オラリオにモンスターハンターが駐在しているのは間違っているだろうか 作:クルミ割りフレンズ
それではどうぞ!
前回から明けて翌日、今日はクエストが届いていなかった為自宅で過ごしているディビッドとリコ。そんな二人は喧嘩の最中、正確に言えばリコがディビッドに一方的にむくれているだけなのだが。
発端は昨日のミィシャ、エイナに預けられた事であり我慢して撫でられていた事の鬱憤を拗ねるという形でディビッドにぶつけているのだった。リコの目の前で説教をされていたベル・クラネルからは
ディビッドが引き取りに来るまでずっと普通のネコだと思われていた。その事も手伝って更に機嫌が悪くなっている始末、女心も面倒くさいがこういう男心も面倒だと感じたディビッドであった。
「なぁリコ、悪かったよ。そろそろ機嫌直してくれって、マタタビやるからさ。」
「旦那さんにボクの気持ちなって分からないニャ!あとマタタビで許すと思ったら大間違いだニャ!」
「...その割に受け取るのな。」
まぁこんなやり取りをしているが二人は数年来の相棒同士であり、リコもある程度許しており今は形だけ拗ねているだけだ。
つまりディビッドも気付いており暗に「何か他の見返りをよこせ」と言っている事に苦笑している。
「分かった分かった、最近顔出せてなかったし今日は『豊穣の女主人』にでも行くか?ついでにマタタビ料理でm「まったくしょうがないニャ~!旦那さんの顔を立てて許してあげるニャよ!」早ぇよ、機嫌直すの...。」
と言う感じでほぼ毎回喧嘩をすればこういう形でケリが付く二人なのだった。
実際リコも『豊穣の女主人』はお気に入りの店なのだ。最初訪れたときに店主にもっていたマタタビで料理を作ってもらってからオラリオにある飲食店の中でもよく行く店になったのだ。おまけに可愛らしいキャットピープルのウェイトレスも居り言う事なしと来た。
「俺も気に入ってるけどリコは本当に好きだな、あの店。」
「旦那さんも
「まぁな、ミアさんにも珍しい食材扱ってる商人が居るって言ったら頼まれたんだよ。ついで儲かったら俺らの料理の量増やしてくれるって言ってたし。酒も美味いしな。」
今夜にでも行くことにし、ディビッドは元々あった予定の為に外出、リコは留守番する事にした。
《加工屋》
「毎回すまねぇな、おやっさん武具の整備頼んじまってさ。」
「なぁに構いやしねぇさ!それで金もらってるんだ、職人としてキッチリ仕事させてもらったぜ。それにお前さんが武具の整備が苦手なのは昔っからだしな。」
「簡単な整備は出来るんだけどな。定期的なメンテになるとどうにもな。」
此処はドンドルマからの出張《加工屋》オラリオ店。ディビッドが赴任する時に同様に移動して来た《加工屋》で店主もディビッドが駈け出しハンターの頃からの顔なじみである。
主に武具の販売・作成・強化などを請け負っている。しかし依頼は全てハンターのみである為客もディビッドのみである。
ディビッドが依頼していたのは太刀【鎧裂鎌ドヒキサキ】の整備。鎌の様な見た目の太刀であり恐るべき切れ味を持つ鎌蟹ショウグンギザミ、その二つ名個体である鎧裂ショウグンギザミの素材から作られている武器だ。以前連続で何度も担いだ為に加工屋へと整備依頼したのである。
「流石に二つ名の武器だけあって癖はあってもそこまで損傷は多く無かったぜ。ある程度傷んでた部分は預かった素材で直しといたよ。二つ名武器をここまで傷めるなんて最近モンスターの数が増えて来たよな。」
「ギルドと調査チームの報告によると本能的に異物として排除対象としているダンジョンのモンスターを感知して近づいてくるのかもしれないってのあったな。先月なんざ大型だけなら19頭も来たからな、その内他のハンターも寄越すかもしれないって言われたよ。」
「そうか、まぁお前さんらの事だから心配しちゃいないが...気ぃ付けろよ?」
「大丈夫さ、何たって俺とリコは数年来の相棒だぜ?俺が出来ない事はリコが、リコが出来ない事は俺がって支え合ってきたんだ。くたばる気は早々ないよ。じゃあまたな、おやっさん。」
加工屋の店主と別れると帰宅するディビッド、しかし夕餉までまだ少し時間がある為如何したものか悩んでいた。すると視界に知り合いの姿が数人映った。そうこうしていると向こうもこちらに気付き近寄って来た。
「あれ?ディビッドじゃーん!久しぶりだね。」
「久しぶりね。」
「...。」コクッ
「お久しぶりです。」
「よぉティオナ、それにティオネ、アイズ、レフィーヤ。昨日遠征から帰って来たんだってな、お疲れさん。」
