クララ様はサディストである   作:黒ハム

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お久しぶりです。
作者Twitter始めました。
ようやく二人が再会します。()の中身は……うん。気にしない方向で。


感動の再会(っぽい何か)

 あれから、転入の手続きとかその他諸々を雷門理事長に投げておいた。まぁ、最低限のことは流石にやっておいたけどね。

 

「しばらくのお別れ……ってとこか」

 

 昨日はあれから雷門サッカー部全員で響木監督が経営している雷雷軒で食事。まぁ、一ノ瀬さんと土門さんが旅立つ前日も皆で食っていたし……恒例行事かな?

 ただ彼らとは今後も何度か連絡を取り合ったりするだろう。それにあくまで一時的な別れ。だから会えなくなるわけじゃないので寂しさはそこまでない。

 

「そろそろか」

「ああ」

 

 オレを引き取った親戚……といったら他人行儀だが三人目の親父。一人目は勿論生みの親、二人目がお日さま園の園長。そう思うと色々とあるんだな……。

 

「悪い。こんなワガママ言って」

「フン」

 

 雷門メンバーは一部の奴が自宅から通うのに厳しくなるから配属先の学校での寮に入ったりすることになる。だからサッカー部だけじゃなく家族ともしばらく別れる人も多い。と言っても帰ってこればいい話だが。

 

「お前が選んだ道だ。ただ、母さんと父さんにはしっかり報告しておけよ」

「分かってる。寄っていくつもりだ」

 

 ピンポーン

 

「来たようだな」

「んじゃ、いってきます」

「頑張れよ」

 

 荷物を持ってドアを開ける。そこには、

 

「久しぶりね。剣人」

「お久しぶりです。姉さん」

 

 姉さん――永世学園サッカー部監督、吉良瞳子先生がいた。

 

「行きましょうか」

「はい」

 

 昨日の今日でわざわざ家までお迎えに来てくれるこの優しさ。感謝しかないな。

 

「聞いて驚いたわ。来るのはもっと先だと聞いていたのに」

「えぇまぁ。いろいろありましてね」

 

 主犯は誰だろうか?許さん……とは思わないが、ちょっと気になるな。相手次第ではぶちのめすことも視野に入れよう。

 

「ただごめんなさい。あなたの部屋だけ用意できていないの。明日には用意できるから待ってちょうだい」

「仕方ないですよ。連絡もらって昨日の今日で部屋を用意しろって無茶が過ぎますから」

 

 まぁ、誰かの部屋に転がり込むか、どっかで寝よう。そうすりゃいいな。

 

「で、最初はあそこに寄っていくのね」

「はい。お願いします」

「寮への到着が遅くなるかもしれないけど」

「20時に間に合えばいいので大丈夫です」

 

(あ……やっぱり、それのせいで来たのね)

 

 そして場所は移動し……

 

「……父さん。母さん」

 

 オレは墓の前で手を合わせていた。オレには両親の記憶がない。物心つく前に別れてしまったからだ、

 

「……この一年いろいろあった」

 

 円堂さんたちと出会って、フットボールフロンティアを勝ち抜いて、優勝して。世界の強豪相手に惨敗して。

 

「……次来る時はもっと強くなってみせるから」

 

 今度はあいつらと一緒に。

 

「……すいません。時間取らせましたね」

「気にしなくていいわ。行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私としたことが完全に失策でした。

 

「……日付設定を早くしすぎた」

 

 遅すぎても問題があったでしょうが早過ぎても問題だった。

 これでは剣人が見たときには時既に遅し……。

 

「…………」

「く、クララ?」

「…………」

 

 この失敗は大きすぎる。かと言ってこれ以上手を打つことが出来ない。どうする?いや、どうしようもない。

 

「ダメだ。何も聞こえていないな」

「いや……よく話しかけられたな。昨日の惨状を見たばかりだろう?」

「俺だって嫌だわ!でも、ジャンケンで負けたからしょうがねぇだろ!?」

「あの不機嫌オーラ、見ているだけで……嫌な汗が流れる」

「気のせいかもしれないんだが、さっきから寒くねぇか?」

「アイツの周りだけ極寒地帯だぞ。気をつけろ。目を合わせようものなら視線だけで殺されるぞ」

 

 ふっふっふっ。いいところに獲物が表れましたね。ちょうど良い。憂さ晴らしに狩らせて貰いましょうか。

 

『全員。リビングに今すぐ集合。繰り返します。今寮内にいる子たち。全員リビングに今すぐ集合』 

 

 と、ここで滅多に使われることない、寮内の放送器具が使われる。集合?まぁいい。

 

「……狩るのはその後だ」

 

 獲物がわざわざ増えてくれるんだ。それほどありがたいことはない。

 ……それにしても何の用だろう?全員集合なんて何かあったのかな?

 

「全員集まったようね」

 

 まぁ、もうすぐ20時だし、ほとんどの人が寮内で過ごしていたんだ。集まるのも早かっただろう。

 

「姉さん。いきなり集合って何かあったんですか?」

 

 我らがキャプテン――タツヤが姉さんに質問をする。

 サッカー部のキャプテンであり、この寮内の実質的なトップ。オサーム?年上だけど彼にはリーダーシップの欠片もないから致し方ない。

 

「そうね。入ってきていいわよ」

 

 電話越しの誰かに呼び掛ける姉さん。

 

「はぁ……広いなぁこのリビング」

 

 そう言いながら入ってきたのは、

 

「剣人!?」

「よっ、久し振り。皆」

 

 剣人だった。私は彼の姿を見るなり、一目散に駆け出して行く。

 

「おっと……」

「…………おかえり。剣人」

「……ただいま」

 

 彼は私を優しく抱き締めてくれる……あぁ。何というか……

 

(すげぇ……さっきまでの不機嫌オーラが消えた……)

(あれ……?俺たち空気?)

