痛いのをいっぱい感じたいので体力に極振りしたいと思います。   作:マガガマオウ

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ドⅯ少女のニューゲーム

「う~ん……痛覚を長く堪能するには、体力が多い方が良いのか~。」

 

体感型オンラインゲーム『New World Online』の初期設定空間の中で、天晴風花は自分のゲーム内での初期装備をどれにするか悩んでいた、というのも彼女は極度の被虐性癖者つまりドⅯなのである。

 

「折角現実では味わえない痛覚を体感しに行くんだから、できるだけ長く感じていたよね。」

 

そんな事を喋りながら自分の趣向に会った武器がないか選択画面を操作する彼女の手が、とある武器の項目で止まった。

 

「ガントレット?……へぇ~初期体力値はどのタイプの武器よりも多めなんだ、その代わりそれ以外のステータスは平均値っと……良いじゃない、これにしよっ!」

 

初期武装をガントレットに決め選択画面の決定ボタンを押したが、実はこの装備他のプレイヤーからはあまり評価がよろしくない。

ダントツで不人気な大盾よりかは評価されているが体力以外突出したものが無く初期だと大盾よりかは戦えるが中途半端、寧ろ防御力も並なのでダメージも普通に通り攻撃力もそこそこは有るが力不足感は否めず良くも悪くも器用貧乏な装備と呼ばれていた。

 

「ふむ、次はステータスポイントか……攻撃力は、折角の痛みを感じる時間を縮めたくないからそんなにいらないかな~あと防御力論外として、速力や回避値も逃げちゃ意味ないし要らないとなるとやっぱり体力一択かな。」

 

ゲーム内での有利不利などお構いなしの彼女は、己の望むまま思うがままポイントを振り分ける。

 

「ん~よし!それじゃ、まだ体験した事の無い未知なる苦痛と快楽を求めて~レッツゴー!」

 

欲望に素直な風花は、この時知る由もなかった自分とは真逆の理由で同じ様に特定のステータスを一点強化した存在が居たことを。

 

「おぉ!ここがスタート地点か~!」

 

風花はここではフローラと名乗る事になるが、彼女はゲームの初期ステージつまり始まりの街に降り立った。

 

『ここから私の魅惑的な被虐ライフが始まるのね!』

 

噴水のある広場で初期装備姿のフローラは、未だ体験した事の無い刺激を求め逸る鼓動を押さえられない。

 

「あぁ我慢できない!早く戦闘エリアに向かっちゃおう!」

 

辛抱たまらず戦闘エリアに歩き出すフローラの目はギラつき頬は発情したかの様に赤く染まっていた、だがその歩みは他のプレイヤーと比べも遅い。

 

『あぁもう!じれったいな~あっ!でもこのジラされてる感もコレはコレで……イイ!』

 

最早何でもありである、しかしそんな彼女よりも歩みが遅い同じ初心者プレイヤーが後方に居た事を、未知なる快楽とそれを味わえるフィールドに中々辿り着けないいじらしさに内心で見悶えているフローラは気が付く事は無かった。

このゲームの初期フィールドの戦闘エリアはオーソドックスな街の外の森に設定されている、故に一点強化なんて馬鹿な真似さえしなければ割と直ぐにマップに出られるのである、そう極振りなんて事故が生きる事確実なプレイさえしなければである、ではそんな誰から見ても馬鹿げてる仕出かしをやったプレイヤーはどうなるか。

 

「ふぅやっと着いた~、う~んジラされ過ぎてうずうずしちゃうよ~。」

 

到着までに通常の倍の時間が掛かるのである、無論フローラに取って移動中もご褒美をジラされてる様な感覚はじっくり堪能していたが、やはり出来る事なら肌で刺激を感じたい。

 

「さぁ何処からでも来なさい!未知なる刺激達!」

 

気合十分な彼女の前に初心者用にデザインされたモンスターがリスポーンした、見た目は角の生えた兎だろうか。

 

「おぉ最初の相手は貴方ね⁉さぁ来なさい!」

 

この世界での最初のバトル一般的なプレイヤーなら初歩の敵は雑魚でしかなく然して苦戦もしない相手だ、だがフローラはドⅯなのである自身に突進してくる白兎の攻撃をその体で受け止める。

 

「グフッ!痛い……あぁ、久方ぶりだよ……ふふふ……アハハハハハ!」

 

白兎はゲームで設定されたモンスターの中では最弱の雑魚敵だが、その攻撃は確実にプレイヤーにダメージつまり痛みを与える。

 

「もっと……もっとだよ、兎君……もっと来てよ!アハハハハ!」

 

勿論数値化したら大したダメージじゃない、それでもフローラにとっては痛覚を刺激する衝撃信号が体を突き抜ける感覚が堪らなく懐かしかった、何故なら現実世界ではもう彼女は肉体的な痛みを体験する事は色々と難しかったのである。

