妖精さんが見えるだけなのに   作:語部創太

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 頭空っぽでその場の勢いで書いたら、なんかとてもシュールな話になりました
 文才ほしい


18.善意(大淀視点)

「どうして彼を着任させたの!」

 

 血相を変えて執務室に入ってくるなり【提督】に詰め寄ったのは、温厚な性格のはずの陸奥さんでした。

 

「……落ち着け、陸奥。今は報告の最中だぞ」

 

 【提督】の苦言で我にかえったのか室内を見渡す陸奥さん。そうです。今は、帰投した第一艦隊による報告の最中だったのです。

 自分の行動を恥じたのか頬を赤く染めながら俯く陸奥さんの背中を軽く叩いたのは、姉であり第一艦隊旗艦でもある長門さん。しかし、その口から出た言葉は陸奥さんをたしなめるものではありませんでした。

 

「いや、この長門も陸奥と同じ気持ちだ。どうして春日蒼汰を横須賀鎮守府に異動させたのか、教えてもらえないだろうか」

「今は報告が先だ」

「もちろん報告はする。しかし全員揃ってからだ。島風がどこかに行ってしまったからな」

 

 第一艦隊唯一の駆逐艦である島風さん。自由奔放な彼女が帰投後の報告にいないのは通例となっていましたが、本来なら許されることではありません。艦娘の自主性・多様性を重んじて許容してくださる【提督】だから見逃してくださっているだけで、艦娘側から本来の在り方を言われてしまえば反論のしようはありません。

 

「あら? 島風なら一緒に連れてき――」

「おっそーぃ……!」

「ごめんなさい。なんでもないわ」

 

 連れてきたはずの島風さんの声が遠くから聞こえてきたことで、陸奥さんは諦めたように肩を落としました。第一艦隊の面々や【提督】、私も呆れたような苦笑を浮かべているに違いありません。とはいえ仕方ありません。彼女を制御できる人などいないんですから。

 とはいえ、このギスギスした空気はあまり良くありません。【提督】が机の上で手を組み俯いているためその表情は伺い知ることはできませんが、身に纏う空気は決して穏やかとは言えませんでした。

 しかたない、ここは私が受け答えをしなければ。そう考え、幾度となく繰り返してきた説明をもう一度口にします。

 

「【提督】が春日くんの異動を認めたのは、滞っている書類処理を任せるためです。大本営からもそういった説明がされていたではありませんか」

「理由がそれだけでないことは、お前も気付いているはずだぞ大淀」

 

 頭の悪い私でも気付くくらいだからな、と言うのは長門さん。

 たしかに、ただ書類仕事を任せるのなら今までに何人も横須賀鎮守府に配属願いを出した提督候補生がいました。そうして大本営から打診された将来有望な人材を切り捨て、春日くんを選んだのは【提督】です。

 春日くんが私の自慢の後輩だとしても、どれだけ優秀だとしても、ただの文官でしかないのです。その彼に『軍人』としての身分を与えて異動させるのは、普通に考えて疑問です。

 その理由の詳細を私たち艦娘に伝えないのは【提督】のお考えあっての事だとは思います。しかし、それが私たち艦娘の不信感を募らせていることもまた確かなのです。

 

 私たちが【提督】の様子を伺っていると、ゆっくりその御尊顔を上げられました。

 

「……機密事項だ」

 

 その苦渋に満ちた表情を見て、私たちはハッと息を飲みました。

 言いたくとも言えない、伝えられない事情が【提督】にもあったのです。それを知らずになんて失礼な態度を取ってしまったのでしょうか。

この方が。横須賀鎮守府を、この国を救った英雄が。私たち艦娘のことを想ってくれている心優しい【提督】が、理由なく私たちの反感を買うような事をするわけがなかったのです。

 

「すまない【提督】。私たちの配慮が足らなかったようだ」

 

 長門さんの言葉をきっかけにして、全員で礼をすると【提督】は慌てて「顔を上げてくれ!」と仰られます。本当にお優しい人です。

 そのまま少し考えておられた様子でしたが、何かを決心したかのように頷くと、私たちに目を向けました。

 

「……だが、そうだな。春日くんと君たちとの間で信頼関係を築けていないのは、私の責任でもある」

 

 春日くんなら大丈夫だと放任してしまった、と仰る【提督】。やはり春日くんは【提督】から絶大な信頼を寄せられているようです。

 …………正直、かなり羨ましいです。

 

「このまま問題を放置していては艦隊の士気にも関わるし、作戦遂行や鎮守府運営にも影響が出てくる。そうだな? 大淀」

「は、はい! その通りだと推測されます!」

 

 急に名前を呼ばれたから思わず声が裏返ってしまいました。

 

「では、春日くんと君たちとの間で信頼関係を築くための場を設けよう」

 

 そう言うと【提督】は、第一艦隊のメンバーでもある龍驤さんに目を向けました。

 

「龍驤。春日くんを呼んできてくれるか」

「ええでー」

 

 たしか龍驤さんは、まだ春日くんと面識がなかったはず。大丈夫か尋ねると「第二会議室に行けばいいんやろー?」と言いながら執務室を出ていきました。

 

「一度、お互いにしっかり話し合った方が良いだろう」

 

 あからさまに嫌そうな顔をした何人かに苦笑しながら【提督】は長門さんに、島風と龍驤さん抜きで出来る限りの出撃報告を求めました。

 




 見きり発車、行き当たりばったりで書いているので、矛盾点とか疑問点がたくさんあると思います。ごめんなさい。

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