クララ様はサディストである   作:黒ハム

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弱みを握るために

 この寮には大きな風呂が二つ。男子用と女子用が存在している。

 だから風呂入るときというのは絶対に大浴場……と言ったら大袈裟だがここに来ないといけない。と一応説明は受けたが……

 

「広いなぁ……本当に寮の風呂かよ」

「俺たちが同時に入っても問題ない広さだよ」

 

 広さだけなら公衆浴場とそんなに変わらないのではないか?ここは寮の風呂だぞ?

 シャワーを浴びて頭と身体を洗い流す。そして、湯に浸かる……

 

「いい湯だ……」

 

 心地よい湯加減。これはリラックスできそうだ。

 

「こうしていると昔を思い出すなぁ……」

 

 お日さま園にいた頃は毎日のように皆と一緒に風呂に入っていた気がする。そう思うと今までは風呂の時間は一人で過ごしていたんだな。

 

「今まで一人で入るのが普通になっていたから新鮮だな」

「俺たちにとっちゃ新鮮さの欠片もないけどな」

「ああ。絶対誰かが居るからな」

「むしろ一人で入る方が新鮮だろうね」

 

 今風呂場にいるのはオレを含めて六人。リュウジ、治、風介、晴矢、タツヤ……皆、久し振りに会ったけど凄い成長しているなぁ。

 

「そうだ剣人。フットボールフロンティアのこと話してよ」

「いいよ。何聞きたい?」

「やはり決勝大会の感想だろ」

「いや、ざっくりしすぎだな……まぁいいけど」

 

 という感じでフットボールフロンティアでの出来事を答えられる範囲で応えていく……大抵の質問がインタビューだったりで応えたことがあったりした気がするがやはり直接聞くのは違うのか?

 

「来年のフットボールフロンティアは俺たちが優勝するぞ!なぁ皆!」

「ああ。それに治にとっては最初で最後の大会だね」

「そっかー……治だけは来年で最後なのかぁ」

「まだ設立したばっかなのに……治だけはもう終わりか」

「三日天下かな?」

「そもそも天下とってねぇだろ」

 

 治……ああ、そっか。治はともかく、円堂さんや鬼道さん、豪炎寺さんたちに取っても最後の大会になるんだ。

 最後の大会だが、雷門として参加出来ないことは決定している。この道を選んだ時点で会うのは味方としてではなく対戦相手として……なのか。まだ一年……いや、もっと短い期間しか彼らとサッカーをできていないのになぁ。

 

「でもよぉ。剣人が入ったからそこまで難しくないんじゃねぇか?」

「それはないよ。剣人と同じように雷門の人たちがそれぞれ別のチームに入ってくるんだ」

「どこも強くなってくる……か」

「なら俺たちは負けないように強くなるだけだ」

 

 油断はできない。オレたちサッカー強化委員が派遣されていないところだって強くなってくる。きっと、去年よりも熾烈な争いになるだろう。

 でもオレたちだって負けてられない。この仲間たちと勝ち進みたい。

 

「そういや剣人。一つ忠告しておく」

「忠告?」

「ああ……クララには気をつけろ」

「…………?」

 

 どうして気をつける必要があるのだろうか。

 

「そうだな」

「……うん」

 

 何故か全員のテンションが下がり、この風呂場の温度が下がったのではないかと錯覚させられるレベルだ。

 一体、彼らに何があったのだろうか?

 

「どうして?」

「いいか。あの女は人を痛めつけることに快楽を覚えるド変態のイカレ野郎だ」

 

 なるほど。さっき、何故か後頭部踏まれていたのはそれか。

 

「大丈夫だよ」

「ふん。俺たちが何回心を折られたことか」

「そこは誇るところじゃないよ」

「でも剣人。大丈夫と言い切れる根拠はなんだい?」

「根拠?特にないけど……あれだよ。オレは彼女のどんな姿を知っても好きでいられる自信があるよ」

『………………!!?』

 

 一瞬の沈黙の後に皆驚いたような表情を見せる。え?何かマズいこと言った?

 

「お前!?よく堂々と言えるな!?」

「え?普通じゃない?」

「はぁ……変わったやつだな。お前」

「そうなのか?」

「恋は盲目って言うけどまさかここまで狂わせるとは……」

「俺たちは止めればいいのか押せばいいのか……分からんな」

「うーん。そうだね。剣人」

「なに?」

「俺たちは忠告したからね」

「おう」

 

(タツヤの奴。完全に逃げたな)

(それでいいのか……と言いたいがナイスだ)

(これで俺たちへの被害が減ればいいんだけど)

(よし。先輩として暖かい目で見守ろう)

 

「にしても、お前。何でアイツのことが好きなんだ?」

「え?うーん。クララって可愛いじゃん。だから――」

 

(((あーだから好きになったと。案外単じゅ――)))

 

「――色んな顔を見たいんだよね。もちろん可愛くテンパるようなところもだけど、絶対的な差に屈辱的な顔でこっちをにらみつけてほしいというか、あ、涙目だとなお嬉しい」

 

(((――ん!?ん!?コイツまさか……!)))

 

「まぁ、アイツだと何というか……そそるものがあるんだよね。だからかな?」

 

 あれ?何かおかしなこと言ったかな?皆固まっているけど?

 まぁ、後はクララを見ていると守ってあげたくなるんだよなぁ。保護欲ってやつかな?

 

「お前……まさか……サディストじゃないよな?」

「あはは。そんなわけないじゃん」

「よかった。違ったんだ――」

「ただ、サディストを名乗っている人を屈服させるのは楽しいよ?」

 

(((アウトォォォォォオオオオオオオオオッッ!!)))

