---司波深雪---
真一に会う事無く、半年以上経ち、中学3年生になった。叔母様は会わせる気が無いのだろうか?
週末、お兄様と体術を習いに、九重八雲先生の寺へ向かうと、先生は見かけたことの無い男子と、手合わせをしていた。先生の放つ幻術が次々に破られ、先生が圧されていた。瞬動術で相手の背後に素早く回るも、蹴りを食らう先生。
「ちょっと、待った!」
「待ったなし!」
「うげっ!」
肩を極められて、地べたに這う先生…お兄様が驚いた表情で、そのシーンを見つめていた。
「何だよ。この程度か?かっちゃん、もっと強い人がいいよ」
先生を下した男子が、大柄な男性に声を掛けた。道場破りか?
「お前が強すぎるんだ。う~ん、後は剣術でもいいか?」
「うん、問題ないよ。火織姉さんに習っているから」
「九重先生、お相手をありがとうございました」
「ありがとうございました」
見かけたことのない二人は、意識を飛ばした先生に一礼をして、この場を後にした。
「先生、大丈夫ですか?」
私とお兄様が、先生に駆け寄った。お兄様のカツ入れで、意識を取り戻した先生。
「あ…あぁ~、大丈夫だ~」
全然大丈夫に見えない位、弱っていた先生。
「アイツら、何者ですか?」
「大柄な男子は十文字克人君、十文字家の次期当主で、か弱い様に見える男子は、宮藤真一君だそうだ」
真一?!まさか…そういえば、どこか面影が…
「おい!深雪!」
お兄様の声を背中に受けても、立ち止まらずに、真一と呼ばれた男子に走り寄る。
「ねぇ、真一なの?!真一!」
彼は歩みを止めで、振り返った。
「うん?誰?」
「深雪…覚えていない?」
「…もしかして、ネェネ?」
「その呼び方は止めて!」
恥ずかしい…って、真一が猛ダッシュで私にタックルをし、その衝撃で押し倒された。真一はうなじの臭いを嗅ぎ、身体を弄っている。何をしたいの?甘えているだけのような気もするけど…
「こんなに成長したんだね。僕の記憶の中では、ネェネって幼女だったんだけど…」
成長具合を確認していたの?
「もう中学3年生なのよ!」
「そうだね。あれから随分と経った…また、会おう。かっちゃん、次に行こうよ」
私から離れ、十文字家次期当主に近づき、この場を去って行った。
◇
家に戻ってきて、真一のことを思い出していた。身体の成長具合を確かめていた真一。アイツはオスに成長したのだろうか?あの頃の真一を想像していた私は、多少ショックを受けていた。
「深雪…思い詰めるなよ」
「いえ、思い詰めていません」
言葉と裏腹に、思い詰めている。何がしたかったんだ?身体目当てなの?真一になら、いくらでも差し出すのに…唇さえも奪わなかった。どうして?
「深雪…」
お兄様が、メモを1枚、私の前に置いた。そこには住所が書かれていた。
「これって…」
「葉山さんから聞き出した。会いに行って来い。深雪だけなら、会ってくれるだろう」
「ありがとうございます、お兄様」
メモを手にして、自分の部屋に戻り、外出着に着替えていく。そうだ、下着も替えていこう。
真一の家は国立駅から歩いて5分ほどの場所にあった。表札には『宮藤』と掲げられている。真一って九の系譜だったのか?いや、叔母様の偽装の可能性があるか。四の系譜だとバレれば、また事件に巻き込まれるかもしれない。そんなことを考えながら、呼び鈴を押してみた。
応対に出てきてくれたのは、メイドさんのようだ。用件を伝えると、奥へ通してくれ、広めのリビングへ…そこで、女性達に囲まれた真一がいた。
「ネェネ?なんで、来たの?」
「真一に会いに来たのよ!」
「ニィニと一緒が良いんじゃなかったっけ?」
「真一の傍にいたいの!ねぇ、二人で話がしたいんだけど…」
私の言葉に素直に従う真一に連れられて、個室に入った。ベッドと机とシャワールームしか無い部屋。
「ちょっと…なんで脱ぐのさぁ~」
部屋に入るなり、着ている物を脱いでいく私に、動揺している真一。
「ねぇ、私、魅力無い?」
お兄様にも見せたことの無い、私の生まれたままの姿。生唾を飲み込む真一。
「どうなの?」
