痛いのをいっぱい感じたいので体力に極振りしたいと思います。 作:マガガマオウ
クロムとイズの両名から教えてもらった北の森の深部に訪れたフローラ。
「霧が出て来たって事は、この辺りだね……。」
フローラの視界が通る周囲に霧が出始めるといよいよ彼女が探す幻想の森エデンへと続く道しるべが示された。
「君がエデンまで案内してくれる真白き蛇?」
鎌首を持ち上げた白蛇が赤い瞳を妖しく煌かせフローラを見つめる、そしてまるでついて来いと言っているように踵を返して移動を始めた、フローラは白蛇を見失わないように注意しながら後に続く。
大分歩いただろうか移動の間はモンスターとの遭遇は無く周りも相変わらず濃い霧が立ち込めて視界が通らない風景だが、正面の景色はそれまでとは違っていた。
「ここがエデンへ続く道?」
そこは断崖絶壁に奔った亀裂がそのまま渓谷に繋がっていてもなんら不思議に感じない、フローラはその岩壁の裂け目に入っていく。
中は人一人が通れる幅の一本道になっていて、行く先は暗くまだまだ続いている。
「ほっ!」
フローラは踏み出そうとした足元に違和感を感じて飛び越える、それと同時に足元の地面が抜けて尖った岩が現れる、先程から発動する罠の類を第六感で超えながら何処から飛び出すか分からない殺意の塊の初見殺しのトラップを恐れるどころか楽しんでいた。
「ふんふんふんふんふっふっふ~んふふふ~ふふふふっふ~。」
その証拠にドラ〇エのテーマ曲の鼻歌を歌いながら歩を進めている、流石にワザとトラップに引っ掛かる様な真似はしない、如何にフローラがドⅯであろうとも……いや、ドⅯだからこそワザと引っ掛かるなんて安易な選択はしないのだ、仮に毒沼などのフィールドギミック系ならば嬉々として進んでいったかもしれないだが落とし穴や仕込み矢、串刺し床などの即死系はそのスリルを楽しむ事に醍醐味を感じていた。
そしてこの洞窟の仕掛けはすべてが即死系、分かりやすい物からよく見ないと判別が出来ない厭らしい配置まですべてがすべて踏めば直接命を取りに来る、それらを発動するギリギリの位置で踏んでアスレチックに興ずるが如く踏破していくのである。
「む?分かれ道か~。」
やがて一本道の突き当りに到着したフローラ、その前には二手に分かれた通路がありどちらも道幅や天井の高さはこれ迄よりも広かったそして一方は上に一方は下に続いていた。
「ここは~上に進む方だね!」
彼女の直感が告げた上へと進む進路を歩き出した、足取り軽やかに前へ前へ前進する。
ここでもトラップが仕掛けられていて床や壁から刃が飛び出したり針が付いた天井が上から落下してきたりと、あの手この手でフローラの命を奪いに来るが。
「あははは!たっのしい~!」
当の本人はどこ吹く風まるで遊園地に来た子供の様に燥いでいるのであった。
「おぉ!これは王道的トラップ!」
そんこんなしている内に洞窟フィールドではお約束の丸岩石トラップを踏んだ、轟々と重々しい重量感を感じさせる轟音を上げ転がり下る巨大な大岩、それがギリギリまで接近するのを待って漸く全速力で後退する。
「おほ~!このスリル、はぁはぁ……サイッコー!」
ここに至るまで自分が踏んで来た発動済みのすべてのトラップを破壊しながら迫りくる大岩と、それに轢かれるか逃げ切れるかの命懸けのチェイスを自ら進んでやるフローラ、彼女がもしも同行者ありきでここに挑んでいたら同行者は涙目になって彼女を非難しただろう、そういう意味では彼女がソロで挑戦していた事は幸運だったのだろう。
「よっ!」
結局、最初の分岐路まで戻ってきたフローラはもう一つの下る方の道に逃げ込む、そうすると大岩の方も分岐路の下に続いていた道に逸れてまた転がり迫る。
「あはははははは!まだまだ楽しめるドン!」
無論の事ではあるがフローラはすべて分かった上でこっちに入ったのだドⅯもここに極まれりだ、下る道にはトラップは無かったが代わりにモンスターが現れたそれも恐慌状態や呪い状態にする系統の所謂アンデット系である。
「おぅふ!この精神に来る感じは……くぅ~!これもイイ!」