 

「じゃあ、そろそろあがるわ。のぼせそうだし」

 

 立ち上がってそのまま脱衣所へ向かう。いやぁ。話が盛り上がって珍しく長風呂だったなぁ。

 

「なぁ、タツヤ……もしかしてとんでもない奴が戻ってきたんじゃないか?」

「ドSとドSは惹かれ合う運命にあるかもしれないね……」

「どうするんだ俺たち。明日から心が持たないぞ」

「いや、クララと剣人のドSのベクトルが違うからきっと大丈夫だ」

「結局二人ともドSなんだね……あー」

 

(((終わったな……俺たち)))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここ」

 

 風呂からあがった後はクララに案内され、彼女の部屋にやってきた。

 

「お邪魔しまーす」

 

 女子の部屋に入る……うん。初めての経験だから緊張するな。

 

 コンっ

 

 ん?何か足に当たった?

 

「悪い。何か蹴ったみた――」

 

 そう言いながら蹴ったものを拾う。一体何を蹴ったんだろ――

 

 カチャ(手錠)

 

 ――――え?

 

「……どうしたの?」

 

 あはは。…………実は見てはいけないものを見てしまった気がするのだが。

 

「ごめん。これ落ちてたよ」

「……拾ってくれてありがとう」

 

 そうしてポケットに手錠を入れると、何故か代わりに別の物が落ちる。

 

 コトッ(猿轡)

 

「……あ」

「…………」

「……見た?」

「…………見てない」

 

 …………あはは。クララは可愛いなぁ。そんなものをポケットに入れているなんて。あはは……。

 あれ?もしかしてオレってやばい状況にあるのでは?

 

「……とりあえず座って。お布団は姉さんが持ってきてくれてひいたから」

 

 そう言って座布団が用意され、そこに座る。隣には既にオレの布団が用意されていた。その隣はベッドがあるみたいだ。

 

「……ちょっと出掛けてくる。10分は戻ってこないからね」

 

 そう言うとどこかへ行ってしまうクララ。

 

「さてと……」

 

 何して過ごそうか。そう思い、とりあえず部屋の中を見渡すことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、私は自分の部屋の前にいます。スマホのカメラを構えながらこっそりと部屋を覗いています。

 私のこと頭おかしいと思った人。夜道には気を付けてね

 まぁ、なんでこんなことをしているのかというと……

 

「…………」

 

 剣人の弱みを握るためです。

 どんな人間にも弱みの一つや二つあるもの。人を脅す――使ったりするのに手っ取り早い方法は弱みを握って脅すこと。そうすれば簡単に従ってくれる。

 もちろん、反抗心を生まないように調教することは必要不可欠ですが。

 ただ、人というのはそういう脅迫できるネタ(弱みや黒歴史)があってもそう簡単に人には話さない。故に握るのは難しい。

 だったら作ればいい。弱みが握れないなら相手の弱みをこっちが作って握ればいい。実に簡単で単純な話。

 簡単だが慎重にならねばならない。相手が罠だと察知される前に仕留める必要がある。ベストは罠だと知られない事だが、まぁ、罠だと知った頃にはすでに終わってるはずだから問題ない。

 

「…………」

 

 なら、今回私が用いる罠は何か?単純である。

 女子部屋に一人残された男子。

 この状況だけで何もしなくても弱みは握れそうだがそこに一工夫加えてある。

 

 僅かに開けられたクローゼット。

 ベット下に微かに見える本のカバー。

 机の上に置いてある日記と書かれたノート。

 

 最初は耐えられるだろう。だが、私は10分は戻ってこないと宣言している。

 このことにより少しずつ理性と罪悪感を消していき、好奇心を生む。

 更に、手錠と猿轡という危険な私物を見せることで剣人側にも私の弱みを握るという考えを生ませる。そして、弱みを握るには絶好のもの(日記やベッド下の本)が目に見える形である。

 

「……勝った」

 

 私は勝ちを確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし10分後……。

 

 

 

 

 

 ……おかしい。

 剣人を見張っているが一切動きがない。

 

「…………?」

 

 まぁ、後10分もすればきっと動きがあるだろう。

 

 

 

 

 

 さらに10分後……。

 

 

 

 

 

 あれ?嘘。本当に動きがないんだけど……え?作戦失敗?

 いやそもそも……起きているのかな?何か20分間見張っているけど、一切動きがない。最初こそキョロキョロと周りを見渡す動作があったもののそれ以降本当に動きがない。

 

「……ただいま」

 

 私は今帰ったと言わんばかりに部屋に入る。

 

「…………」

「……剣人?」

「…………ああ、クララか」

 

 え?この男。本当に寝てたの?

 

「悪い。ちょっと瞑想していた」

 

 なるほど。瞑想ね。瞑想……瞑想…………。

 

「……それ女子の部屋でやることじゃないよね?」

 

 もしかしたら剣人ってバカなのかもしれない。いや、瞑想というか形は凄い決まっていたんだけどね。

 

「ああ。そうだよな」

 

 え?分かっててやったの?それって本当にただのバ――

 

「ここでやることなんて一つだよな」

 

 ――次の瞬間。私は剣人によって押し倒されていた。

 (一応形だけでも)悲鳴を上げようとした時、私は――

 

「……これ。なーんだ?」

 

 ――私は笑顔を見せる彼の前に、敗北を確信したのだった。




剣人くんは無自覚で特定の相手(サディスト)にしかサディストっぷりを発揮しない系ドS。
クララ様は自覚した上で目に映る全ての相手にサディストっぷりを発揮する系ドS。
世間的にはどちらが迷惑なのだろうか?
次回、剣人の本気が明らかに?
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