 

「痛い!痛いよそして気持ちいい……あぁ最高だよ兎君!」

 

まるで我が世の春を謳歌しているかの様に上機嫌で、モンスターの攻撃をその身に受け続けるフローラ。

 

「あれ、兎君どうしたの?さっきから勢い弱いよ?」

 

そんな事をHPの許す限り続けよとした矢先、相手の白兎の攻撃の勢いがみるみる落ちていった。

 

「何でだろう?……あっ!そっか気が付かなくてゴメンね、一方的バトルじゃ萎えちゃうよね?うん、今から私も反撃するからその分いっぱい攻撃してね!」

 

相手の攻撃の手が緩んだのは決して彼女言うように一方的な戦闘に萎えた訳ではない、単に突進攻撃を続けた結果反動ダメージと言うか何度も地面に落ちては傷つき体力を減らしていたのである。

 

「とりゃ!ってアレ?もしかして倒しちゃった?」

 

そしてHPの残量が心許なくなっていた白兎に反撃すれば当然の様に、ガラスの割れる音と共に光となって消える。

 

【レベルが2に上がりました。】

【スキル[闘魂]を取得しました。】

 

白兎の消滅と同時に彼女の頭にアナウンスが流れ、バトルに勝利した事を告げた。

 

「もう!折角、体が温まって来た所だったのに!で[闘魂]?何だろこれ?」

 

初戦闘の煮え切らなさに立腹するフローラは気分を変える為に、取得したスキルを確認する事にした。

 

スキル[闘魂]

このスキルの所有者はHPが全快状態から半分以下になると全ステータスが50%上昇する。HPを回復すると効果は終了する。

 

取得条件

一定時間の間敵から攻撃を受けながら、自身は魔法・武器で一回以上攻撃しない。また攻撃を受けてる最中、ポーション・魔法でHPを回復しない。

 

「ふむふむ……つまり、ダメージを受け続けていればその間は強くなってるて事だね!よーし、どんどん行こう!」

 

さっきまでむくれ面は何処へやら彼女は上機嫌になってフィールドの奥に歩を進めた、そして直ぐに次なるご褒美もとい敵が現れる、それは現実では有り得ない大きさのムカデ名はそのまま大ムカデだ。

 

「次は君か~さっきの兎君よりも、長く楽しめそう!さぁ来い!おほぉ~緊縛プレイ?いいねいいね!」

 

次の相手が現れて早速身構えるフローラの足に絡みつく大ムカデ、普通なら不快に思える行動もドⅯの彼女はテンションを上げる一助にしかならない。

 

「うっ!いったい!それになんだろこのジリジリ炙られてるよな痛み?」

 

大ムカデと言うモンスターの攻撃方は、相手に取り付き牙での噛みつきと毒を流し込むことでの追加ダメージだ、フローラの感じた痛みはその毒によるものだった。

 

「おっ!このジクジクしてるのは毒なのか~締め上げられて噛みつかれてオマケに毒攻めなんて……何て素晴らしいのかしら!あぁ、ここは私の理想郷なの⁉」

 

完全にスイッチの入ったテンションで体に奔る痛みによる快楽を、ここぞとばかり堪能して一人の世界に浸る。

だがここは完全な個人空間ではない事を忘れている、そう他のプレイヤーとも普通に遭遇する事もあるのである。

 

「君!大丈夫か⁉今助けるからな!」

「あ……。」

 

偶然通りかかった大盾使いのプレイヤーが彼女の現状を一目見てピンチだと思ったのか助けに入る、最もフローラ本人からすれば余計なお世話以上に折角のお楽しみ中に水を差されたと言う他なのだが。

 

「もう大丈夫だ、大事は無いか君?」

「……大丈夫です、ありがとうございました。」

 

そんな事とはつゆ知らず彼女に絡みつく大ムカデを倒してしまった大盾使いがフローラに声を掛ける、嗜好の邪魔された事に内心腹を立てはしかが、一応善意あっての行動と考え直しお礼だけは言っておく。

 

「君は初心者か?だったら誰かとパーティーを組んだ方がいい、何なら俺が……。」

「いえそんな、ご迷惑でしょうからお気持ちだけ受け取っておきます。」

 

一般のプレイヤーからすれば彼は親切な部類に入る人物だったが、一般的なプレイングをしないフローラには不親切な人種に他ならない、そんな人物と行動を共にしていては自分の欲求がいつまでも満たされないと考え早々に分かれる事を選択した。

 

「そっそうか……じゃあ、回復ポーションだけでも持っていくといい。」

「ありがとうございます。」

 

