この前カツ丼を使ったら案外美味く出来てとてもご満悦でした。
…それではどうぞ~
突然だが俺がこの浦の星学院に通うことになったそもそもの理由は、俺の親父がこの学校の理事長と知り合ったのが始まりである。俺は親父にその理事長がどんな人なのか聞いたことがある。何でも淡島のホテルを経営しているイタリア系アメリカ人らしい…なんでこの人理事長なんてやってんだ?
まあ、とにかく俺はこの学校の理事長は高校生の娘がいることから30代後半から40代前半のオジサンを想像したのだ。それなのに目の前にいるのは…
「ハローッ!貴方がパパの言ってた転入生ね!名前は何ていうの?」
「…無面冷夜です。」
「オーケー!じゃあレイって呼ぶわね。よろしくねレイ!」
「…こちらこそよろしくです小原先輩。」
「ノンノンッ!マリーって呼んでくれなきゃノーでーす!」
「………。」
目の前にいるのはどう見たって面倒な絡み方をしてくる女子高生。性別から違うじゃないか。いったいどうなってんだよ親父…
しかもこの人砂浜にヘリで登場したのだ。そのおかげで巻き上げられた砂が目に入り大変だった。因みに砂浜にいた理由はスクールアイドル活動である。まあ俺は踊っている三人を撮影したり、タオル渡したりするだけだが…完全にマネージャーである。
「…鞠莉さんふざけるのもいい加減にしなさい。無面さんが困ってますわ。」
いい加減何とかしないと思ってることが顔に出てしまいそうといったところで、生徒会長の黒澤ダイヤ先輩が俺と自称理事長の間に割り込んでくる。さすが生徒会長、俺の微弱な近寄るなオーラを察知したのかな?何にしても有り難い。
「ダイヤ酷ーい。ワタシふざけてなんかないわ!」
「これがふざけてると言わずしてなんて言いますの!いきなり帰ってきたと思ったら理事長だなんて…」
「だーかーらーふざけてませ~ん!これが目に入らぬか~」
そう言って生徒会長の目の前に紙を突き出す。そこには任命状と書かれており、続けて下には『小原鞠莉殿 貴殿を浦の星学院の理事長に任命します』と記載されている。え、その紙本物?マジで?生徒会長も驚いてるってことは本物なのか?
「そんな、何で…ッ!」
「本当はパパが理事長になるはずだったのだけれど、無理言ってチェンジしてもらったの!キャハッ!」
いや、キャハッ!じゃねえよ。無理言えば理事長にしてくれるとかどんな家系だよ。あれか?娘を溺愛している的な感じなのか?
「それでは理由になってませんわ。わたしが聞きたいのは…」
「それはこの浦の星にスクールアイドルが誕生したという情報をゲットしたからダヨッ!」
生徒会長の言葉を遮ったじsy…理事長は今迄会話に入らずボウッと突っ立っている三人 スクールアイドル部のメンバーの方へ視線を向ける。あ、俺の方にも視線が、しかもウィンク付きで。何かすげぇ様になってるな…メンドクサイのは変わらないが。
「私たち?」
「そう!どうせダイヤに邪魔されてるんじゃないかと思ってね。だから応援しに来たの!」
「ホントですか!」
「イエスッ!なのでこれからは部として活動できまーす!」
「や、やったー!」
「良かったね千歌ちゃん。」
「ようやく地に足がついたわね。」
三人娘、特に高海は部として認めてもらえたことで大喜びである。ちょっとお前ら、時と場所を考えろよ。ここには生徒会長もいるんだぞ。やべぇよ、こっち見てるよ、睨んでるよ、怖ぇよ…
生徒会長の視線から逃れるために目を逸らすと丁度理事長が笑うのが見えた。いや、さっきからずっと笑っているのだが、さっきまでのがニコニコなら今のはニヤッて感じだった。何かとても嫌な予感が…
「ただし条件があります。」
ほらやっぱり、無理難題じゃなきゃいいが…
「着いてきてくださーい!」
『は、はい…』
スキップしながら先導する理事長に困惑しながらついて行く三人娘。俺もその後ろをついて行く。理事長室を出て、ふと後ろを振り返ると生徒会長が俺達とは逆方向に向かって歩いていく。この先の展開には興味がないのか、それとも理事長の出す条件が分かっているのか、どちらにせよ俺に生徒会長を呼び止める言葉など掛けられない。
