせてあげてるんだから文句言わないの。ちなみに今日のおさかな定食は鱈の照り焼きだった。大本営時代にも食べたことある一品だけど、横須賀のコレは少し冷めていてちょっぴり焦げてて苦かった。大本営の間宮さんが作ったやつの方が美味しかった。同じ『間宮』でも味に違いとか出るものなんだろうか。

 あとヒマだからってボクの頭の上で組体操するな小人族。重心変わって首がグラグラする。

 

『そうクマ。そこはクマ子専用の場所だクマ』

 

 違うよ?

 

『『『失礼しました!』』』

 

 違うって言ってるだろ。というかクマ子さん、完全に横須賀鎮守府の妖精さんたちの頂点に君臨しちゃってるよね。

 

『力こそ正義、クマ』

 

 やだこの子、恐ろしい。ところで、まだ食べるの?

 

『もっと食べないと大きくなれないクマ』

 

 え、キミたち大きくなるの? ずっとそのサイズなんじゃないの?

 

『そこにいるのくらい大きくなるクマ』

 

 そう言って指差した先に座っているのは、クマ子さんによく似た茶色い髪で頭にアホ毛がピョンッと飛び出してる艦娘さん。マジか。妖精さんって成長すると艦娘になるのか。

 って、いやいやいやいや。そんなバカなことあるわけないでしょ。適当な嘘つくんじゃありません。エイプリルフールは一昨日でしたよ。

 

『本当クマ。妖精さんは嘘つかないクマ』

 

 昨日、風呂上がりに食べようと取っておいたボクのプリン食べたのは誰だっけ?

 

『ヴッ!? ……く、クマ子さんじゃないクマ~』

 

 はいダウト。プリンの容器に顔突っ込んでる映像がスマホに録画されてました。

 

『だ、騙したクマー!?』

 

 痛い痛い。艦娘の艤装すら持ち運べる怪力でベシベシ叩くな骨が折れる。

 とかやってる間にもうすぐ13時だよ。急いで食べちゃわないと。

 そう思って目を向けたお皿の上には、千切りキャベツとミニトマトしかなかった。

 

 あれぇ! まだ半分くらい残ってたはずの照り焼きがないぞぉ!?

 

『遅いから全部食べちゃったクマ』

 

 キサマァァァァ!? ボクまだ1口しか食べてないのにぃ!!

 

 

 メインである主菜なしの定食は、非常に味気なかった。

 




 もっと評価されたいのぉん! ☆が欲しいのぉん! って友人に言ったんですよ。

「更新頻度上げれば?」

 やめてくれ友人。その正論は私に効く。

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