---土御門元春---
窓の無いビルに行くだと…この街の本丸だぞ。
「じゃ、美琴。週末になぁ」
「うん…」
「ツッチー、案内して」
「あぁ、付いて来いよ」
連れて行って良いものか?いきなり、クライマックスか?そこには、この街を造った人物、統括理事長がいる。そこに用事があると…動揺と緊張感に侵されていく俺。一方の真一は、いつもの通りである。何かを楽しげに考えている表情。コイツ、今一わからん。
ビルの前に立つと、目の前にドアが現れて、俺達が入るとドアは消えた。そのままの位置で床が上昇していく。逃げ道は無いようだ。上昇が止まると、目の前にドアが現れ、そこへ入って行く。
目の前には奇妙な者がいた。緑色の手術衣を着て、赤い液体に満たされた巨大な円筒器に、上下逆さまで浸かっている人間。コイツがそうなのか?アレイスター・クロウリー…元世界最高最強の魔術師にして現世界最高の科学者なのか?
「うん?それの成れの果てだよ」
成れの果て?
「そう。あれは、ダミーだよ。つまんないことを言うからさぁ、あの装置に繋がる電源ラインを遮断したら、死んじゃったよ」
なんか、凄いことを真一がしゃべっていた。コイツ、殺したのか?人を殺して平然としている真一に、恐怖を抱いた。なんだ、コイツ…
「じゃ、あれは?」
動揺を隠せない。声が震えている。
「器だけ。中身はハーデスに差し出したよ」
ハーデス?冥府の王だぞ…
「そんなに怖くないよ。ただ、見た目が骸骨なだけ」
「なんで、お前が知っているんだ?」
「隔離施設で、精霊や悪魔達と交流を持っていたら、紹介してくれたんだよ。人間が誰も来ない隔離空間…いつ果てるとも分からない闇の世界で…ね」
なんで、コイツはそんな話を楽しげに話せるんだ?コイツ、精神をやられているのか?
「その空間で、アレイスターとも知り合いになったんだ。そして、彼の願いを叶える代わりに、彼の持つ知識を含めた財産を受け継いだのさぁ」
受け継いだ?この街もかぁ…確か、コイツ十字教団も手に入れていたよな?
「彼は僕を生み出した四葉真夜と思想は同じだよ。『この世界にある全ての位相を絶滅させる』って点においてね。だけど、僕の友人達は、それを良しとしなかった。そんなことをされたら、彼らは存在できなくなるから」
背筋を冷たいモノが流れ落ちていく。コイツ…人間を辞めているのか…
「アレイスター亡き後、このビルは、ミサカ総体に引き継いでもらったんだ。ここなら安全でしょ?地上以外の総ての位相は、僕の友人達が管理しているし、科学サイドも、魔術サイドも、手中に入っている。後は魔法師サイドだけだよ。これを手に入れれば、平和な世界が出来ると思わない?」
「お前は…何様なんだ?」
俺はコイツの出自をオヤジから聞いている。人の形をしたバケモノであることを…だけど、コイツは成りたくてなった訳では無い。大人達のエゴと興味により、生み出されただけだと。だけど、コイツの精神は人間では、もはや無いのかもしれない。
「僕は単なるバケモノだよ。人の姿をしたバケモノ。そして、最後に、ヒーローに倒される運命なんだろうな。あの頃見た特撮物のラストって、そんな感じだったよな」
真一の顔が歪んだ。初めてみた悲しそうな顔…上やんに倒される運命なのか?まぁ、バケモノとして自覚はあるのは良いことだな。そうなると、自分の出自も知っているってことか。
「でも、それでいいと思う。バケモノは最後に壮絶に死んだ方が感動的でしょ?問題は、アレイスターも悩んでいたけど、殺してくれそうな者が、なかなか現れないことかな。だから、僕を完全に消し去れる人材を作ることが夢かな」
いつもの楽しげな表情の真一に戻った。自分を殺せる人材を作ることが夢?コイツ…やはり、精神がやられているんだな。
---御坂美琴---
「あれがお姉様の彼氏ですか?」
黒子の問いに頷く私。
「彼氏の前では、あんな可愛くなるんですね」
佐天さんの言葉で耳が熱くなっていく。しまった。コイツらの前で、なんて恥ずかしい姿を晒してしまったんだ…後悔後を絶たずだ。
「御坂さんも彼氏の前では、恋する乙女なんですねぇ」
コイツら、私を何だと思っているんだ?!これでも、歴とした女の子だぞ!