スクールアイドル活動を手伝うと決めた日に生徒会長に声を掛けられ、『あなたも高海さん達に協力するのですね。』と言われた。どこから聴き付けたのやら…そこから何故彼女達に協力するのか聞かれたので勧誘されたからと答えた。最後に貴方がいてもスクールアイドル部は認めないと言い残し去って行った。
つまり俺も生徒会長に目をつけられたわけだ。初っ端三人娘に協力を決めたのを後悔した瞬間である。
「おーい冷夜くん早く行こうよ!」
「…おう。」
俺はもう見えなくなった生徒会長の背中から視線を外し、理事長たちに追いつくために再び歩き出す。その時理事長の目がここにはいない生徒会長を見続けているように見えたのは俺の気のせいだろう。
「ライブやりまーす。お願いします!」
「お、お願いします!」
場所は沼津駅、目的はライブの告知をするためのチラシ配りである。何故かといえば理事長が出した条件がライブを行い、うちの学校の体育館を満員にすることだからだ。そうすれば部室や部費を提供してくれるらしい。
しかしその後生徒全員を集めても体育館が満員にならないことが分かり、外部から人を呼ぼうということで今に至るというわけだ。しっかしチラシ配りか…こういうの苦手なんだがなぁ…
「ほら何やってるの冷夜くん。早く配らないと終わらないよ。」
「…なあ高海、これ俺もやらなきゃ駄目か?」
「何言ってるの!梨子ちゃんも曜ちゃんも頑張ってるんだから、冷夜くんも頑張るの!」
先程から遠目で見ていたが、渡辺は持ち前のコミュニケーションスキルで色んな学生に声を掛け、桜内は最初消極的だったがマスクとサングラスを付けた絵に描いたような不審者に渡せてからちょっとずつ配れるようになっている。そして高海はというと、気弱そうな女子高生を壁際に追い込みチラシを渡した以外は特に問題なく渡せている。
そんな中俺は三人娘に比べれば少ないがボチボチと言った感じである。だから別にサボっているわけではない。あまり自分から人に話しかけない俺が彼此一時間声掛けをしているのだ。それなのに受け取ってもらえないものがほとんど、もう心はボロボロである。もうヤダ、おうち帰りたい…
「あれ?あそこにいるの花丸ちゃんだ!」
「花丸ちゃん?誰それ?」
「あ、そっか。冷夜くんは知らないのか…そうだ!」
おい待て何がそうだ!なんだ?嫌な予感しかしないんだが…
「冷夜くん!花丸ちゃん達にチラシを渡しに行こう!」
「おい、どうしてそうなった。」
「よし!それじゃあ、れっつごーッ!」
「ちょっと待って、何が良しなの?ねえちょっと引っ張らないでくれる?分かった、分かったから腕を引っ張るなぁ…」
俺の抗議も虚しくズルズルと引きずられていく。というか振りほどけないんだが、こいつなんつう馬鹿力だよ…いやどちらかと言えば俺が弱すぎなのか?
「おーい花丸ちゃーん!」
「こんにちは先輩。それとそちらの方は…」
「花丸ちゃん達は初めてだよね。ほら冷夜くん挨拶して!」
「分かったから押すなよ…」
高海に背中を押され花丸ちゃんとやらの前へ突き出され、その結果後ろに隠れているもう一人の存在に気付いた。なるほどだから高海は花丸ちゃん“達”と言ったのか。
「あ、あの…」
おっと、どうやらジロジロ見すぎたようだ。いたずらに警戒心を刺激してしまうのはよくない。ここは自然に且つ単純でスピーディーに自己紹介を…うぅ、緊張するぅ……
「ほら冷夜くん!自己紹介!」
「…分かった分かった急かすなよ。俺は二年の無面冷夜だ。」
「ご、ご親切にどうもです。オr…じゃなかった私は国木田花丸って言います。」
「…?ああ国木田さんね。それでそっちの子は…」
俺が国木田の後ろに隠れているもう一人に視線を向けると身体をビクッと震わせる。表情は強張り、目には涙を溜めてこちらを見ようとしない。あれ?何か怖がられてる?
