鬼殺隊の《隠》幸により報じられた家族の訃報。木綿季は深い絶望に自信を破滅させようとするが、幸によって止められる。二人の運命はここに合流する。
目が覚めると既に朝になっていた。そう言えばあのあと寝ちゃったんだっけ……。
ぐう~~~~~………。
「あっ……。」
そう言えば昨日から何も食べてないや……そう思ったら急にお腹すいてきた……。
「あっ起きた?おはよう。」
「あっ幸さん。おはようございます。……あとごめんなさい昨日は酷いこと言って……。」
丁度幸さんが部屋に入ってきて挨拶をする。ボクも挨拶を返して昨日の出来事について謝罪した。
「いいよ。気にしてないから。それよりお腹すいたでしょ?」
「はい!起きたら早速お腹鳴っちゃって……。」
「昨日何も食べてないもんね。貴女はまだ若いんだからこれからちゃんと食べないと。」
若い……か……。前世と合わせるともう20代後半なんだけど、と思いながら内心苦笑を溢す。
「あっちょっと失礼な事訊きますけど、幸さんって今幾つなんですか?結構大人びてますけど……。」
「今14です!」
「じゅっ……よっ……!?」
若っ!?ボクより3つ年上で、体型もまだ幼さは残ってるけど、結構落ち着いてるしなんか人生歩んでる感じだったのにまだ14!?思わずうまく言語化できてない言葉が出ちゃったよ……。
「何か?」
「いっいえっ!何もっ!!」
そっそうだよね!実年齢より上に見られたら不快になるよね!!
「その、凄いですね幸さんって。そんな年でこんなキツそうな仕事をしてて。」
「そんなに凄くないよ。私は結局剣の才能を見出せずに、鬼を前にすると脚がすくんじゃう怖がりさんだから。」
「ううん。幸さんは凄いよ。昨日のボクは家族がいなくなって死ぬことしか考えてなかった。そんなボクを止めて救ってくれたんだから。それに隠の働きがあるから鬼を狩る隊員は戦っていけてるんでしょ?その隊員さんも幸さんに助けられてる部分もあると思いますよ。」
別に鬼を狩れなくてもいい。この人はこの人なりに自分が出来ることを精一杯やっているんだから。
「そうかな……そうだといいなぁ。ありがとう。ちょっと元気出たよ。……なんかしんみりしちゃったね。よしじゃあ切り替えてご飯にしようか!」
その後幸さんにご飯を食べさせてもらった。――自分で食べると言ったけど幸さん曰く怪我人は快復するまでじっとしているように。だそうて。
「ご馳走さまでした!」
「お粗末様でした……って言ってもこれ作ったの私じゃなくてここの人なんだけどね。」
「えっここ幸さんの家じゃないんですか!?」
「そうだけど……言ってなかったっけ?」
ここの名称しか聞いてなかったと思う。……てっきりそう言う幸さんの家か隠さん達の寮かな何かなのかなと思ってた……。
「確かここは藤の花の家紋の家としか……。」
「あっそうだったね。《藤の花の家紋の家》は過去に鬼狩りによって助けられた人たちがこうやって家紋を立てて鬼狩りに無償で食事や寝床を提供する所なんだよ。それと、怪我の治療もね。」
「むっ!?」
無償で!?これら全部無料って事!?……でもそっか、命助けられてるんだもんね……。
「それじゃ今度はこっちから質問するね。ねぇ……貴女はどうやって鬼の頸を斬ったの?」
「えっ……。」
いきなり鬼と戦った時の事を質問されて少し困惑した。
「だって鬼の頸は普通の人じゃ絶対に斬れない。鬼殺隊の人達は皆《呼吸》を身に付けてやっと鬼と戦えてるんだから。」
そこまで言われてやっと理解した。そりゃそうだ。なんせ刀で受けても飛ばされて、仕舞いには骨にヒビが入るレベルなんだから……。それにソードスキルを連発してやっと勝てたんだ。普通の人じゃ勝てるはずもない。
……けど《ソードスキル》って言って理解してくれるだろうか……。
「落ち着いて。鴉が言ったことだから確かなことだと思うし。」
昨日から少し思ったけど……鴉って喋るの?
「えっと……昔習った剣術で……それを使ってなんとか……。」
「うーんただの剣術で倒せる相手じゃないけど、どんな剣術なの?」
ど、どうしよう……あの世界だと定まった戦い方とか無いし……強いて言えば……。
「自分の適材適所を伸ばして、自分の身体に合わせて武器を変えて、相手の動きを見つつ技を使うって感じ……ですかね?」
これで大丈夫かなぁ……剣術としてはフリーダム過ぎるけど……。
「……まるで《RPG》ね……。」
「えっ……!」
今の幸さんの声は下手したら聞き逃すくらいに小さかった。多分その言葉を知らなかったら気付きすらもしなかっだろう……だってこの時代に《RPG》なんて単語が存在するはずが無いんだから……。
「うん?ああなんでもないよ!気にしな――」
「今《RPG》って言いました?」
「――っ!?」
直後幸さんがあたふたし始めた。普通の人相手だと「何言ってんの?」って思われるのだろうから。だけどボクは幸さんと同じだ。ついさっきまでとあるRPG内の名称をどう説明するか困ってたんだから。
だからボクは自分も同じだと示すようにとある単語を口にする。
「……《VRMMORPG》。」
「なん……で……。」
どうやら幸さんもボクと同じ世界から来たみたいだ。だったらこれ分かるかもしれない!
