ロリでショタで30代の男の娘は好きですか?(FGO編) 作:とんこつラーメン
一体なんだ、この状況は……。
最後のマスター候補である少女が大の字になって廊下で寝ていて、それをマシュが起こそうと試み、フォウがその前足で少女の頬をペタペタと叩いている。
うん。見事なまでのカオスだな。
「こいつはいつから寝てるんだ?」
「分りません。私がここに来た時には、もう既に寝ていました」
「なんだそれは……」
こんな場所で寝て、痛くないのか?
よく見たら、かなり熟睡してるみたいだが。
あ。フォウが頬を舐め始めた。
「どうしましょうか……」
「心配すんな。こんな時は……」
白衣の中から暇潰しに作ったハリセンを取り出す。
それを大きく振りかぶり~……。
バチン!!
「いったいっ! 頭が~っ!?」
「やっと起きたか」
頭に大きな衝撃を受けて、ようやく目が覚めたのか、藤丸立香はゆっくりと半身を起こした。
「えっと……ここはどこ?」
「正面ゲートから中央管制室に向かう通路だ」
「より大雑把に言ってしまうと、カルデア正面ゲート前ですね」
「正面ゲート……?」
なんだこいつ。もしかして寝ぼけてんのか?
だとしたら、もう一発ぐらいお見舞いしておくか?
「あの…少し質問をしてもいいでしょうか?」
「な…なに?」
「見た限りでは、随分と熟睡しておられたようですけど、こんな通路の真ん中で寝ている理由がいまいちよく分りません。先輩は、固い床の上じゃないと眠れない人だったりするのですか?」
「いや~。実はそうなんだよね~。昔から畳の上とかじゃないと眠れなくてさ~…って、ンなわけないジャン! 誰が好き好んで固い床で寝たがるのっ!? 私は普通にふかふかの御布団で寝たい派の人間だよ!」
「ノリツッコミだな」
見た目通り、かなり愉快な奴だな。
意外と、こんな神経図太そうな奴が最後まで生き残ったりするんだよな。
ウチの両親なんかがいい例だ。
あれはもう神経図太いなんてレベルじゃないからな。
確実にパルテノン神殿の柱ぐらいの太さがあるぞ、絶対。
「フォウ! キュ~…キャウ!」
「ん? なに? さっきから私の手を舐めてる子は?」
「すみません。まだあなたの紹介をしてませんでしたね」
「フォウ!」
心なしか『今更かよ!』って言ってる気がする。分んないけどさ。
「このリスのような子犬のような子猫のような方はフォウさん。このカルデアの施設内を自由気ままに散歩している謎の特権生物です」
ついでに言えば、よくオレの研究室に出入りをしてエサを要求してくるヤツでもある。
その対価として、抱き枕にして寝てるんだけどな。
フォウを抱きしめながら寝ると、マジで熟睡出来るんだよね。
「色々とツッコミ所はあるけど…今はやめておこう」
「懸命だ」
未だにカルデアにいる誰もが、こいつの真の正体には気が付いてないからな。
オレを除いては…だけど。
「因みに、私はフォウさんにここまで導かれて、その結果として廊下のど真ん中で爆睡中だった先輩を発見した次第です」
「もうソレ言うの止めて~! 割とマジで黒歴史になりそうだから!」
残念だが、それは無理な相談だな。
マシュはいい意味でも悪い意味でも天然だから、最低でも向こう半年は同じネタを言われ続けられるぞ。
「フォウ! ンキュ…フォウフォ~ウ!」
「おっと」
いきなり走ってきたと思ったら、オレの頭の上に乗ってきやがった。
こいつ、隙あらばオレの頭の上に乗ってこようとするよな。
別に全く重たくは無いから、こっち的には全然平気なんだけど。
「フォウさんは本当に博士によく懐いてますね。何か好かれるコツでもあるんでしょうか?」
「さぁな。オレがしてる事なんて精々、餌をやったり抱き枕にしてるだけだぞ」
「フォウさんを抱き枕にして寝ている博士……ゴクリ……」
おい。今何で唾を飲んだ?
またAチームの奴等に変な事を吹き込まれたんじゃないだろうな?
