---宮藤真一---
僕の管理下にある窓の無いビルにテロ行為をした女性がいた。その場で拘束し、牢に入れてあるそうだ。早速、ツッチーを伴って、彼女に会いに行った。彼女の名前は、警策看取。プロフィールを見て、気づいた。操祈とドリーと同じ研究所にいたことだ。看取…ミーちゃんである可能性。
「なぁ、単刀直入に訊くが、お前、ドリーの関係者か?」
「なんで、それを…ねぇ、ドリーをどうしたのよ。まだ、生きているんでしょ?」
ドリーの名を聞き、取り乱した女性。それまで、どんな拷問にも悲鳴すら上げなかったらしいのだが…って、ここの警備は拷問するのか?
「ドリーがミーちゃんって人物に会いたがっているんだ。心当たりはあるんだな?」
「えっ…」
視線が泳ぎ始めた。関係を誤魔化したいのか?
「どうするんだ?」
「お持ち帰りする」
「わかった。報告書はこっちで書いておく」
後のことはツッチーに任せて、僕は看取と共に、家へ転移した。家に着き、看取の拘束を解き、ドリーの待つ部屋へ連れて行った。万が一を考え、ドリーにはミワとミニちゃんをガードとして付けてある。同じ波長な為か、この二人といると、心地良いらしい。
「この部屋だよ。ドリー、入るぞ」
「うん、いいよ~」
看取を連れ、ドリーの部屋に入ると…
「ミーちゃん?」
「えっ…ドリー…ドリーなの?」
「ミーちゃぁぁぁぁ~ん!」
ドリーが看取に抱きつき、早速匂いを嗅ぎ始め、
「う~ん、ミーちゃんの匂いだ。懐かしいなぁ~」
匂いで人物判別するのって、ユニークスキルかな?美琴は匂いフェチでは無いんだけど…
「ねぇ、アレを見せてよ~」
ドリーは、広口瓶に入った液体金属を看取に渡すと、瓶の中でイルカが飛び跳ね始めた。
◇
学校に戻ると、もう放課後だった。午前中にテロが起きて、直ぐに向かったのだが、結構時間を食ったなぁ。
「おい!お前、どこの家のモンだ!」
最近、三科生にも絡まれる。迷わず、取り巻きごと、風紀委員の部屋へ強制転移させる。後、摩利とか沢木さんがどうにかしてくれるだろう。魔法師の家系って、派閥があるらしい。それは子供でも意識して、自分よりも下位の家系には威張り散らす傾向があるようだ。三科生って、現代魔法が使えないんだろ?威張る程の者でも無いだろうに。
校門の前に転移すると、既にみんなが待っていた。
「遅かったわね。なんか問題を起こしたんじゃ?」
美琴に詰め寄られた。
「いや、ちょっとだけだって…」
「そのちょっとが危ないんだぞ~」
操祈に突っ込まれた。確かに、そのちょっとが危ない時が多い。
「今日は大丈夫だよ。呼び出される前に、帰ろうよ」
摩利に事情聴取されるかもしれない。
「呼び出しって…やはり、なんかやらかしたんだな」
ニィニは確信を突くなぁ。えぇっと…味方は…深雪だけかな。
「深雪、帰ろう」
「はい」
二人で歩き始めると、後ろも付いてきた。これで、校内放送は聞こえない。
「質問なんだけど、転移魔法が使えて、なんで三科生なの?」
北山雫に訊かれた。
「空間魔法を使える人って貴重だと聞いたことがありますけど」
光井ほのかが更に聞きたいみたいだ。
「あぁ、僕は現代魔法師ではないから」
「「はぁい?」」
「真一はウィザードなんですよ」
と、深雪が僕の代わりに答えた。
「それは、本物の魔法使いってことですか?」
この子は誰だっけ?ニィニのクラスの眼鏡女子だ。
「そうなるかな…」
「CAD無しで魔法の行使って出来るの?」
雫に訊かれた。
「出来るって言えば出来るよ」
左の手の指先に炎を浮かべた。
「無詠唱ですか…それってマスターウィザードってことですか?」
ほのかの声が裏返った。それ程、驚いているようだ。
「アークウィザードの資格は持っているよ」
英国魔法協会発行の身分証をみんなに見せた。
「魔法使いって、本当にいたんだ」
驚いている現代魔法師の皆さん。学園都市組と、ニィニ達は、魔法使いのことを知っているのか、驚いてはいないけど。
「魔法使いは現代魔法師で無いからねぇ」
◇
翌日、ツッチーに呼び出された。あの~、学校は休みじゃ無いんですが…
「真一、吸血鬼って、いると思うか?」
「いるよ。ヨーロッパの片田舎に集落があるけど…」
「集落の場所を知っているのか?」
「知っているけど、教えられない。バンパイアハンターに知らせるでしょ?」
「まぁ…教会サイドだからにゃ」
教えられない。知り合いもいるし。
「まさか、はぐれバンパイアでも出たの?」
はぐれバンパイアは、吸血鬼村の村長から、狩っても良いと言われている。ルールを護れない愚か者として。
「いや、そうじゃ無いんだけど…『吸血殺し』って能力を知っているか?」
「確か、Gホイホイの吸血鬼版だよね?吸血鬼を引き寄せる香りを発して、血を吸わせて灰にするって、感じだっけ?またの名をニトロブラッドって言うんだよ。濃い聖水と同じで、輸血した人間はそのエネルギー量に耐えられずに爆発すると言われているし」
「そこまで危険なのか…」
「たしか、エリクサーの材料だったような気がする」
「お前の知識が怖いんだが…」
僕はこんなにも大人しいのに、怖いのか?
「まさか、その能力というか、体質の人がいるの?」
「あれって、体質なのか?」
「そうだよ」
ツッチーは専門家なのに、知らなすぎるなぁ~。大丈夫か?
「それがなぁ、学園都市のある場所に軟禁されているんにゃ」
「この国なら、吸血鬼はいないから安心だよ」
「いないって言い切れるのか?」
「言い切れるよ。いれば、悪魔さん達が教えてくれるし」
悪魔は人間の負のエネルギーを食い物にしているのだが、吸血鬼の眷属になると、食い扶持が減るのだ。よって、見かけ次第、殲滅してくれるのだった。
「お前、悪魔と友達なのか?」
「うん。呼べば、来てくれるよ。悪魔だとアモンとかレヴィアタンとか」
「呼ばないでいいからな…お前、規格外すぎるだろ?」
「一応、バケモノだからね」
それ位呼べないと箔が付かないらしい。と、天使のミカエルが言っていたっけ。
「脱線したが、あの軟禁しているヤツを救出して、その厄介な体質を改善して欲しいんにゃ」
体質の改善かぁ~。それは厄介だな。
「幻想殺しに頼めば良いのに」
体質改善薬は、作るのが面倒である。
「そうなるのか。じゃ、救出を手伝ってくれ。上やんは、戦力外だからにゃ」
『幻想殺し』って、最終兵器じゃ無いのか?アレイスターの記憶によると、ドラゴンの力も持っているそうじゃ無いか。僕よりもバケモノだと思うんだけど…