やはり彼は良心的な人物なのだろう親切心からの誘いを袖にされても怒る事はなく、更に回復ポーションを分けてくれた。

フローラにしてもその場の勢いだけでフィールドに出たため回復手段がない状況、最初こそお楽しみを邪魔されて腹は立ったがこうして見ると悪い人ではないのだろうと思い直した、しかし人が多い場所では先程の様に邪魔が入る可能性が高いと踏んでさらに奥へ行くことにした。

 

「結構奥まで来たな、さて次は誰に会えるかな~。」

 

この系統のマップは奥に行けば行くほどエンカウントする敵の強さが上がる、つまり初心者向けの浅部と中級者向けの中間部そして上級者向けの深部では出現するモンスターの種類・攻撃力共に段違いなのである、そしてフローラが居るのは中間部、基本的に初心者向けに設定されたモンスターとそれなりに実力が付いてきた中級者向けの中堅モンスターがスポーンするフィールドである。

 

「あっ!君はさっきの、よ~しさっきは邪魔が入ったから仕切り直しと行こうか!」

 

そう言って彼女の前に再び現れた大ムカデともう一度対峙する、今度も足に絡みつき噛みつきと毒で攻撃して彼女を喜ばせる。

 

【スキル[毒耐性小]を取得しました。】

 

今度は邪魔が入らない分フローラも安心して攻撃を受け止め続けるが、唐突にアナウンスが聞こえ嗜好の時が再び阻まれた。

 

「むぅ~なにさ折角良いところだったのに~毒の効き目も心なしか弱くなってるし。」

 

さっきから色々と邪魔ばかり入る事に不満を隠さないで態度で示す、更に付け加えるなら大ムカデの攻撃で発生している毒のダメージも段々と効かなくなっていた。

それは彼女が大ムカデの攻撃を長時間の間、複数回の毒攻撃を受け続けて得た[毒耐性小]と言うスキルの影響だった。

 

「はぁ、もうHPも半分切ってるから[闘魂]も発動してるし、そろそろ次の相手を探そうかな。」

 

足に絡みつく大ムカデの攻撃では大した痛みも感じる事が出来なくなっいたフローラは、自身に懸命に攻撃する大ムカデを片腕で掴みそのまま締め上げる、相手は暫く抵抗していたが光となって消え失せた。

 

「さてさて、次の相手は誰だろな~。」

 

再び刺激を求め歩き出すフローラの前に明らかに毒を待ってると認識できる斑模様の大きな蜘蛛が目に前に現れる。

 

「次は蜘蛛君だね、君はどんな攻撃をしてくるのかな~。」

 

次なる相手の出現に心を躍らせながら相手の攻撃を待つ、すると糸を吐きフローラを絡め捕ると大ムカデ同様の噛みつき攻撃を繰り出すが今度は効果が違った。

 

「むむ!この痺れる感じは麻痺?こ、この全身に行き渡るビリビリ感……はぁはぁ癖になりそう。」

 

この蜘蛛はパラライズスパイダーと言い名前の通り麻痺効果のある毒を流しこむ、さっきとは違う感触の刺激に早くも幸悦の表情を浮かべるフローラだがこれも受け続ければ……。

 

【スキル[麻痺耐性小]を取得しました。】

「えっもう⁉あぁ……痺れが弱まってる~もっと感じてたかったのに~。」

 

当然、耐性が出来てしまうのである。

ゲームのシステムがそうなってるのだから最早これは諦める他ないのだ、そもそも彼女の様に態々状態異常に掛かる攻撃をくらいに行くプレイヤーが居る事を予測するのは無理な事だった。

 

「仕方ない……君の麻痺は新鮮で楽しかったけど、私はもっと刺激の強い子を探すよ。」

 

そう言うと絡みつく蜘蛛の糸を引き千切りパラライズスパイダーを掴むと先程と同じように握力で握り潰した。

その後、混乱効果のある蛾のモンスターと遭遇したが、此方もひたすら攻撃を受け続けて耐性スキルを取得してしまいそれ以上は特に目新しい刺激と出会う事は無く街へ戻ってログアウトした。

 




天晴風花/フローラ
今作の主人公。
極度の被虐性癖者である事を除けば非の打ち所の無い美少女、普段は至って勤勉で実直な努力家で性癖のお陰でどんな苦悩も喜びに脳内変換されるため文武の双方において非常に優秀。
今回『New World Online』をプレイするに至った切っ掛けはある事が理由で疎遠になってた親友からメールで誘われたから。

status
Lv6
HP 180〈+33〉 MP15
[STR0]〈+10〉[VIT0]〈+10〉[AGI0]〈+10〉[DEX0]〈+10〉[INT0]〈+10〉

装備
頭[空欄] 体[空欄]
右手[初心者のガントレット] 左手[初心者のガントレット]
足[空欄] 靴[空欄]
装備品
[空欄]
[空欄]
[空欄]

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