「立派な魔法使い」の息子 作:ワサビー
長谷川
英雄サウザンドマスターの息子で本人も世界を救った英雄と呼ばれる魔法使いの父とネットランキングでトップを独走するネットアイドルであり引きニートしてた母という文面だけ見ると何故結婚した、と言われてもおかしくない二人の間に生まれた。
生まれからすでに普通ではないが……。
容姿は父親似で母親と同じように顔を隠すような丸眼鏡を掛け、性格は両親の性格を足して二で割った様な性格で二人のアホ毛はしっかりと受け継がれている。
父方のスプリングフィールド姓を名乗らないのは単純に嫌だから。スプリングフィールドと名乗ると英雄と呼ばれる父親と比べられるから。そんなありふれた理由。
そんな日々感じるストレスを発散する為に年齢詐称薬を飲んだ母親と一緒に女装してネットアイドル『ちう&じんじゃー』としてはっちゃけてたりする。
…………大好きな嫁(四十手前)と息子(十才)が一緒にネットアイドルしていた所を観た「立派な魔法使い」はけっこーノリノリであった事は確かである。
現在、彼は異世界に何故か跳んでしまい駒王学園高等部一年に在籍している。
異世界に来てたったの一日で生活に関しての問題を解決したが、何時戻れるか分からない為に暇潰しも兼ねて学園に入学した。
「おっと、ギャーがピンチだな。ヒールヒールっと」
授業は今三時限目だが星雅は学園の屋上で持ち込んだレジャーシートにクッションを敷いた上でノートパソコンで遊んでいた。
父親と母親の知り合い一同の悪意なき善意で仕込まれた技術をフル活用して作った分身──気で作った分身に魔法で肉付けし上位の電子精霊を宿らせた──が椅子に座っているので何も問題はない。授業内容も電子精霊たちがパソコンに要点をまとめて送ってくれる。
無駄に高度で無駄のない技術の無駄遣いといえる。
パーティーメンバーが引きこもりのクラスメイトである事はハッキングですぐに分かった。元々はこの世界の裏があるかないかを知る為にネットサーフィンしている時にプレイヤーネーム《ギャスパー》のホームページを発見して探ってみると悪魔や契約という文字を見て送ったメールのやり取りでこの世界にもそういった人外がいる事を知ることができた。
「じんじゃーちゃま。『たん』から交代の申請が来まちた」
「ん、じゃあ次は『ろーす』だな。交代して来てくれ」
「了解であります!行ってくるであります!」
白いキツネをデフォルメした様な姿の上位電子精霊が周囲に浮かびながら各々の作業をしている。
星雅が使役する電子精霊は全部で九体。
名前は『たん』、『ろーす』、『ばら』、『ひれ』、『もも』、『てば』、『ささみ』、『はらみ』、『ればー』である。名付けの時母親は口を出そうとしたが、自分の電子精霊の名前が名前なので息子にツッコまれるだけだと判断して口を閉ざした。
「じんじゃーさま。人が…いえ、悪魔が屋上に上がって来てるです」
「そんじゃお前らは呼ぶまで隠れて待機な」
「「「イエスサー!」」」
ばらの声を聞いて念のために電子精霊たちを下がらせ、これから来るであろう悪魔を待った。
「入学して一月も経っていないというのにもう授業をサボっているのですか?」
「ブーメランっすよ蒼那せーとかいちょ」
屋上に来たのは現生徒会長であり悪魔シトリー家の次期当主でもある支取蒼那だ。
数日前に公園ではぐれ悪魔をボコボコになるまで殴って雷系の魔法で焼いた後に出会ってから度々話をする間柄となっていた。
目が悪くないのに眼鏡を掛けている事などの共通の話題を話したり裏関係の話題だったりを話す星雅にとって素性と事情を話した数少ないヒトである。
「ご安心を…私に変身させた使い魔が授業に出席しているので大丈夫ですよ。それに高校レベルの学習はすでに終わっているので一度や二度授業を聞かなくても問題になりません」
「此方も分身が授業出てるし、高校の勉強範囲は十の時に終わらしたんでモーマンタイですよ」
「それでよく普通の学生と嘯きましたね」
「いやぁ、親父が十才の時に大学レベル終わらして教師やってたし。飛び級してないオレなんてフツーフツー」
「……色々とツッコミたい所ですが頭が痛くなりそうなのでやめときます。それで星雅くん頼んでいた件ですが……」
隣に置いていたクッションに座りながらこめかみを抑える蒼那を星雅は視線だけ向けて依頼の話をする。
「町中の防犯カメラをハッキングして隈無く視たところ堕天使らしきヒトを確認したよ」
「……ッ!?そ、そうですか」
「確認出来ただけで数は四。それに付随して怪しいローブの集団、数は二十より多いと思うよ。写真送っとくから確認よろしく」
「わかりました。それにしても依頼して五日も経っていないというのに凄いですね」
「文明の利器舐めちゃあダメですよ。認識阻害はあくまでもヒトの認識に働きかけるものであって、機械には適応されてないみたいですからね。どう見ても怪しいのに誰も気付かないのをみるとなぁ」
蒼那が星雅に依頼したのは駒王に入り込むはぐれ悪魔、堕天使、はぐれエクソシストの発見だ。
一応駒王はシトリー家とグレモリー家の共同で治めている事になっているが、実際はグレモリー家が町を治めている。シトリー家は学園の方となっている。
今回の依頼は蒼那個人のモノであり、現在の駒王町の領主であるリアス・グレモリーには話していない。
リアス・グレモリーと幼なじみでもある蒼那は彼女のプライドの高さを理解したくはないが理解している。
異世界から来た魔法使いがはぐれ悪魔を勝手に始末していたなんて知ったら何か面倒な事になると思ったからだ。
「そもそも町一つ守るのに素人が十人くらいで被害なく絶対に守れるとでも思ってるんすかね、上は。オレが住んでたところでも達人レベルが複数居っても被害はありましたけど……ああ、でも相手がバケモノレベルだったし仕方ない…のか?」
義理の祖母であるロリ吸血鬼を狙ってきた吸血鬼の真祖を相手にした事件を思い出す。不死でなければ死んでいたであろうあの戦い。嫌な気分を無くす様にため息を吐く。
「……耳が痛い話ですね」
「蒼那さんがそこまで思い詰めなくてもいいと思いますよ。こーして最悪にならないようにオレと契約しているんですし」
「そう、でしょうか……?」
「そうですよ。まあ、そういう生真面目さとかひっくるめて好感持てるくらいには蒼那さんの事好きですよ、オレ」
「ななな何をい、言ってるんですか、アナタは!?」
「頑張ってる女性を褒めるのは当たり前では?」
「なっ………!?」
首を傾げ当然な事ではないかと言う星雅に蒼那は顔を赤くさせた。
──長谷川星雅。
──父方の遺伝子をちゃんと受け継いでいる模様。