興味ないだろうが聞いてくれ!
最近二郎系ラーメンにハマってるんだ!
…それではどうぞ~
自己紹介は大事だと思うんだ。
面倒くさがり屋な俺でも自己紹介の重要性は理解している。それに今回は今迄の自己紹介の何倍も重視しなければいけないと考えている。
突然だが俺はクラスメイトとの関係を良好なものとしたいと考えている。小学校や中学校、前の高校でもそうだがクラス内では“役割”というものが存在する。例えばクラスを全体的に盛り上げるムードメーカーや、それらをまとめ上げる委員長キャラなどがそれに当たる。まあそんな大それた役割が欲しい訳ではない。俺が欲しい役割は【特に目立ったところはなくプライベートは何やってるか分からない奴だけど、話しかければ一定の会話が成り立つ生徒B】である。このポジションを確立する事により、俺は今迄何事もなく学生生活を過ごしてきた。
ただこの学校は少々毛色が違う。何たってこの学校は去年まで女子高で、それに加えて男子は俺一人。改めて考えると何で俺此処にいるの?って思うほど異質なのだ。そんな場所なだけあって俺は彼女達から異性というだけで注目の的になり、人によっては警戒されるだろう。そうなれば俺の【特に目立ったところはなくプライベートは何やってるか分からない奴だけど、話しかければ一定の会話が成り立つ生徒B】の役割を果たせなくなる。だから少しでも自分は何処にでもいる普通の男子高校生で警戒の対象ではないということを自己紹介で示さなければならない。そのために昨日から何を言うか考えていたというのに…
「奇跡だよ!」
「え!…あ、あなたは!」
どうしてこうなった?
「一緒に…スクールアイドル始めませんか?」
「…ごめんなさい!」
「…え?」
一体目の前で何が起きているんだ?
「それじゃあ貴方は?」
「…は?俺?」
「うん!一緒にスクールアイドル始めませんか?」
目の前の少女は一体何を言っているんだ?
…この時俺の頭の中にあった自己紹介原稿は木っ端微塵に砕け散ったのは言うまでもない
「はあ~…」
時間は昼休み。場所は人気のない校舎裏にある昇降口前の階段。俺はそこで階段に腰を掛けながら買ってきた菓子パンを齧っている。決して教室に居場所がないからではない。
それどころか逆にみんな高評価で迎えてくれた。理由は陸上少女こと高海と知り合いであったことが大きい。おかげで何とか持ち直し、クラスメイトと無事に会話をすることができた。主に高海との関係について…
それでは何故こんな辺鄙な場所で昼食を食べているかというと、件の高海が原因である。高海は昨日の自己紹介からずっと顔を合わせるたびに俺ともう一人の転校生、スク水少女こと桜内にスクールアイドルをやろうと誘ってくるのだ。例えば…
『お願い無面くん!スクールアイドル部に入って!』
『スクールアイドルって凄いんだよ!学校を救ったり出来るんだよ!』
『え?入ったとして何をするんだって?う~んプロデューサーとか?』
こんな感じである。桜内を誘うのは分かるが何故俺まで誘うのか、まったくもって見当がつかない。桜内を誘うのはピアノが引けて、作曲も出来る。高海ともう一人の生徒(名前は渡辺だったか?)も作曲出来ないらしいため、即戦力として欲しいのだろう。
なら俺は?高海のお眼鏡に適うような特技を持っているわけではない。彼女は何故あそこまでしつこく誘ってくるのだろうか…考えても分からん。ここまでのらりくらりと躱してきたがそろそろ限界か。桜内のように突っぱねるのは簡単だがそれにより彼女達の不評を買う可能性もある。そうすれば今後の学校生活にも支障が出るかもしれない。どうしたものか…
「あ、あの!」
「ん?」
声のした方に目を向けると桜内が立っていた。な、何でいるの?高海に勧誘されてたんじゃないの?…まさか!?
「大丈夫よ、高海さんは撒いてきたから此処にはいないわよ…多分。」
どうやら顔に出たたらしい。よかった~食事中まで迫られたんじゃ溜まったもんじゃないしな…今彼女多分って言わなかった?大丈夫なんだよね?ホントに来ないんだよね!
「あの、ごめんなさい食事中に…」
「い、いや別に大丈夫だよ。桜内さんはどうしてここに?」
「ちょっと無面くんに聞きたいことがあって…隣良いかな?」
「え、ああ、どうぞ。」
桜内は俺が座っている階段と同じ段の端に座る。そして訪れる静寂。え、何この空気?話があるから来たんじゃないの?新手の嫌がらせか?とりあえずメロンパンを食べて落ち着こう…うん!今日もパンがうまい!