「こらっ!ダメだよ冷夜くんルビィちゃん怖がらせちゃ!」
「え?これ俺が悪いの?俺何もしてないよね?」
「あ、違うんです無面先輩!ルビィちゃ…黒澤さんは人見知りで、特に男の人がその…あまり関わらないので…」
…よかったぁ、俺が知らず知らずのうちに彼女に何かしたんじゃとヒヤヒヤした。公衆の面前で女の子を泣かせたとか洒落にならない。ホントによかったぁ…
「だから、その…」
「そういう事なら無理に自己紹介しなくても大丈夫だよ。」
「うぅ…」
俺の言葉を聞いた彼女が下を向いてしまう。あれ、少し言い方きつく言い過ぎたか?
「あ、勘違いしないで欲しい。別に怒ってるわけじゃないよ。ただ苦手なものを無理に克服する必要は無い。」
「え、でも…」
「少しずつで良い、君のペースで頑張れば良い。それで心の準備が出来たらまた自己紹介しよう。」
「………。」
俺が言い終わると同時に彼女が顔を上げ、俺は今日初めて彼女と目があった。綺麗なエメラルド色の瞳は大きく見開き、口をポカンと開けている。何かとても面白い顔になっている。俺何か変なこと言っただろうか?……うん言ったね、とても恥ずかしいこと言ってたね俺。緊張から安心への心の急転換で余計なことばっかり発言してたね俺!ヤバいよ、多分彼女俺の発言に対して『こいつ何言ってんだ?頭打ったの?』って思ってる、絶対に思ってる!…そう考えたら早急にここから離れたくなってきた。ああもう、考え無しに発言するからこういうことになるんだぞ無面冷夜!頭を回転させろ!思考を研ぎ澄ませ!今出来る最善策を叩き出せ!…よし!これだ!
「というわけだから俺はそろそろ行くよ。あ、あとこれどうぞ。高海を含めた三人がライブするんだ。是非見に来てくれ。それじゃあ後は任せた高海。」
「えっ私?」
俺が導き出した解答、それは早口でまくし立ててからの高海に押し付けるである。こうすることで俺はこの輪から自然にログアウトすることが出来て、尚且つ当初の予定であるチラシも渡す。これこそ完璧な俺の作せn…
「あ、あの!」
早歩きで退散している俺の背中に聞きなれない声が掛けられる。反射的に振り向けば、先程まで国木田の後ろにいたはずの彼女が立っていた。
「わ、私は…そそその…」
「ルビィちゃん。」
「は、花丸ちゃん…」
「…頑張って。」
「…うん!」
国木田と言葉を交わしたお蔭か、震えは止まり今度はしっかりと立ち、こちらの目をきちんと見据えている。
「無面先輩!」
「は、はい。」
「私は黒澤ルビィって言います!こ、これからもよろしくお願いします!」
「……ああ、こちらこそよろしく。」
「…ッ!はい!」
何だしっかり自己紹介できるじゃないか。まあこれからも励みたまえ若人よ。それでは無面冷夜はクールに去るz…
「あ、そうだ。あの千歌先輩。」
「うん?どうしたのルビィちゃん?」
「千歌先輩達のグループ名って何ですか?このチラシに書いてなくて…」
「あ、ホントずら。」
「グループ名?あっ…」
…何でクールに去らせてくれないだよぉ……
「まさか決めてないなんて…」
「梨子ちゃんだって忘れてたくせに。」
「とにかく早く決めなきゃ。」
「そうだよね…」
時刻は夕方。場所は変わって砂浜。いつもの日課である学校非公認のスクールアイドル活動中。俺達は今ある重要な難題をについて審議している。何と言いだしっぺの高海がグループ名を考えてなかったらしい。名前の無いアイドル、つまりノーネームである。もうグループ名これでいいんじゃね?
