痛いのをいっぱい感じたいので体力に極振りしたいと思います。 作:マガガマオウ
「やっぱりもっとHPを増やした方がいいね。」
ここはゲーム内の始まりの町にある図書館、スキル大全と書かれた大きめの書籍を広げてフローラは自分の希望に沿うスキルが無いかを調べていた。
「ん~中々私に合ったスキルが無いね~回復系は何れは取得するつもりだけど今はなぁ~。」
しかしどれだけ書籍のページを捲っても彼女の望む最善のスキルの項目は発見できなかった、そもそもフローラがスキルの研究を始めた切っ掛けは闘魂から進化した激昂にあった。
激昂はHPが半分になるとオートでステータスを上げられる、だがそもそも今のフローラのHPは初心者の中では確かに多い方ではあるがそれでも少し攻撃を受ければ瞬く間に半分消耗するレベルで決して十分とは言えなかった。
「やっぱり今の二倍は欲しいよね、じゃないとあの甘美な痛みを感じる時間が半減しちゃうし。」
フローラに取って痛覚や精神的苦痛は人生を彩るスパイスと同義、痛みならば強ければ強いほど苦しみならば激しければ激しいほど彼女の心は歓喜に震える、その嗜好の時をなるべく長く味わう為ならどんな努力も惜しまないのも彼女の強さの所以になっている、実際図書館に来る前は装備などでHPの強化を図ったのだがフローラにとって嬉しくない防御力まで一緒に強化されてしまいならば今度はとここに訪れスキルについて調べ始めたのである。
「ふぅ、これにも載ってないとなる今度は人に聞いて回るかな?」
しかしそれも無駄に終わり今度は人伝に頼ろうと読んでいた書籍を抱えて本棚に足を向けた。
「さぁて……ん?なんだろこの本?」
本棚に近づいたフローラはさっきまで自分の手の中にある書籍の在った場所にいつの間にか現れていた本に目に入った。
「生命と叡智の果実についての記録?」
読み上げた本の題名は何かの冒険録のようだった、腕の中の書籍を脇に抱え本棚からその本を抜き取ると数ページ流し読む。
「……これだ!」
軽く読むつもりで目を通りていたフローラはその内容に自分が求める答えを見て嬉しそうに顔を緩ませる、脇に抱えていた書籍を棚に戻しやや急ぎ足でテーブルに向かう。
「この世界を巡る生命と叡智を栄養にして育つ樹に生ると言う二種の果実【銀命の実】は永劫に続く命を与え【金識の実】は全能の知恵を与える……永劫に続く命、きっとHPの事だよね?って事はHPの上限を上げるアイテムが【銀命の実】って事か!」
そこに書かれた内容にはフローラの求めるHP上限の増加に繋がるであろうアイテムの情報が記されていた。
「そこへ向かうのなら霧深き森の中で真白き蛇の後を追えさすれば幻想の園エデンへの道は示される……霧深き森に真白き蛇そして幻想の園エデンか……よぉ~し行ってみますか!」
目的の場所を見定め広げた本を畳み今度こそフローラは図書館を後にした目指すは幻想の園エデンである。
「とは言ったものの、その肝心のエデンがどこにあるかなんだよね……取り敢えず真白き蛇に会える霧深き森について聞いてみるかな?」
勇んで図書館を出てから目的地の行き方をよく調べずに飛び出した事に気が付き一瞬で勢いが萎む、取り敢えず道案内をしてくれると言う蛇が出現するフィールドについて人に聞く事にして再び歩き出す。
「う~む誰に聞こうかな~?……ん?あの人は確かに初日に邪魔してくれた有難迷惑な人……丁度いいやあの人に聞こう。」
誰に聞けばいいのか行き交うプレイヤー達を眺めながら思案していると、視界の端に鍛冶屋の様な店に初日にフローラと大ムカデとの逢瀬に割って入った大盾使い男性プレイヤーの姿が見えた。
彼女自身は彼に無粋者のイメージを持っていたのだがそれでも親切にしてもらったのも事実、だからだろうか彼になら聞いても良いだろうと体を進ませた。
「すいません、お尋ねしたい事が。」
「ん?あ、あぁ君はあの時の……。」
フローラが話しかけると大盾使いの男性は彼女の姿を見て最初の出会いと先日の荒ぶる姿が同時に思い浮かんだ。
「あらあら、今日はモテモテねクロム。」
「だからさっきのは誤解だって……!」
クロムと呼ばれた大盾使いのプレイヤーの向かいのカウンター側に居た女性が彼を茶化した、その冗談めいた仕草に彼は過剰な反応を示した。