「始めに言っておくが、彼に惚れるなよ!」
「「「えっ!」」」
三人から驚きの声…手遅れか?佐天さんの頬が薄らと紅い。新春さんもかな?黒子は男に興味は無いはずだから、一安心か?
「惚れないですよ…そんな、御坂さんから、奪おうなんて、これっぽちも…」
佐天さんは、私の目を見ずに、のたまっている。
「あんなお兄さんは欲しいかなぁ」
新春さん…俯いて紅くなっている。かわいい素振りである。
「お姉様!不純異性行為はダメですのよ!おわかりですか?」
いや、不純じゃないから…
---宮藤真一---
ビルで用事を済ました後、ビルを出ると、ツッチーの元気が無かった。
「どうしたんだ?」
「お前…死ぬ気か?」
「いや、死なないよ。まだまだ先だよ。掃除が終わっていないからね」
バァバをあんな目に遭わした連中は、まだ生き残っている。そもそも、魔法師サイドは1枚岩で無い。大規模な戦争の危険を排除しないとダメだ。
「俺に出来ることはあるか?!」
「う~ん、僕を助けてくれたお姉ちゃんを探して」
「インデックスか?確か…ねーちんが救い出したような…」
えっ!訊いていないよ。なんで、知らせてくれないんだ?問題が起きたのか?二人で火織お姉ちゃんの教会へ向かった。何か、言伝とか無いかな?
しかし教会には、不在だと思っていた火織お姉ちゃんがいた。
「真一君…土御門…お前、話したんだな?」
「いや…ポロっと…」
口止めされていたのか。その割には…
「どうして?どうして、教えてくれなかったの?」
「まぁ、ちょっと問題が有って…会うか」
「勿論…」
火織お姉ちゃんの態度が、なんかぎこちない。何かに動揺しているようだ。不安に包まれていく。何が起きたんだ?火織お姉ちゃんに別室へと連れて行かれると、五和と高価そうな白いシスター服を着た少女がいるだけであった。どこにもお姉ちゃんの姿が見当たらない。
「どこ?」
「そこ…」
火織お姉ちゃんの指差す先には、あのシスター服の少女がいるだけだ。どう見ても、僕よりも歳下に見える。僕の記憶にあるお姉ちゃんは、火織お姉ちゃんのようなスタイルで、質素な雰囲気を醸し出す聖女であった。
今、目の前にいる少女は、質素な雰囲気がまるで無く、ひたすらに食事を食べていた。そもそもスタイルは、幼児体型では無いのか?ラオと似た雰囲気を感じるし。
「そうなるだろ?だから、会わせるか悩んでいたんだ?」
えっ?えぇぇ~!これが、あのお姉ちゃんの成れの果て?なんで、スタイルが幼児退行しているんだ?
「真一の言いたいことは分かる。私もなんでって思ったからな」
いやいや、1万歩譲っても、これは無いでしょ?僕が目の前にいても、食べる動作を止めない少女。
「これでも、私と同い年なんだが…」
見えません。どう考えても10歳は違うでしょう。
「うん?あっ!真一だぁぁぁぁぁ~」
やっと僕に気づいたようだ。
「元気そうね。五和、お替わり!」
どうして、こうなった?あのお姉ちゃんに淡い憧れを持っていたのに…今のお姉ちゃんには、憧れなんか微塵も湧かない。
「なんで?ねぇ、なんで?」
「あの手術の時に、下垂体になんかしたみたいで、ホルモンバランスが崩れたそうだ。その上、記憶を維持する為にカロリー消費が半端ないらしく、寝る以外は食事だそうだぞ」
喰う寝る食う…な生活なのか。
「元に戻れないの?」
「10歳未満なら可能かもしれないが、もう成長仕切っているからなぁ、絶望的とも言え無くも無い」
がーーーん!ショックである。不憫にも程があるだろう。あのお姉ちゃんが…幼児体型って…脱いだとしても、想像に難くないだろう。
「コイツ、こんな姿だが、貰ってくれるか?」
「お姉ちゃんに恩返しはしたいのは、本当ですが…幸せに出来るか不安が一杯です」
幼児体型をどうにかして、背丈も歳相応に…いやいや、ビフォーアフターが違い過ぎる。手術内容を検分して、何をされたのか、調べないとダメだ。
その日、インデックスという不思議な生物を、家にお持ち帰りした。同じ体型のラオとは直ぐに打ち解けたようで、一安心…なのか?
インデックスの体型変異という設定は、原作から大きく逸脱しています(^^;
それはもはや、●ナンのような…