後方から大岩前方からはアンデット、普通の感性のプレイヤーならゲームとは言え走馬灯に似た何かが見えてきそうな状況も、フローラにとってはすべてがご褒美スリルと精神を揺さぶる心で感じる被虐的刺激が彼女のドⅯ根性にガソリンを注ぎ続ける。
【スキル[恐慌耐性小]を取得しました】
【スキル[呪い耐性小]を取得しました】
「煩いな~今いいところだから邪魔しないで!」
彼女の脳内に流れる邪魔なアナウンスを苛立たしげに聞き流し、この緊迫した状況を存分に堪能する。
やがてそんな洞窟の道も途切れ目の前には切り立った崖と円形の天秤の皿の様な足場、そしてさらに奥にそれより大き目の丁度いま後ろから迫る大岩が乗りそうな大皿、その中間に二つに皿を隔てるように板が見える。
「よっと!」
走る速度のままに崖の淵を蹴ってその足場に飛び乗ると足場はそのまま下へ降り奥にあった大皿がせり上がる、せり上がった大皿が中間の板を押し、押された板が崖と大皿の間にかけ橋になると後から転がり下ってきた大岩がそのまま架け橋を伝って大皿に収まった、大岩の乗った大皿はいきなり増えた重量に押され急降下しその反動でフローラの乗る足場は逆に一気に上昇した
「おぉ~!遊園地の逆フリーフォール並の急上昇~!」
上から来る風圧と下からの浮力を姿勢を低くしながらも何にも掴まらず体に受けるフローラ、もはやこの場所は彼女に取ってそこらテーマパークより楽しめる遊戯施設と変わらなかった。
彼女を乗せた足場は、空洞の天井に空いた足場の形とピッタリ填まる穴に入って止まる。
「ふぅ~ここがエデンの入り口かな?」
フローラは屈めていた体を起き上がらせると目の前の入り口の絶壁の頂上に繋がってると思われる階段を見つめる、地下神殿の様なフロアの端に地上に繋がっているのか天井に開いた出口から光が差し込んでいる。
ここまでの経緯を含めて考えると恐らくここが最終ステージ、ボス戦前のセーブエリアだとゲーム経験が豊富ではないプレイヤーでも気付く事だろう。
「よし!それじゃあ最後のひと踏ん張りいっくぞー!」
ここの攻略も大詰めに近づいていると確信したフローラは、決意を新たに意気揚々と階段を駆け上がる。
外に出て最初に目に映った辺りは景色は普通の森林フィールドとは印象の違う、何処か妖精が住んでいそうな神秘的な雰囲気を感じる森の中だった。
「特に変わった所は……ないか、一応警戒はしておいた方がいいよね。」
陽の光が疎らに差し込む森の中をこれ迄とは違いゆっくりとした歩調で一歩一歩進む、ここはおそらく未発見のダンジョンそのボスステージなのだ、何時何処でダンジョンボスに遭遇するか分からない上にそのボスの実力も未知数となれば流石に猪突猛進で押し切るにはリスクが高いと考えた結果である。
「っ!これは……北の森の中でも現れた霧?……っは!」
見晴らしの良い森の中で急に霧が立ち込めてくる、それはこのダンジョンに到着する前に北の森の中で経験した濃霧に似た状況に、警戒度を最大に引き上げ周囲に気を張り巡らせるフローラは後方から現れたこちらに突進してくる影をガントレットでガードして受け流しながら後方へ跳び避けた。
「白蛇くん……君がエデンの番人だったんだね。」
北の森で道案内をしていた白蛇が巨大化してフローラの前に出現した、相対する双方が無言の睨み合いを続け相手の隙を伺う。
「ふっ!」
永遠とも思える沈黙を破りフローラが仕掛ける、一息で距離を詰め白蛇に肉薄した彼女はその拳を白蛇の頭部にめがけて突き放つ。
「えっ⁉……くっ!」
だがその拳を受けた白蛇の体は霧となって消え、攻撃の為に体制を変えた為に出来た死角から急に別の白蛇が現れ突撃してくる、フローラは敢えて体を大振りに動かし反動をつけガントレットを白蛇の頭部に添わせる位置に動かし衝撃を使って横に飛び退く。
「一体どうなって?……くっ!」
白蛇の突進を往なして一瞬の思考を挟む、最初自分の前に現れた白蛇は霧で出来た幻影だった事……そして急に現れた奇襲を仕掛けてきたもう一体の白蛇の事、状況を整理しようとしたフローラは背後から気配を感じ取って飛び退いた、すると一拍遅れでフローラが居た地面を穿つ白く細長い体が見えた。
「……ふぅ、白蛇くん……君の攻撃はすっごく痛そうだね、ゾクゾクしちゃうよ……。」