「あの……何かあったんですか?」
「あ、いや……。」
その様子に若干引いた顔で彼を見つめるフローラ、その様子に狼狽えてしまうクロムは訳を話そうと口を開くのだが……。
「クロムったら、さっきも可愛い女の子の初心者プレイヤーを連れて来たのよ。」
「えぇ~それってまるでナンパじゃないですか~?」
「うぐっ!」
クロムが弁明する前に女性が先んじて話してしまうが、フローラはこれは所謂言葉弄りだと理解すると口調を合わせて便乗した。
「……ぷくく、あはははは。」
「あはははははは……クロム冗談よ冗談はははは。」
二人掛かりで弄られてクロムが言葉を詰まらせてるのを見ると、その困り顔が面白かったのか二人揃って笑いだす。
「なっ!おいおい、勘弁してくれよ……。」
「ふふふごめんごめん、それで見た所は貴女も初心者みたいだけど装備の制作依頼かしら?」
揶揄われた事に気が付いたクロムが参った様に呟くと、カウンターの女性が簡単に謝りフローラに話題を振った。
「はぁはぁ……いえ、とある場所に行きたくてその場所の情報が無いかお尋ねしようと思いまして。」
「行きたい場所?」
「どこかのダンジョンか?」
フローラは二人に目指してる場所の特徴を伝えてみた。
「濃い霧の森と真っ白な蛇の現れる森のフィールドかぁ、クロムなにか知ってる?」
「うん……君の話を聞く限りだが、その特徴に合致するのは北の森の深部辺りだな。」
「北の森の深部ですか……詳しく聞かせてください。」
フローラの話を聞いたクロムから教えられた北の森の深部とは、この始まりの町から北に方向に広がる森の一角に最初の一回だけ濃霧で視界が悪くなるフィールドがあってその時だけ通常には現れない白い蛇のモンスターが現れるらしいのだ。
大概のプレイヤーが出現と同時に蛇のモンスターを倒そうとすると霧と共に消失してしまうらしく、その後いくら同じ場所を訪れても同様な現象が起きないのであれが如何いった仕様の設定なのか密かに話題になっていた、攻撃せずにその後何が起きるかを検証しようとしたプレイヤー達も居たのだが、その場合でもやはり蛇は霧と共に何処かへ消えてしまうらしい。
「……それだ!北の森ですね、ありがとうございました!えぇっと……。」
クロムからの情報に確信を覚えたフローラ、向かうべき場所に光明が差し顔が晴れやかになる。
情報をくれた二人に礼を言おうととして、自分がまだ相手の名前を聞いてなかったことに気が付いた。
「私はイズ、見ての通り生産職でここで工房をやってるわ。」
「俺はクロムだ、何か困ったことや知りたいことがあれば何時でも頼ってくれ。」
「私はフローラ、以後お見知りおきを。」
二人が自己紹介してくれたのでフローラも名乗って返す。
「フローラか……なぁ、若しよければフレンド登録しないか?」
「え?」
突然のクロムの提案に身を捩り両腕をクロスして全面を隠す仕草をするフローラ、その行動を見たイズがまた悪戯っ子の目をする。
「あらあら、やっぱり運営に通報した方がよかったかしらクロム?」
「え⁉あっ!いや、さっきの発言にはそんな深い意味はなくてだな!」
さっきも同じ様な遣り取りがあった筈だがまたも慌ただしく弁明を始めるクロム、彼はかなり人が好いからだろうか女性に揶揄われるのに耐性が無いようだ。
「くす……冗談ですよクロムさん、そうですね私はまだこのゲームを始めたばかりで情報何かには疎い訳ですし……そこは一日の長、先行者である方から直接助言をいただけるのであればそれに越したことはありません……此方こそよろしくお願いします。」
「あ、ああ。」
さっきまでの茶化した態度から居住まいを正し深々と頭を下げるフローラ、そんな彼女の変わり様にクロムは驚いて口調がたどたどしくなる。
「ふぅ……それじゃあ私とも、クロムが変なことした時に報告が出来るようにフレンド登録しましょうか。」
「ふふふ、そうですね。」
「おい!いい加減泣くぞ。」
二人に終始弄り倒されてすっかり参ってしまったクロムの哀愁に満ちた叫びが木霊した。
~sidechange~
241名前:名無しの大盾使い
大盾とガントレットの少女に遭遇したというかフレンド登録したw
242名前:名無しの槍使い
は?