ディビッドの知り合い、それはロキ・ファミリア所属のアマゾネスのヒリュテ姉妹に剣姫ことアイズ、エルフのレフィーヤだ。
数年前に紆余曲折あって現在は知人・友人と呼べる程度になったファミリアの一つだ。街中の酒場で時折主神ロキ、ガレス、ディビッドで一緒の呑んでいる姿が目撃される程度には仲が良いといえる。
実際ディビッドはロキ・ファミリアに限らず実力者の居るいくつかのファミリアからは一目置かれている存在である。オラリオでは珍しい【モンスターハンター】かつ神の恩恵なしに第一級冒険者と渡り合えるとされる実力、外からくるモンスター達の珍しい話などが主な原因なのだ。
「数週間ぶりってところね。私達がいない間何かあった?」
「特に無かったな。強いて言えばモンスターが近寄ってきた事によるクエストがあったくらいだ。」
聞けば向こうもティオナとアイズが武器の整備依頼に行っていたらしく、その場で雑談する。特にティオナは武器を一から作り直してもらう事になったなど苦笑ものの話題もあった。一級冒険者の扱う武具などはハンターたちの武具と遜色ない値段・手間暇が掛かる為職人たちに少し同情したディビッドであった。
「っと悪い、この後リコと一緒に『豊穣の女主人』で飯食う事になってんだ。」
「そうなの?私達もこの後そこで遠征の打上げするのよ。」
「それならまた後で会うかもな、それじゃロキにも宜しく言っといてくれ。」
後で落ち合うかもしれないと言って別れると帰宅しリコと共に目的の酒場へと赴くのだった。
《豊穣の女主人》
「それでロキ・ファミリアの人達と会う事になったんだニャ?」
「あぁ、と言っても一緒に呑むかは分からねぇよ?向こうだって遠征の打上げなんだし積もる話もあるってもんだろ。」
あの後酒場『豊穣の女主人』に来て案内された席でディビッドはリコに先程あった事を報告していると店主のミアがやって来た。
「いらっしゃいお二人さん、最近顔見せなかったじゃないか。今日はその分食べて行ってくれるんだろう?」
「あぁこんばんはミアさん。悪ぃね、最近忙しかったんだよ。取り敢えず俺はベルナスのウォッカ蒸しに竜の合挽きハンバーグ、リモホロ・ミックスグリルとポッカウォッカね。」
「ボクはマタタビのいつものと発砲ミルクでお願いしますニャ。」
「あいよ、出来るまで暫く待ってな。それとリコ今日は忙しいからアーニャとクロエは貸してやれないからね。」ニヤニヤ
そう言うとミアは厨房の方へと消えていく。先程のミアの言う通りウェイトレス達はパタパタと忙しそうにしていた。リコはリコで少しがっくりしていたが酒を持ってきたアーニャと一言二言交わし頭を撫でられると途端にデレデレしはじめ機嫌が良くなった。ディビッドや他の者では不機嫌になるのにここの二人では真逆の反応をすることに相変わらずだなと苦笑する。
乾杯し呑んでいると料理が届いたので舌鼓を打っている。
そこでロキ・ファミリアが入店して来たのが見えた。オラリオの二大派閥とされる片方の幹部陣含めた高レベル冒険者が会している為元からいた他の客はおっかなびっくりしている。向こうは向こうで主神ロキが乾杯の音頭を取り宴を始める。
「ロキ・ファミリアの人達来たニャよ旦那さん。あっ手振ってるニャよ、どうするニャ?」
「取り敢えず行くぞ、飯は食ったし酒持って行くぜ。」
二人が酒を持ってロキ・ファミリアの面々は個人差はあれど邪険にする者はいなかった。そして主神であるロキが迎え入れる。
「おぉうディビッドにリコたん同じとこで夕餉やなんて奇遇やなぁ~!」
「こちらこそなロキ、それより良いのか?俺達こっち来ても。」
「此処来る前に皆ええ言うてたし構へんよ。久々にウチとガレスと一緒に飲み比べしようや!」
「おお!それは良いわい、ディビッドよ今度こそ決着と行こうではないか!」
「別に構わねぇぞ、だがなロキ ガレス俺は既に5杯目だぞ?これでまた引き分けになったら今回は俺の勝ちだな。」
「ほぅ面白い事を言うではないか、じゃが今回勝たせてもらうのは儂じゃぞ。」
「二人だけで盛り上がって貰ったら困るわ、今回はウチが勝つでぇ!」
「「「勝負!!!」」」
と言って飲み比べを始める3人にリコとロキ・ファミリアの団長フィンと副団長のリヴェリアはまたかと苦笑する。何故ならこの3人が揃うと決まって飲み比べを始める、そして大体最初にロキが潰れてディビッドとガレスが引き分けるといった具合に幕引きになる。しかし酷い時では店の酒を飲み尽くし暫し出禁を食らった事がある為辟易していた。そんな中リヴェリアがリコに声を掛ける。
