---宮藤真一---
何故、こうなったのだろうか?あの初対面の女性に連れて行かれ、今、彼女の両親が目の前にいる。これは世に言う一目惚れってヤツか?初対面で、両親に紹介って…
「お前、工藤新一だよな?」
彼女の父親に訊かれた。
「えぇ、宮藤真一ですけど…僕は彼女とは初対面ですよ」
僕の言葉で悲しそうな顔をする女性と、その母親。
「記憶喪失のようだな」
彼女の父親は、何をもって、僕を記憶喪失と断定したんだろうか?
「そんな…やっと、会えたのに…」
「あの…誰かと間違えられて居ませんか?」
涙を流している女性が、スマホに画像を表示させて見せてくれたのだが、その女性と僕が楽しげに写っていた。あれ?マジ?僕って、記憶喪失なのかな?こんなシーンは覚えていないけど…
「新一…どうしちゃったのよ~」
泣きながら僕に抱きつく女性。彼女の記憶を読み込んでみた。あれ?確かに、僕は彼女と付き合っていたようだ。なんで、僕の記憶には無かったんだ?僕の記憶領域に、何か不具合が起き始めたのか?早めに帰らないと、帰れなくなるとマズいなぁ。ちょっと、お花を摘みに行き、そこから家へと転移して逃げた。
---毛利蘭---
やっと、新一に会えた。だけど、記憶喪失のようだった。
「おい!蘭!アイツ、いないぞ!」
お父さんの声、トイレに立った新一が、いつまでも戻って来なかったので、お父さんが見に行ってくれたのだ。玄関へ向かうけど、玄関には内側からチェーンロックがされていた。密室での消失になるのかな?
「消えた…まさか…」
顔面蒼白のお母さん。ここはお母さんのマンションである。外に出るには、玄関のドア以外には無い。ベランダに面したリビングには私達がいたし、そもそもトイレも内側から鍵が掛かっていたそうだ。
「どこに消えたの?ねぇ、お父さん…お母さん…」
新一は誰かに狙われていたのか?一体誰に?
---宮藤真一---
夜、弘一おじさんが安室さんを連れてきてくれた。
「まさか宮藤真一君とは…姿も彼にそっくりだし。こんな偶然があるんですね」
安室さんの言う彼とは工藤新一という、別人だった。音だけだと同姓同名で、姿が一緒では間違えられても仕方が無いか。あぁ、僕の記憶領域には問題は無く、弘一おじさんに話したら、調査して来てくれた。
「俺も驚いたよ。真一に瓜二つでな。違うのは年齢だな。あちらは高校2年生だよ」
僕は中3だし。別人である。僕の記憶領域の不備で無くて良かった。
「それでですね。その彼が、例の薬を飲んだ可能性があるんですよ。彼は彼女の前から消えて、たまに現れるんですが、足取りがまったく追えないんです」
安室さんは公安調査室の潜入捜査官だそうだ。あの薬を使う組織を調べているそうだ。
「で、あの薬の出所ですが…黒ずくめの組織と言われる団体が開発し運用しています。効果なんですが、体質によって2つに分かれます。1つ目は、お探しの見た目で分かる幼児退行、もう1つは検出不可能な毒薬です。組織としては後者を開発したようですが、体質によっては幼児退行してしまうらしいです」
それって、お姉ちゃんは誰かに殺されそうになったってことだ。誰に?
「おい!真一…殺気が駄々漏れしているぞ」
うん?弘一おじさんの声が震えている。あぁ、殺気を消さなきゃ。
「その捜査は、公安にして貰うから、真一は関わるなよ」
「解毒剤は?」
「無いです…」
無いって…そうか、検出出来無いのか。
「じゃ、毒薬のサンプルは?」
「組織の上の方のメンバーが携帯しているらしいです」
それを奪うか。
◇
黒ずくめの二人組を見つけ、追い詰めた。
「工藤新一…生きていたのか?!」
工藤君も毒薬を飲まされたのか。彼は死んだのか?それとも…
「おい!薬を出せ!」
「もう一度、投与されたいのか?うっ!」
太った男の腿に、ミワから撃ち出された5寸釘が突き刺さった。
「薬を出せよ」
細身の男は、懐から拳銃を出して、発砲してきた。しかし、弾丸は僕にもミワにも到達しない。運動エネルギーのベクトルを地面に向けた為、総て地面に埋まっていた。
「薬を出せよ」
「お前、何者だ?本当に工藤新一なのか?」
顔を引きつらせた細身の男。
「そうだよ。宮藤真一、ウィザードだよ」
目の前の黒服の男達の身体に、死神が手にしたカマが通り過ぎていった。