第1話 鐘の音
ボク、がんばって、生きた……。ここで、生きたよ……。
夕刻、天空に浮かぶ城の中にあるとある大樹の根本で、一人の闇妖精の人生は静かに幕を降ろした。
――はずだったんだけどなぁ……。
刻は明治後期―あともう数年で大正に移る頃―ボク……紺野木綿季は産まれた。
――先ず謝らせてほしい。ゴメン、ジュン、皆。ボク知らない内に次の旅を始めちゃってたみたい……。本当は約束通りあの世で待ってるはずだったんだけど、気が付けばまた紺野木綿季として生を受け、前世と同様の家族―厳密には差異があるけど―と裕福とまではいかないがそこそこの生活をしていた。
ここまではいい。記憶が保持されてるのもまぁ良しとしよう。
だが問題は時代だ。ここは明治の後期、しかもあと数年で大正になる頃。つまりは戦前だ。
……神様ってボク達に不可能な試練は与えないんだよね?ご飯を真面に食べられないとか正直耐えられる気がしないよ?
あっ話が逸れた。戦争が控えているのならこの世界に皆来てほしくないなぁ……。ボクが向こうに戻るまで絶対に死なないでね?アスナ、次逢うときはまた別の世界で逢おう!
……と言うかなんで100年前に来ちゃったんだろ……。疑問は晴れないけどこればかりは仕方ないよね。
そんなこんなで転生したボクだけど今生ではエイズみたいな得に重い病気とか患わず元気に過ごしている。その最も大きな要因は今と前の家族の差異だろう。と言っても、家族構成は前と変わらない。
だけどその差異と言うのは、今生では双子としてではなく、1年違いの姉妹だったと言うことだ。―勿論ボクが妹で姉ちゃんは前世と同じ名前の紺野藍子だった。
前世ではボク達は双子で、産まれる時に帝王切開を行って輸血して、そこから家族全員エイズにかかった。
今生はその必要もなくなり――そもそも明治後期にエイズなんて無かったらしいよね――、元気な家族として育った。姉ちゃんも今生でも凄くて、1年差があるせいで余計に追い付けそうにないや!
それにしてもやっぱりボクがいた時代より技術が進んでいないからか、妙に真実かの様にお伽噺を耳にする。―主に鬼の噺を。
鬼……2026年の時でもそういう噺が無かったわけではないけど、皆空想前提の噺で実際そこに鬼という存在はいなかった。勿論ボクもあまり信じなかった。あくまでお伽噺……その範疇だと考えていた。
――その考えがとても甘い事にも気付かずに……。
これは、日本一慈しい鬼退治の世界に迷いこんだボクの……
春――と言っても、もうすぐで梅雨入り。山も新緑で埋め尽くされた五月。町からちょっと離れた山の中で二人の少女が山菜を採りに山を散策していた。
片方はショートヘアーに白い鉢巻をカチューシャのように前髪を頭頂近くで押さえるように巻いた少女、【紺野 木綿季】。
もう一方はロングヘアーを綺麗に棚引かせた木綿季より1歳年上の姉、【紺野 藍子】。二人はとある食材売りの家に産まれ、時々山へ行き、売り出し用の山菜を採取していた。
しかし今回は売り出し用の採取ではなく、また別の目的―
「さぁ、採るよー!明日はユウの誕生日なんだから!」
「おー!」
――木綿季の誕生日の為の山菜探しだ。
「てゆーか本当にユウは家で待ってて良かったんだよ?明日の主役なんだから。」
「えーだってパパは仕事だしママはボクの誕生日だからって張り切って買い出しに行ってるじゃない?家で一人でいるのも暇だし、食べれる物は多い方がいいでしょ?」
「そこはお姉ちゃんに任せて欲しいんだけどなぁ……まぁユウならそうするかぁ。」
姉ちゃんは苦笑いしてるけど何年か前に山菜採りすぎた上に足を怪我して動けなくなっていたことがあった。その時もボクの誕生日前だった……。
「ま、ここまで来ちゃったし今更帰れなんて言えないよね。よーしお姉ちゃん珍しい山菜見つけちゃうぞー!」
「変な無茶しないでよ!」
そんなこんなで山菜狩りを開始したボク達。流石に二人でやると採取スピードが早くて、あっという間に持ってきてた籠の中がいっぱいになる。
余談だけど採取してる間クワガタ虫が木に付いてたりしてないかなぁって探してたりしてた。勿論まだ時期じゃないからいなかったんだけども。いたら姉ちゃんに見せて驚かせてみようかなって考えていたり……って言うのは本当は冗談で、こういうことしてるとたまにあの日の事を思い出すんだ……。
まぁそれは置いといて。
今はある程度採れたから帰る前に一休みしようとの事で山中の少し開けた所にある木の下で座って休憩中。やっぱ春だなぁ……だってさ―
「ふわぁ~」
――直ぐ眠くなっちゃう……。
「ふふっ、ユウってば凄い欠伸なんだから。少し寝てく?」
「うん……すー。」
「おやすみユウ。……ふわぁ。私も眠くなっちゃたし軽く寝ちゃおうかな。」
「うにゅ……ん?」
あれ?寝ちゃってた?
覚醒しきれてないぼーっとしている意識を働かせ周りを確認してみる。隣にはまだすやすや寝ている姉が、そして空は暗い橙色になってい――!
ここまで確認してやっと覚醒し、隣で寝ている姉の肩を掴み揺らす。
「姉ちゃん!起きて!急いで帰らないと日が暮れちゃうよ!」
「もう食べれないよ~」
凄く典型的な寝言が返ってきた……じゃなくて!
「姉ちゃん!早く帰らないとパパやママに怒られちゃうよー!」
家は日が暮れたら基本的に家の敷地から出ないようにしている。夜は何があるか分からないかららしいけど、日没まで余り時間が無いどころかもう間に合わないまである。
「姉ちゃーん!」
中々起きないので思いっきり揺らした。
「うーん……あれ?ユウおはよう。」
「おはようじゃないよ!もう日が暮れちゃうよ!」
「え……ええええええええええええ!」
その後帰りの支度をさっさと済ませたものの周りは大分暗くなってきていて、ボク達は走って山を下っていた。
「ごめ~んユウ~。思った以上に心地よくて……。」
「まぁお姉ちゃん張り切ってたもんね。それにあそこ本当に心地よかったし。」
「また今度寝に来ようか!」
「その時はちゃんと夕方までには起きるようにしないとね。」
そんな会話をしながら山を降りていき、もうすぐで山から出る!そこまで来たときに異変が起こった。
「――っ!ユウっ!!!」
「うわぁ!」
突然姉ちゃんがボクを押し倒した。直後その上を何かが通った。
「痛たたた……姉ちゃんどうし――」
「ヒヤッハー!女子が二人たぁ今日はついてるぜぇ!しかも片方は稀血じゃねえか!」
「――!?」
自分の姉をあんじながらも一体どうしたのかと訊く間もなく。男の声がよく分からない単語を含めながら叫んだ。顔を上げるとそこには、人とは思えない容姿をした生物が木綿季達の前に立ちはだかっていた。
ご精読ありがとうございました!こんな感じで始まったユウキ転生モノですが、友人に設定集的なの見せたら業が深いと言われましたw
取り敢えず一区切りまで出来上がってるのですぐに投稿できると思いますのでどうぞよろしくお願いします(*`・ω・)ゞ
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