そして試合です。
真面目な話です(多分)。
次回はネタです(きっと)。
オレたち雷門中がフットボールフロンティアを優勝してから月日が流れた。
『遂にこの日がやって来ました!日本とスペインの親善な意味を持った記念すべき試合です!』
優勝したあの日。響木監督からオレ、円堂さん、鬼道さん、豪炎寺さんの4人に対し、他国のチームと試合をしたくはないか?という提案があった。
当然答えは決まっている。YES以外にはあり得なかった。
相手はスペインの少年リーグで優勝したバルセロナ・オーブ。大してこちらは雷門中イレブン。日本中が注目しているこの試合。会場内も熱気に溢れ、またテレビ中継用のカメラが何台もある。
『円堂!円堂!円堂!』
「おーい!」
凄い円堂コールだなぁ……さすがキャプテン。
『おぉ。雷門のキャプテン円堂守が大きく手を振っています。日本のサポーターは大興奮だ。今や伝説の男、円堂守が日本を代表して世界の強豪と戦うぞ!』
生きている伝説になっちゃったよ……ウチのキャプテン。
「円堂。悪ノリし過ぎだ」
「そうか?良いだろ?偶には」
「でもテンション上がるのは分かりますよ」
「だろ?やっぱりテンション上がるよなぁ」
「ふっ。夜桜も円堂の影響を受けてきたか?」
「はははっ。まだそこまでですよ鬼道さん」
にしてもすごい観客の数……知り合いも多数見られるし。
「…………あいつら見ているかな……」
「どうしたでヤンスか?夜桜」
「もしかして緊張しているんッスか?」
「そりゃあするだろ。この人数だぜ?エキシビションマッチなのにな」
「それだけサッカーが注目を集めるスポーツだということだろう」
「きっと、円堂のサッカーバカが日本中に伝染しているんだろうな」
「へへっ。何か褒められてる感じがするな」
……あれ?今の褒め言葉だっけ?
「雷門の……いや、日本の力を見せてやるか!」
「行くぞ皆!相手は世界だ!」
『おぅ!』
今回のフォーメーションは4-4-2。GKは勿論円堂さん。DFに風丸さん、壁山、オレ、土門さん。MFに少林寺、鬼道さん、一ノ瀬さん、マックスさん。FWに豪炎寺さんと染岡さんだ。
ピー!
雷門のキックオフで試合開始。ボールは染岡さんから一之瀬さん、そして豪炎寺さんへと渡る。途中でディフェンスに来ていたが……あっさり突破できた。向こうのレベルが低い?いや、ワザと抜かせた?
「ファイアトルネード!」
そんな疑問を余所に我らがエースストライカーのシュートが相手キーパー目掛け飛んでいく。
「なっ……!」
そのシュートをキーパーは指一本で止めてしまった。文字通り指一本でだ。
そしてボールは再び豪炎寺さんに。ミスキック?嫌違う。打ってこいと挑発している。
「円堂!」
鬼道さんがすかさず円堂さんを呼ぶ。円堂さんは相手ゴールまで駆け上がり、そして、
『イナズマブレイク!』
円堂さん、鬼道さん、豪炎寺さんの三人による連携シュート、イナズマブレイクを放った。
「嘘だろ……?」
それを相手キーパーは高く跳躍し、ボールを踏みつけることでシュートを止めてしまった。
あんなの見たことない……とか言う次元じゃない。あんなのでも止められてしまうのか。
ボールはキーパーから相手のキャプテンへ。
「戻って下さい!円堂さん!」
「ディフェンス!」
攻めてきているのは3人。FWの二人と相手のキャプテン。
「……っ!?」
ブロックに行くがあっさり突破される。早い、身体が一切追いつかなかった。
彼ら三人はオレらディフェンス陣を完全に遊んでいる。いつでもゴールを狙えるのにシュートを打とうとしない。何故だ?何故打とうとしない?
そう思っているとゴール前に円堂さんがたどり着く。まさか……!あいつら円堂さんが戻るのを待っていた?
「フッ……」
次の瞬間、相手キャプテンの鋭いシュートがゴールに刺さった。
一切そのシュートに反応ができなかった。オレだけじゃない、円堂さんも、他のメンバーもそのシュートがシュートと認識できた頃には既にゴールに刺さっていたのだ。
「えっ?」
『決まったぁ!先制はスペインのバルセロナ・オーブだ!』
実況により再び現実を認識する。
「これが世界レベル……個人技だけじゃない。チームとしても次元が違う」
「ああ、まるでチーム全体が一つの生き物のようだ」
「だが、このまま終わるわけにはいかない。全力で行くぞ!」
『おう!』
雷門ボールで試合再開。ボールは染岡さんから一ノ瀬さんへ。
「土門!夜桜!」
『おう!』
一ノ瀬さん、土門さんとの連携シュート。
『ザ・フェニックス』
元はオレでなく円堂さんだったが、円堂さんの代わりにこの技を打てるようにフットボールフロンティアの後練習していた。
「フンっ……!」
しかし、相手のキャプテン……クラリオによってはじかれる。そのボールを拾ったのは相手のFWであるルーサー。
「ザ・ウォール!」
壁山が必殺技を繰り出すもその壁を跳躍し、あっさり躱される。
そしてそのままシュート。先ほどと同じく円堂さんが一切反応できなかった。
ピ、ピーー
あれからもバルセロナ・オーブの猛攻を止めることが完全には出来ず5-0で前半終了した。
こちらは全員汗をかいて体力も消耗している中向こうは一切疲れた様子がない。
「凄え……これが世界……!なんて凄えんだ……!」
円堂さんの独り言。ただその中には諦めなどはなく熱意で溢れている。
「皆!世界は強い!でも全力で行くぞっ!」
『おおっ!』
前半の最後の方、彼らの動きが少しずつだが見え始めた。
「次こそは……」
ピーー!