色々考えてみたフローラだがそういった事はわきに置き、一先ず自分の願望に忠実になる事にした。
現在[
「ほっ!はっ!よっ!」
そうと決まればフローラはただ一身に白蛇からの猛攻を体で受け止め往なす、尻尾の横薙ぎを受け止め、鎌首を持ち上げて振り下ろす頭突きを受け流し、全体重を乗せた突進を寸でのタイミングで往なす、彼女の体裁きを持ってして動作は最小限でもダメージは減少させて且つ痛みはしっかり感じれるように立ち回る。
「やっぱり……軽い、まるで実態がないみたい?……っ!そう言う事か!」
更に数十分の間、白蛇からの攻撃を受け続けたフローラは相手の攻撃に違和感を感じ始めた、と言うのも受け止めた攻撃に思った程の威力が伴っておらずダメージにしてもそこまで痛いと感じれていなかった、此れは如何いう事か考えた時に最初反撃しようとして霧散した白蛇の幻影を思い出すと、彼女の中でバラバラだった思考のピースが組み上がっていく。
そしてフローラは己の考えの正否を確かめる為、右のガントレットの腕を覆う甲冑を前面に突き出し白蛇に突貫する。
「すぅ……はぁ!」
チャージタックルの要領で体当たりするとフローラが考えた通り二体目の白蛇も霧散し消失する、そしてまた死角からもう一体の白蛇が現れ急襲されるが、この時フローラは敢えて白蛇からの攻撃をガードする動作はせず上方へ跳ぶと跳び上がったフローラを追って白蛇も体を起き上がらせ追撃する。
「トゥーセイハー!」
自分を追ってきた白蛇の頭を踏みつけ更に大きく跳躍、遂に木々の高さを超え霧が出ていない高度まで跳び上がる。
「……っ!見つけたアレが白蛇くんの正体……。」
森の木々の形や位置など特徴的な部分を覚えながら霧の発生源、白蛇の本体の居場所を確認したフローラはそのまま受け身の体制を取って落下していく。
「っと!上から見た白蛇くんの本体の位置の方角は……あっち!」
受け身を取って地面に着地したフローラは上から見た景色と方向を思い出しながら、白蛇の本体の居た方向に走り出す。
それと同時に分身も現れ彼女の進行を阻もうと何度も何匹も襲い掛かるが、彼女はその攻撃をガントレットで受け止め返しのカウンターで霧散させ続ける。
「はぁ……はぁ……はぁ……抵抗が激しくなってる、と言う事はこっちに居るんだね白蛇くん。」
分身の出現頻度と攻撃がより激しくなり自分と本体との距離が縮まってきたと確信する、すると今度はカウンターを止めてガードに専念し始める、そして……。
「やー白蛇くん!ご機嫌いかが?」
霧を抜け白蛇の本体の前に躍り出たフローラはお道化た調子で語り掛けた、勿論体は臨戦態勢のままで……。
そんなフローラの闘気に充てられたのか本体も霧を出すのを止め臨戦態勢に入る、両者の間にこれ迄とは違う緊迫した空気が流れる、僅かな身動ぎが生死を掛けた勝敗に直結すると肌で感じれるほどその場の空気は張り詰めていた、その緊張に耐えかねた白蛇が先に仕掛ける。
「っ!ふふ……はぁぁぁぁ!」
幻影とは違う実体があるが故の迫力に思わず身震いして笑みを見せるが、一瞬で表情を直し気迫を込めて受け身を取って攻撃を直に受け止めHPを削り[激高]を発動させ白蛇の体を掴む。
右の拳を一度開きジャストガードで溜め続けたダメージと各スキルによって強化された攻撃力をその右腕に集める、その力の大きさに耐えかねてなのか右のガントレットに罅が入り今にも砕けんとしていたが如何にか一撃は持ちそうだ。
「すぅ……っはぁぁぁぁぁぁ!」
この一撃で決める!そう決意したフローラの意思が宿った拳が白蛇を捉えた時、辺りに凄まじい衝撃が奔り右のガントレットが壊れる。
「はぁはぁはぁ……ふふ、今の一撃は凄かったねガードしててもお腹に響いたよ。」
お互いのHPが僅かに残りはしたが双方ともに風前の灯火である、もう一撃当てれば完全にフローラの勝利は確定する……だが彼女は最後に受けた白蛇の攻撃の余韻を楽しむことを優先した。
白蛇からしてみれば今の彼女は惚けた顔で立ち尽くす隙だらけで、この状態なら打ち取る事も容易だろと思われたが白蛇からは一向に止めを刺そうとする気配が無い、それどころか頭を上げる余力もないのか微動だにしない。