「見たことも聞いたことも無い不思議で可愛い生物が白衣を着た美幼女の頭の上に乗ってる……」
「美幼女て……」
ここまでストレートに言ってくる奴も久し振りだな。
因みに、過去に似たような事を言ってきたのはペペロンチーノ。
出会い頭に思いっきり抱きしめられたのは、オレの忘れたい過去ランキングの上位に位置する。
「つーか、お前もなんか気に入られてたみたいじゃんか」
「そういえばそうですね。だとしたら、このカルデアにおける記念すべき三人目のフォウさんのお世話係の誕生です」
「わ~パチパチパチ」
「それ絶対に祝ってないよねっ!?」
当然だ。何を今更。
っと、ここで無粋な男の登場みたいだ。
レフの野郎。絶対にタイミングを見計らってたな。
「おや。そんな所にいたのかマシュ。それに望月博士も」
「よ。さっき振りだな」
「そうだな。マシュ、ダメじゃないか。断りも無く勝手に移動をするのはよくないと、よく言われているだろう?」
「すみませんでした……」
「いや、もういいさ。博士が傍にいてくれたのなら大丈夫だろう。彼は君の事をとても大切に思っているからね」
「はい。博士にはどれだけ感謝してもしきれません」
「………そうか」
大切に……か。
そりゃそうだろうよ。だって、オレとマシュは……。
「おっと。そういえば先客がいたんだったね」
「あ……えっと……」
「君は……成る程。そうか。今日から配属されたという新人くんだね」
年上の男の前ということあってか、すぐに立ち上がって服に着いた埃なんかを取っていく藤丸。
流石に、あのままでいるようなバカじゃなかったか。
「初めまして。私の名は『レフ・ライノール』。このカルデアで働かせてもらっている技師の一人だよ。君の名前はなんていうのかな?」
「わ…私は『藤丸立香』っていいます! よろしくお願いします!」
「藤丸立香くん…か。成る程、君が招集された48人の適性者、最後の一人になるわけか」
「は…はい。そう…みたいです」
「ようこそ、カルデアへ。スタッフ達を代表して君の事を歓迎するよ」
いや、オレは別に歓迎なんてしてないんだけど。
勝手に代表して挨拶すんな。
「ところで、君は一般公募から来た人間のようだけど、訓練期間はどれぐらいなのかな? 一年間? それとも半年? もしかして、最短の3ヵ月かな?」
「アホか。ついこの間までごく普通の一般人だった奴が、ちゃんとした訓練なんてしてるわけがないだろうが」
「一般人? ということは……」
「そーゆーこった」
こいつ、ちゃんと資料とか読んでるのか?
普段からオレにこ煩くしてる癖に、こんな時だけ職務怠慢かよ。
「レフ教授。彼女の訓練期間は僅か数時間レベルです」
「数時間……。そうか、思い出した。そういえば、数合わせで緊急で採用をした一般枠があったんだったな。成る程、君はその一人だった訳だな。済まなかった。配慮に欠けていたね」
「いえ。気にしなくてもいいですよ。ここが自分みたいな人間にとって場違いな場所なのは分ってますから」
ほ~? 意外と現実を理解してるんだな。
確かに、今まで魔術に微塵も携わってない人間にとっては、この場所は未知であると同時に恐れ多い場所に見えるだろうな。だけど……。
「そう悲観的になる必要はないよ。何故なら、今回のミッションには君たち全員の力が絶対必要不可欠なんだからね」
言われた。
「魔術の名門から38人。才能がある一般枠から10人。よくもまぁ、この短期間にこれだけの人材を集められたもんだな」
「それも全て、博士を初めとした全てのスタッフの努力の賜物だよ」
オレが筆頭なのかよ。
「これは大変に喜ばしい事だ。この2015年において、量子ダイブが可能な適性者達を全て、このカルデアに集めることが出来たのだから」
「割とマジで奇跡的だよな」
「そうだね。何か分らないことがあれば、私やマシュ、もしくはこの望月博士に遠慮なく声を掛けて……ん?」
おい。なんでそこにオレも入る。
オレは何もしてやらんぞ。
「マシュ。君は彼女と一体何を話していたのかな? 君が自分から初対面の人間と話すだなんて珍しい。それとも、実は以前から面識があったのかい?」
言われてみれば。大抵、マシュの話し相手はオレかロマニ、もしくは同じAチームの連中だけだったからな。
「いえ。私と先輩は今日が初対面です。この区画でよく寝ていらしたので、つい……」
「寝ていた? 彼女がここで?」
「そうだ。それでレフに聞きたいことがあるんだ」
「何かな、博士?」
「……最近の若い連中の間では、廊下のど真ん中で爆睡するのが流行ってんのか?」
「いや…私もよくは知らないが…そんな事は無いんじゃないかな?」
「だよな……」
だよね~? あぶな~…危うく、時代の波に取り残されてしまったのかと思ったわ~……。
「恐らく、入館時に受けたシミュレートの影響じゃないかな? あれは量子ダイブに慣れていない人間だと結構、脳にくるからね」
「そうかぁ?」
オレも同じ奴を受けたことあるけど、全然大丈夫だったぞ?