「あの、これ…」
「ん?」
パンを無心で頬張っていると桜内さんがタオルを渡してきた。俺の口の周りにパンのカスでも付いているのだろうか。それならばありがたく貸してもらおう。善意は拒まず受け取り、後でキッチリ返す。人間関係の基本だよね。
「ありがとう桜内さん。後で洗濯して返すよ。」
「え?いえ、それ貴方のタオル…」
「ん?」
手渡されたタオルを見る。何の変哲もない無地のタオル、そして彼女は“俺の”と言った。つまりこれは彼女達が海に落ちた日にコンビニで買ったタオルということになる。どうやら俺が勘違いしていたようだ。
「ゴメンゴメン、ちょっと勘違いしてたみたい。」
「勘違い?」
「俺の口の周りが汚れているからタオルを貸してくれたのかと思って…」
「……フフッ、何それ。」
事情を説明した途端口を押えて笑い出す桜内さん。心成しか空気が軽くなった気がする。一頻り笑い終えたのか、息を整えこちらに顔を向けてくる。
「あのね、私無面くんに聞きたいことがあるの?」
「何かな桜内さん。」
「何で私たちに対して親切にしてくれたの?」
「………。」
う~ん…特に隠すこともないし、正直に答えても問題ない…のか?
「…あの日引っ越してきたばかりだったから、道を憶えるために散歩してたんだ。」
「へえ、あの日に引っ越してきたんだ。」
「そう、それで散歩の途中で夕日が綺麗だなと思って足を止めて眺めてたんだよ。その時目に入ったのが桜内さんなんだ。」
「そ、それって…」
「…俺は生まれて初めて外で制服を脱ぎだす女の子を見たんだ。」
「ううッ…」
俺の発言に顔を赤くしながらアワアワし始める桜内さん。恥ずかしくなるくらいなら最初からやらなきゃいいのに。
「…その一部始終を目撃して桜内さんの行動に疑問を憶えたんだ。その疑問の答えを得るためにコンビニに行ってタオルを買ってきて桜内さんと高海さんに渡したんだ。」
「………。」
「だから俺は別に親切心で助けたわけじゃ……」
「え!?そのタオルわざわざ買ってきてくれたの?」
「え、そこ?」
突っ込むところそこなんだ…俺はてっきり好奇心で助けたことについて何か言われるのかと思った。
「だって、そんな事だけでわざわざコンビニに行ってタオル買ってきたりしないと思うけど…」
「…まあ、桜内さんの行動はそれ位不思議な行動だったって事だよ。」
「ふ~ん……」
いや、なんでそんな訝しんだ目でこっち見てくるんですかね?俺が言ってるんだから間違いないでしょうに…と言ってもこの視線を浴びせ続けられるのも面倒くさいし、ここは話題を逸らすとしよう。
「…それよりも高海さんとはどうなの?」
「え?それってどういう事?」
「ほら、誘われてるじゃん、スクールアイドルに。」
「それは無面くんもそうでしょう。」
「俺はのらりくらりと躱してるし、高海さん達も作曲が出来る桜内さんを優先すると思うし…」
「…私は生贄って事?」
「言い掛かりだ。」
「はあ~、何であんなにしつこいんだろう。私はスクールアイドルなんてやってる暇ないのに…」
ここで「何かあるの?」なんて聞かない。人の悩み相談なんて聞いても俺には何もできないしな。
「…分からないよ。次の日になったらスクールアイドルやりたいって思ってるかもしれない。人の気持ちは変わりやすいから。」
「あり得ないよそんな事…」
「その“あり得ない”を信じてるんじゃないの高海さんは。」
そうでもなかったらあんなに真っ直ぐ突っ込んじゃこない。それが彼女の美徳なのだろう。まあ、その美徳のせいで迷惑しているがな…
「じゃあ無面くんはスクールアイドル部に入りたいと思ってるの?」
「今は思ってない。」
「じゃあ次の日には入部したいって思ってるって事?」
「…分からない。」
「分からないって…」
分からないものは分からないんだからしょうがない。明日の自分が何を考えているかなんて明日の自分にしか分からないのだ。なら今考えたって仕方ない。答えが出ない問題をいつまでも考えていられるか面倒くさい…
「まあ明日の事は明日の俺が何とかしてくれるだろ、知らんけど。」
「…何それ、変な人ね。」
フフッと呆れたように笑う桜内。変な人とは失礼な、俺の何処が変だと言うんだ。突然服を脱ぎだすほうがよっぽど変な人だろう。口に出しては言わないが。
「それじゃあ私行くわね…ごめんなさい、食事中にお邪魔しちゃって…」
「大丈夫気にしてないよ。桜内さんと話せて良かったし。」
「…私も無面くんと話せて良かった。」
そう言って立ち上がりスカートの埃を払って歩いていく桜内。やれやれ、ようやく落ち着いてメシが食える。改めて昼食を再開しようとした時、桜内が立ち止まりこちらに振り向く。まだ何か用があるのだろうか。
「無面くん。」
「ん?なにか言い忘れたことが?」
「うん……これからよろしくね無面くん!」
「───ああ、此方こそよろしく桜内さん。」
その笑顔がとても魅力的だと感じたのは俺だけの秘密である。
最後まで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
今回は梨子ちゃんとの絡みでした。
次は誰にしようかなぁ〜( ・∀・)ニタァ
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