真一に抱きつき、ベッドに押し倒した。なのに、無抵抗の真一。私のやりたいように、していいのね。真一の唇に自分の唇を重ね…
◇
「僕と一緒でいいの?」
ベッド中で真一と密着している。私の中に真一がいる。それだけでも幸せである。お兄様といる時よりも安堵感を感じる。お兄様にふさわしい妹を演じなくて良い分、楽なのだろう。
「お兄様も一緒にね」
私の夢はお兄様と真一の三人でのマイホームである。
「ガールフレンドが、沢山いるんだけど…」
「どの位?」
「1万人近く…」
想像出来ない人数である。きっと戯言ね。スルーしておこう。
「私じゃダメなの?」
「ダメってことは無いけど…僕、ニィニのようにかっこ良く無いよ」
あの頃、お兄様の仕草を真似ていた真一。だけど、全然似合わなかった。真一は真一で良いのに。
「知っているわ。でも、真一の前では素でいられる。これ、重要なのよ」
「僕の前だけ素なの?損している気分?」
「弟と思っているわよ。お得でしょ?」
弟とは、こんなことはしない。でも…真一だから…
「なんで、僕なのさ?」
「あの日…決めたの」
そう、遠いあの日に…
---宮藤真一---
目が醒めると、股間に顔を埋めていた。深雪の香りは好きである。だけど…大胆な女性は初めてで、どうして良いか、戸惑うばかりである。まぁ、あの頃も大胆ではあったが…男児と女児の頃は良くても、男性と女性になった今、どうなんだ、これは?今度、真由美さんに訊いてみるかな。
ゆっくりと深雪から離れ、シャワールームへと向かうが、
「どこへ行くの?他の女性に朝駆け?」
僕の背中に張り付くように抱きついて来た深雪。あんなに大きな乳房だったのに、肋骨感を感じる。まるで、深雪の乳房が僕の背中と一体化した感覚である。
「シャワーだよ…」
「一緒に浴びるわ」
恐怖を感じる。密接状態だと、深雪の能力は防げない。一気に凍り付かせる能力だったよな?あの頃もこんな状況で、機嫌を損ねた瞬間に能力が暴走し、僕と深雪は凍死寸前になった気がする。濡れている時は危険が一杯である。
「どうしたの?あの頃のことを思い出したのかな?」
頷く。部屋の中で凍死寸前はカンベンして欲しい。こういうの、無理心中って言うんだっけ?シャワーを浴びながら2回、そして部屋に戻ってからも…
朝食…シスターズのメイドが数名。
「まさか…みんなクローン?」
ミニちゃんそっくりなシスターズに囲まれ、動揺している深雪。なんか、かわいい。
「そうだよ。みんなガールフレンドだよ」
「1万に近くのガールフレンドって…」
「彼女達だよ」
「負けない…正妻の座は譲らないわよ」
たぶん、バァバも深雪を正妻にしたいのだろう。そこは問題は無いが…ニィニが問題である。バァバはニィニを深雪の傍に置きたがらない。あの頃も、そんな気配を感じる時があった。
「ネェネは宮藤家の嫁でいいの?」
「名前で呼んで!」
ネェネ呼びはダメなようだ。
「深雪…」
「はい」
僕にとっては、名前呼びの方が恥ずかしいんだけど…
「真一、モテモテだよね?」
美琴がニヤニヤして、僕を見ている。
「深雪はお姉ちゃん枠だけどね…」
女性にモテるって感覚がよく分からない。
「私が高校生になったら、添い寝してあげるからね」
今はダメなのか?美琴は深雪の胸の辺りを見つめていた。人間の女性はそこで優劣を決めるのかな?
「ふ~ん、彼女がいたんだぁ~」
一方、真由美さんが、興味深そうに深雪を見ていた。
「まさか、七草家の方が側室候補とは…」
深雪は驚いた表情で真由美さんを見ていたが、
「私は真一の姉枠なので、側室にはならないわよ」
と、真由美さんが切り返した。
「ネェネもお姉ちゃん枠だよね?」
無駄だと思うが確認をしておく。
「真一、昔のことは忘れたわ。ネェネって誰?」
深雪がお姉ちゃん枠を認め無い。ネェネ呼びすら認めない。
「真一、私は妹枠でいいよ、今はねぇ」
美琴は、妹枠でも良いけど…将来的には姉枠を狙っているのか?僕の姉枠争いが勃発しないことを祈ろう。
オリ主に対しての深雪の口調は崩壊しております。幼少期に弟として扱った名残ってことで…(^^;;