「立派な魔法使い」の息子 作:ワサビー
「ふっふ~ふ~ん♪」
星雅が好んで飲むジンジャーエールのストックが冷蔵庫に無い事に気付きコンビニまで1ダース分買いに行った帰り、母親の千雨と一緒に歌った馴染み深い曲を鼻歌で歌いながら夜の道を歩いていく。
マンションまで然程の距離が無くなった頃、異変に気付いた。
「ん?……これは…結界。それと…血の臭い 、か?」
星雅は持っているジンジャーエールと掛けていた眼鏡をマンションに転移させ、父ネギから譲り受けた杖とフード付きのローブを召喚して身に付ける。
血の臭いがする現場まで麻帆良民なら意外と出来たりするパルクールに瞬動を交えて現場まで急ぐ。
臭いがする家の向かいにある家の屋根に降り立ち気配を探る。
(人間の気配が2つと悪魔のが1……いや、4増えて5か。悪魔の気配は十中八九グレモリーとその眷属だな。空から此方に近づく気配3…堕天使か)
悪魔が増えたから大丈夫だろうと考えた星雅はフードを深く被り、杖を浮かせて杖に腰掛けた状態で堕天使が来る方向に向かう。
「
「……!?何者だ、貴様」
「そうだな……『正義の闇の魔法使い』とでも名乗っておくよ」
「……巫山戯てるのか」
「ん?オレは割りと真面目に言ってるぜ」
星雅の名乗りにイラついたのか男の堕天使は眉間に皺を寄せた。煽り耐性の無さに星雅は薄ら笑いを浮かべた。
フードによって口だけは見えている。
「待て、ドーナシーク。所詮悪魔の真似事しか出来ない贋作者の戯言だ聞き流せ」
「そうっすよ。魔法使いってことは近距離は不利でしょ。それに数はこっちが多いんですから一気に始末すればいいんっすよ」
「それもそうだな」
冷静になった堕天使を見た星雅は意外そうに首を傾げた。勝手に怒って突っ込んでくるなら処理が簡単に済んだがそうはならなかった。……といっても結局突っ込んでくる事には変わりない。
星雅はローブの中で己の特異性の一端を解放する。
──『
──『闇き夜の型・
義祖母が編み出し父も使う『金星の黒』と呼ばれる闇の
星雅はコレを生まれたその日から発現させていた。チート、バグキャラらに冷や汗を流させてバグ判定をさせた。
使っていく代償によりバケモノになっていく他に自我が吹っ飛ぶが星雅にはそれがなかった。
星雅自身は代償がない理由をこう説明した。
『既に真っ黒なのにそこにさらに黒を継ぎ足したとしても黒は黒のまんま』であると。
コレを聞いた者は総じて苦笑いだった。
義祖母と父ですら投げた基本らしい『闇き夜の型』。
それを意図的に望んだ形状を両腕だけに発現させるのが今回の『序曲』。
近接が出来ない魔法使いだと思い込んで突っ込んでくる堕天使に星雅は技を繰り出す。
──『
父ネギの親友フェイト・アーウェルンクスが使う『千刃黒曜剣』を『金星の黒』の魔力で真似て作った技である。
夜の闇に溶け込む千を超える黒鱗は先行していた堕天使ドーナシークとカラワーナの全身を微塵切りにした。
「カラ…ワーナ、ドーナ、シーク?」
切り刻まれた堕天使よりも後ろにいた堕天使ミッテルトは微塵切りになって地面に落ちていく
「おい、そこのゴスロリ」
「ヒィッ!?」
「……今現在、悪魔勢力は堕天使勢力に
「……ッ!……ッ!」
ミッテルトは恐怖で声が出せないのか首を縦に何度も何度も振る。
「分かったならさっさと行け」
''行け''その言葉と同時に本能的に感じたのかさっきの突っ込んでくるスピードを軽く上回るスピードで逃げていった。
星雅は逃げていくミッテルトを見るのを止め地面の染みになったソレを水の魔法で洗い流して悪魔がいた家に引き返した。
家の前に戻ると白髪で神父服を着た少年と泣いている金髪の修道女が並んで立っていた。堕天使に協力するはぐれエクソシストだと理解した星雅は戦闘体勢を解かずに近づく。
「あんれ~、オタクどちら様ですか~?いや、言わなくて良いでゴザンス。あの悪魔共のお仲間様でしょ?オタクから悪魔の匂いがプンプンするからさー。とりあえず死んでくんね?」
白髪の神父フリードの言葉が分からなかった星雅は首を捻ったが殺す気満々なのは殺気ですぐに分かった。
星雅の出で立ちで魔法使いだと判断したフリードは光の剣で切り裂こうとするが、天才、チート、バグキャラ等の高速、音速、雷速戦闘と闘う相手に困らなかった星雅にとっては只人の攻撃は『やさしい』レベルでしかない。
剣を振り下ろす手を軽くいなして相手が近づいたところを星雅の崩拳が突き刺さり、車に跳ねられた様な鈍い音と「ブヘッ!」という音と共にフリードはそのまま夜の闇に消えていった。
(当たりが
逃げていった相手の考察を一時止め、泣いている金髪修道女にハンカチを渡し泣き止むのを待つことにした。それと平行して電子精霊に翻訳出来る様に待機とあやす様に指示を出すのだった。