「全く、困った仲間を持つとお互い大変だな。酒は楽しむ分には良いが程々にして欲しいものだよ。」
「全くだニャ、リヴェリアさん。でもらしいっちゃらしいニャ、ボクは旦那さんが禁酒するとか言い出したらまず本物か疑うくらいだニャ。」
仲間に向けて割りと辛らつな会話を続ける2人にフィンはそれはそれでと苦笑する。そこでふとフィンは此処に来る前にティオネが言っていた事を思い出すとディビッドに話し掛けた。
「ねぇディビッド、僕たちが遠征に行っている間にまたモンスターが来たんだよね。良ければ話してくれないかな?ダンジョンのなら兎も角、地上のモンスターはあまり馴染みが無いからね。」
「おお!それはええわい、酒の肴に聞かせい。」
フィンの提案を皮切りにロキや他の団員達も聞かせてくれと言ってくる。更に周りにいる客たちも興味を向けてきている。
確かにこういう時でも無い限りあまり話さない事だと考え丁度良いと思い話始める。
「よし!良いぜそれならフィン達が遠征に向かってから最初にやって来た
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「・・・それでそのアルセルタス亜種は引っこ抜いた後さっさと捕獲して元の生息地に送り返したのさ。それじゃ俺ちょっとトイレ言ってくるわ。」
「...今の話ほどモンスターに生まれなくて良かったと感じた事無かったっす。」
「そうだね、アルセルタスっていうモンスターはメスにとっては武器兼非常食みたいな存在でもある...という事かな。」
ロキ・ファミリアや周りにいる客たちに遠征中に襲来したモンスター達の事を聞かせると一端ディビッドはトイレに向かった。それから店内の男性陣は最後のアルセルタスに対して個人差はあれど男として同情していた。
因みにリコは途中で眠ってしまいリヴェリアの膝の上で丸くなっており女性陣はリコとリヴェリア両方に羨ましい視線を向けていた。
それから暫くしてディビッドがトイレから戻ると店内は先程より喧噪にあふれており、ロキ・ファミリアのベート・ローガが吊るされておりお仕置きを食らっていた。
「俺がトイレに行っている間に何がどうしてこうなったんだ?」
「ん?ディビッドか。いやなに、かいつまんで話せば
「成程な理解した。アイツ明日絶対今日の事覚えてるパターンだな、まぁ自業自得なんだろうけど。」
「良い薬だ。あぁそれと今日の話は中々興味深かったよ、世界をあまり知らない私からしたら不思議で面白かった。またいつかお前達ハンターの世界の事も話してくれないか?」
「別に構わんがリヴェリアから言ってくるなんて珍しいな。喜んでもらえたのなら良かったがな。」
「私だけではないさ。他の者たち、特にティオナなんか目を輝かせて聞いていたよ。ああいう話はオラリオの外にそこまで行かない我々だからこそ尚更さ。」
「そういうもんか。っとそろそろ良い時間帯だな、そろそろ帰るよ。」
「ん、分かった。気を付けて帰れよ。それと酒は程々にしておいた方が良いぞ。」
そういう事言うからロキからママって言われるんだぞと内心思っているとリヴェリアから睨まれたため急いでリコを連れロキ・ファミリアのの面々に挨拶して支払いを済ませ帰路に就くディビッドなのであった。
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『こちら古龍観測隊よりハンターズギルドへ』
報告します。
兼ねてより各地を転々としていた鋼龍クシャルダオラがフラヒヤ山脈へ向かっている途中急激に進路を変更した事を確認しました。
更にこの個体は脱皮直前の錆びた個体であり非常に凶暴性が高くなっています。
このままの進路で進み続けると途中に氷海がありますが延長線上に迷宮都市オラリオ存在します。仮に辿り着いた場合甚大な被害を齎す可能性があります。
報告を終了します。
『こちらハンターズギルドより古龍観測隊へ』
了解しました。
報告書に記載された個体のデータを確認しました。
データよりこの個体はG級モンスターであると断定。
未だ氷海に留まる可能性もある為引き続き観測を続けて下さい。氷海を通過した場合ただちに新たな報告をお願いします。
氷海を通過した場合はオラリオ周辺に対して緊急避難勧告の発令を検討及び、迷宮都市オラリオ駐在G級ハンター ディビッド・フィリップス氏に対して討伐または撃退の緊急クエストを発令します。
やっと書けました。
内容はお粗末ですがお許し下さい。
誤字脱字がありましたら報告して下さいますとありがたいです。
では皆さんまた次回お会いしましょう。