左のほっぺたが痛い。
なんか急に背後から現れた高身長の女性に「こっの変質者ぁ!!」って言われた次の瞬間には、廊下の壁に激突してた。
『き、決まったー! 戦艦陸奥のビッグセブン平手だー!』
『いやいや、40cmビンタです』
『いえいえ、主砲火薬庫爆発アタックです』
『『『は???』』』
なにケンカしてんのキミたち。
経緯を話そう。急いでご飯を食べたボクは第二会議室に戻ろうと早歩きで廊下を移動していた。
廊下の角を曲がったら、やけに露出の多い少女が「ばいのはやさでー」と訳の分からないことを言いながら全力疾走でボクに向かって突っ込んできた。
ボクの胸板目がけてものすごい勢いで顔面から激突してきた少女を受け止める。ちょっと腰がグギッて変な音したけど今は気にしない。
「おぅ?」
おぅじゃないが。
何かにぶつかったことにやっと気付いた少女は、目を丸くしながらボクを見上げてくる。露出多いのに全然日焼けとかしてないし、むしろ肌が病的なまでに真っ白だし、なんだこの子、気味悪いな。
まあ、前方不注意で一方的にぶつかってきたとはいえ、相手は幼気な少女。これで怪我でもしてたらボクの責任にされかねない。まさかないとは思うが、戦時で働き口が少ないこのご時世にこんなつまらない事でクビだけは勘弁してもらいたい。とりあえずは少女の無事を確認しようと思って声をかけた。
――キミ、怪我はない?
「……おぅ?」
だからおぅじゃないが。
人の話聞いてるのかな、なんて思いながらもう1回だけ聞こうと口を開いたら――
「こっの変質者ぁ!!」
背後からガッと胸倉掴まれてビンタされました。あまりの衝撃に最初は何が何だか訳が分からなかったよ。
露出少女はお姉さんに腕掴まれて運ばれていった。なぜかジッとボクのことを見ていたんだけど、そんなに滑稽ですか壁にぶつかってへたり込んでるボクの姿は。
あー、痛いなぁ。口の中に広がるのは鉄臭く生臭い血液の味。今まで味わった中で最悪のデザートだ。
去っていった方向を見るに、あの2人は執務室に向かったみたいだ。【提督】に直談判でもするつもりだろう。ボクはセクハラで懲戒処分されるに違いない。
異動して3日目で不祥事とかボクの評価はダダ下がりだろう。まさかクビはないと思うけど減給処分くらいは覚悟した方が良さそうだ。
どうも好かれてないみたいだし、波風立てないように艦娘とはなるべく距離を置いていたのにこの仕打ちはあんまりだと思う。
『クマ子たちがいるクマ。元気出すクマー』
うるさいスモールヒューマン。今のボクは頬と腰が痛いしお金も減るしで不機嫌なんだ。ボクに元気出してほしいなら可愛い恋人の1人でも連れてこい。
『生意気な口はこれクマ?』
ごめんなさいごめんなさい! 謝るから頬をつねらないで! せめて逆でお願いします、そっちはビンタされた方だから!
クマ子さんは女性関係の冗談を言うとめっちゃ怒る。妖精さんも女性みたいな見た目してるから、たとえ冗談でもそういう類のことは聞きたくないみたい。
すっかり拗ねてしまったクマ子さんを左手で撫でながら、右手は書類処理のため休みなくペンを走らせる。時折お菓子を盗もうと忍び寄ってくる他の妖精さんたちは、クマ子さんの鉄壁ガードで成す術なく吹き飛ばされていく。もう拗ねてないよね? これ。撫でてほしいからそっぽ向いてるだけだこの子。可愛いなあ。
『グマァッ!?』
あら、口に出てたらしい。顔を真っ赤にしてキシャーッて威嚇してくるクマ子さんにナデナデ続行。とても癒される。
仕事しながら癒しを得るという最高の環境に浸っていると、妖精さんのうち1人が『蒼汰、蒼汰』と肩を叩いてくる。どうした小人A。いまボクはクマ子さんを愛でるので忙しいんだ。
『あれ、どうします?』
指差されたのは背後の窓。中庭がどうしたんだいと覗いたら
「おぅ? おーぅ?」
何やってんだあの露出少女は。
中庭に生えてる樹木の1つに向かってピョンピョンと飛び跳ねてるのは、ボクの減給処分を引き起こした疫病神だった。
祝 ☆ 感 想 20 件 (゚∀゚) ドンドンパフパフー
お話、動けやオラー!!(;゚Д゚)って気合入れたら動かないですかね。重いモノと違って気合じゃ動きませんか。そうですか。
でも頑張っちゃう(゚∀゚)気合で動かしちゃう。