妖精さんが見えるだけなのに   作:語部創太

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 過去回想だと思った? 残念でしたー! 主人公視点でしたー!

 いやもうね、主人公視点だと脳みそ空っぽで書けるから楽だし楽しいし最強ですわ。
 仕事のストレスぽぽぽぽーん!!(゚∀゚)


19.善意(主人公視点)

――何やってるの?

 

「おぅ?」

 

 オットセイか何かなのかい、キミは。

 

『困ってるみたいです?』

『助けた方がいいです?』

『むしろ放置プレイというのもありです?』

『あり寄りのありです』

 

 なし寄りのなしだよ。困ってる人を助けなかったら、それはそれで寝覚め悪いじゃん。そう思ったから仕事を中断して助けに来たのに

 

「おぅ? おぅおおぅ? おーぅ?」

 

 日本語しゃべれんのかお前は。

 来るんじゃなかった。さっさと戻って仕事の続きをしよう。ボクの回りを月みたいにクルクル回る露出少女を視界の端に捉えながら決心を固め――

 

 

「私、島風!」

 

 キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!

 

 

 いや、きちんと話せるなら最初からそうしててよ。いきなり自己紹介するからビックリして手に持ってた妖精さん投げちゃったよ。

 

『もっかい! もっかい!』

『わたしも! わたしも!』

 

 なにぶん投げられて喜んでるんだ。高い高いじゃないんだぞ。

 

「私も! 私も!」

 

 なに言ってるんだこの疫病神は。そんなに投げてほしいならやってやるよ両脇に手をいれてどっせーい!!

 

「たっかーい!」

 

 ……そういえば『何とかと煙は高いところにのぼる』ってことわざがあってだね

 

「お゛ぅ゛ ?」

 

 オッケー分かった。ボクが悪かった。たしかに初対面(2回目だけど)の女の子をバカ呼ばわりはダメだね。以後改めよう。だからこちらに向けた主砲を下ろすんだごめんなさいなんでもするから許してしまかぜ。

 

「ん? いまなんでもするって言ったよね?」

 

 あっはい。

 

「じゃあ連装砲ちゃんを助けて」

 

 ……なんて?

 

「連装砲ちゃんを助けて!」

 

 ……ほうれんそうちゃん?

 

「れ・ん・そ・う・ほ・う・ちゃん!!」

 

 はいはい連装砲ね。キミの右手についてるソレね。こっちに砲口向けるのやめて?

 連装砲"ちゃん"? なに、海軍のマスコットキャラクターでそんなのいたっけ? 助けるってヒーローごっこか何か?

 

「アレ!」

 

 いやアレって指差されてもそこにあるのはさっきまでキミが跳び跳ねてた樹木じゃないですか――

 

「キュー……キュー……」

 

 なんだアレ。

 連装砲に顔と手と、浮き輪? が付いた謎の生物が、犬のようにクンクン鳴きながら枝にしがみついてた。

 

「登ったら降りられなくなっちゃったの……」

 

 あのダックスフンドみたいな短い手足でどうやって登ったんだ。

 まあいい。とりあえずあの未確認生命体なのか兵装なのかマスコットキャラクターなのかよく分からない存在を救助しよう。さっさと救助してさっさと仕事に戻ろうそうしよう。

 

「助けるの、おっそーい!」

 

 埋めるぞキサマ。人がせっかく助けてやろうとしてるのにケンカ売ってんのか。これにはガンジーもコークスクリュー放つレベル。

 しかたない。この露出少女あらため島風さんには何も期待しない。これはあくまでボクの自己満足。ボクがやりたいからやってるだけ。疫病神とはいえ女の子の頼みを断るわけにはいかないし。

 ああ、でもこの真っ白な軍服を木登りで汚すのは嫌だな。下はしょうがないにしてもせめて上着くらいは守ろう。妖精さん、悪いんだけど上着を持っててくれるかい?

 

『『『まかせろー』』』

 

 よし、任せた。

 

『『『ぐえー』』』

 

 ダメじゃん。キミたち重い艤装とか運べるのに、なんで十数人もいて軍服1つ持てないのよ。

 地面には着けてない? そう、それなら良かった。すぐに救助してくるから待っててね。これでも小さい頃は高いところが怖くて木に登ったのに降りられなくてプルプルしてたもんですよ。

 

 ……あれ? これって二次被害が生まれるやつでは?

 いや、大丈夫。大人になったボクを信じろ。がんばれがんばれできるできる。元プロテニスプレイヤーも言ってた。

 よし行くぞ。待ってろホーレンソーちゃん。いまお兄ちゃんが助けてやるからな!

 

『どっこいしょクマー!!』

「キューイ!?」

「連装砲ちゃんがー!?」

 

 何やってんのクマ子さん!?

 

 いつのまにか木の上まで登ってたクマ子さんが、枝にしがみついてた連装砲ちゃんをポーイって空中に放り投げてた。

 このおバカ! 誰が下で受け止めると思ってるんだ! 鉄の塊みたいな見た目してるんだぞ重さがどれだけあるか分かったもんじゃない! おい誰か妖精さん!

 

『あ、私たちは蒼汰の軍服で手一杯なので』

『そういうサービスは受け付けておりません』

『スーハースーハクンカクンカジュルペロッ!』

 

 ダメだ変態しかいない! 肝心なところで使えないな小人族!

 しかたない! ここはボクがセンター岡田ばりのエリア66スーパーダイビングキャッチを魅せてやる!

 冷静に着地点を見極めて…………ここだぁ!

 

「キューイ!!」

 

 な、なにぃい!? 空中で1回転、いやひねりも加えた3回転だとぉ!?

 

 ズザザー…………スタンッ!

 

「キュイッ!」

 

 人の背中に着地しておいて満足そうな鳴き声あげてるんじゃないよ。

 

「……だっさーい」

 

 連装砲ちゃんを抱きあげながらゴミを見るような目でボクを見るな疫病神。

 




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 ご期待に沿えるかどうかは分かりませんが、これからも頑張ってのんびり投稿していきます。

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