「学校の名前が入ってたほうが良いのかな?浦の星スクールガールズとか?」
「まんまじゃない。」
「じゃあ梨子ちゃん考えてよ!」
「え!」
「そうだね!東京で最先端の言葉とか!」
「そうだよ!そうだよ!」
まあ審議と言っても時間は有限なため、練習しながら意見を出し合っている。因みにダンスや歌の練習以外、つまり準備運動やアップは俺も参加している。最初は遠くで座って水分とタオル持ってスタンバってたんだけど、高海に『どうせなら一緒にやろうよ!』と有り難いお誘いがあり、怠いしメンドクサイが何もせず只々彼女たちを眺めているのは何とも気まずいし、汗水流している彼女達を見ていて何か自分がいけない事をしている気がしてならなかったので、この状況を打破できるならと渋々誘いを受けたといった流れである。
「えっと、じゃあ全員海で知り合ったから、スリーマーメイドとか…」
「「1、2、3、4…」」
「待って!今の無し!それと冷夜くんも笑わないで!」
グループ名決めは中々難攻している。活動している間はずっと付きまとうものである為、慎重に考えなければならないのだが、いざ考えろと言われると難しい。何か題材があれば考えようもあるんだがなぁ。
「曜ちゃんは何かない?」
「うーん、制服少女隊!どう?」
「無いかな。」
「そうね。」
「えーッ!って冷夜くん!何で笑うの⁈」
二人とも真剣に考えているのは分かるのだがそれとこれとは話が別である。スリーマーメイド…制服少女隊…ブフッ……
「もう!そんなに笑うなら冷夜くんも考えてよ!」
「そうよ!あれだけ笑ってたのだから、さぞ良いグループ名を考えつくんでしょ!」
「そうだよ!そうだよ!」
桜内と渡辺は頬をプクーっと膨らませこちらを睨んでいる。どうやら少々笑いすぎたようだ。というか高海の合いの手うるせぇ。
とは言ってもどうするか…振られたからには何か答えなきゃだよなぁ……あ、そうだ。
「なあ高海、確かお前ってμ’sに憧れてスクールアイドル始めようって思ったんだよな?」
「え?どうしたの急に?」
「いや、ならμ’sと似たような名前にすればいいんじゃないかと思ってな。」
「μ’sと?」
「ああ、μ’sってたしかギリシア神話の女神から取ってるらしいから、そうだな…海の神様の名前とかどうだ?」
「海の神様?例えば?」
「あぁ…ポセイドンやネプチューンとか?」
「えぇ…」
「それはちょっと…」
「可愛くない!」
ボロクソである。清々しい程に低評価。いいアイデアだと思ったんだが…というか可愛くないって、確かに可愛くないだろうがカッコイイだろう…
そんなこんなでこの後も色んな意見が出たが、どれもこれも彼女たちの琴線に触れるようなものは出なかった。
「こういうのはやっぱり言いだしっぺが付けるべきよ!」
「賛成ー!」
「戻ってきたぁ…」
「じゃあ制服少女隊で良いって言うの?」
「スリーマーメイドよりは良いかな…」
「それは無しって言ったでしょ!それと冷夜くんもいい加減忘れて!」
「アハハ…うん?あれ何かな?」
そろそろ行き詰ってきて、意見も底をつき始めたころ、ふと砂浜にでかでかと書かれたものに高海が指を指す。あれ?あんなところに書いたっけ?
「これ何て読むの?」
「あきゅあ?」
「もしかしてアクアって読むんじゃないの。」
「アクア?水って事?」
「だと思う。」
「「「おぉ……」」」
Aqoursねぇ…三人娘の反応からして書いたのは彼女達ではないだろうし、もちろん俺でもない。じゃあいったい誰が書いたんだ?
「何か良くない?グループ名に。」
「これを?誰が書いたか分からないのに?」
「だから良いんだよ!グループ名を考えている時にこの名前出会った。それって凄く大切だと思うんだ!」
どうやら高海はご満悦のようだ。他の二人も満更でもないと言った感じだ。これは決まりだな。
「冷夜くんもそれでいい?」
「ああ、うん。まあスリーマーメイドと制服少女隊以外なら何でもいいよ。」
「「それはもういいの!」」
兎にも角にも三人娘はこれからAqoursとして活動していくことが決まった。とりあえず綴り忘れないように写真撮っとくか。
その後、名前が決まったことで本腰入れて呼びかけするために、町内放送を使い呼びかけを行いグダグダになってしまったのはまた別の話である。原稿書いて来れば良かった…
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は主人公にいろんなキャラと絡ませてみました。
書いてて思ったのですが曜ちゃんとの絡み少なすぎんか?
……まあこれから頑張ります!