妖精さんが見えるだけなのに   作:語部創太

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 感想欄でアドバイスもらって、話を動かそうとした結果。

 あるぇ~? 全然動いてないぞぉ~?(;゚Д゚)

 しかも内容が安定のガバガバ矛盾だらけという(´・ω・`)本当に申し訳ない。
 読みづらい文章になってしまいましたが、飛ばし飛ばしでも拝見いただければ幸いです。


16.食堂(陸奥視点)

 納得がいかない。

 長門型戦艦二番艦『陸奥』は、切り分けたハンバーグを口に運びながら食堂の隅を睨みつけた。

 

 春日蒼汰が横須賀鎮守府に来てから3日目。彼は今日も、食堂で妖精さんたちに囲まれながら楽しそうに昼食を摂っている。【提督】は食堂に来る予定もなく、執務室で海域図とにらめっこをしながら食事をしているというのに、だ。

 そもそも春日蒼汰の配属は【提督】の激務を軽減するためではなかったのか。少なくとも、自身が秘書艦をした時に閲覧した大本営からの書類にはそう書かれていた。たしかに【提督】がペンを握る時間は減った。一方で、過去の報告書を読み漁り眉間にしわを寄せて唸り続ける時間は増えた。

 大淀は「彼の専門は作戦立案ではなく事務仕事ですから、その分野に期待はしないでください」と言っていた。たしかにここ2日間秘書艦を務めた足柄・長門によれば秘書艦がペンを持つ機会はほぼなかったらしい。書類仕事がさっぱりな姉の長門は「これは楽でいい!」とふんぞり返っていたのでお説教しておいたが。

 では【提督】が何をしているのか。それは深海棲艦の不穏な動きへの対応に間違いない。どうやってか警備の網目を潜り抜けて日本近海に出現している深海棲艦の数は、減少するどころかここ数日で倍近くにまで増えているらしい。前回の大規模侵攻から4ヶ月経ったということもあって、艦娘の間ではこんな噂が流れている。

 

 次の大規模侵攻は、過去に類を見ない規模になるのではないか。

 

 出没する深海棲艦の目的が何らかの偵察である可能性は高い。実際に昨日、第一会議室で開かれた旗艦会議では【提督】から暗にソレを示すような言葉が発せられた。

 

「体調管理の徹底と、艤装の整備を怠るな」

 

 何らかの緊急出撃が予想される、という言葉。偵察力の高い利根・筑摩や航空母艦を近海哨戒に割り当てるという指示。少しの予兆も見逃すまいという想いが【提督】からは感じられた。

 気になったのは、その【提督】の目元に隈が浮かんでいたことだ。書類仕事に追われていた頃よりも鮮明に浮かび上がる黒い染みは、会議に参加した艦娘から体調を心配されるには十分すぎた。

 

 大丈夫、問題ない。きちんと睡眠は取れている。その言葉は、隣に立つ大淀の暗く沈む表情を見れば嘘だとすぐに分かる。

 不甲斐ない。【提督】の作戦に頼り切っていて何の手助けもできていない自分が恥ずかしい。秘書艦になったとしても、作戦立案の面では神算鬼謀を持つ【提督】の力にはなれないし、かといって以前のような書類処理も大本営からの新参者に一任されたことですることがなくなってしまった。せいぜいがお茶汲みや鎮守府内の連絡、工廠での開発など。定期的に会議も開いてはいるが、毎回【提督】の立案した作戦の概要説明と各艦隊の近況報告で終始している。

 

 ようするに、羨ましいのだ。執務面で【提督】の役に立てている春日蒼汰が。

 妬ましいのだ。【提督】に一目置かれ、信頼されている新参者が。

 だというのに。やる気をみなぎらせるわけでもなく、楽しそうでもなく。ただ淡々と書類処理を進め、艦娘と触れ合おうともせず。ほとんど表情を動かすことのない少年が。秘書艦である自分たちの仕事を奪っておきながらそれが当たり前だという態度でシレッと仕事している若き軍人が。ただひたすらに恨めしいのだ。

 

 自分たちの力不足であることは自覚している。艦娘という立場上、処理できない書類があることも認識している。敬愛する【提督】の激務を肩代わりしてくれている少年を恨むのが間違いであることも分かっている。それでも、国を守る最前線の場所にも関わらず毎日定刻――一七〇〇になればさっさと帰宅してしまう彼の働く姿勢はどうにも納得がいかない。

 

 せめてもう少しやる気に満ち溢れた表情を見せてくれれば納得がいくものを。困ったような、気だるそうな表情で群がる妖精さんたちを適当にあしらう春日蒼汰を見て陸奥はため息をつく。

 秘書艦を優先的に任される艦娘に共通している点として、責任感がありリーダーシップがあることが挙げられる。足柄も、長門も、今日の秘書艦である陸奥自身もだ。他の秘書艦を任されるような艦娘たちも、長門のように『【提督】の失脚を目論んでいる』と極端まではいかずとも、春日蒼汰に対して良くない印象を持っている。故に、長門の春日蒼汰イメージダウン演説を止めようとしない。明らかに、やる気のなさそうな無表情で働く春日蒼汰の態度が心象に悪影響を与えていることは間違いない。客観的に分析できている陸奥でさえ、心の中では春日蒼汰を嫌っていることを自覚している。

 

 考え事をしている間に、いつのまにか春日蒼汰は食堂から出て行ってしまったようだ。秘書艦である陸奥も、早く食事を摂って執務室に戻らなければなるまい。賑やかな喧噪に包まれるようになった食堂の中で、慌ててハンバーグと白米を口に運ぶ。

 

 もちろん陸奥も短絡的に春日蒼汰を「鎮守府にとっての悪」と断じているわけではない。ここ数日、彼の方から積極的に艦娘に接触するような素振りは見せていないことから、姉の長門が言うように艦娘を誑かして【提督】の失脚を目論んでいるとは思えない。単細胞で頑固者の姉は「私が先手を打ったことで、奴も思うように動けていないに違いない!」と鼻息を荒くしているが。

 

 いずれにせよ、春日蒼汰とは対話する機会を設けなければなるまい。【提督】にも、どうして彼を受け入れたのかの意図を改めて確認する必要があるだろう。

 大規模侵攻が控えている大事な時期なのだ。深海棲艦の動きが不穏な今、鎮守府内で仲間割れをしている場合ではない。少しでも早く、このギスギスした空気をなくさなくては。

 頭の固い姉の代わりとして、第二艦隊旗艦として。あくまで冷静に、落ち着いて、対応していかなければなるまい。

 そう考えながら、執務室へ向かう廊下の角を曲がったところだった。

 

 

 その春日蒼汰が、駆逐艦『島風』を胸に抱き寄せていた。

 

 

 目を丸く見開いて驚いている様子の少女、春日蒼汰は陸奥に背中を向けており表情は伺えない。

 とっさの出来事に、陸奥の頭の中がカッと赤く染まり――

 

 パンッ!!

 

 廊下に、乾いた破裂音が響き渡った。




 総合評価400pt(゚∀゚)! とても嬉しいです、ありがとうございます!

 むっちゃん、秘書艦なのに【提督】と一緒にご飯食べないの何でー?って思いました。
 自分で書いてて疑問に思う作者です。
 たぶん【提督】が気を利かせて「他の娘と食堂で歓談しておいで」とでも言ったんじゃないかなと。余計なお世話ですね。
 ケッ! これだからイケメンは!

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