「FF申請書……ですか?」
「えぇ。そうよ」
雷門とバルセロナ・オーブの試合から少し経った頃。私たち永世学園のサッカー部はミーティングをしていた。
……まぁ、このサッカー部はつい最近設立されてしかも元お日さま園のメンバーで構成(一人違うけど)。まぁその一人……お父様の実の息子、吉良ヒロトさんは普段こういう会議には参加しないので、結果この寮のリビングで行っていた。
ちなみに顧問は瞳子先生なのでやはりこの場所でミーティングは問題なかった。
「そうね。簡単に説明しておくと今後のサッカー部にはスポンサーが付くというのは前に説明したわね」
スポンサー制度……と呼ばれるものだった気がする。今後大きな大会に出るためには、サッカー部と契約してくれるスポンサーを探さなくちゃいけないらしい。
私たち永世学園のサッカー部はお父様の子会社がスポンサーとなってくれるが、他のサッカー部は躍起になっている。今後も企業の開催するサッカー大会の予定がほぼ毎週、全国で入っている。ウチみたいなところ以外は皆そこで優勝を勝ち取りスポンサー契約をするようだ。
「じゃあ、これは……?」
「これは大きく二つの意味を持っているわ。一つは来年のフットボールフロンティアの申請書。そのままね」
「でも、気が早くないですか?」
「そうだぜ。予選……って言ってもまだまだ先だろ」
「えぇ。だからもう一つの意味は、サッカー強化委員が派遣先を選ぶのに使うのよ」
サッカー強化委員?聞き慣れない言葉だ。
「サッカー強化委員と言うのは現雷門サッカー部のことよ。サッカー協会は、雷門中の選手たちを各地の学校のサッカー部に配属し、日本全体のレベルアップを図ろうとしているの」
「なるほど……」
「でもサッカー強化委員は全国の中学のサッカー部に一人派遣できるほど人数はいない。数多くのサッカー部の内派遣されるのは精々十数のサッカー部ね」
確かに。日本全国の中学校の数に対し、それをまかなうことは無理だ。現実味がなさ過ぎる。
「だからこの申請書を選考基準に使うのよ」
「っつてもどうせランダムとかだろ?」
「いいえ。話によると彼ら自身に派遣先は選ばせるらしいわ」
彼ら自身……?
「ここにPR文章ではないけどコメントを書く欄も設けられているわ。まぁ、書く書かないは好きにしなさい。コメントに関しては縛りはないわ。以上でミーティング終了よ。タツヤ、代表者氏名はキャプテンである貴方の名前を書いといて」
そう言って部屋に帰っていく瞳子姉さん。
「サッカー強化委員……ねぇ」
「てかこんなの運だろ運」
風介と晴矢がそう言う……うーん。
「……剣人と一緒にサッカー出来るチャンス」
『あっ……!』
ボソッと言ってみたけど……え?なに?皆気付いていなかったの?サッカー強化委員?目的とか何とかそんなのどうでもいい。
私の目的はただ一つ。剣人捕獲……コホン。剣人引き入れしかない。それ以外の人なんていらない。
「おい、気のせいかもしれないけど、アイツ。いつもより燃えてね?」
「ああ。あのやる気は見たことがないな」
「ほんと、剣人に関することだけのやる気はすごいよな」
「まぁ、それも仕方ないことだろう」
「あーあ、剣人のやつ災難だな。あの女に目をつけられて」
「おいバカ。聞こえているぞ」
「はぁ?前より距離あるし問題ねぇって」
聞こえてますけど?