終わってから、すぐに仕事を始めたぐらいだし。
「博士と一緒にしてはいけないよ。多分、シミュレート後に表層意識が完全に覚醒しないままの状態でゲートから解放されて、意識が朦朧とした状態でここまで歩いてきたんだろう」
「そして、ここで力尽きてしまったと」
「多分…だがね。一種の夢遊病のような状態だ。藤丸君が倒れた直後にマシュが話しかけてきたんだろう」
それもそれでまた凄いタイミングだな。
「見た感じでは体に異常はなさそうだが……」
「はい。私なら全然平気ですよ?」
「だが、万が一という可能性もある。可能であれば、このまま医務室まで送ってやりたいのだが……」
「だが? なんだよ?」
「もうすぐ所長の説明会が開始される」
「オルガの?」
説明会…んなの予定にあったっけか?
ヤベ…マジで覚えてないわ。
「あぁ。博士もスタッフ兼マスター候補の一人として出席して欲しいと言われているよ」
「だろうな……」
あいつの事だから、オレが来るまで説明会を始めない可能性まである。
流石にそれは気まずい。
「そんな訳で、済まないね。もう少しだけ我慢をしてくれ」
「はい! なんかよく分んないけど、なんとか頑張ります!」
元気いいな~。若さ故の特権か?
いや…違うな。少なくとも、同年代と思われるマシュやカドックはこんなにも連ションは高くない。
「でも…所長? 説明会?」
「所長は所長だ。カルデアの一番のトップで、お前の上司。そして、今回のミッションの司令官でもある」
「物知りなんだね~♪」
「頭撫でんな」
つっても、性格的に聞かなそうだけどな。
現に今も、手を振り払ってるのに懲りずにまた頭を撫でてやがるし。
「君は一般公募出来ている新人だが、まさかパンフレットを見ていないのかな?」
「かも知れないですね。所長のプロフィールは基本的に一般公開をされていませんから」
それこそ、万が一の事を考えてだ。
なにせ、あいつは仮にも『アニムスフィア家』の現当主なんだから。
どこから命を狙われるか、分かったもんじゃない。
「少なくとも、アニムスフィアの名に畏敬の念を示すのは、百年以上の家系である魔術師だけかと。ですよね? 博士」
「ん? まぁ…そうだな。あいつの事を知ってようと、いまいと、今からやる事には何の影響もないだろ?」
「そうかもしれないが、彼女の性格を考えると、些細な事で目をつけられる可能性も否定できない。だろう?」
「確かに……」
小心者の心配性なくせに、なんでか変な所で潔癖症なんだよな。
だからこそ、現在進行形で苦労してるんだけど。
「これから先、激しい喜びも深い悲しみも無い植物のような平々凡々な職場が欲しいんなら急いだ方がいいぞ。レフ、その説明会とやらはいつから始まるんだ?」
「予定では五分後に中央管理室にて所長の説明会が開催される。彼女のような新人たちに対する、ちょっとしたパフォーマンスだよ」
「要は、これから先で舐められない為に、自分の存在をアピールしようって魂胆か。なら、Aチームの連中とかは出席しないのか?」
「そうなっている。彼らは今回の作戦の要。今更、そんな説明なんて必要ないだろう?」
「なら、オレも行かなくてもよくね?」
「博士はスタッフの一員でもある。だから、出席は必須だよ」
「マジか~……」
別にオレなんかいなくてもいいじゃんかよ~。
どうせ、何もせずにぼ~っと突っ立てるだけだろ?
