「立派な魔法使い」の息子   作:ワサビー

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2話

 

 

 

 星雅は蒼那との話を終えた後の放課後人気のない路地を歩いていた。

 

 現在駒王町に侵入しているだろう堕天使とその協力者たるはぐれエクソシストの数は二十を越えている。蒼那からの依頼では発見までであって捕縛等は含まれていない。

 

 だからこそ星雅は考えた。偶然(・・)出会して戦っても襲われたから反撃したという正当防衛ってことにしておけば万事オッケーだな、と。

 

 

 今の星雅の思考は戦闘脳に片寄ってしまっているがそもそも星雅に戦闘の基礎を教えたのは熱血系バカな祖父であるナギ・スプリングフィールドとバグキャラとか言われているジャック・ラカンなのだ。

 

 理論とか説明とか相性とか関係無いと言わんばかりの『気合』ゴリ押しな実践形式。指導した二人は本当に気合でなんとか出来るので質が悪い。いや、悪すぎると言っても過言ではないだろう。ラスボス倒したり結界破壊したりと前科がありすぎる。

 

 その結果、親子三代揃って魔法を放つより自分から相手をぶん殴りにいく『魔法拳士』になってしまった。

 

 制服のズボンのポケットに手をいれた状態で狙ってくれと言わんばかりの隙を見せながら路地を歩く。教えてもらった技の一つ、無音拳を使う時の状態のままでだ。

 

 

 結局襲われることなく拠点にしたマンションに帰ってきた星雅の一日は普通に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、学園に着くと悪名を轟かせて未だ少ない男子生徒の肩身を狭くさせる一因の三人組の内の一人に彼女が出来たという内容の話が広まっていた。

 

 星雅はすぐさま電子精霊たちに命令して真偽を確かめに行かせる。噂の先輩の携帯に入り込んだ電子精霊の働きによって入手した写メを確認すると堕天使と目したヒトであった。

 

 昼休みの生徒会室で星雅は電子精霊が調べた事を蒼那に報告した。

 

「───んで、写メ確認したらそいつ送った写真に写ってた堕天使みたいなんですよ」

 

「態々姿を変えてまで演技を?その兵藤一誠に近づく理由はやはり神器(セイクリッド・ギア)でしょうか」

 

 

 神器は聖書の神が作った人間の血を持って生まれたなら誰でも宿す可能性をもつこの世界の問題の種の一つである。

 この他に悪魔の『悪魔の駒』関係と旧魔王派の問題。堕天使の神器狩り。教会の非合法な実験や神器(セイクリッド・ギア)ではないマジもんの神器を何故か天界が持ってる問題。はぐれ出過ぎ問題なんかもあるが今回はその中の神器関係の問題だ。

 

 

「グレモリーさんに報告は……」

 

「昨日の話に関してはすでに報告しています。堕天使とはぐれエクソシストがいなくなるまでは契約の仕事は自粛して兵藤一誠とその周辺の監視及び警戒を強める様に言って実家から増援を喚ぶなり言わないといけませんね。……ちゃんと聞く耳を持っていれば、ですが」

 

「……ハーブティーでも淹れましょうか?」

 

「……お願いします」

 

 

 眼鏡を外して目頭を揉む蒼那を見た星雅は気分が和らぐ様に父ネギが大好きなハーブティーを淹れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 週明けの学園の屋上で授業中でも星雅と蒼那はそこにいた。

前回と違うことを挙げるとするならばテーブルに椅子、ティーセット、ついでにパラソルも準備してあることだろうか。

 

 

 

「なんか、あの兵藤ってヒト……気配が悪魔のモンになってるんですが……」

 

「……今朝、リアスと登校したのを見た後、リアス本人から訊いたところ堕天使に殺された後に兵士の駒八個使って悪魔に転生させたようです」

 

「……はい?警戒や監視していたはずでは?それに兵士の駒八個って……。確か転生する時の駒の数って……」

 

「リアスの言い分を信じるならば、監視していた使い魔は結界で弾かれ、契約用の簡易魔法陣で死ぬ間際に召喚されたそうです。そして、駒の数は転生させる側とされる側の実力もしくは眠っている力のポテンシャルが離れてれば離れてるだけ駒の数は増えます。今回のケースで言うならばリアスの現在の実力がまだ低い事と、兵藤一誠の持つ神器が神滅具(ロンギヌス)級である可能性が高いが故に駒を八個も使ったのではと私は考えています」

 

「成る程。普通の高校生であるならば駒は一つで事足りる。神器を宿していても発現して強くないなら二、三個で、それ以上となるなら国、神すら滅する事が出来るかもしれないとされる道具なら八個も使った理由になりますね。…………流石に上……魔王に報告して指示を仰いだ方が良いのでは?」

 

「そうですよね。お姉さま……魔王レヴィアタン様は外交担当ですから堕天使に連絡して敵対意思や侵入してきた堕天使の処遇等の確認をして頂きましょう。兵藤一誠に関してはリアスが報告するかは分かりませんが、ルシファー様がなんとかするでしょう」

 

 

 若干目の光が消えかけてる蒼那はハーブティーを飲んで喉を潤した。星雅も続いてハーブティーを飲みほぼ同時にソーサーに置いた。

 

 

「今年度は大変な事が起きる。今、この段階で確信しました」

 

「奇遇ですね。オレもそう思いますよ」

 

 

 屋上に二つのため息の音が虚しく空中に消えていった。

 

 

「ああ、そうでした。ゴールデンウィークに行う特訓の準備は大丈夫ですか?」

 

「大丈夫ですよ。そこまで調整や準備する物ではないですし、ちゃんとした休む場所もあるので大量の食べ物や服がいる程度ですね」

 

「それぐらいでしたら此方で用意します」

 

 

 

 蒼那立案のパワーアップの為の特訓をゴールデンウィーク中に出来ないかと相談された星雅は義祖母のエヴァンジェリン・A(アタナシア)K(キティ)・マクダウェルから譲り受けたダイオラマ魔法球を特訓場所にしようと提示した。

 

 

「お願いします。死なない程度ですけど実戦の雰囲気は味わえるでしょうから無駄にはさせませんよ」

 

「……お手柔らかに」

 

 

 蒼那は見逃さなかった、星雅の顔は笑顔であったが眼が笑っていなかったことを。

 

 

 

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