「……どうしたのかな白蛇くん?もう疲れちゃった?」
騙し打ちの可能性を考慮してゆっくりと白蛇に近づいていく。
「演技じゃないみたいだね……ん?これは金の果実?」
互いに触れられそうな距離まで近づいても反応を示さない白蛇のすぐ傍に、金色のリンゴの様な果実が転がっている事に気が付き拾い上げると、そのアイテムの詳細を確認した。
未熟な金識の実
未成熟の状態で収穫された為一つしかスキルを宿せずこのアイテムで取得したスキルは一度しか使用できない。
スキル
[パーフェクトヒール]
HPを全回復する。
取得条件
[ヒール]の回復値が一定数を超える事
「……えぇっと、つまり一回限りの回復アイテムって事?」
手の中に納まった果実を見つめながらフローラは、それ以上は何とも言えず苦笑いを浮かべる。
「う~ん……私は要らないかな……えっと、白蛇くんコレ返すね。」
手にした果実を白蛇の近くに戻しフローラはその場を離れ生命と叡智の樹の在る場所を探して歩きだした、そしてまた少し時間たった頃……。
「あれ?さっきぶり白蛇くん……今度は霧は出さないんだね。」
白蛇が再びフローラの前にその姿を見せた、だが二度目は霧を出さず本体だけで現れたのを不思議に感じた、今の白蛇からは穏やかさは感じても敵意を感じない。
フローラは敵意のない者には決して攻撃はしない、彼女が感じたいのは闘争心を剥き出しにした攻撃からの痛みであり、怯えや恐れからの破れかぶれな攻撃からの痛みには快楽よりも遣る瀬無さが勝りどうしても心から楽しめない、だから彼女は戦意を喪失したり敵意の無い者には彼女から攻撃する事は無いのである。
そんな彼女に何かを思ったのか白蛇は、閉じていた口を開き下を使って赤い液体の入った瓶と白く透き通った抜け皮を渡してきた。
ナーガの血薬
使用者のHPを回復しナーガの固有スキルを取得できる秘薬
ナーガの抜け皮
ナーガの脱皮した皮
生命と叡智の神樹の下まで持っていくとなにかが起きるらしい。
「これを……私に?」
白蛇から渡された二つのアイテムに交互に眺めそのまま自身の前に佇むナーガに問うと、その質問を肯定している様に頭をフローラに擦り付けた。
「あはははは、擽ったいよナーガくん……ありがとね、使わせてもらうよ。」
【スキル[ミストイリュージョン]を取得しました】
【スキル[ダメージアブソーバー]を取得しました】
フローラはそう言って血薬を飲んでHPを回復し、同時にナーガの固有スキルも取得した。
[ミストイリュージョン]
自身の周囲に霧を発生させその範囲の中で自身の幻影を出現させる。
出現した幻影は相手から攻撃を受ければ消失するが効果範囲内ならば何度でも再出現させることが出来る。
また幻影の数は霧の中に居る人数に応じて増加する。
取得条件
ナーガをHPドレインで倒すかナーガの血薬を服用すること。
[ダメージアブソーバー]
自身がダメージを受けた時に発生したダメージと同数値分MPを増加する。
取得条件
ナーガをHPドレインで倒すかナーガの血薬を服用すること。
「おぉ~一方はHPに関係するスキルかぁ……ん?どうしたナーガくん?」
血薬に宿った力が見事に自分に適したスキルであった事に運命めいたものを感じて感慨にふけるフローラ、そんな彼女に側頭部を向け自分に乗れと言っているようだった。
「もしかして、連れて行ってくれるの?」
彼女の質問に何も言わないが瞬きで答える、その仕草を見たフローラは迷うことなくナーガの頭の上に乗った。
「それじゃあ、神樹の元までよろしくねナーガ君。」
その掛け声に応えるようにナーガは頭を上げ神樹の在る方角に進み始めた。
status
Lv18 HP260〈+33〉MP15
[STR0]〈+5〉[VIT0]〈+5〉[AGI0]〈+5〉[DEX0]〈+5〉[INT0]〈+5〉
装備
頭[空欄] 体[空欄]
右手[空欄] 左手[初心者のガントレット]
足[空欄] 靴[空欄]
装飾品
[空欄]
[空欄]
[空欄]
skill
[激昂]
[混乱無効]
[毒耐性中]
[麻痺体制中]
[恐慌耐性小]
[呪い耐性小]
[
[勇猛果敢]
[ミストイリュージョン]
[ダメージアブソーバー]