「あの…その説明会には私も出席出来るんでしょうか?」
「マシュも? そうだな…隅の方で見学をするぐらいなら問題ないだろう。博士がいるなら、彼女もそこまでイライラしないだろうし。だが、なんでかな?」
「先輩を管制室までお送りする必要があると思いまして。まだこの施設の事もよく把握してないでしょうし。もしかしたら、また途中で昏倒する可能性も否定できません」
「「確かに……」」」
「あれ? なんか黙って聞いてるうちに私ってば、いつの間にか居眠りキャラみたいになってる?」
なってる、じゃなくて、もうその立ち位置だよ。お前は。
「マシュを一人にすれば、なんでか私だけが叱られるからなぁ~…。必然的に、私の出席も確定する…ということか」
ざまぁ。流石のレフも、マシュには大きく出れないからな。
「仕方がない。マシュがそうしたいのなら、私達はそれを支持しよう。藤丸くんもそれで構わないかな?」
「はい。大丈夫です。ところで、一つ聞きたいことがあるんですけど…」
「なにかな?」
「さっきから、なんでこの眼鏡を掛けた子は、私の事をしきりに『先輩』って言ってくるんでしょうか?」
「それな。オレも気になってたわ。なんでだ?」
藤丸とオレが一緒に問い質すと、急にマシュの顔が赤くなった。
オレ達、なんか変な事でも聞いたか?
「恐らく、マシュにとっては彼女ぐらいの年頃の人間は全員が『先輩』なんじゃないのかな?」
「そうなのか? でも、カドックとかには『先輩』なんてつけないだろ」
「そうだな。マシュがこうもはっきりと口にするのはかなり珍しい。というか、初めての事かもしれない。そう思うと、途端に不思議になって来たぞ」
「同じく。なぁマシュ。なんでコイツが『先輩』なんだ?」
「理由…を問われると、言葉にするのは難しいですけど、この人は今まで出会ってきた人達の中で最も人間らしい人です」
「え? オレとレフって人間らしくないって思われてる?」
「少なくとも、普通に3週間近くも徹夜作業をして平気そうな顔をしている博士は、体質的には人間らしくは無いな」
「その徹夜に付き合って一緒に仕事をしたのは、どこの誰だよ」
こいつも人の事は言えねーだろうが。
勝手にオレだけを人外認定するんじゃねぇよ。
「つ…つまり、この方は全くと言っていい程に脅威を感じません。敵対する理由が皆無に等しいのです」
「それって、オレには少なからず脅威を感じたことがある事?」
「それだけは絶対にありません! 望月博士は私が世界で一番尊敬している偉大な人物です!」
「そ…そうか……」
そこまでストレートに言われると、流石に照れるぞ……。
「しかし、脅威を感じない…か。確かにそれは重要だな! このカルデアに属している人間は、いずれも一癖も二癖もある人間ばかりだからね!」
「遂にレフが自分で変人認定しやがったぞ」
「博士がそれを言うのかい?」
「うっせ」
オレは変人じゃない。天才なだけだ。
「少なくとも、私は彼女のことは気に入ったよ。藤丸くんとはいい関係性を築けそうだ」
「教授が気に入るということは、所長が最も嫌うタイプということでもありますよね?」
「だな」
「提案ですけど、このままどこかに籠って説明会をスルーするというのはどうでしょうか?」
「それ賛成! よし、今からオレの部屋に行こうぜ。茶ぐらいなら出してやるよ」
「博士の部屋っ!? 是非とも行きたいです!! ですよね先輩っ!?」
「だね! 私のこの子の部屋に興味あるし!」
「あ~…君達。盛り上がるのはいいが、それだと増々彼女に目を付けられるよ。悪いが、ここは運を天に任せてみるのもいいんじゃないかな?」
「運を天に任せるって言ってる時点で、お前も分ってるじゃねぇか」
レフも…苦労してるんだな。
「では、一緒に虎口に飛び込みに行くとしようか。なに、ああ見えても慣れてしまえば愛嬌のある人物さ。だろう? 博士?」
「そこでオレに振るんじゃないよ」
「彼女は博士の元教え子だろう?」
「それとこれとは話が別だろ……」
一癖二癖どころか、癖しかない連中に囲まれながら、オレはオルガ達が待っている中央管制室へと向かうことにした。
はぁ……もうマジで溜息しか出ないわ。
「フォウ……」
お前だけだよ…オレに癒しをくれるのは……。
今日もコイツを抱いて寝よう。絶対。