後半戦、バルセロナ・オーブのボールで試合再開。
相手はクラリオとルーサー、後もう一人のFWであるベルガモの三人だけで攻め上がってくる。ボールはクラリオが持っている。
「……っ!」
「ほう」
さっきまではついて行けなかったが何とか喰らい付けている。
「ならば」
しかし、隣を走ってきたベルガモとのワンツーで抜かれそのままシュート。ボールはゴールに刺さった。
「さっきよりはフェイントとか動きが見える……よし。次だ」
円堂さんもさっきよりはシュートが見え始めているようだ。本当に少しずつだが彼らのスピードに慣れてきている。
ただ、残念なのは彼らがまだ本気を出しているわけじゃないこと……か。
雷門ボールで試合再開。しかし、ボールはあっさり取られ攻められる。
「フンっ……」
そしてクラリオのシュート。……違う。
「今度こそ!マジン・ザ・ハンド!」
円堂さんがマジンを呼び出すも……違う。さっきまで見てきたシュートと何かが違う。何か……そう、何かが違う。
「回転か!」
オレはゴールへとダッシュする。
あのシュートはマジン・ザ・ハンドじゃ止められない!
「うわぁっ!」
一度は止まりそうになるボール。しかし、そのボールは再び激しく、さっきまでと別の回転の様子を見せる。
回転と言ったがあのシュートは小さな風の渦……竜巻みたいなものでボールが覆われていた。そしてそれは誰かが触れることで軌道が変わるもの。パワーだけじゃ止められないシュート。
「させるかぁ!」
円堂さんを弾き飛ばしボールはゴールに向かった。それを間一髪ではじき返すも、ルーサーがダイレクトで打ち返してくる。
「くっ……!」
そのシュートに触れられたのは一瞬で、弾き飛ばされゴールに刺さった。
「大丈夫か……夜桜」
「円堂さんこそ……」
円堂さんの手を借りて立ち上がる。
お互い疲れが見える……いや、オレたちだけじゃない。フィールドに出ているメンバー全員に共通して言えることだ。
監督はそれでもオレたちを交代させる素振りを見せない。きっと、このレベルを味合わせたいのだろう。
そして、気付けば12-0。全員が満身創痍で立っているのがやっとの状態だ。
「俺たちでどうにかなる次元じゃない……!」
「クソッ……時間がない……!」
「このまま終わらせてたまるかよ……!」
思いは途切れていない。だが、時間もないし何より身体が動かない……くそっ。こんなこと初めてだ。
「クラリオ。まもなくタイムアップだ。このまま終わるのか?」
「なに?」
「ほらよ。見せてやったらどうだ?俺たちのレベルを」
「なるほど。それもいいな」
そう言ってボールを持って少し下がるクラリオ。
軽くボールを蹴り上げ、何度か蹴り込む。すると、ボールはカットされたダイヤモンドのようになってゆき……
「ダイヤモンドレイ」
一瞬だった。さっきまでと威力、スピード共に桁違いなシュートがオレたちのゴールに突き刺さった。
ゴールに刺さった衝撃の風圧で前に倒れ込む円堂さん。ボールは円堂さんの横に転がり――
「円堂さん……」
「円堂……」
――拾い上げようとするも力が入らず手からこぼれおちてしまった。
ピ、ピーー
試合終了のホイッスルが響き渡る。それと同時に足から力が抜けて倒れ込んでしまう。ははっ。情けないな……
「俺たちが……手も足も出ないとは……これが世界か」
「ですね…………オレたちなんてまだまだでしたよ……」
「ははっ、はははっ!」
空を見上げると星空が。ははっ。今のオレたちと彼らでは天と地ほどの差があるな。
「日本のレベルはこの程度か」
「なんだと……うっ」
染岡さんが反論しようとするのを豪炎寺さんが止めている。
「わざわざ日本に来た意味はなかったな」
「しかし、悪いプレーではない。このチームはもっと伸びる」
「何年先のことやら」
「日本の戦士たちよ。現状では話にならないが今後の貴方たちの進化に期待する」
本当に話にならねぇ……だろうな。
一方その頃の永世学園。
「これは予想外だったね」
「ああ。剣人たちが手も足も出ないとはな……」
「…………」
スッと無言で立ち上がるクララ。そのまま部屋に帰って行った。
「どうしたんだアイツ?」
「仕方ないだろ。剣人があそこまでやられたんだ」
「今は一人にさせてあげましょう」
部屋に戻ったクララ。彼女はそのままベッドへと飛び込む。
(あんなに剣人が歯が立たない姿を見て、胸が痛くなった。でも、同時にあんなに必死にもがく彼を、最後に無力感を感じている彼を見て凄く苛めたくなった)
「……あぁあああ……!」
(私はどうすればいいんだ……!彼の健闘を称えて褒めたり慰めたりすればいいのか。どん底まで叩き落として心を折りにいけばいいのか。でも、こんなチャンスそう巡ってこないだろうし……でも、攻撃するより今は味方になってあげたほうが……!)
布団を抱きながらバタバタさせているクララ。
彼女は今、
この日。彼女は葛藤と悩みに悩んだ末、
「……よし。慰めて優しくしてから、心をへし折りに行こう」
上げて落とす。最悪の結論を出したのだった。