---神崎火織---
真一君を帰国させ、土御門家の当主の元へ連れて言った。土御門家は、代々陰陽師を生業としている家系であるが、科学にも魔術にも知識があり、それぞれの勢力とも交流があるそうだ。
「彼の髪の毛からDNAを検出して、遺伝子情報を取り出し、警察のデータベースで照会してみたのだが…」
難しい顔の当主。
「もしかすると、真一君の両親は存在しないかもしれない。彼は人造人間の可能性がある」
人造人間…人間の作った人間。教会的にはモンスターに値する存在である。
「ど、どういう意味ですか?」
「遺伝子情報が3人分取れたんだが…その内の二人は判明した。判明したんだけどね」
口が重い当主。私に話すかを悩んでいるのか?
「聞いてはいけない話なんですか?」
「いや、もう訊いちゃっただろ?彼が人造人間って…」
それはそうだが。
「たぶん、10年ほど前に誘拐された四葉真夜の子供だよ」
「四葉?あの四葉家ですか?」
四葉家…現当主が幼い時に誘拐され、その報復に、事件を主導した国を滅ぼしたという、猛者揃いの家系である。教会でも四葉家には触るなと、教えられている。
「そう、その四葉家の当主の息子のようなんだが…彼女、子供が産めない身体なんだよ」
産めない…なのに、子供は居る?それは、神を冒涜する行為の末に造り出されたと言うことか。
「もう一人は、七草弘一だ」
「その方って、妻帯者ですよね?」
彼も有名人である。経営コンサルタントとしても、投資家としても有名な人物であるが、奥様は四葉家の者ではなかったはずだ。
「もしかすると、彼の知らない内に、精子バンクに預けてある精子を盗んで造った恐れがある」
教会的には真っ黒な事案である。だけど…彼には罪は無い。教会的には、彼を罰する対象にするだろう。四葉家の当主には触れられないから。
「火織君、複雑だろ?教会サイドの人間として」
「はい…」
罪に罪を重ねている。昔だったら、石打ち100回に、火あぶりの刑が妥当な線か?
「真一君を、殺すかい?」
当主が真剣な顔で、私の顔を覗いている。教会としての結論は、死罪確定であるけど…
「殺せません。彼女に託された命です」
「そうだよね。さて、どうするかな」
当主も結論を決めかねているようだ。真一君は今、当主の息子である元春が面倒をみているそうだ。一人にするのは、得策では無いと判断したと言う。
「彼の能力なんだけど…」
それも問題である。聖女と同じ能力を、いや、モンスターから聖女に移植したことは出せない。事実が明らかになる前に、消される運命か?
「インデックス君より、上だよ。多分、魔導書は勿論、大漢の呪術、教会の秘術も覚えていると思う。すでに、土御門家の秘術もかもなぁ」
それは、マズいでしょ。確実に消されるレベルだと思う。
「彼の能力は『吸収』。いままで、攻撃を吸収する能力と思われてきたが、インデックスからのメッセージによると、知識欲がスポンジで出来ているみたいだそうだよ。知ったことの総てを吸収する能力で、吸収した情報、能力、スキルは、彼が自在に使えるみたいなんだが…」
禁書目録と呼ばれ、インデックスと改名した彼女よりも、危険な存在では無いのか?
「たぶん、火織君の剣技や能力も吸収していると思う。相手に触れるだけで、吸収してしまうらしい」
厄介な能力である。
「たぶん、消される前に、殲滅しちゃうと思う。彼に対する殺意は御法度だよ」
「はい」
「それを踏まえて、どうするかな?」
土御門家の当主すら、消し去る能力持ちなのか?
「教会預かりにするには、危険だと思う。まぁ、それ故、彼は隔離施設に入れられていたんだろうね。彼の能力は、教会の上層部は知っているはずだよ」
だから、真一君は、記憶を書き換えたのか?自分の危険度を下げる為に。
「立川ベースにある学園都市の第7学区にある病院に彼を連れて行こうと思う。そこには名医がいるからね」
冥土帰しと呼ばれるカエル顔の医者のことだろうな。瀕死の重体でも治してしまう技術。
「彼の病院なら安全だよ。そこで、四葉真夜と対面だな」
対面って…どうなるの?真一君の運命は…