(この平和が続けばいいんだけどなぁ……)

 

「……とりあえず話したいから離れてくれな――」

「やだ」

「――じゃあ、このままでいっか」

 

(((いや、即答かよ!しかもいいのかよ!)))

 

「とりあえず、改めて。サッカー強化委員として本日付で派遣された夜桜剣人です……ってなんか堅苦しいなこれ」

 

(((主にクララのせいで最初から空気が台無しな気がする……))))

 

「今日からまたよろしくな。皆」

「ああ。歓迎するよ。剣人」

 

 代表してタツヤと剣人が握手を交わす。

 

「でも、お前。確か、サッカー強化委員はもっと先に派遣されるんじゃなかったか?」

「あぁ……そのことだが……」

 

 左手でズボンの後ろポケットから折り畳まれた紙を出す。そして広げられたそれは……

 

「FF申請書のコピーか……?」

「あぁ……というわけでオレの黒歴史暴露大会を阻止しに来た!」

『……………………?』

 

 堂々と宣言する剣人。んん?黒歴史……暴露大会……?

 

「……いや…………え?」

 

 私たち全員が首をかしげる。その様子に剣人は困惑している……いや、何なんだろうこの状況?私も分かんないや。

 

「いや……あの、ね?あれ?今日だろ?このお日さま園将来の夢朗読会ってやつ」

『あぁ~』

 

 私を含めサッカー部員(一部を除く)がようやく思い出す。そうだった。剣人を釣る餌にそんなこと書いてたなぁ。

 

「あぁ~ってどういう反応!?何その『あ、そんなの書いてたなぁ』的な反応!?」

 

 その通りである。

 

「それ嘘だよ」

「…………え?」

 

 理解ができないような顔をしている。あ、テレビ越しに見ていた爽やかさが大分崩れている。これはシャッターチャンスシャッターチャンス……

 

「…………マジ?」

『うん』

 

 私を抱きしめる手を緩め、そのまま膝から崩れ落ちている剣人。

 

「…………っ!」

 

 わわっ。あ、あの剣人が……私に跪いてくれている……!ど、どうしよう……!そんな急に……物凄く……

 

「おい!誰かあの女を止めろよ!」

「落ち着け晴矢。あんなに幸せそうなクララを見たことがあるか?」

「それはねぇ……って違うだろ!?なんであの女は人の後頭部を踏んで幸せそうな顔ができるんだよ!?」

「ドSだからだろ?何も問題はないだろう」

「問題しかないだろ!?」

「落ち着けよ晴矢。アレはクララなりの愛情表現なんだよ」

「さっきまでと違いすぎだろ!?誰が喜ぶんだよアレ!?」

「お前」

「え……晴矢?アンタまさか……」

「おいおいおい!?何か勘違いが……!」

 

 物凄く踏みつけたい。というか踏みつけている。あぁ、なんて足触りの良さ。これはちょっとくせになりそ――と、急に足の下の方から力を感じる。

 

「きゃっ……」

 

 思わずバランスを崩すが、

 

「……誰だ……!」

 

 手を取って支えてくれる剣人。一瞬で立ち上がって私を助けてくれるなんて……なんて優しい。

 

「……誰が主犯だぁ!」

 

 ピッ!(サッカー部員の男子全員が私を指差す音)

 

「……てへっ」

 

 ばれちゃったら仕方ない。うん。今私に指さしたやつ……明日覚えていろよ

 

「はぁ……」

 

 あれ……?ため息をついて終わりなの?え?何か『やりやがったなこの野郎!』的な反応は?え?ないの?

 

「……バカ」

 

 そう言って私の方を見て、私の頭の上に手を乗せる。

 

「そんなことしなくたってオレはお前のいるここしか選ばねぇっての」

 

 頬が熱くなる感覚がする。え?……え?それって……!

 

「なぁ。あの二人って何なんだ?」

「相思相愛」

「バカなのか!?クララの方はともかく何で剣人も!?さっき踏まれてただろアイツ!?」

「きっと彼はMなんだよ。うん」

「それでいいのかタツヤ!?」

「というか茶番劇を見せられている気分だ。早く部屋に戻りたい」

「そうだね。解散宣言でもしようか」

 

「じゃあ、もう解散で――」

「その前に、一つ。剣人の部屋の準備ができていないから誰かの部屋に泊めてあげたいのだけど。誰か」

「はい」

 

 即答する。この役目は誰にも譲れない。

 

「流石に男女が同じ部屋というのは……」

「大丈夫です」

「……まぁいいわ。剣人はクララの部屋に泊まっていきなさい。以上。解散」

 

 あーなんて幸せな世界なんだろう。でも、これで来てくれたし……

 

「なぁ、剣人」

「なに?タツヤ」

「俺たちと風呂入らないか?久し振りにいろいろ話たいからさ」

「いいよ」

 

 ナイスですタツヤ。これで部屋の片付けができる。……いや、部屋の片付けはしていますよ。正確には……

 

「……準備が出来る」

 

 ……これで剣人は私のものになるはず。ふふふっ。




どうしてもっと感動的な再会にならなかったのだろうか……。
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