学習能力がないのでしょうか彼は。やれやれ呆れたものです。
「……晴矢さん。何か意見はありますか?」
皆考え込んでいますね……ただ、私もいい案は浮かんでいない。ここは一つ他人の力を借りましょうか。
「あぁ?そんなの『剣人来てくれー』とか『待ってるぞ!剣人!』とかでよくねぇか」
「…………ッチ」
「舌打ち!?ため息じゃなくて舌打ちかよ!?」
「…………これだから頭の中も外もお花畑は」
「なっ……」
「いいですか?頭にチューリップを咲かせている脳内お花畑さん。その程度の発想10あるサッカー部の内9つはやってきますよ?ねぇ分かってます?剣人は人気物件なんですよ?分かります?貴方の発想は安直なんですよ?お子様でもそんなことやりませんよ…………はぁ、この程度にしておきましょうか。今はチューリップの世話をしている場合じゃありません。剣人捕縛作戦を進めましょう」
「お、俺は……」
「ああ、晴矢さんは必要ないですので、どうぞ。チューリップが少しでもましになるように水やりでもしてきてください」
「ちくしょぉおおおおおおお!」
「晴矢ぁ!?」
チューリップ……いえ、晴矢が飛び出していきましたね。まぁ、期待なんてしていませんでしたが。
(あのバカ……言わんこっちゃない)
(どうする……今口を開けば……)
(あの毒舌の餌食に…………よし黙ろう)
急に静かになりましたね。後、男性陣が誰も目を合わせようとしてくれないですね。
「ふっ。何をバカなことを考えている」
と、ここで口を開いたのは治ですか。まぁいいでしょう。
「……バカなこと……ですか?」
「ああ。我らが親友、夜桜剣人ならば!こんなことしなくとも間違いなく来るに決まっているだろ!」
(((あ、アイツ終わったな)))
「…………ハァ」
頭を抱えるしかありません。
「そんなことは知っています。私が考えているのは99%来てくれるこの状況でいかに100%来るように仕向けられるかと言うことです。お分かりオサーム?貴方の発想はあのチューリップ以下ですよ?もう一度言いましょうか?
「ぐふっ……な、何故それを……!」
「今必要なのは貴方の熱血精神じゃない。貴方の頭よ。…………まぁ、どうやら使い物にならないようだけど………………少しでも期待した私がバカだった」
「…………すまん。ちょっと部屋に戻る」
丸くなった背中はとてもゴールを任せられるとは思えない。一層のこと私がやった方がいいんじゃないかな?
(あーあ、今のはへこむだろうなぁ……)
(特に最後のボソッっと言ったアレは傷つくよな……)
(狙われる前に帰りたい)
「私から一ついいか?」
「……お願いします。玲名」
(この状況で意見出せるか普通?)
(三人目の被害者だな)
(ありがとう。今まで楽しかった)
「いや、普通に考えて……脅せばいいんじゃないか?」
(((普通に考えて最低の発想だろっ!?)))
「……なるほど……採用」
(((いいのかよっ!?)))
それは盲点だった。そうか。何も普通じゃなくていいんだ。剣人を引き入れれば勝ちなんだ。
「ただ私にはその先が考えられなくてな……」
「……確かにそうですね」
明らかな脅しでははじかれる可能性がある。しかも剣人には脅しだと伝わるようなうまい具合の文章を考えなくてはならない。
「タツヤ!ウチの女性陣は何であんなにアレなんだ!?」
「剣人……帰ってきたら死ぬんじゃないかな」
「でも帰ってこなかったら俺らが……」
ふむ……。ここは頭数を増やしましょう。
「キャプテン。それにリュウジさんと風介さん。何かいい案はありませんか?」
「やばい。どうする?」
「ごめん剣人。恨むなら恨んでくれ」
「三人寄れば文殊の知恵だよ。なんとかして切り抜けるんだこのピンチを」
この後、話し合った結果なかなかいいものが出来ました。これなら問題ないはずですね。
ちなみにその後の晴矢。
「ちくしょぉお!俺の頭はチューリップじゃねぇっ!」
「ちょっ?え?晴矢?こんな時間にどこ行くのよ!」
「うわぁあああああああっ!」
「え?あ、ま、待ちなさいっ!」
夜の鬼ごっこが始まったとさ。相手?さぁ、誰でしょう。