妖精さんが見えるだけなのに   作:語部創太

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お腹が減りました。


4.案内(大淀視点)

 横須賀鎮守府で仕事をお手伝いしてくれている妖精さんたちがいきなり春日くんに銃を突きつけた時にはどうなることかと思いました。さらにその後、春日くんの荷物から飛び出してきた大本営にいた妖精さんたちとの間で銃と剣による戦いが始まった時には、やはり大本営からの人材を受け入れるべきではなかったのではないかと考えてしまいました。

 大本営の中には、若くして出世街道をひた走る【提督】のことを快く思っていない人もいると聞いています。元帥閣下と【提督】が親しくしていることもあって、妬みやひがみを持つ者は決して少なくいと。

妖精さんたちが互いに争うなんて見たことも聞いたこともありませんでした。しかし目の前で戦っている光景を目撃して、妖精さんたちの間でも派閥があって相容れない間柄もあるのではないかと勘繰ってしまいました。もし大本営と横須賀鎮守府の妖精さんが不仲であるなら。それを持ち込んだ春日くんの真意とは。彼が【提督】を快く思わない派閥に属している可能性は。とっさに頭に浮かんだ悪い想像は、ずっとグルグル思考を回し続けています。

 

『金平糖は渡さないぞー』

『なにをー』

『蒼汰のものはわたしたちのものですー』

『戦力の差を忘れたかー』

『クマー』

 

――仲良くしなさい。

 

 しかし、すっかり仲良くなってしまった様子の春日くんと妖精さんたちを見ると、その心配が杞憂であったと分かりました。私が意識を失っている間に何があったのかは分かりませんが、妖精さんたちは金平糖の入ったビンをお神輿のように担いでいます。どうやら春日くんが渡したお菓子に興味を惹かれ意気投合しているようです。

 

 こういう時、妖精さんの声が聞こえれば私も親睦を深められるのに。体中に妖精さんを引っ付けている春日くんが羨ましくて小さくため息をつきます。

 

――どうかしました?

「いえ、なんでもありません」

 

 金平糖を両手に持って美味しそうに頬張る妖精さんの声を聞きたい。なんて願望を春日くんに行っても仕方ありません。

 

「それでは【提督】がお待ちしている執務室へご案内します」

 

 気持ちを切り替えて、本来の目的を果たさなければ。できる先輩として、かつての教育係として。後輩には威厳というものを見せなければならないのです。

妖精さんたちも春日くんを許してくれたようなので、庁舎の中に入ります。

 

――それなんですけど大淀さん

 

 しかし気合を入れる私とは反対に、春日くんは顔を妖精さんに引っ張られながら言いました。

 

――先に着替えたいんですが、更衣室か何かありませんか?

 

 そういえば、春日くんは軍服ではなくスーツ姿でした。【提督】と面会する以上、そのままの格好というわけにもいかないでしょう。

 先に、春日くんが仕事をすることになる部屋まで案内することにしましょう。

 

「というか、なんで軍服を着ていないんですか?」

 

――通勤中も軍服だと、それを見た民間の人たちが怯えちゃうじゃないですか

 

 有事でもないのに警戒の意識を高めさせるのはちょっと、と苦笑する春日くん。たしかに私たち艦娘も休日に外出する時には海軍指定の制服ではなく私服を着て出かけます。オシャレしたいという年頃の女性ならではの悩みからくるものですが、民間人の方たちに必要以上に気を張らせないようにという気遣いは軍服以外の服を着る理由の1つとして考えられるでしょう。

 

「なるほど。では先に春日くんが執務を行う部屋に案内しますね」

 

――はい、よろしくお願いします。

 




ご飯を食べました。
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