「ボクが鬼を倒したのは、《ソードスキル》を使ったからです。」
「嘘……でしょ……?」
少し反応がおかしい……幸さんの顔は少ししか見えてないけど、明らかに顔が青ざめていっている……。
「そんな……まさか……まだ、終わっていないの?あの世界はまだ続いて……。ねぇ、キリトは!?キリトはどうなったの!!?」
わあぁっ!とと……幸さんが急に取り乱して肩を掴んできた……。右肩がめっちゃ痛い……。
けどこの取り乱し方で大体分かった……この人は所謂《元SAOプレイヤー》。あのデスゲームを帰還できなかった人……。でも【キリト】って……。
「はっ!ご、ごめんなさい急に取り乱して……。それに肩……。」
「いえいえ。気にしてませんよ。ちょっと痛かったけど……。けど驚きました。貴女はあの世界にいたんですね。道理で人生観が長けてると思いました。」
「ねぇ、教えて?あの世界がどうなったのかを。もしかしてクリアできなかったの?……いえごめんなさい……そうよね、貴女はそれすらも知る前にこっちに来てるのかもしれないのよね……。」
……ん?もしかして、何か勘違いしてる?……あーでもそっか《ソードスキル》は元々SAOから来たんだし―それを分かってた上で言ったんだけど―VRMMOって元々SAOプレイヤーにとってはそのSAOが唯一だったんだもんね。
「えっと、幸さん。ボクはSAOプレイヤーではありませんし、あの世界はちゃんとクリアされましたよ。……それに、貴女の知っている人と同一人物とは言い切れませんけど、キリトは生きてます。他に沢山の仲間を連れて。」
「そっか……よかった……。ちゃんと届いてたんだね……キリト……キリトぉ……ううっ。」
そう言いながら彼女は涙を流した。そんなにキリトの事心配だったんだね。
そっか……これで合点がいったよ。キリト達のあの異常なまでの強さと反応速度……。それとキリトが持ってる数多の《システム外スキル》。全部あの世界を生き抜いてきたから得たものなんだね。それにキリトがボクとは違う意味で別の世界にいた理由……多分幸さん達を喪ったのが原因なのだろう。もしかしたら他にもあるかもしれないけどボクには分からない。
でも教えてくれたって良かったのに。今更キリトやアスナ達の事を一般プレイヤーを見下してる人達とか犯罪者予備軍なんて思うはずもないのに……。
それにしても……
「まさかキリトに元カノがいたなんてなぁ。」
「ヴぇっ!?」
「まぁそうだよねー。守るものがあると人は強くなれるって言うし……。」
「ち、ちち違うからぁ!キリトとはそんな間柄じゃないからぁ!!」
えっそうなの!?幸さん顔真っ赤―目元だけの推測だけど―なんだけど!?
「凄くキリトの事を愛おしく言うからてっきりそうなのかと……。」
「た、確かに一緒のベッドで寝たりキリトから元気付けられたりとかしてたけど……。」
……幸さんが両手の人差し指でつつきあってる……じゃなくて!キリト!?それアスナに報告ものだよそれ!?普通何もない男女がすることじゃないと思うよ!?うん!。
木綿季は改めてキリトの規格外さに頭を悩ませるのであった……。
「あっそう言えば貴女SAOプレイヤーじゃないのになんでソードスキルを?」
「それはSAOがクリアされた後《アルヴヘイム・オンライン》っていうVRMMOのゲームにそのデータが流用されたって聞きました。」
「へぇSAO事件があったのにVRMMOのゲーム作られてるんだね。」
「と言っても流石にSAO事件中は数えるほどしかありませんでしたけどね。だけどナーヴギアの後継機のアミュスフィアって言うのが開発されて、SAOをクリアした数ヵ月後に突然《ザ・シード》って物が無償配布されて、それで数多のVRMMOが開発されてたんですよ。」
「ちょっと信じられないなぁ。でも貴女はそのVRMMOの中でキリトに会ったんだよね?」
「はい。凄く強かったですし、ボク達の我儘にも協力してくれました。」
フロアボスの討伐の時や死ぬ前に学校に行けた事にアスナは勿論キリトには感謝してもしきれない。当然その仲間達にもね。
「ふふっ。変わらないねキリトは。……ううん、変わらなくて良かった。ありがとね。向こうの事教えてくれて。」
「いえいえ。ボクも同じようにこっちに来た人と知り合えて良かったです。」
「そう言えば貴女はなんでこっちに?話からして元SAOプレイヤーではないみたいだけど……もしかして、事故とか……?ああ!もし辛かったら話さなくてもいいからね!?」
「いえ、大丈夫です。ボクのより幸さんの方が辛いだろうから。……ボクは生まれつき病気にかかってたんです。――」
そしてボクは、生前の自分について話し始めた。
ご精読ありがとうございました!
今回は基本的に動かない(動けない)回でしたね。まぁ療養中だし仕方なし。
実は幸は隠の中でも名が通る方の人で、たまに隠の指揮をしていたりもします。
以上大正コソコソ噂話でした!
次回 新たな門出