243名前:名無しの弓使い
どうやって?
244名前:名無しの大盾使い
大盾の子はログインしてきた時にめっちゃキョロキョロしてて一瞬目が合ったと思ったら走ってきて話しかけられたw
245名前:名無しの大剣使い
大盾少女コミュ力たけーなおい
246名前:名無しの魔法使い
んでその後は?
ガントレットの方の詳しい経緯も知りたい
247名前:名無しの大盾使い
ガントレットの子はもうちょっと待て
大盾の子に格好良い大盾って言われて
俺が生産職の人紹介するからついてこいっていったら後ろからついてきた
AGI低すぎて俺についてくるのもしんどそうだったな途中何度も止まってあげたし
248名前:名無しの槍使い
お前のAGIいくつよ
249名前:名無しの大盾使い
まあ待て今まとめる
いくぞ
大盾の子
パーティーは組んでいない
大盾を選んだ理由は攻撃を受けて痛いのは嫌だから防御力を上げたかったとのこと
超素直で活発系少女
総評
めっちゃ良い子
250名前:名無しの魔法使い
成程……でガントレットの方は?
251名前:名無しの大盾使い
その後大盾の子とは別れたんだが直後くらいに声かけられて暫くいじられた
252名前:名無しの槍使い
いじられたってどういう事だよw
253名前:名無しの大盾使い
何か質問したくて近づいたみたいだけど直前に大盾の子連れてきた事を生産職の知り合いに弄られてそれに便乗してた感じだった
254名前:名無しの大剣使い
もしかしてガントレットの方って性格悪い?
255名前:名無しの大盾使い
いや普通にお礼も言えるしただ単にノリがいいだけだと思う
それでガントレットの子が北の森で初見の時だけ遭遇する濃霧の事を聞いてきてたんだ
256名前:名無しの槍使い
北の森の濃霧?あの白蛇に遇うアレのこと?
257名前:名無しの大盾使い
それだよ
なんか行きたい場所のヒントがソレらしくて詳しく聞いてきたんだ
258名前:名無しの弓使い
んーガントレットは北の森の濃霧の先に繋がる何かを知ったって事なのか?
259名前:名無しの大盾使い
わからん
ただ北の森に目指していることははっきりしてる
260名前:名無しの魔法使い
それ以外でガントレットの方についてわかったことは?
261名前:名無し大盾使い
すまんがさっぱりだ
あーそれにしても大盾の子見守ってあげてー
ガントレットの子が若干悪戯っ子ぽかったから尚更そう思うわ
あとお前らとは情報を交換していきたいと思ってるから俺の情報晒すわ
取り敢えず俺はクロムって名前でやってる
んでAGIなんだが20だぞ
お前らとはフレンド登録しときてーから明日これる奴は二十二時頃に広場の噴水前に来てくれると嬉しい
262名前:名無しの槍使い
情報サンクスっていうかお前クロムかよ!
バリッバリのトッププレイヤーじゃねーか!
263名前:名無しの弓使い
よっしゃその時間行けるわw
つーかAGI20に置いていかれるとか大盾は本当にVIT極振りかもしれん
264名前:名無しの大剣使い
じゃあガントレットは様子見で大盾はこれからも温かく見守っていく方向でいいかなー?
266名前:名無しの槍使い
いいともー!
267名前:名無しの弓使い
いいともー!
268名前:名無しの魔法使い
いいともー!
269名前:名無しの大盾使い
いいともー!
こうして今日もこの掲示板ではフローラともう一人の少女の与り知らぬところで二人についてもりあがったのであった。
status
Lv13 HP210〈+33〉 MP15
[STR0]〈+10〉[VIT0]〈+10〉[AGI0]〈+10〉[DEX0]〈+10〉[INT0]〈+10〉
装備
頭[空欄] 体[空欄]
右手[初心者のガントレット] 左手[初心者のガントレット]
足[空欄] 靴[空欄]
装飾品
[空欄]
[空欄]
[空欄]
skill
[激昂]
[混乱無効]
[毒耐性中]
[麻痺耐性中]
[大物喰らい(ジャイアントキリング)]
[勇猛果敢]
HP、MP以外のステータスの五つ全てが戦闘相手よりも低い値の時にHP、MP以外のステータスが五倍になる
取得条件
HP、MP以外のステータス五つ全てが戦闘相手であるモンスターの半分以下のプレイヤーが、単独で複数体の対象モンスターを討伐すること